アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

映画感想【花様年華】ネタバレあり/中年男女の純愛物語

花様年華

原題:IN THE MOOD FOR LOVE/上映時間:98分/製作年:2000年

花様年華 (字幕版)

【監督・製作・脚本】ウォン・カーウァイ

【撮影】クリストファー・ドイル、リー・ピンビン

【出演】トニー・レオンマギー・チャン、スー・ピンラン他

【あらすじ】ネタバレあり

同じ日に同じアパートの隣り合わせに引っ越してきたチャウ(トニー・レオン)とチャン夫人(マギー・チャン)。チャウとチャンには、それぞれ配偶者がいます。チャン夫人の夫はどうやら仕事が出来るらしく、海外出張(日本)に行ったっきり・・・。同じく夜勤続きでなかなか帰ってこないチャウの奥さん。似た様な境遇の中、静かに耐え続けるチャウとチャン。しかし、やがて二人はある事に気付きます。

【感想】完全ネタバレ

私が初めてウォン・カーワイの作品を観たのは『恋する惑星』です。タランティーノの『パルプ・フィクション』を知った時と同じぐらいの衝撃でした。警官633(トニー・レオン)のキャラが立っていて、何度も観返しました。これは何か凄いものを観たと。以後ウォン・カーワァイの作品とトニー・レオンが出ているものは貪るように鑑賞してきました。

 

本作『花様年華』は2001年頃、シネテリエ天神(2009年に閉館)にて鑑賞。公開初日でもなく、レイトショーで観たのですが結構お客さんが入っていたと記憶しています。一度観ただけでは理解できない部分も多く難解な映画ではありましたが、鑑賞する回数を重ねるごとに、また年齢を重ねるごとにこの作品が面白く感じる様になりました。

 

花様年華は、ウォン・カーワイの1960年代シリーズ3部作(欲望の翼花様年華・2046)の2作目として認識されています。1960年代の香港を舞台にした本作は、日本製の電子ジャーが珍しいなど、当時の香港の時代背景もよく伝わってきます。

 

仕事が忙しくてなかなか帰ってこない妻、夫を互いに待ちわびるチャウとチャン。チャウ役を演じるのは「恋する惑星」や「ブエノスアイレス」のトニー・レオン。チャン役を演じるのは「欲望の翼」で、レスリー・チャンに翻弄される女役を見事に演じたマギー・チャンです。尚トニー・レオンはこの作品で、カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞しました。

 

二人は当然同じアパートで間借りをしている訳ですから(食堂は共有らしい)、夕食時などにちょっとしたコミュニケーションが発生する訳です。今の様な集合住宅とはちょっと違います。「ははーん、この二人が不倫関係に陥っていく話ね・・・」と軽く想像したのですが、この映画は少し違いました。

 

ここからは完全にネタバレします

チャン(マギー・チャン)は夫が不在の時、近所の屋台にスープを買いに行くのですが、その時にチャウ(トニー・レオン)とすれ違いほんの少し会話をします。確かに恋愛ってこんな感じですね。最初の内は、ほんのわずかな時間を共有する所から始まる感じがリアルです。

 

そしてある日レストランで、食事をするチャウとチャン。 チャウとチャンは薄々気付いていた事が、互いの会話から正しいと証明され愕然とします。はっきりと言ってしまえば、二人の配偶者同士が不倫していたと言う事!なんとー!この事をとても上品な感じで会話をして探り合っているのですが(汗)、腹の奥底はきっとそうではないでしょう。

 

チャウは物書きを目指していて、その手伝いをチャンに頼むようになっていきます。二人で共同執筆をし、次第に書いたものが売れていきます。自分の書斎として高級な部屋を借りる事が出来る様になったチャウ(トニー・レオン)。その部屋のルームナンバーは2046です。シブい。後のウォン・カーウァイ作品2046(日本からはキムタクも出演)のタイトルの部屋番号を持ってくるなんて、サブカル的なセンスも良いですね。

  

 この映画にはチャン(マギー・チャン)が夫と別れる時の会話の練習を、チャウ(トニー・レオン)とするという印象的なシーンが度々出て来ます。この様なシーンが突如に現れる為、話の前後との繋がりが見出せず一瞬混乱します。そして後半、あっと思わすシーンが出て来ます。私はこの作品の中でこのシーンが一番好きです。

 

 本作を鑑賞して疑問に思った事は多数ありますが、特に気になったのは終盤あたりに出て来るチャンの子供は誰の子か?です。これにはチャウの子だと思うという意見と、夫との間に生まれた子だという二つの意見がある様です。私としてはチャウの子だと思いたい所です。が実際は何とも言えません。二人が密に会っていたのが1962年なので、その頃出来た子だと1966年には4、5歳ぐらいになっています。二人でタクシーに乗っていた夜が怪しいですが、こういう部分をはっきりと描かない所が大人だなと思いました。ただ結局どちらの子であったとしても、この二人の純粋な気持ちは壊せないでしょう。

 

 そして最後に出て来るのはアンコール・ワットトニー・レオンは穴に秘密を打ち明けるのですが、このラストはかなりぶっ飛んでると思いました。さすがはウォン・カーワイ、芸術の人だと思います。

 

 

アメリカン・ハッスル【映画感想】ネタバレあり

アメリカン・ハッスル

原題:American Hustle/上映時間:138分/製作年:2013年

アメリカン・ハッスル スペシャル・プライス [DVD]

監督:デビッド・O・ラッセル

出演:クリスチャン・ベールブラッドリー・クーパージェレミー・レナーエイミー・アダムスジェニファー・ローレンスロバート・デ・ニーロ(クレジットなし)他

 

【あらすじ】

詐欺師のアーヴィング・ローゼンフェルド(クリスチャン・ベイル)が絵画の詐欺をしようとしていたところ、FBI捜査官リッチー・ディマーソ(ブラッドリー・クーパー)が目をつける。アーヴィングを逮捕したリッチーは、彼に司法取引を持ちかける。それは、カジノに絡む政治家たちの汚職を暴く巧妙なおとり捜査だった。やがてそれは、アメリカを揺るがす一大スキャンダル、アブスキャム事件へと発展していく……。

アメリカン・ハッスル | 映画-Movie Walker

 


映画『アメリカン・ハッスル』予告編

【感想】完全ネタバレ

FBIが市長の汚職を暴くために、詐欺師と手を組むってちょっと無理じゃない?って思いました。でもこれが途中まで、上手くいきそうなのが面白いです。しかもこれが1970年代にアメリカで実際にあった【アブスキャム事件】をベースに製作されたフィクションだそうで、驚きです。市長が思ったよりもいい人で(電子レンジをくれたり)、やや困惑する アーヴィングクリスチャン・ベール)。ケイパーものや犯罪映画などを観ていてよく思うのは、人情や友情、恋愛感情などだけはいつも誤算なんですね。

 

またアーヴィングの奥さんの役でジェニファー・ローレンスが出ているのですが、この人は何を考えているか全く分からなくて良いです(笑)。周囲が互いに騙しあい探り合いをしている中で、彼女だけは感情的ですが怖いもんなしという感じです。こんな風に生きることが出来たらいいですね(笑)。

 

観ていてちょっと驚いたのは、ロバート・デ・ニーロカメオ出演していた事。マフィアのボス役でほんのワンシーンしか出てこないのですが、デニーロが出て来るだけであのコワーいムードが出来あがり、観ているこちらも気が気じゃなかったです。メキシコ人なのにアラブ人だとか何とか言って誤魔化してシークを紹介するのですが、それをあっさりデ・ニーロに見抜かれる。アーヴィングクリスチャン・ベール)もまさかその展開は予測していなかったという感じです。デニーロはいきなりアラブ語で、シークに話しかけるのです(汗)。チョー怖い。イングロリアス・バスターズ的な怖さもありました。

 

ばれたなと思ったのか、一同どんよりムード。FBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパー)は、ビビり上がったのか、パニクって上司にも大声でキレる始末。この上司は本当に偉いと思います。偉そうな事は言わず、大きな事も言わず、身の丈に合った仕事をし部下が失敗した時にもギャーギャー言わない。FBI捜査官のリッチーはアーヴィングにまんまと一杯食わされたわけですが、この上司はこの様な事を予測していたかの様に見えました。

 

最初の内はアーヴィングとシドニーが幸せそうなカップルに見えるのですが、次第に互いについている嘘がぽろぽろ出てきていかがなものか?と思いました。更にラストは大どんでん返しで、観ていたこちらもまんまと騙されていたという感じです。

 

 

アメリカン・ハッスル スペシャル・プライス [DVD]

アメリカン・ハッスル スペシャル・プライス [DVD]

 

 

 

アメリカン・ハッスル スペシャル・プライス [Blu-ray]

アメリカン・ハッスル スペシャル・プライス [Blu-ray]

 

 

バーホーベン版トータル・リコール(1990)映画感想

トータル・リコール(1990年版)

トータル・リコール [DVD]

原題:Total Recall/上映時間:113分/製作年:1990年

  【あらすじ】

西暦2084年、地球の植民地となっていた火星では、エネルギー鉱山の採掘を仕切るコーヘイゲンとそれに対抗する反乱分子の小競り合いが続いていた。一方、地球に暮らす肉体労働者のダニエル・クエイドは、毎晩行ったこともない火星の夢を見てうなされていた。夢が気になるクエイドは「火星旅行の記憶を売る」というリコール社のサービスを受けることに。しかし、それをきっかけに今の自分の記憶が植えつけられた偽物であり、本当の自分はコーヘイゲンの片腕の諜報員ハウザーだったと知る。クエイドは真相を知るため火星に旅立つが、真実を隠匿するコーヘイゲンに命を狙われ……。

トータル・リコール(1990) : 作品情報 - 映画.com

 【感想】完全ネタバレ

高校生の頃、劇場にて鑑賞。ポール・バーホーベンの作品を観たのはおそらくこれが初めてです。当時これを観た時は映像表現がグロくてとても怖かったと記憶しています。脳内のチップを鼻の穴から出すシーンなど、発想がキョーレツ過ぎてちゃんと観る事が出来なかった。随分に変わった作風の映画だなとも思いました。そんなトラウマ映画ですが時が経って観返してみると、思っていた程はグロくない。タランティーノ作品などエグイ描写のものや、CGを使ったリアルなグロ描写がその後たくさん出てきたから、感覚が麻痺してきたのかも知れません。

 

でもやっぱりオリジナル版は、変わった方向への創意工夫が凄くて面白い。シュワちゃんが取り出した脳内チップをネズミに食わせるシーンなどはバーホーベン版でないと、味わえない面白さがあります。またレジスタンスのボスの表現は、断然バーホーベンのオリジナル版の方がキョーレツですね・・・・。

原作はフィリップ・K・ディックの短編小説「追憶売ります」とSF作品ですが、何がどうなっているのか?とかこれはどういう事なのか?とか頭でいちいち考えずに楽しめる作品だと思います。SF映画なのですが、どちらかと言えばホラー映画を観ている感覚に近いです。

 

脚本はあのダン・オバノン。『ダーク・スター』をはじめ『エイリアン』『スペース・バンパイア』など多くの脚本を手掛けています。

 

今オリジナル版を観返してみると、2012年版のトータル・リコールは、随所にバーホーベン版を意識したカットがある事が分かって面白かったです。ダグラスとメリーナが同時にジャンプしてエレベーターに掴まるシーンなど超カッコイイと思ったのですが、オリジナル版に似たシーンがあったんですね。すっかり忘れてました(汗)。妻ローリーとの格闘シーンも迫力あります。

 

後は敵に追われたシュワちゃんが、地下鉄の窓ガラスを割って乗り込むまでのアクションシーンはものすごい迫力ですが、周囲の一般人を巻き込み過ぎですね(笑)。これ以外にもバック・トゥ・ザ・ヒューチャーのデロリアン的車のドアの開閉や、ロボットのタクシー運転手、地下鉄のセキュリティシステムの表現など何処となく手作り感があってとても好みの作品です。

 余談

ポール・バーホーベン監督の新作『エル elle』 が8月25日から公開されますが、これはいろんな映画関係者が積極的にお薦めしているみたいです。


映画『エル ELLE』WEB限定予告編

是非鑑賞してみたいですが、ショッキングなシーンが凄そうでこれを大スクリーンで観る勇気あるかなぁと思います(笑) 。

 

 

 

 

 

 

エスケープ・フロム・L.A.

エスケープ・フロム・L.A.

原題:Escape・from・L.A./上映時間:101分/製作年:1996年

  【あらすじ】

舞台は2013年のロサンゼルス。2000年に起こった大地震の為、L.A.はアメリカ大陸から分離し、島と化していた。地震を予言した男は後に終身任期の大統領となった。このおかしな大統領のせいで自由の国アメリカの姿はもはやなく、飲酒・喫煙・女遊びなどが禁じられていた。更にこれらを守らない者は、無法者とみなされ市民権を失いL.A.の島に追放された。一度追放された者は、二度と大陸に戻ることが出来ない。

 

過去には大統領を救った事もある勇敢な男プリスケンは、この煙草も吸えない国アメリカに嫌気がさし、徐々に犯罪を犯す程になっていく。

彼は通称「スネーク」として名が通っており、有名人でもあった。そんなスネークが遂には捕まり、ロサンゼルスへ追放されそうな頃、ある事件が起こった。それは大統領らが宇宙研究所を視察した際に、その娘が機密扱いのある装置を盗んだ事から始まる。娘は国境を開放し、独裁的な政治を終わらせる事を父である大統領に要求。さもなければこの装置を使うと脅かす。それは指定した区域の電子機器などの文明を、すべて停止させる恐ろしいものだった。

 

そこで大統領らはスネークにその装置を取り戻す様に依頼。「俺には関係ない」とあっさり断るスネークだが、すでに体に新型ウィルスを打たれていて、解毒剤を打たなければ死ぬと脅される。スネークは結局仕方なしに任務を引き受ける羽目に。制限時間は10時間。ステルス・スーツ、銃、吹き矢など用意された物を装備して潜水艇に乗り込むスネーク。本部からの指令を全く無視して、潜水艇をやたらとぶっ飛ばし、LAにたどり着くのだが・・・・。

 【感想】完全ネタバレです

本作は、ニューヨーク1997の続編というかリメイクです。

この映画は大好きで何度も観返しています。

まずオープニング・クレジットがサイコー。好みのセンスだし流れている曲もカッコイイです。

 

更に主人公スネークがシブくてお茶目。カート・ラッセルのはまり役だと思います。「案外背が低いんだな」と言われてむっとする表情、大好きです。アクションも超キレキレで男前なのに、なぜかクスッと笑ってしまう事が多い不思議なキャラです。スネークが如何に人気であるかは、数々の映画ファンの方の発言からも立証済みであり、私がここでぐだぐだと言う事もないですね。カートラッセルのスネイクものもっとたくさんあって良いと思います。大好きなシーンがたくさんあり過ぎて、未だに頭の中が整理できてません。

 

お気に入りのシーンその1

潜水艇でLAへ向かうシーン】

いざ潜水艇に乗り込んだスネークは、指示を守らずスピード出し放題。「危険だ」と注意されても「死ぬのは俺だ」の一言で済ませる。結果潜水艇が妙な位置・角度で到着してしまい、あたふたするスネーク最高。帰りの潜水艇が海に流されてしまいます。

お気に入りのシーンその2

【ブシェミの登場】

えも言い難い雰囲気を醸し出しているを演じるのは、レザボアドッグスMrピンクなどでおなじみのスティーブ・ブシェミ。結構卑怯で悪い奴なのになぜか憎めない。

お気に入りのシーンその3

 【ウォーキングマシーン】

ブシェミに騙されたスネークは、クエボ・ジョーンズの元へ連れて行かれる。ウォーキングマシーンに手首を括り付けられ、手身動きが取れないスネーク。そこで大統領の娘が盗んだ装置の実態を知る事になる。

クエボがテレビの生放送で大統領にメッセージを送った際に、画面の右上にスネークがウォーキングマシンで歩かされているのをマロイが発見。妙な通信手段であるが、彼がちゃんと生きている事が伝えられる。メッセージの内容はリンチバーグ(大統領の故郷でホワイトハウスがある場所)を標的にするというもの。皆がじっとしている画面の右端でスネークだけが揺れているのが印象的。

 

お気に入りのシーンその4

【バスケのシュートのシーン】

絶対に勝ち目のないルールを無理やり押し付けられても特にわめいたり、キレたりする訳でなく淡々とゴールを決めていくスネーク。クエボの野蛮さに、さすがの大統領の娘もひく。見事に全ゴールを決めて10点獲得した彼は、周囲にいた人々から「スネーク!コール」を浴びる。スネークサイコー!彼はさして勝ち誇った様でもなく、ただ時間を気にしてコートから去って行く。

 

お気に入りのシーンその5

【ハーシー(パム・グリア)らとパラグライダー】

そうでなくても見た目のインパクトが強いスネークやパム・グリアらが、コウモリの形をしたパラグライダーでクエボを攻めるシーンはかなりの迫力。ブシェミのへたくそな運転も良い。それにしてもクエボの車の上の人形は何とかならないものか?と思います。パムグリアのアクションが超カッコ良いです。

ヘリに乗り込む前に奪われたステルス・スーツを奪い返すスネーク・プリスケン最高!

 

 

お気に入りのシーンその6

【ホログラムで騙された仕返しをするスネーク】

冒頭の部分で大統領ら3人のホログラムに騙されたスネーク。彼らはガラス越しに隣の部屋にいた。全く人を馬鹿にした話だ。大統領は「この男で大丈夫か?」とマロイに聞く。

ロスから戻ったスネークは、大統領の一言であっさり銃撃されるが、びくともしない。取り返したホログラムで身を守るスネーク最高。彼女が「ホログラム!」と叫ぶシーンは痛快。

 

お気に入りのシーンその7

【スネークへのご褒美か?】

ラストシーン。たまたま落ちていた煙草を発見。何かに役立つだろうと言われたマッチが、ここで役に立つ。「人間に戻れたぜ」と言いながら、全文明が停止した地球上で悠々と一服するスネーク最高!

映画【レッド・ライト】ネタバレあり

レッド・ライト

原題:RED LIGHT/上映時間:113分/製作年:2012年

レッド・ライト [DVD]

【あらすじ】ネタバレあり

 科学者のマーガレットとトムは、あらゆる超常現象を科学的に解き明かし、超能力や霊能力を自称するペテン師たちの正体を暴いてきた。そんなある日、伝説の超能力者サイモン・シルバーが30年の沈黙を破り、復活を遂げる。トムはそのニュースに飛びつき、シルバーを調査すべきと主張するが、マーガレットは“彼は危険すぎる”とトムに自制を求める。実は、彼女は若い頃にテレビ番組でシルバーと対決し完敗した苦い過去があったのだ。そんなマーガレットの忠告を無視して単独でシルバーへと近づいていくトムだったが…。

映画 レッド・ライト - allcinema

  


映画『レッド・ライト』予告編

【感想】完全ネタバレ

予告がなんか面白そうだったので、鑑賞してみる事にしました。監督は『リミット』のロドリゴ・コルテス。「あの箱の中に閉じ込められて出れないヤツね!」と、ピンとくる方もいらっしゃるかと思います。

ロドリゴ・コルテス監督作品【リミット】の映画感想はこちら↓

analogchan.hatenablog.jp


 地味な印象の映画ですが、ロバート・デ・ニーロキリアン・マーフィー、シガニー・ウィーヴァー、トビー・ジョーンズなど結構豪華なキャストが出演しています。主演はキリアン・マーフィー。デニーロ演じるサイモン・シルバーのキャラが立ちすぎていて、キリアン・マーフィーがちょっと地味に見えるのが玉にキズですが。

 

『リミット』と比べると、あまりインパクトのない作品だったと思います。

続きを読む

映画【ターミナル】空港に住む羽目になった男

ターミナル

ターミナル (字幕版)

原題:THE TERMINAL/上映時間:129分/製作年:2004年

【あらすじ】ネタバレあり

ニューヨーク、JFK国際空港。この日、ビクター・ナボルスキーは、はるばる東ヨーロッパのクラコウジアという小国からある大事な約束を果たすためにやって来た。だが、いざ入国しようとした矢先、彼の国でクーデターが発生し、事実上国家が消滅してしまう。これによってパスポートが無効となった彼は、アメリカへの入国を拒否される。しかも情勢が安定するまでは帰国することもできず、空港内に完全に足止めされてしまう。英語も分からず通貨も持っていない彼は、やむを得ずこのターミナルの中で寝起きしながら事態が改善するのを待つのだったが…。

映画 ターミナル - allcinema

 


ターミナル - 予告編

【感想】ネタバレ全開

全体的に現実感のない映画である事は否めませんが、良い作品だったと思います。

主人公であるビクター・ナボルスキーは英語が話せないのにたった一人でアメリカへ行き、通訳もおらずしどろもどろ。

そもそも彼がすんなり空港を無事に出る事が出来たとして、あの語学力でジャズミュージシャンにサインを求める事が出来たかどうかも怪しいですね(笑)。しかし言葉が通じないのって、観ていてこんなにイライラするんだなと思いました。

 

そんな具合で映画が始まってしばらくは、イライラしっ放しでした。空港の税関国境保護局の職員は不親切で、ビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)との会話は全くかみ合わない。少なくとも彼の国ではとんでもない事が起こっている訳ですから、もう少し丁寧に説明すべきだと思います。通訳を呼んで複雑な事情をきちんと彼に伝えるとか。事情も分からないままパスポートを取り上げられた挙句、ポケベルとテレカ、食事券をポンと渡されて空港に放り出されるビクター・ナボルスキー。これはあんまりだと思いました。ナボルスキーは、具体的な事情が分からないまま、空港のテレビのモニターで自国の事情を見てしまって、そりゃもう大パニックですよ。

 

そんな時に限って人々は皆不親切で、主人公はドジを踏んでばかり。周囲の冷たすぎる人々には、悪意すら感じます。これはまたスピルバーグの意地悪描写が始まったな、という感じです。彼一人が空港で立ずさんでいて、周囲の人は皆自分の目的の方向にさっさと歩いているカットが印象的です。

 

物語が面白くなりはじめ、安心して観る事が出来る様になったのは、ナボルスキが散らかったカートを元の位置に戻す事で、25セント稼ぐ事が出来るのを知った頃から。それで、何とかやっとバーガーを買って生活していける様になります。更に入国審査官トレース(ゾーイ・サルダナ)に惚れた男が、彼女に毎日会う機会のあるナボルスキーに頼み事をします。ギブ&テイクの関係が築ける協力者が現れた事で、彼はようやく日々の食事にありつける様に。

 

ナボルスキートレースに毎日近づいて行き、あれこれ質問するのを見るのは楽しかったです。またナボルスキーの方にもお目当ての女性(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が出来、空港に住む事がちょっとだけ楽しくなってきた様子。キャビンアテンダントの彼女は39歳という設定ですが、全然そう見えない(汗)。

 

更にどういう訳かペンキを塗るのが得意だった彼は建設業にスカウトされ、ちゃんとした仕事にありつく事が出来る様に。次第に空港で働く人々と親しくなっていくナボルスキー。

 

物語の終盤ナボルスキーは、ニューヨークへ出向く事が出来る様に。最初はあんなに冷たかった空港の人々から温かい支援を受けて、やっと目的を果たす事が出来るナボルスキー彼が空港を出た直後のイジワル保護局長の中途半端な態度がこれまた、イマイチ良く理解出来ませんでした。

 

想像していた映画とは違っていましたが、さすがはスピルバーグ。中だるみをしたりだらだらと感じるシーンは少なく、なんだかんだ言っても130分はあっという間でした。

 

この作品は、フランスのシャルル・ド・ゴール空港で18年間過ごす事になったメフラーン・ナーセリーさんの実話からインスピレーションを得て制作されたと言われています。

 

さてこの映画に出て来るJFK空港内は、驚く事に全てセットです。なぜこの様な巨大なセットが制作されたのかというと、当時空港で撮影許可が下りなかったからの様です。更に主人公の国であるクラコウジアも、架空の国です。ビクター・ナボルスキーが喋っているクラコウジア語はトム・ハンクスがただデタラメに言っているだけだそうです。なるほど、何処かリアリティがなく、それが面白い感じになっているのは、そのせいかなと思いました。それにしても、とても良く出来た素晴らしいセットです。歩いている人も全部エキストラって事ですね。エスカレーターも、ショップも全部セット。31アイスや日本の吉野家も出て来ます。まるで本物の空港です。更にエンドクレジットも凝っていて、最後まで退屈させない作りになっているなと思いました。

 

 

トータル・リコール(2012)【ネタバレあり】

トータル・リコール(2012)

トータル・リコール 劇場版 (字幕版)

原題:Total Recall/上映時間:118分/製作年:2012年

 

【あらすじ】ネタバレあり

舞台は戦争が終わった後の退廃した近未来。貧富の差は激しくなり、二極化が進んでいました。裕福な人々の住むブリテン連邦と、貧困層が住むコロニーとは地球の丁度真裏側に位置しており、それ以外の場所に住む事は、ほぼ不可能に等しい状態でした。ブリテン連邦とコロニーは、巨大な高速エレベーターで結ばれています。コロニーに住む貧しい人々は、毎日このエレベーターに乗り込んでは、ブリテン連邦での仕事にありつくのでした。ダグラス・クエイドもそんな中の一人。日々悪夢にうなされ眠れないダグラスは、巷で人気のリコール社の人工記憶を試してみる事に。しかし予測できなかった事態が発生。突如警察が現れて、次々と彼に襲いかかります。

 


映画『トータル・リコール』予告編

【感想】完全ネタバレ

1990年のバーホーベン版は、高校時代に劇場で鑑賞しました。あまりの映像表現の特異さに、何と言ったら良いか分からなかった記憶があります。バーホーベン版はグロ描写もすごいですが、視覚効果も大変優れていて遊び心のあるシーンがたくさん出て来ます。

 

そのリメイク版である『トータル・リコール(2012)』は、旧作と比較するとやや物足りない気もしますが、私個人としては結構楽しめました。まるでブレードランナーの様なディストピア表現や、地球の両極端をつなぐ巨大エレベーターなどアッと驚く映像表現がてんこもり。これでもか、これでもかとド派手なアクションを見せてくれるので、全く退屈する事がありませんでした。

 

原作はフィリップ・K・ディックSF小説である「追憶売ります」。監督は『ダイ・ハード4.0』のレン・ワイズマンダイ・ハード4.0』はおやっ?と思いましたが、本作は期待以上でしたよ。

 

貧困層の人々は、コロニーと言う所に住んでいるのですが、この人達の住んでいる家が、何と言うか廃墟を改造した妙に薄暗い所に住んでいて『ブレードランナー』(フィリップ・K・ディック原作)を思い出しました。また退廃した薄暗い都市なのに、ところどころが妙に近代的みたいな世界観を鑑賞出来るのも、この類の映画を観る魅力の1つです。1990年版ではダグが火星に住んでいたという設定ですが、2012年版に火星は出てきません。その代りブリテン連邦とコロニーを行き来する風な設定になっています。

 

個人的に好きなシーンは、初めて主人公ダグラス・クエイドがリコール社を訪ねてから、スパイになる夢を注文するシーン。憧れのスパイの夢を見せてもらう筈が実は本当にスパイだった・・・(笑)ゆえにめっちゃ強いです。そのめっちゃ強い自分にビビるダグラス。動揺してはいるものの、アクションはキレキレで超カッコイイです。

 

またフォールという、地球の真裏へ行けるエレベーターが凄い!乗る時には遊園地の絶叫マシーンの被るベルトみたいなのが自動で降りてきて、なんか大袈裟で良いなあと思いました。またこの巨大エレベーターに、シンセティックというロボット警官(トルーパー似)が大量に乗り込むシーン。こういうのは、だから何なのと言われてしまえばそれまでですが、単純にワクワクします。

 

主人公ダグは結婚していて、一見優しそうな奥さんと貧しいながらに幸せな生活をしています。しかしこれが偽装結婚だった。トータル・リコール社から訳が分からないまま安心出来る自宅に逃げ込んだ筈が、逆に嫁に殺されそうになる展開ですが、ダグ×ローリーのすざましい争いは結構迫力があります。実は鬼嫁だったローリー(ケイト・ベッキンセール)は、「私があんたみたいなのと結婚する訳ないじゃない!」みたいな事を言って、結構カチンときました。


映画『トータル・リコール』鬼嫁シーン

この鬼嫁が後半は特に凄くてホラー映画かと思う程。ダグが二重スパイだからとか何とか言う以前に、男を取られた女の嫉妬にしか見えません。しつこくて怖いです。トータル・リコール(2012)』は、ケイト・ベッキンセールの鬼嫁ぶりを楽しむ映画と言っても過言ではないでしょう。

 

それにしても本作を鑑賞する上での最も関心があったのは、やはりラスト、椅子に座っているダグが目覚めるシーンの事。このシーンが存在する事で、1990年のバーホーベン版よりも、何処までが夢で何処までが現実なのか?を考えずにはいられなくなりました。「あそこで一度目が覚めてローリーが生きていると言う事はどういう事なのか?」「諜報員になった夢を見ている間に、フォールが破壊されたって事?」(笑)など様々な疑問が生じてきてスッキリしないです。

そういう意味ではバーホーベンのトータルリコールのオチの解釈の方が、分かりやすかったです。またその事を深く考える映画ではないなとも思いました。ただ2012年版に関してはその事がどうも引っかかったので、ディレクターズカット版も観てみる事にしました。

 

劇場公開版とディレクターズカット版の相違点

【ディレクターズカット版】を観れば何かヒントが得られるのではないかと思い鑑賞してみましたが、残念ながらラストシーンの謎は解けないまま。私はリコール社の看板に何か違いがあるのではないか?とにらんでいたのですが、私が確認できる限りでは残念ながら全て【REKALL】で統一されていました。ただディレクターズカット版の方には最後鬼嫁を倒し、メリーナとダグ(ハウザー)が会話するシーンで、タトゥが消えている(リコール社で右腕に入れられた)という描写がありました。この事から夢だったとも考えられますが、一体どこからどこまでが?と問われると???です。

【これ以外の相違点】

・冒頭部分で6週間前に起こったテロのニュースがチラッと映る。容疑者はカール・ハウザー

劇場版→容疑者の顔が画面に映らない。

ディレクターズカット版→ハウザーの顔が映る。

 

・手に埋め込まれた携帯にハモンドから電話がかかってくるシーン。(ガラスに手を押しつけて話すシーン)

劇場版→ダグが「俺は誰なのか?」と聞いても答えは無し。

ディレクターズカット版→「俺は誰なのか?」と尋ねると「ヘンリー」という答えが返ってくる。

 

・ダグが自分が過去に住んでいた住居でピアノを弾くシーン

劇場版→目の前に現れたホログラムの顔はコリン・ファレル

ディレクターズカット版→目の前に現れたホログラムの顔がイーサン・ホーク

 

・マサイアスが殺されるシーン

劇場版→メリーナはマサイアスの部下という設定表現。

ディレクターズカット版→メリーナはマサイアスの娘という設定表現。

 

などの違いがありました。他にも見逃している部分があるかも知れませんが、ざっと見た限りではこんな感じです。印象としては、そんなに変わらないです。でもラストのタトゥだけはやはり気になりますね。『ルビンの壺』の様に、見方によって顔に見えたり、花瓶に見えたりするという解釈の仕方もあるなと思いました。