アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

個人情報ダダ漏れ映画【トゥルーマン・ショー】映画感想

トゥルーマン・ショー (字幕版)

 

原題:The Truman Show/上映時間:103分/製作年:1998年

監督:ピーター・ウィアー

脚本:アンドリュー・ニコル

出演:ジム・キャリーエド・ハリスローラ・リニーノア・エメリッヒナターシャ・マケルホーン

1998年公開の作品です。本作品を未見の方は、このレビューを読む前に鑑賞される事をおすすめします。また大体どの様なあらすじの映画かも知らないという、そんなラッキーな方は前情報を全く入れずに鑑賞された方が良いのではと思います。

 

 

 

トゥルーマン・ショー【あらすじ】完全ネタバレ

 主人公のトゥルーマンは、保険会社に勤めるサラリーマン。美人の妻を持ち、周囲との人間関係も良好。よって彼は一見、平凡だが幸せそうな生活を送っている。

 

しかしこの町の人達は、不自然な程笑顔が絶えず常に何かに気を取られている様だ。その日の朝トゥルーマンが出勤しようとすると、空からライトが降ってきた。ライトにはシリウスと、星の名前が書いてある。なんだこれは・・・トゥルーマンは一瞬そのライトを見つめる。

 

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 画像引用:https://blogs.yahoo.co.jp/p65_3_fairy/46179643.html

 

トゥルーマンには幼い頃大嵐で父親を失った経験があった。引き返すと言った父親に、ボートを進める様にせがんだ事を今も後悔している。よってトゥルーマンは、極度の水恐怖症でありそれが故にこの島(シーヘヴン)から一度も出た事が無い。

 

ところがある日トゥルーマンは出勤中に、父親そっくりのホームレスの男に出会う。しかしその男はすぐさま突然現れた何者かによって、バスに連れ込まれた。彼もバスに乗り込もうとしたが、まるで悪意があるかの様に乗せてくれない。

 

そこでトゥルーマンは初めて、自分の身の回りの環境を疑い始める。何かが変だ・・・。そんな折妻のメリルと口論になってしまうが、妻はいきなりココアの話をし始める。「正気か?俺がこんなに怒っているのに!」トゥルーマンがキレ始めると、そこに絶妙なタイミングで親友のマーロンがビールを持ってやって来た。

 

やっぱり、何かが変だ。実の所トゥルーマンアメリカのとある島に住んでいると思っていたが、それすら嘘だった。トゥルーマンや周囲の人々は、巨大なドーム型のセットの中に住んでいる。彼は生まれた時から、現在までの私生活が世界中のテレビで生中継されており、それを知らないのはトゥルーマンだけ。個人情報はダダ漏れ、鏡に向かって話しかけているのも全てカメラに収められていた。

 

彼は島からの脱出を図ろうと決心する。しかしこの番組のプロデューサー・クリストフは、それを許さない。

 

トゥルーマン・ショー【感想】完全ネタバレ

子供の頃に、この世の中は本当に存在するのだろうか?などその手の事に疑問を持ち、夜眠れなくなった人は特に共感を得やすい作品なのではと思います。

 

脚本は、『ガタカ』の監督のアンドリュー・ニコル。また本作品はフィリップ・K・ディックの『時は乱れて』からも、インスピレーションを得ている様です。ディック原作で映画化されたものと言えばブレードランナートータル・リコールなどが有名ですが、アジャストメントという珍作があり(笑)、その映画をちょうど思い出した所でした。あれはあれで、嫌いではないです。ドラえもんどこでもドアの様なものが、劇中にたくさん出てきます。

 

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トゥルーマン・ショーの主演は『マスク』などで人気のコメディ俳優ジム・キャリー。監督は『いまを生きる』などのピーター・ウィアーです。

 

不自然な程、笑顔が絶えない町

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画像引用:http://wallpapers.brothersoft.com/the-truman-show-66761.html

最初の内はこの町の雰囲気どころか、トゥルーマンにすら好感が持てませんでした。一見ご機嫌で、いい調子の町の人気者。しかし何処か観ていて不愉快になる。しかし彼の父親の出現シーンで、初めてトゥルーマンは生き生きとした表情を見せました。彼は真実を知る手がかりを見つけたのです。さすがジム・キャリー、演技上手いなと思いました。この番組の中で真顔を見せる人物は少なく(本人、トゥルーマンの父親、シルビア)、皆どんな時もヘラヘラと営業スマイルをキープしているのが印象的です。そして物も町も何もかもが、おもちゃの様。ゴミ1つなくとても綺麗な町なのに、好きになれないのはなぜだろう。この疑問に対しての答えが後半になって徐々に判明していきます。またこの町自体がまるで、プラスティックの様に安っぽいです。

 

与えられる娯楽のみを、安易に受け入れる事の危うさ

テレビなどの娯楽が全て良くないと言っている訳でなく、安易に手に入る楽しさというのは、それ相応の価値しかないのではないかと。本当に楽しい事というのは、いつもかつも楽ではないと思うのです。何となく流行の物だけを追いかけて、与えられたおもちゃでしか遊ばないとなると、そのおもちゃを与える者にすっかりコントロールされる様になってしまう。他人の生活をテレビでだらだらと覗き見するのが、本当に楽しい事なのか?この映画の中の視聴者全員が、己の心に問うべきだった。視聴者はクリストフが如何に極悪であろうと、彼の作りだしたエンターテイメントなしでは生きて行けない。よって皆が何となく、クリストフの共犯者となってしまった訳です。

 

何から何まで全てセットだった

トゥルーマンは、全く現実を生きていませんでした。周囲の人々は全て役者であり、皆で彼を騙していたに過ぎません。酷い話です。生まれた時から世界220か国にプライベートな生活を公開されており、個人情報はダダ漏れ。彼は確かに世界中にファンがいるスターですが、バカにされていると言っても過言ではないでしょう。唯一親身になってくれたのは、学生時代に好きだったシルビアという女性。彼女は彼に真実を伝えようとしますが、逆に精神的に病んでいる人という役に変更され、彼女の真実の言葉は闇に葬られてしまいます。

 

徐々に分かってくるこの町の実体

トゥルーマンの置かれている環境、即ち周囲の人物は全て役者であり、彼は24時間テレビのモニターにさらされているという事。そしてトゥルーマンが逃げようとしても、大人数で彼を抑圧し逃がさない様にあの手この手と仕掛けます。気付いていなかったが、これまでもずっとそうだった・・・。腹立たしい気分になりますが、我慢して観ているとトゥルーマンが予想外の行動に出て逆転していくので気分が良いです。

 

また仕事もそっちのけでTVを観ている怠惰な視聴者とは対照的に、テレビの為にここまでするかという気合の入ったセット、役者、番組制作スタッフ。彼らは不真面目なのではなく、相当に本気。怖いですが、良く出来ているなと思います。妻メリル役のハンナは、どんな時もここで新商品の宣伝をしなければ、と必死なのです。だからココアの宣伝を、無理やりにでも挿し込んでしまう。

 

また親友役のマーロンは、トゥルーマンが何かイレギュラーな行動をとる度に、ビールを片手に彼の家まで行かなければなりません。ほぼ24時間体制という過酷な労働条件にもめげず、ビールの銘柄をカメラに見せる事も忘れない。

 

この番組はそうやって消費者を一見目新しい商品に次々と飛びつかせ、文化とは程遠い生活を強いていく訳です。

 

番組の随所に商品の宣伝が刷り込まれている

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画像引用:https://blogs.stlawu.edu/groupfive/2016/09/05/media-literacy-and-the-truman-show-1998/

番組の中にさりげなく新商品を出し、視聴者に宣伝する。こういうのをプロダクト・プレイスメントと言うらしいです。よく耳にするのが映画の主人公のしている腕時計とか、登場人物の背後にある看板などです。よって我々がもしこのココアを見つけても、トゥルーマン・ショーのココアだ!と思わず買ってしまわない様に、気を付けなければいけません(笑)。

 

また同じ購買意欲を煽られるのであっても、誰に、または何にお金を使うかだけは自分で選びたいと思っています。

 

TVの影響は大きいと思う。無意識に目に入るものを何となく購入していたのでは、いくらおこづかいがあっても足りないでしょう。

 

バレンタインやハローウィンで無闇やたらと、パーティーグッズやチョコレートを買い込む必要があるのだろうか。また焦る気持ちを煽る様なダイエット食品の広告や、絶対二重瞼の方が良いと言わんばかりの写真。痩せている方が良いというのは、一体誰の価値観なのだろうと。私は結構痩せ型なのでダイエットとは無縁ですが、男性は果たして痩せている女性の方が良いのですかね。そんな事を思ったりします。

 

大衆の怖さも描かれている

1人の孤児の生活情報が、生まれた時から垂れ流し。この事実を批判する視聴者はごく少数で、皆人気番組「トゥルーマン・ショー」に夢中なのです。みんなですれば怖くない、みんなも観ているから大丈夫。そもそもこんな番組が放送されている事に対して、大した疑問も持っていなかった。しかしトゥルーマンが島から逃げ出すとなると、今度は彼に感情移入をし涙を流したり、歓声を上げたりなどというご都合主義な鑑賞の仕方。更に映画のラストでは、トゥルーマン・ショーの後に続く番組を、ガイドでチェックまでしています。

 

 

現実だと思っていた世界の外側に、本当の世界があるという構造

劇中のトゥルーマンの世界は一見特殊な様ですが、私達は既にこれに似た様な経験をしているのではないかと思います。例えばブラックな職場や、学校、望んでいないコミュニティなど閉鎖された環境に置かれた場合。これはあくまで個人的な見解ですが、外に出てみると全く違った世界があるのに、知ろうとしなければいつまでも箱部屋に閉じ込められたままだと思うのです。またこの様なケースの場合、箱部屋内の人達のアドバイスはあてにならない事も少なくない。彼らはクリストフやその周りにいる役者と同じで、自分達の利益の事しか考えていない可能性も充分あります。上司の「君の為を思って言っている」なんて言葉をあっさりと信用するのではなく、己のシルビアを見つける事をお薦めします。

 

 

 

トゥルーマン尊いのは、こんな嫌がらせをした皆に対して、「おはよう!そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!おやすみ!」というお決まりセリフで決着をつけスマートに番組から去る所。昔のテレビ番組元祖どっきりカメラで、たまに騙された芸能人がマジ切れしたりしていましたが、状況によってはそうもなるだろうなと。そう思えばトゥルーマンは、相当に大らかな人物ですね。

 

また周囲の人が皆演技をしていたという映画では、デヴィッド・フィンチャーの『ゲーム』などもありました。結構、心温まるエンディングです。

 

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