アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

タイムシャッフル【映画感想】若者らの煩悩が暴走*ネタバレあり

タイムシャッフル

原題:Time Lapse/上映時間:104分/製作年:2014年

タイムシャッフル(字幕版)

監督:ブラッドリー・キング

脚本:ブラッドリー・キング、B・P・クーパー

出演:ダニエル・パナベイカー、マット・オリアリー、ジョージ・フィン、アミン・ジョセフ、ジェイソン・スピサック、シャロン・モーン

 

地味~な感じの時間を題材にしたSF作品が結構好きです。例えばプライマーのような...。昨年観た『グラビティ 繰り返される宇宙』や『パスト&フューチャー 未来への警告』なども良かったです。

グラビティ 繰り返される宇宙(字幕版)

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  • 発売日: 2019/06/01
  • メディア: Prime Video
 
パスト&フューチャー 未来への警告(字幕版)

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  • 発売日: 2019/02/02
  • メディア: Prime Video
 

 今回ご紹介する『タイムシャッフル』も、GYAOで5/31まで無料配信されているのでもっと早くアップしたかったのですが、すいません。未見で興味のある方はぜひ。

※このレビューは1960年代ごろのアメリカのドラマシリーズ、トワイライト・ゾーンのワンエピソード『奇妙なカメラ』についてもかなり触れています。ネタバレにご注意ください。

 

 映画【タイムシャッフル】の主な登場人物はダメダメな若者3人

本作品の主な登場人物は、ルームシェアをして暮らしているダメな若者3人組です。以下をご参照ください。それ以外の人物も5人ぐらいしか出てきません。

 

フィン(演:マット・オリアリー)

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

この物語の主人公。画家志望の若者ですが、最近はスランプでほとんど描いていない。大家の代わりに住宅地の管理人をして、アルバイト代をもらい生計を立てています。キャリーと付き合っているが、絵のことばかり考えているので、彼女は不満げ。絵描きのくせに、未来の写真を手掛かりに描画をするというズルを連日繰り返しては、以前より機嫌が良くなるという始末。何が楽しいのかさっぱり分からない人。でも真面目そうな人物です。

キャリー(演:ダニエル・パナベイカー

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

フィンの恋人。未来を予知するカメラを見つけるまでは、パートに出て働いていました。つれないフィンを愛し一見けなげに見えますが、実は超身勝手な女だったと判明。物語序盤では、警備員ジョーの服装がダサいと言ったのが本人に丸聞こえでした。ラストでは意外な仕打ちが待っていて、「他人の服装を安易に貶しちゃいかんなぁ」との教訓にも。

ジャスパー(演:ジョージ・フィン)

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

この人がややこしいのは、本名がジョージ・フィンという名前であること。しかし役名はジャスパーなのですよ。劇中ではフィンの友人であるという...(笑)。おそらく居候状態で、仕事をしている気配はない。3人で管理人代理をしていることになっているが、彼が管理人らしいことをしている様子はなかったです。酒やドラッグをやりながら、ドッグレースで一攫千金を目指している怠惰な若者。カッとなりやすく、ちょっとしたことですぐにキレる。

警備員ジョー(演:アミン・ジョセフ)

この物語の中で一番まともであり、善良そうな人物です。要、要に登場しある意味、キーパーソン的な存在。最初は警備員として登場しますが、物語中盤で警察官になることが出来たとフィンに知らせにきます。「何かあったら連絡を...」と、フィンに連絡先を教えました。

 

 タイムシャッフルのあらすじ【完全ネタバレ】

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

ルームシェアをして暮らすフィン、キャリー、ジャスパー。ある日大家からの電話で「向かいの家のベゼリデスの家賃が遅れているから見に行って欲しい」と言われ、キャリーが訪ねます。しかしベゼリデスという科学者は不在で、そこには大量の写真が貼られていました。どうやら、ちょうど真向かいにある3人の住む家が盗撮されている様子なのです。部屋の中には何と奇妙なカメラが...。その後、それは未来を写し出すカメラだと分かります。

 

科学者は?と言うと、何と倉庫で死んでいました。3人が彼の日記を手掛かりに推理すると、未来を変えようとしたから死んだのだという結論に...。真面目なフィンはこのことを警察に通報すべきだと言いますが、他の2人はそれに反対。写真は毎日午後8時に出てきていることから、夜の8時にタイマーがセットされていることが判明しました。そこで3人は、未来の写真と同じポーズを毎日取るように心がけます。

 

更にジャスパーはこのカメラを使い、ドッグレースで大儲けすることを思い付きます。フィンは未来の写真を頼りにキャンバスに絵を描き、スランプから脱出。しかしドッグレースの主催者であるアイヴァンが、このところずっと調子づいているジャスパーに目をつけました。そして、このカメラの存在に気づかれてしまいます。一時期はアイヴァンにカメラを独占されそうになりますが、脅された恐怖もありジャスパーはアイヴァンとそのボディーガードを殺害。

 

3人はもう後戻りできないところまで来てしまいました。そんな時、死んだ科学者の同僚である女性博士が、訪ねてきます。彼女はしばらく前に科学者からこれが送られてきたのだと言い、1枚の写真を見せました。その写真にはフィン宅が写っていました。キャンバスにはかなりテキトーな感じで、緑色のコイルの絵が描かれています。窓ガラスには血痕、その後ろには科学者の黒い帽子が写っていました。

 

科学者はこの写真を2週間ほど前に見て、自分の帽子がフィン宅にあることや血痕を恐れたのでしょう。早合点をして、倉庫内で事故死してしまったのだと分かりました。画家であるフィンは、自分がまだこの絵を描いていないことから、この写真が未来のものだと察します。そんな話をしている時、ジャスパーはいきなり女性博士を殺害してしまいました。

 

その後もジャスパーの横行は続きます。遂には同居人であるフィンをも倉庫に拘束し、殺害しようと考えるのです。理由はフィンがキャリーを連れて、町を出ようとしていることに気付いたから。間一髪のところで脱出したフィンは、カメラを壊すぞとジャスパーを脅し、反撃しますが...。

 


「タイムシャッフル」予告

 タイムシャッフルの感想【完全ネタバレ】

率直な感想としましては、意外などんでん返しのあるサスペンス劇として秀逸。おそらく低予算で撮られているだろうし、ワンシチュエーションで2時間近くあるのにもかかわらず、退屈させられませんでした。時折向かいの科学者の家に行くのですが、それ以外はほぼ3人の家の中だけで進行していきます。キャスティングもシンプルで、好感が持てました。

 

1960年代のトワイライト・ゾーンのワンエピソードに酷似

筋書きはトワイライト・ゾーンの『奇妙なカメラ』に似た物であるとの情報を得たので、『奇妙なカメラ』を観てみたら、こちらの方が圧倒的に面白かったっていう(笑)。トワイライト・ゾーンは1959年から1960年代にかけてアメリカで放送されたドラマシリーズですが、このエピソードはヒッチコック劇場なんかにも似ています。

日本では『未知の世界』や『ミステリー・ゾーン』のタイトルで、1960年代に放送されていたようですね。若かりし頃の自分がレンタルビデオ屋で借りて必死に観ていたのは、リメイクの方だったのかな?とにかく、これからインスピレーションを得たのではないか?と思うほど骨組みが似ています。

トワイライト・ゾーン『奇妙なカメラ』の主なあらすじ

主な登場人物は3人(男2人+女1人)。舞台はホテルの一室。男女のカップルが骨董品を盗み金儲けをしようとしたところ、売り物にならないガラクタばかりで男がキレる。しかしその中に、未来を撮影できるカメラが紛れ込んでいた...という内容です。そこへ刑務所から脱獄してきた女の弟が現れ、3人はこれを競馬場に持ち込み大儲け。しかしその後ホテルに戻った時、このカメラにはフィルムが10枚しか入っていないことが判明。それを指摘したのはホテルマンで、彼は3人が急に大金持ちになったことを知っていた。そして皮肉な結末へと向かっていきます...。

 

『タイムシャッフル』のキャスティングは『奇妙なカメラ』のキャスト構成にそっくりそのまま追加したスタイル

奇妙なカメラの登場人物          タイムシャッフルの登場人物

■ 男                   ■ フィン 

■ 女                   ■ キャリー

■ 女の弟                 ■ ジャスパー

■ ホテルマン               ■ 警備員ジョー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                     向かいの家の科学者(ベゼリデス)

                     科学者の同僚(ハイデッカー博士)

                     胴元(アイヴァン)

                     胴元のボディガード(マーカス)

 

要約すれば、キャリーが浮気を隠したかっただけの話

エンディング付近では、本当は夜の8時だけでなく朝の8時にも写真が出てきていたことが分かります。キャリーは過去にジャスパーとも性的関係を持っており、この都合の悪い事情をフィンに隠す為に朝8時にも写真が現像されることを黙っていた。博士宅の写真がところどころ歯抜けになっていたのはキャリーの仕業だった訳ですが、この事実を知った恋人のフィンがドン引きします。もうお前を信用出来ないという目。

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

 

キャリーは朝8時に1人で窓際に立ち、貼り紙をして1日後のメッセージを送っては浮気の証拠隠しを調整し、フィンの恋愛感情もコントロールしていたのです。恐ろしい女ですが、これがどんでん返しとしては面白い。

 

キャリーがはじめて博士宅に足を踏み入れた時ショックだったのは、自分の浮気場面が写真に収められていたことだったのでしょう。これは何としてでも隠さねばと...。またこの時点でキャリーは、未来の写真に写った自分から「HIDE LAST WEEK'S DAYTIME PHOTOS(先週の昼の写真を隠して!)」というメッセージを受け取っています。

 

そこでキャリーは早い段階で「この1週間は夜だけ撮ったのかも」と言い、さらっと他2名に嘘をつきました。これ以降キャリーは、朝8時に写真が現像されることをフィンやジャスパーに隠し続けていた訳です。また観客である私も同様にだまされていました。

 

更にキャリーは終盤で、フィンを安易に殺害し、写真にメッセージを残すことでこれを帳消しにしようとしますしかし、何とその時に警察官ジョーが現れるというアクシデントが!よって、フィンを生き返らせることが不可能となってしまったのです。

 

 

「窓際で見つからない(Don't GET CAuGHT AT WINDOW)」という曖昧なメッセージは、何を意味しているのか?

 

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

物語のラストにキャリーは「Don't GET CAuGHT AT WINDOW」というメッセージを窓に張り、1日後の自分に伝えようとします。字幕では「窓際で見つからない」というやや曖昧な言葉となっていますが、要は「窓際で見つからない(でね...)」か「窓際で逮捕されるな!」ということなのでしょう。最初の内これは、警察官になったジョーが現れることを、自分自身に知らせようとしているのだと解釈しました。

 

しかしフィンに隠し事がバレたのが窓際であることから、「フィンに見つかるな!」という解釈もできます。"Get caught"とは、逮捕される、バレる、見つかる、捕まるなどのさまざまな意味があるようなので、どちらか(フィンに見つかるな OR ジョーにつかまるな)は話の筋から理解するしかありません(汗)

 

よくよく考えてみると「窓際で見つからない」というメッセージは、警察官ジョーが現れる前に用意されたものなので「ジョーに逮捕されるな!」という意味ではつじつまが合いません。更に警察官ジョーが現れた時午前8時の撮影は既に終わってしまっているので(フィンに目撃された撮影)、キャリーが用意していたのは夜用の貼り紙だったと考えられます。

 

よって「フィンに見つかるな」というメッセージではないかと考えました。警察官になったジョーがフィンから連絡を受けたのは、フィンがキャリーの秘密を知るより(午前8時にも撮影できる)も、もっと前です。このことはフィンがキャリーを連れて町を出るつもりだったことから、推理できます。

 

ということは、窓際でフィンに見つからなかったとしてもジョーはいずれやってくる運命なのですよね。フィンに窓際で見つからなかった場合、2人はラブラブで町を出ているはずなので、コイルの絵が描かれた部屋にテープが張られた写真が未来ということになるのかなと。この写真には、窓ガラスに血痕が付いていません。

 

しかし午前8時になりキャリーが新しい写真を撮影しているところを、フィンに見つかってしまったので、やはり科学者の持っていた写真の通りの悲劇になってしまった訳です。即ち運命を変えることが出来なかった。ガラス窓に着いた血痕は、キャリーがフィンを殺害した時のものと思われます。

 

しかしいずれにしても逮捕され拘束された身では、未来の写真の現像を確認できませんから意味がないですね。その上紙が剥がれ落ちてしまいますので、1日後のキャリーがこれに対処するチャンスもなくなってしまった。張り紙はしっかりと貼らないと!キャリーもどこか抜けています(笑)

 

 『奇妙なカメラ』との相違点

奇妙なカメラは、未来を写し出すカメラを巡って人々の欲望が露わになり、悲劇的な結末を迎えるというシンプルなストーリー構成が魅力です。

 

 何となく釈然としないなと思ったのは、『タイムシャッフル』ルールは、『奇妙なカメラ』よりもやや複雑だからです。例えば『奇妙なカメラ』の場合30分弱のドラマなので、細かい設定がなくカメラも持ち運びができます。単純に今撮った景色の5分とか10分後とかが写真として現像されるイメージです。だから競馬で大儲けをする際も、競馬場へ行き掲示版を写せば良い。登場人物らの過去や未来については考えなくて良いわけです。

 

これに対して『タイムシャッフル』の場合、

・カメラの位置が博士宅と固定されている

・タイマー設定の為、決まった時間にしか撮影されない

 

これらの縛りがあるために、直接レース場に行って掲示板を写し、未来を予測するというシンプルな方法は使えない訳です。よって1日先の自分達からのメッセージをあてにするしかない訳で、本当の本当を言えば、未来のキャリーやジャスパーがメッセージを必ず送ってくるとは限らないわけですよね。また今日の自分が1日後の自分にメッセージを送ったとしても、それを我々はどうやって確認すれば良いのでしょう。

 

何かそこら辺のことがよく分からないな、と思いました。

 

仮にパラレルワールドのようにフィンら3人の世界が1日ごとに存在するとしても、だったら私達鑑賞者は、どの時空の3人をメインに追って観ていけばよいのでしょうか?そこら辺が非常に曖昧で、もやもやするのです。またラストのキャリーの失態から分かるように、1日前の自分にメッセージを送ったとしても、現在の自分が連行され写真を観ることが出来なければ、意味がないのでは?とも思います。

 

う~ん、よく考えてあるのに何だかちょっとだけ惜しい作品。でも全体的にはかなり満足です。ちなみにラスト間際、窓際でいざこざが起こるのは『奇跡のカメラ』と同じではないか!と。オチは違っていますが、どちらも窓際でハプニングが起こるあたりが面白いと思いました。オマージュと言っても過言ではない気がします。

 

 

 

タイムシャッフル(字幕版)

タイムシャッフル(字幕版)

  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: Prime Video
 
タイムシャッフル

タイムシャッフル

  • メディア: Prime Video