アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

宇宙人の妙なしきたりにパンクで抵抗【パーティで女の子に話しかけるには】映画感想

パーティで女の子に話しかけるには

原題:How to Talk to Girls at Parties/上映時間:102分/製作年:2017年

パーティで女の子に話しかけるには(字幕版)

監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル

原作:ニール・ゲイマン

脚本:ジョン・キャメロン・ミッチェル、フィリッパ・ゴズレット

出演:エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン

 

不況になるとパンクが流行る気がします。不況になると人々の機嫌が悪くなるからです。そんな時パンクを聴くと気分がスカッとするから、パンクを聴く人が増えます。そうするとスカル模様のTシャツやアクセ、タータンチェックが流行ります(単なる勘)。しかし同じような柄のチェックなのに、ジョージ・ルーカスが着ると、なぜあんなにネルシャツ感が出るのですかね?なぞです。

 

 パーティで女の子に話しかけるには【登場人物】

エン(演:アレックス・シャープ)

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 画像引用元:https://www.facebook.com/HTTTGAP/

 パンクが大好きな高校生の男の子。親友らとパンク系同人誌も刊行している。父親に捨てられたという悲しい過去を持ちながら、物腰が柔らかくやや気弱な感じのティーンエイジャー。隠れ家には、自身が描いたイラストが所狭しと貼ってある。親友2人とライブハウスに出向くがからかわれ、ボディシーアからもなかなか相手にされない。

ザン(演:エル・ファニング

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 画像引用元:https://www.facebook.com/HTTTGAP/

パンクって何?とか言う不思議ちゃんかと思ったら、実は宇宙からの旅行客だった。パンク聴いたことないけれど、誰よりもパンクを必要としているし、理解できる。そんな女の子。

ボディシーア(演:ニコール・キッドマン

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 画像引用元:https://www.facebook.com/HTTTGAP/

大人の決めたルールなんてクソくらえ。街のパンクファンの中でもリーダー的な存在。

 パーティで女の子に話しかけるには【あらすじ】

1977年、ロンドン郊外。パンクが大好きなのに自分は内気で鬱屈した毎日を送る高校生エン。ある日、ライブの帰りに不思議なパーティに迷い込んだ彼は、そこで美少女のザンと出会う。規則だらけの生活にうんざりしていた彼女はエンが語るパンクに興味を持ち、パーティを抜け出し、エンと一緒に街へ繰り出す。そんな彼女の正体は、遠い惑星からやって来た異星人だった。そして彼女が地球にいられる時間は残りわずか48時間だったが…。

出典:映画 パーティで女の子に話しかけるには (2017)について 映画データベース - allcinema

 パーティで女の子に話しかけるには【感想】

これ、1年ぐらい前にようやく鑑賞しました。ずっと観たかったのですが、なかなか観る機会がなかったです。オープニングでダムドのなんとかって曲「New Rose」だったかな?が流れ、おぉ!ってなりました。

 


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主人公のエンはパンクに憧れるちょっと生ぬるい感じの高校生。一見パンク好きというよりは、「パンク好きなオレを見て、見て!」って感じ。恋に恋する女の子と同じですかね。一方ヒロインのザンは異星からいらっしゃっているので、「パンクって何?」とかトンチンカンなことを言うのですが、教わってもないのに自分の服をハサミでジョキジョキ切ったりして、実は彼女の方がパンク精神に溢れているのではないかと思ったり...。

 

ここで少し、パンクの思い出について。

私も若い頃は特にパンクにハマりました。ジャンルはスカ系のパンクか、アイリッシュパンクが多かったですね。それ以外では、ピストルズとかクラッシュとかも聴き、ランシドも聴き、ミクスチャーも好き、みたいな感じです。もちろん、今でも時々は聴いてますよ。でもある時から「自分は真のパンク好きなのか?」とか「結局これって"はしか"みたいなもんじゃない?」とか、考えるようになったのも事実です。

 

腹が減った時に食べるカップヌードルが死ぬほど美味いように

腹が立った時に聴くパンクロックは最高にカッコイイ

 

でもここで問題が出てきますね。パンクを聴いて快楽を得るには、終始不機嫌でなければならない。しかし自分は普段から気分にムラもなく、割といつも機嫌が良いのです。だから「ミルトン・バナナ・トリオ」とか、そういうのを聴いてるんですよ(笑)。パンクをMAXで聴いていたころは、残業代を一切支払わないような会社に勤めていましたから、何かすごくイライラしていた。あと世の中には、自分で抱えるべき困難を他者に丸投げしてくる連中とかいますよね。異様に依存心が強いというか...。

 

まあ、いずれにしても何らかの必然性があって、自分はパンクと出会ったのだと思います。

 

「何かむかつくんだよ!」「あんたが嫌いだ!」これらの腹の奥底の心の声を、すなわち真なる怒りを認めないと、だんだん卑屈な笑い方をする大人になっていくんじゃないのかなぁ。もちろん、怒りをまき散らして良いとは思っていません。あくまでこれは私の場合ですが、自分の中の真なる怒りを見極める作業の過程で、うるさい音楽を聴く行為がなぜか必要なんですね。単純に、逃げ場と言ってもいいかも知れません。

 

そして、私なりの結論。パンクを聴かなくて済む人生ならその方が良い。しかし、世の中がおかしいと思ったらすぐさまパンクを聴け!です。また怒りで気持ちが低迷した時、あの独特なサウンドがネガティブな感情を、ポジティブなエネルギーに変換してくれる過程が好きなのだと思いました。

 

本作品では、PTというリーダー的なあるいは親的な存在の宇宙人が、子供を食べると言っている。どう考えても、頭おかしい。だから、パンクが必要なんですね。

 

この映画の中のエンやザンも、過去や現在に対して苛立ちを感じている。まだ半分子供だけど「こんな事ってある?」とか「何かおかしくない?」とかじわじわ思ってる。そしてその感情がライブハウスのシーンで大ブレイ~ク!本作の中で、私はこのシーンが一番好きです。宇宙人の親が子を食べるというのは、何かの比喩ですかね?例えば政治家が国民を食い尽くすみたいな(笑)結構過激なストーリー&歌詞だと思います。

 


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本作品は基本的にボーイ・ミーツ・ガールものということになっていますが、何か色々とぶっ飛んでるな~と思いました。宇宙人の人達が、お揃いのコスチュームを着てファーストフード店か飲食店かに入るシーンとかも最高ですね。全員でオーダーするくせに、なぜか食べない(笑)。またこの人たちは基本、アメリカからの旅行客だと思われているのですが、だったらなぜ、ユニオンジャックのレインコートを着ているのですか?と問いたい。すごい、インパクトのある格好ですよ。

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画像引用元:https://gaga.ne.jp/girlsatparties

 

衣装を担当したのは衣裳デザイナーのサンディ・パウエル。これまでも、数多くの映画作品の衣装を手がけ『アビエイター』や『恋におちたシェイクスピア』などで、アカデミー衣裳デザイン賞を受賞しています。

 

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画像引用元:https://gaga.ne.jp/girlsatparties

 

この物語の時代が1977年である理由は諸説あるようです。原作者のニール・ゲイマンが17歳の時、1977年だったからだとおっしゃっている方もおられ、この説が有力ですね。ただ、「サザン・テレビジョン放送妨害事件」が起こったのが1977年だからという話もあるようで、信憑性はあまりないですが、こっちの方が面白いなと思ったりもしました。また、1977年というのは、単純にパンクの全盛期だったからとも考えられますね。

 

ザンのセリフ「あなたの世界は美しくもカラフルでもないけど、でも愛おしい世界ね」にグッときましたよ。ニコール・キッドマンがカッコ良かったです。では、また!

 

 

 

映画ーあらすじがややこしくて面倒くさいやつランダム10選

ご無沙汰しています。年始早々、手抜きの記事ですみません。本当に面白いんだけど、あらすじ書くのがちょっとなぁ(汗)な映画をご紹介します。

 

※適度にネタバレしています。ご了承ください。

メメント

原題:Memento/上映時間:113分/製作年:2000年

メメント (字幕版)

 書きたくないポイント

まぁ、これは言わずもがなですね。完全に逆回しではないので、その分余計に分かりづらいですよ!テネットの原型とも言えるでしょう。

 

クラウド アトラス

原題:Cloud Atlas/上映時間:172分/製作年:2012年

クラウド アトラス (字幕版)

 書きたくないポイント

1849年、1936年、1973年、2012年、2144年、2321年のそれぞれの物語がシンクロしあいながら、進んでいくという斬新なアイデアの作品です。とても魅力的なシナリオですね。しかしながら、それらを説明しようとすると、きわめてややこしい(汗)。その上それぞれの時代のキャストが、いろんな時代にちょいちょい出まくってますよ。例えば全ての時代に出ている、トム・ハンクスの役柄の説明のややこしさって言ったらないでしょ。wikipediaを読めば済む話です。

 

ミッション: 8ミニッツ

原題:Source Code/上映時間:93分/製作年:2011年

ミッション:8ミニッツ (字幕版)

 書きたくないポイント

「オレの身分証の名前、違うくない?」って気付くシーン辺りの説明がもうすでにイヤ。過酷な8分間の繰り返し。起こったことを一つ一つ思い出すのも大変ですね。

 

ANON アノン

原題:Anon/上映時間:100分/製作年:2018年

ANON アノン(字幕版)

 書きたくないポイント

地下鉄の場面での視覚を乗っ取られる表現とか、どう書けば良いのですかね?ああ、ややこしい...。(´-ω-`)。でも視覚をハッキングされていると気付いてない主人公が、電車が到着したと思い込み、危うくホームに落ちそうになるシーンは、すげぇスリリングだなと思いました。

 

キャビン

原題:The Cabin in the Woods/上映時間:95分/製作年:2012年

キャビン(字幕版)

 書きたくないポイント

ホラー映画のキャラクター過多。出過ぎ。あとは、ホワイトボードにホラー映画のタイトルを書いて、賭けをするシーンとか爆笑ですが、ディティールを描くと面倒くさいですね。感想としてはホラー作品愛に溢れた、SFっぽくもあるホラー映画。しかし、この映画に出ている大人達は皆けしからんですよ。

 

ノクターナル・アニマルズ

原題:Nocturnal Animals/上映時間:116分/製作年:2016年

ノクターナル・アニマルズ (字幕版)

 書きたくないポイント

ヴェネツィア国際映画祭で審査員大賞を受賞した作品。う~ん。すごくスマートな作品だと思うんですがね...。主人公の女性スーザンの現在進行形の話に、離婚した元夫エドワード(ジェイク・ジレンホール)の書いた小説の物語が挟み込まれるスタイル。この小説の中の男もジェイクが演じていてそういうのも、伝えにくい。しかし、こうなるだろうと予想していたラストは見事に裏切られ、痛快なオチとなっています。

 

ユージュアル・サスペクツ

原題:The Usual Suspects/上映時間:106分/製作年:1995年

ユージュアル・サスペクツ (字幕版)

 書きたくないポイント

※特にネタバレ注意

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

ヴァーバル・キントの語りで描かれる回想シーンは実は嘘であるが、それはラストにならないと分からないって...。これ、あらすじだけ1度書いたことあるのですが、本当に疲れました。

 

インサイド・ヘッド

原題:Inside Out/上映時間:94分/製作年:2015年

インサイド・ヘッド (字幕版)

 書きたくないポイント

主人公ライリーの頭の中の悲しみと喜びとの意見が対立したりとかして、そしてまたライリーの日常に戻る。学校に行ったりとか、そういう日々の描写ですね。頭の中でボーリングの球みたいなのをごろごろするシーンとか、何て言ったらいいんでしょう。黄金色のボール、すなわち大切な記憶を捨ててしまったとか(汗)。ズートピアの方ならいいのですが、こっちはちょっと書きにくいなぁと思いました。

 

プライマー

原題:Primer/上映時間:77分/製作年:2004年

プライマー [レンタル落ち]

 書きたくないポイント

まず、タイムマシンが地味すぎるでしょ。貸倉庫に入って行き、パッとしない箱の中で体育座りをするタイムトラベルも、新しいですね。またこの映画こそ説明とか、ざっくりしたあらすじ等が必要かも知れません。なんせ監督のシェーン・カルースさんが元々理系畑の方のようで、専門家の難しい話を素人が聞かされている感じに近い。これを観ると通常のSF映画には、如何に観客を意識したセリフや映像が盛り込まれているかに気付かされます。「じゃ~ん、これが僕の作ったタイムマシンです」みたいな場面ですね。俳優さんたちの演技も、なんか全体的にコソコソしてて、分かりづらい。でも、それが逆に新鮮で良かったです。

 

マグノリア

原題:Magnolia/上映時間:188分/製作年:1999年

マグノリア [DVD]

 書きたくないポイント

登場人物が多すぎ!『ラブ・アクチュアリー』とかもそうですね。ストーリー終盤になって、「あぁ、このおじさんとこのおじさんは別の人なんだ!」とやっと気付く感じです。またこの手の作品は、誰かと誰かがここで繋がっていて...みたいなのが多くて、その繋がりを言語化すると、結構疲れそうだなと思いました。

 

メッセージ

原題:Arrival/上映時間:116分/製作年:2016年

メッセージ (字幕版)

 書きたくないポイント

まぁ、これは書けなくはないですね。サピア=ウォーフの仮説とかも、いちおう理解していると思います。でも、あのシャン上将に電話をかけるあたりの説明がちょっと自信ないです。

 

閉ざされた森

原題:Basic/上映時間:98分/製作年:2003年

閉ざされた森 (字幕版)

 書きたくないポイント

いやぁ、これは話としてはとても面白いのですがね...。上手く書けたらそれはそれで面白みがなくなりそうと言うか...。あと、余談ですが『ヘイトフル・エイト』の元ネタかな?って思うシーンが2シーンほどありました。ゲーって血を吐くシーンと、サミュエルの股間マシンガンのシーン。面白いもの見つけた感はありますね。

 

まだまだありますが、今回はこの辺で。また思いついたら第2弾やりたいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございます(^_^)

 

 

パッセンジャー【映画感想】起床のタイミングが悪かった男とその巻き添えになった女

パッセンジャー

原題:Passengers/上映時間:116分/製作年:2016年

パッセンジャー (字幕版)

監督:モルテン・ティルドゥム

脚本:ジョン・スペイツ

出演:クリス・プラットジェニファー・ローレンスマイケル・シーンローレンス・フィッシュバーンアンディ・ガルシア

 まえおき(900文字)目次からスッとばし可能です

今回は『パッセンジャー』のレビューです。私がこの物語で好きだなと思ったのは、宇宙船内の乗客たった1人分のポッドが故障するという、ちょー地味なエラーが引き金となりストーリーが展開するところにあると思うのです。一見すぐ解決しそうな問題が、なかなか手ごわいみたいな...。私は30歳ぐらいの時、自分のアパートのトイレから出られなくなったことがあります(汗)。1人暮らしで、そのトイレには窓がなかったのですよ...。で最初に思ったのは「あ~あ、めんどくさいな」くらいのことで。でも10分経っても、20分経ってもドアが開かない...。そのドアの鍵はちょっと前から、少し壊れかけていました。でこうなった時、さすがに焦り始めたのです。「えっ、これってこのまま出れなくなったらどうする訳?」とか思い始めまして。携帯電話をポケットに入れておけば良かったな、とか、更にはこのドアは木製だろうか?とか。最悪の場合、トイレタンクの陶器をドアにぶつけて壊すしかないなと思いました。手に嫌~な汗をかく感じです。「自分はここで餓死するのではなかろうか?」とか「いや、その前に友人や職場の人がこれはおかしいと気付いてくれるかも」とか、さまざまな考えが頭をよぎりました。でその時とても小さなマイナスドライバーが、ふっと目に入りまして。それは以前何かの修理で持ち込んだのですが、このドライバーでドアノブのねじを開けてドアノブを外せないか?と考えたのです。もう、超慎重にやりましたよ(;゚д゚)、ねじ山が壊れたらおしまいなんで...。静かに静かに、地味~にカチカチやりまして、ドアノブが外れた瞬間にすっーっとドアが開いたのを覚えています。やったぁ~(泣)外に出れた!と思いました。トイレから出るのがこんなに大変だった日はない。で、この話を後日友人らの飲み会でしたら、その内の1人の男友達が「つい最近、俺も同じ目に遭った!」ってびっくりしたように言い出しまして...。脱出方法は彼と私とで、違いましたが...。その日、何だか彼のことを好きになりそうでしたよ。「トイレに閉じ込められる」こんな地味な恐怖体験話で盛り上がれる同志がいるとは、思っていませんでしたからね(笑)

 

パッセンジャー】の登場人物(ネタバレあり)

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画像引用元:https://www.facebook.com/PassengersMovie/

ジム・プレストン(演:クリス・プラット

 この物語の主人公(上の画像の左の人物)。エコノミ-クラスの船客で、職業はエンジニア。悪い人ではないのだろうけど、とにかく運が悪かった。クリスが演じているのでイケメンなはずですが、ごく普通の冴えない男として描かれます。

オーロラ・レーン(演:ジェニファー・ローレンス

この物語のヒロイン(上の画像の右の人物)。ファーストクラスの乗客で、作家。地球上ではリッチな家庭に生まれながら、有意義な人生を歩むことができなかった悲しい美女。ジムから目を付けられたことで、人生が一変します。

アーサー(演:マイケル・シーン

アンドロイドのバーテンダー(上の画像の中央)。120年の宇宙旅行の到着間際の人々が、バーで酒を飲むだろうということで用意されたと見られます。しかしオールタイム稼働中であったため、ジムの良き話し相手となりました。

ガス・マンキューゾ(演:ローレンス・フィッシュバーン

責任感あるクルーで甲板長。しかも、マトリックスのあの方じゃないですか!船のことは彼に聞けですね。

パッセンジャー あらすじ】完全ネタバレ

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画像引用元:https://www.facebook.com/PassengersMovie/

 宇宙船アヴァロン号

時は20XX年。やたらとでかい宇宙船アヴァロン号は、乗客5,000人とクルー258人を乗せ、目的地のスペースコロニーへと向かっていました。この中に乗っている人々は、物好きなのか?もしくは先見性があるのかで宇宙への移住計画にすばやく飛びついた人々です。地球からコロニーまでの旅は120年もかかり、その間はコールドスリープ器で冬眠するという予定でした。

 

そして120年が過ぎ宇宙船到着の少し前に目覚めると、しばし船内で過ごし、目的の惑星に到着すれば、そこで暮らすこととなる計画。当然地球でも120年が過ぎていますから、家族や恋人、友達などはもう存在しません。この宇宙船に乗り込む決断をするということは、周囲の全ての人と別れることとなります。また地球に住んでいる人達から見ても、宇宙に行ってしまい二度と会えない訳ですから、死んだも同然ということになりますね。地球から見送る人もとてもさみしい思いをすることになるわけです。

 

そんな勇気ある決断をした人達が5,000人も乗っているアヴァロン号。そんな中、エコノミークラス乗客のジムの冬眠ポッドが怪しい動きをします。ジムのポッドだけがウィーンと開き、「おはようございます、ジム様」みたく言われてしまうのです。おそらく到着前の数ヶ月を過ごす予定の個室に通されますが、何となく落ち着かないジム。その内船内を駆けずりまわり、他の人はどうなってるのか?と探します。しかし、美しい船内はガランとしていて、誰ひとり見当たりません。

 

ボッチ感が半端ない!

「えっ、起きたのオレだけ?」ジムはようやく状況を把握しました。それは、宇宙船が出発してから30年という何とも中途半端なタイミングで、目覚めてしまったということ。故障したポッドが誤作動を起こしたのでしょう。ジムはパニックに陥りますが、この計画を実行したホームステッド社ってところに連絡を入れてみます。しかし、

アヴァロン号から地球に連絡が届くのに15年かかり、

その上地球から宇宙船に返事が戻ってくるのが55年後

どんな先の話やねん!って。ジムも「なんだそれ、全然使えねーじゃん」とキレるのです。幸いジムはエンジニアなので、故障したポッドを修理し再び冬眠できないかと試しますが、逆に命を落としそうになります。実はこの船には5,000人の乗客以外に250人ぐらいのクルーが乗っているのですが、彼らも全員冬眠中であり、クルーの冬眠室はセキュリティが厳しく開きません。「もう、どうすりゃいいの?」ってなったジムは船内のバーに行き、アンドロイドのアーサーに話しかけます。

 

そうして1年が経ち、ジムはひとりぼっちが辛すぎて、毎日がもうどうでも良くなっていました。髭は伸び放題、髪の毛もボサボサです。で、遂には宇宙服を着て宇宙遊泳を楽しんでみたりもします。そして、「裸で飛び出せば、死ぬこともできるな」などと考えてしまいました。「いかん、いかん」と、何とか気を取り直すジム。

 

タイプの女性♡オーロラを見つける

そんな時、ジムは皆が眠る部屋で、超好みの女性オーロラを見かけました。その日以来、ジムはオーロラについて徹底的に調べます。オーロラはファーストクラスの、すなわちお金持ちの乗客で、職業は作家でした。

 

「オーロラを起こしたいなぁ」「いや、そんなことをしては絶対だめだ」「でも起こしたい」「ダメだ、何を考えてるんだオレ」そんな葛藤が続きます。そしてある日、遂にオーロラのポッドを作動させてしまいました。自分が細工したくせに、いざとなると逃げだして姿を眩ますジム。

 

オーロラは最初は何がなんだか分からない...といった風で、ジムと同じく船内をウロウロします。そこでタイミングを計り、自然に話しかけるジム。ジムはオーロラに状況、すなわち皆よりも80年近く目覚めてしまったことを伝えます。ショックの余りパニックに陥るオーロラですが、次第にジムとの恋に落ち、船内デートを楽しむように...。

 

アンドロイドのアーサーの発言で真実を知り、オーロラ激怒!

しかし!バーテンダーのアーサーが余計なひと言を言ってしまったがために、オーロラの表情は凍て付きます。アーサーは、実はジムがオーロラのポッドをいじり、故意に目覚めさせてしまったことを悪気もなくバラしてしまったのです。その日から、オーロラのジムに対する態度はがらりと変わります。ジムは完全に人生の殺人者扱い。ジムにとっても、オーロラにとっても、再び絶望的な日々が始まります。

 

そんな中、今度はガス・マンキューゾという甲板長のクルーが目覚めてしまいます。原因は同じくポッドの故障。ガスはジムがオーロラを起こしたことを悟り「お前って、超最低...」みたいな目で見ます。さらに、船内のあちこちでマシンが誤作動を起こし始めました。様子がおかしい...。

 

ギスギスしていたオーロラとジムですが、とりあえず3人で原因の究明を急ぎます。ロボットが誤作動を起こすばかりか、オーロラがプールで泳いでいる時に無重力状態となってしまい、船内はもうめちゃくちゃ(汗)その上、ガスの冬眠ポッドは以前から調子が悪かった様で、頼みの綱であったガスはしばらくしたら、死亡しました。その際にジムは、ガスのアームバンドを受け取ります。ガスのアクセス権があれば、全ての部屋の鍵を開けることができるのです。

 

残された2人はとりあえず休戦。最終的にはジムの命をかけた挑戦により、宇宙船は救われます。オーロラはジムを愛していると再認識。他の乗客の命も無事でした。と、こんな感じの話です。

 

パッセンジャー感想】 完全ネタバレ

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画像引用元:https://www.facebook.com/PassengersMovie/

賛否が分かれたラストシーン

登場人物が少ないにもかかわらず、サクサクとストーリーが展開していくので、一気に集中して観ることができました。物語終盤のシナリオに対して否定的な意見も多かった本作ですが、個人的には結構楽しめたという印象です。よく言えば、上手くまとまったB級SF。否定的な意見の中には、ジムがオーロラに対してした行為は決して許されるべきものではないのに、あのエンディングはご都合主義が過ぎるという主張が目立ちました。まぁ、そうですね。でも私に言わせれば、じゃあ最初から危険な旅には参加するな!です。宇宙って何があるか分からない。インターステラーのクーパーみたいに、突然23年を無駄にしてしまう可能性を秘めているのですから。

 

その点、オーロラは30年90年早く目覚めた程度で済んでよかった、とも言えます。そもそもジムこそがこの映画の中で、一番の被害者かも知れません。悪いのはホームステッド社です。クルーが250人程度乗っているのは何の為でしょうか?何か緊急なことが起こった時は、クルーが目覚めるシステムのようなものがあっても良かったはずです。会社に連絡するも、連絡取れず...。無責任極まりないなと思いました。

 

改変されたシナリオ

しかし、実はこの脚本は映画化させるにあたって、変更されたもののようですね。本来の脚本では、ジムとオーロラ以外のほぼ全員が宇宙に放り出され、死亡するというへヴィな内容のものでした。このシナリオであれば、当然ホームステッド社の責任が問われる流れになるはずです。

 

監督は『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のモルテン・ティルドゥム。限りなく過去のSF作品を意識し設定にもこだわっている、でも恋愛映画になっちゃったみたいな感じですかね。

 

ジムと出会ったばかりの頃のオーロラの浮かれ具合は、相当なものでした。ただ恋愛をしているからではありません。地球上で全く味気ない日々を送っていたオーロラにとって、ジムは王子様的な存在だったのでしょう。よって真実を知った時のオーロラのキレ具合は半端なく、恋愛をする女性の心理みたいなのが上手く表現されているように思いました。本当にジムが許せないのであれば、もっと冷たくあしらうこともできたはずですが、そうできないところがミソですね。

 

オーロラという名は、どうしても眠り姫を連想してしまう

またヒロインの名オーロラは、『眠り姫』の主人公オーロラを意識したものに違いありません。この映画が公開され、私はその半年後ぐらいにこれを観ましたが、特に当時、海外での評判が低かったようです。その理由の1つは、眠り姫を強姦神話ととらえる傾向が強まっていたからでしょう。

 

眠り姫の王子様は姫に断りなくキスをします。一方この『パッセンジャー』のジムもオーロラに断りなくポッドをいじり彼女を目覚めさせてしまいました。この眠り姫に酷似したエピソードが盛り込んであることで、ジムのイメージは大幅にダウン。更に、そんなジムがオーロラから許され、体裁よくハッピーエンドになるのは許せないということなのでしょう。

 

私は内心眠り姫を強姦神話みたく批判するのは、ちょっと厳し過ぎはしないか?と思っていましたが、仮に自分がその立場だったらどうですかね。また、眠り姫の類話である「太陽と月とターリア」の内容を知ってからは、批判の声が上がっても仕方がないなとすら思うようになりました。これは「いばら姫」の原作と言われているようです。

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眠りにおちた王女を悲しみ、父親は別れを告げて、この悲しみを忘れるために城を去る。他の者たちの描写は一切ない。その後、鷹狩りで偶然たどり着いた王が、眠る王女を見つけ、あまりの美しさに我慢出来なくなり愛の果実を摘む。そして王国へ帰り王女のことを忘れてしまう。王女は寝ている間に双子を出産し、麻糸がとれて目を覚ます。思い出した王は王女に会いに行き、出産を喜ぶ。

とりあえず王国に帰った王であったが、王女のことが気にかかり、王妃はそれに気づく。嫉妬した王妃は王の名前を装い、双子を呼び寄せ殺し、スープにして王に食べさせようとするが、子供に同情した料理人が子山羊とすりかえる。

次に王妃はターリアを呼び寄せて火焙りで殺そうとしたが、王が助けに入り、子供をスープにして飲ませたという話をきいて王は怒り狂い、王妃を火の中に投げ込む。

出典:眠れる森の美女 - Wikipedia

うわぁ、エグい。こんなおそろしい話がルーツにあるわけですから、まぁ仕方ないなと。だから『パッセンジャー』は本来の脚本でいけば、もっと面白い作品になっていたかも知れません。ちなみに船内のバーのシーンは、明らかにシャイニングを意識した造りで楽しめました。何かじゅうたんがよく似ていたと思います。マイケル・シーンの演技が素晴らしかったですね。最高!最後までお読みくださり、ありがとうございます。

 

 

WELCOME TO THE BLUMHOUSE【ブラック・ボックス】映画感想★

ブラック・ボックス

原題: Black Box/上映時間:100分/製作年:2020年 

ブラック・ボックス

監督:エマニュエル・オセイ=クフォー

脚本:エマニュエル・オセイ=クフォー、ウェイド・アレイン=マーカス、スティーヴン・ヘルマン

出演:マムドゥ・アチー、フィリシア・ラシャド、アマンダ・クリスティーンほか

 

フォーマットが定まらず、毎回異なったスタイルでお届けしているこのブログです。もしも更新毎に読んでくださっている読者の方がいらっしゃいましたら、お礼を申し上げたい。仮に勤めている企業が、勤怠締めやローテーション表のフォーマットをコロコロ月ごとに変えてきたら腹立つでしょ?今の私は、毎回それをやっているに等しいのです。皆さまに感謝&なるべく安定させます。

 

という訳で今回は『ブラック・ボックス』です。


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注:完全ネタバレ記事です。本作品に少しでも期待していらっしゃる方は、ご注意ください。

 

 製作はブラムハウス・プロダクションズ

パラノーマル・アクティビティ』、『ゲット・アウト』など低予算で新しいスタイルのホラー映画を世に送り出してきた製作プロダクション「ブラムハウス・プロダクションズ」の作品です。その中でも『ブラック・ボックス』は、ブラムハウスとアマゾン・スタジオが提携した"WELCOME TO THE BLUMHOUSE"というアンソロジー企画の中の1作品で、これらは全部で8作品になるそうです。

 

この"WELCOME TO THE BLUMHOUSE"とかいうホラー映画アンソロジー第1弾は2020年の秋ごろから配信が始まり、現在4作品をアマプラで観ることができます。で、残りの4作品の個別の海外版トレーラーがおとといあたり公開されました。このホラーアンソロジー第2弾は、日本でも近々配信されるのですかね?まぁとりあえず、それまでに今ある4本を全部観なきゃ!(汗)と思い鑑賞しました。

 

ちなみに先月ぐらいに公開された4篇分のトレーラーはこちら↓↓↓


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『ブラック・ボックス』は、主人公が過去の記憶の中に入って行く話で、夢の中が可視化されるような話なので、ちょっと『インセプション』とか『パプリカ』を思い出しましたよ。あとは『エターナル・サンシャイン』も。

 

個人的には、ちょうど最近『マトリックス』の新作トレーラーが公開されたことで、仮想現実ものに対する情熱が復活したタイミングなので丁度良いなと思います。低予算で製作されているため見応えのあるSF的な描写などはほとんどありませんでしたが、後半の展開がショッキングなもので驚かされました。また本作品はホラー作品となっていますが、ホラーって感じではないですね。グロテスクな描写もほとんどないので、エグい表現が苦手な方にもおすすめです。

 

 【ブラック・ボックス】あらすじ(ネタバレあり)

6ヶ月前に事故で妻のレイチェルを失ったノーランは、本人も脳に強いダメージを受けており過去の記憶が全くありません。小学校に通う娘エヴァは、ノーランのことを心配しあれこれ世話を焼きます。以前の生活をすっかり忘れてしまったノーランは食事を作ったりネクタイを締めたりするのにも、エヴァの助けが必要です。医師であり、以前からノーランのことをよく知っている友人ゲイリーも不安顔。ノーランは今の生活が全くしっくりきていない様子なのです。

 

複数の治療を試してもノーランの記憶が戻らないことから、ゲイリーは神経外科医リリアンの最先端の治療を受けるよう勧めます。そこで試しにリリアンを訪問するノーランですが催眠術のような療法にビビり、尻込みしました。しかしノーランはその日エヴァを学校に迎えに行くのすら、忘れてしまいます。エヴァの担任の女性教師は、まるで不審な人物を見るような目でノーランを見る上、これで3回目だから次は児童保護サービスに通報しなければ、と煽ってきました。

 

一刻も早く記憶を取り戻さなければという危機感から、ノーランはリリアンの治療を受けるべく彼女を訪問。治療には「ブラック・ボックス」というマシンを使用します。ざっくり言えば、過去の記憶を仮想現実として体験できるマシンです。治療台に横たわり催眠状態に入ったノーランは、徐々に過去の記憶の扉を開いていきます。ノーランが記憶の中に入ると、そこはレイチェルとの結婚式の場面でした。教会に集まる大勢の人々。しかしそれらの人々はおろか、レイチェルさえも顔の部分がぼやけていて見えません。

 

その上ブリッジをした人が突進してきたため、ビビり上がって夢から目覚めます。そこで治療は中断。リリアンは「あなたはよく頑張っている」とノーランを褒めます。しかしそれ以降の治療でも、ノーランは全く面識のない母子のアパートに自分がいる記憶などが蘇り、大混乱。「えっ、オレ不倫してたの?」とか「オレってもしかしてすげぇ悪い奴なんじゃね?」とか、自分を疑い始めました。友人のゲイリーは、それを全面的に否定。「お前は本当にいい奴だった」と諭します。しかしその後何度目かの治療で、衝撃的な事実が分かるのです...。

 

 【ブラック・ボックスの感想】(完全ネタバレ)

注:『トワイライトゾーン/超次元の体験』もほんの一部ネタバレしています。

前情報から薄々後半に意外な展開が待ち受けていると知っていたので、あれこれと想像しましたよ。私の中で一番有力だった予想は、主人公のノーランが実はとんでもない男だったという説。あるいは友人ゲイリーが妻のレイチェルを寝取っていて、実はレイチェルが生きていたとか。ノーランが治療を受けるたび記憶を取り戻し、焦ったゲイリーが暴れるのではないか?など勝手に想像し、ヒヤヒヤしました。ゲイリー、ごめん。

 

でも実際の物語はそうではなく、トーマスという新たな人物の名が浮かび上がってきます。トーマスって誰よ???

 

トーマスはリリアンの息子でした。神経外科医であるリリアンは、2年前に階段から転落死した息子の脳波のデータを保管しておいたのです。その後、救急患者として病院に担ぎ込まれたノーラン(アカの他人なんですがね...汗)の肉体にトーマスの脳波を移植。よって見た目はノーラン、心はトーマスというこれまでにない人物が出来上がってしまったのです(汗)恐るべし、リリアン。大概の悪いことはするタイプ。

 

潜在意識の中でトーマスがあえて扉の外にでることで、ノーランの心に肉体を返すという着地が良かったですね。

 

ブラック・ボックスで記憶の中に入った時、人々の顔がぼやけている件は、なんとなく既視感がありました。う~ん何だろうと考えて思い出したのが『トワイライトゾーン/超次元の体験』のジョー・ダンテ監督の「こどもの世界『IT'S A GOOD LIFE』」というエピソード。口を消された姉、みたいな表現がありましたよ。こっちの方はもっと怖かったですが...。

 

 

さらにブリッジをした人は、エクソシストを想起させられます。またグロくはありませんが、南極を舞台にしたあの映画のクリーチャーに似すぎてないか?と(笑)

 

ホラー作品というよりもSFドラマに近い...という印象。しかし、医者の母親リリアンの息子への執着が半端なく怖いので、そこはホラーっぽいですね。ややこしい話のはずなのに、ストーリーがきちんと整理されていて、好感が持てました。俳優さんの演技も素晴らしい。『ブラック・ミラー』とか好きな方は、楽しめるかも知れません。twitterでも海外版『世にも奇妙な物語』とか言われてますね。ちなみに同シリーズ(WELCOME TO THE BLUMHOUSE)の『ノクターン』もなかなか面白かったですよ!おすすめです。

 

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Amazon.co.jp: プライム・ビデオ: Prime Video

 

映画感想【ブリス ~たどり着く世界~】 完全ネタバレ

ブリス ~たどり着く世界~

原題: Bliss/上映時間:103分/製作年:2021年

ブリス ~たどり着く世界~

監督:マイク・ケイヒル

脚本:マイク・ケイヒル

出演:オーウェン・ウィルソンサルマ・ハエック、マデリーン・ジー

【ブリス ~たどり着く世界~の作品紹介】

脚本・監督は『アイ・オリジンズ』のマイク・ケイヒルで、以前当ブログでご紹介しました『アナザープラネット』の監督でもあります。

analogchan.hatenablog.jp

 う~ん、今回の作品はちょっと不思議な感じです。「不思議な味がする」とか言いますよね。そんな感じです、ご察し下さい。でも、面白くなかった訳ではありません。むしろ個性は強く、鑑賞後その他の映画を観てもなぜかコレを思い出してしまう始末です。

 

 ざっくり【ブリス ~たどり着く世界~】のキャスト


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グレッグ(演:オーウェン・ウィルソン

上記ポスター画像の右側の男性。コールセンターに勤める。

イザベル(演:サルマ・ハエック

上記ポスター画像の左側の女性。ホームレス。

 

【ブリス ~たどり着く世界~】のあらすじ(序盤~中盤)完全ネタバレ

「もしもし、おじさん電話で上司から呼ばれてますよ~!」私の声は届かなかった。グレッグはぐずぐずし、全然上司のところに行きません。とある会社のコールセンターには、ひっきりなしにクレームの電話がかかってきており、大勢の人々が懸命に対応しています。しかし責任者のグレッグはろくに対応もせず、個室に籠ったきり。何かの薬を服用しているようです。

 

グレッグは離婚していましたが、大学生ぐらいの娘エミリーがいます。その娘から大学の卒業式の日一緒に食事をしたいと、誘いの電話が入る。しかしグレッグは元妻が何と言うか気にしているようで、ためらい気味です。

 

彼は、頭の中にある風景を紙に描いて持ち歩いています。女性や展望台、ホテル"プレアデス"など。しかし、その景色はとてもリアルです。

 

その後ようやくグレッグが上司の部屋に入って行くなり、上司からクビを言い渡されました。キーっっ( `∧´)となったグレッグは不意に上司を突き飛ばしてしまい、上司は後部にあったデスクで後頭部を打ち即死。「えっー!ちょ、ちょっと突き飛ばしただけなのに死んだの?」てびっくりしたグレッグは、思わずガラス張りの窓際に上司を立たせた状態で貼り付け、カーテンで隠す。このやり方だと、外からは丸見えなんですがね...。

 

動揺したグレッグはその後会社を飛び出し、通りを挟んで向かいのバーに入りました。バーにはインチキ占い師風の中年女性イザベルがいて、イザベルはグレッグに「リアルだねぇ、あんたリアルなんでしょ」とかなんとか言ってきます。「いかれてんの?」グレッグは女を不審者を見るような目で見ますが、その超マイペースな女はグレッグに「アリバイが必要なんでしょ」と脅してきました。

 

イザベルは、この世界はフェイクワールドで、道を歩いている人やバーテンダーなどは、皆リアルじゃないと話します。「あんたには助けが必要...」グレッグはイザベルにそう助言しますが、彼女は全く自分を疑っていないようです。しかし、その気はなかったにしても、上司を殺してしまったグレッグは身を隠さねばならないので、仕方なくイザベルの隠れ家に案内してもらいました。

 

川沿いの空き地にテントを張り、ガラクタを集めたような住み家。グレッグは日頃から持ち歩いている自分の想像の世界の絵をイザベルに見せますが、イザベルはこの絵の世界こそがあなたのリアルな人生なのだと言って聞きません。更にイザベルは黄色い宝石のような薬イエロークリスタルを持っており、それを飲むとグレッグにも念力のようなパワーが宿りました。2人は、スケート場でその念力を使い、気に食わない連中を転ばせたりして楽しみます。アホか!イザベルいわく、あの人たちはリアルじゃないんだから、何をしたって平気だと言います。

 

ある日イザベルは、グレッグが自分の元から逃げ出そうとしたと勘違いし、取り乱しました。出会ったばかりなのに、もう恋人気取りでグレッグを束縛か?と思いきや理由は他にあったのです。イザベルは「あんたのことが心配だ」と言い、グレッグに真実を教える決意をしました。イザベルは今度はブルーのクリスタルを取出し、「あーっ、ちょっと足りない、でもいいわ~」と言って、不格好なミニ装置に入れます。その装置を思い切り鼻から吸い込むグレッグ。

【ブリス ~たどり着く世界~】のあらすじ(中盤以降)完全ネタバレ

意識が戻ると、そこは研究施設のようです。脳のホルマリン漬けみたいなのを取り囲み、10名ぐらいの被験者たちが眠っている。イザベルもグレッグもこの研究に参加していた、という訳です。なんと先程までのホームレスの世界は全て仮想現実だった(汗)ちょうどあの懐かしい『マトリックス』のような感じです。イザベルの言う「あの人たちはリアルじゃない!」は本当だった。これはブレインボックスという、イザベルの研究だったのです。

 

リアルな世界では、イザベルはクレメンズ博士、グレッグはウィトル博士と呼ばれていました。そこでは、満たされた人々が穏やかに暮らしています。たしかにグレッグが描いた絵とそっくりなユートピア。グレッグは、この世界の景色をうっすらと記憶していたのでしょう。しかしイザベルは、なぜあのような退廃した仮想空間を作ったのか?それは満たされ過ぎた現実へのありがたみを忘れないための、プチ貧乏体験ツアーのようなものだったのです。

 

しかし、仮想現実から戻ってくるために摂取するブルークリスタルが足りなかったせいで、グレッグはリアルな世界にいた頃の自分が思い出せない。その上FJPであるはずの、娘エミリーが現実の世界に紛れ込んできてしまいます。

 

FJP(フェイク・ジェネレイテッド・パーソン)架空の人間

 

これがきっかけでリアルの世界に、シミュレーション世界に住む連中が現れ、車を燃やすなどの暴行を加えはじめます。イザベルいわく、ブレインボックスの細胞が頭に入り込んだせいで、シミュレーションの一部をこちらの世界に連れてきてしまったとのことでした。そこでこの不具合を修正すべく、グレッグとイザベルはもう一度仮想世界に入り込みました。ケンドという薬をくれる被験者を撃ち殺し、ブルークリスタルを奪略。イザベルいわくシミュレーション内のケンドを殺しても、リアルの世界のケンドは死なないらしいですが、あんまりじゃないですかね(汗)。

 

しかし現実に戻るためのブルークリスタルが1人分しかなく、足りないとわめくイザベル。いやいやいや、そこが一番重要なポイントでしょう?この場合。2人は既に警察から包囲されており、イザベルの作った貧乏体験シミュレーションは悪夢へと変わりました。付近にいた娘のエミリーは、危ないからという理由でパトカーに乗せられてしまい、グレッグはこのシミュレーション世界に残ることを決意。イザベルはブルークリスタルを鼻から吸い込み、リアルな世界へ戻りました。

 

【ブリス ~たどり着く世界~】の大まかな感想(ネタバレあり)

映画でルビンの壺をやろうとしたのではないか?

この映画の鑑賞後、直感的に思い出したのが『ルビンの壺』です。もしかすると監督はこれを映画で表現したかったのではないかと。

ja.wikipedia.org

みなさんお馴染みの『ルビンの壺』

白い部分を認識すれば壺に見えるが、その時黒の部分は背景としてしか認識されない。また黒い部分を認識すれば向き合った2人の横顔に見え、白い部分は下地と認識される。この2つの絵柄を同時に知覚することはできない、というヤツです。

同じ絵を見ているのに、その時々によって見える形が違う!というのも面白いですね。

 

で『ブリス ~たどり着く世界~』では

①イザベルの作ったバーチャルな世界

ユートピアのような現実世界

 

という2つのパートに分かれています。

物語の描かれ方としては、もちろんユートピアが現実で、冒頭からの現代に似た世界が仮想現実という風になっていますが、見方によれば、違う解釈もできるなと...。

 

イザベルはこれはリアルじゃないとバーチャルな世界を否定しますが、単にイザベルとグレッグがドラッグに溺れているのでは?という気がせんでもないです。そしてリアルというのは、彼らが見ている幻覚なのではないかとも思うのです。そういう視点で見ると、何もかもがそう見えてくる。ブルークリスタルを吸い込む装置にしても、鼻の穴からって何か変じゃない?と思いました。

 

冒頭シーンだって、グレッグが最優先で電話をかけているのは薬局の処方箋ですし、彼は服用している薬に酷く依存しているようすでした。ラスト付近ではグレッグが退廃(良いことのない)した世界に残る決意をするも、真っ先に飛び込んだのは「セーフ・ハーバーリハビリ診療」の集団セラピーという奇妙な展開。皆の前で娘の写真を取り出したグレッグは「この人は僕の娘だと言っている。僕はそれを信じる」と言いました。えっー信じるって!!

 

 そうなってくると、辛い現実だと思っていた世界が仮想現実だと知らされ安心したが、やはり辛い現実が現実だったのだ。となりそれは、最初は壺だと思って見ていたが、よく見るとこれは人の横顔であると気付き、しかしもう一回見るとやっぱり壺だったみたいなのに似ているなと思ったのです。

 

しかしそこで、どちらが正しい解釈か?を求めるのは野暮というものでしょう。またどちらが本当か?を鑑賞者に委ねるというよりも、どちらの世界も描いています!という風に感じました。以下の記事も興味深いです。

ケイヒルは最近のインタヴューで、次のように語っている。「『ブリス ~たどり着く世界~』は解釈の双安定性が存在するとき、いちばん成功する作品と言えるでしょう」。これは、「わたしはふたつの矛盾する見方がそれぞれ成立する映画をつくりました」ということを、ちょっと物理学っぽくいい感じに語った言い方だ。

引用元:『ブリス 〜たどり着く世界〜』は、矛盾しつつ共存するふたつの世界を描こうとしている:映画レヴュー - ライブドアニュース

何というか、実験的ですね。

 

サルマ・ハエックの演じる中年女性イザベルがえらく不人気で笑う

構造としてはとても面白い試みをされているのに、お話としてちょっと残念な部分があったということも申し上げておきましょう。他の方のレヴューを読んでいても、イザベルに対しての文句が目立ちます。「魅力のないおばさんが出てきた」みたいな感想が多かったです。何だろうこの不快指数...でも確かに観ていて、イラッとさせられる場面が多いんですよね。フェイクを倒した時の、はしゃぎっぷりなど寒くて見ていられません。

 

特にバーチャル空間でのイザベルは向う見ずで、慎重さに欠ける軽率な行動が目立ちました。ケンドを殺した後にブルークリスタルが足らないと騒ぐあたりも、そんな低知能でブレインボックスの開発者だと、誰が信じるでしょうか?20粒必要なブルークリスタルが11粒しかないの、パッと見で分かるでしょう。数ぐらい、ちゃんと数えて欲しいものです。

 

その他面白かったところ

もちろん笑える箇所もありました。例えば、FGPが再起動されることなど。FGPすなわちフェイクである上司が生き返ったのを見て、驚きを隠せないグレッグ。しかしイザベルは「あぁ、再起動したのよ!」と言って軽く流します(笑)そんなぁ...。

 

あとリアルの世界とシミュレーションの世界が混合する描写なども良かったですね。またイザベルは、リアルの世界の地図とシミュレーション内の地図がちょうどカブるように設計しているようでした。だからホームレスの住居区で、仲間がグレッグにビールを投げて渡すシーンがあるのですが、それがユートピアでは露店となり、誰かがリンゴを投げてくれるのです。「いくぞグレッグ!」と掛け声も同じです。

 

それからイザベルとエミリーが鉢合わせになりそうで、ならない。イザベルとエミリーが、直接会話するシーンがなかったことにも(記憶の限りでは...)こだわりを感じました。細かい部分は色々楽しめましたよ。少なくとも、雑な造りではないと思います。次作に期待!

 

 

 

 

【アンキャニー 不気味の谷】映画感想★ネタバレあり-期待を上回る作品-

原題: UNCANNY/上映時間:85分/製作年:2015年

アンキャニー 不気味の谷(字幕版)

監督:マシュー・ルートワイラー

脚本:シャヒン・チャンドラソマ

出演:マーク・ウェバー、ルーシー・グリフィス、デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ

パッケージのセンスからは想像できないほど面白く、期待以上の作品でした。 特に考察することもないと感じたので、今回は短めのレヴューです。製作されたのは2015年ですが、日本でリリースされたのは2019年のようですね。


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※本作の他に『エクス・マキナ』のネタバレもします。

【アンキャニー 不気味の谷】のざっくりしたあらすじ

とある研究施設に、ジョイという名の美人記者が訪問します。そこに居たのはデビッド。ジョイはデビッドからアダムという男を紹介されますが、最初の内、アダムがAIだという事に気が付きませんでした。これを見た開発者のデビッドは、大成功だと喜びます。ジョイは毎日研究所に通い取材を続けますが、元々AIの研究に未練があったことから、次第にデビッドに惹かれはじめ、その後二人は良い雰囲気となります。

 

一方アダムの方も、ジョイに恋心を抱いているようす。しかしAIであることからジョイから相手にされません。2人の男(内1名はAI)と美人記者の三角関係となり、次第に険悪な空気が流れ始めます...。

 

【アンキャニー 不気味の谷】のキャストはほとんど3人(完全ネタバレ)

これ以降完全にネタバレします。この映画は、ここが分かってしまうと、もはや面白くなくなってしまう可能性大なので、未見の方はなるべく読まないようにお気を付けください。

 デビッド(演:マーク・ウェバー

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画像引用:https://www.facebook.com/UncannyMovie/

キャッスル社の研究員。19歳でMITのコンピュータ科学の学士を取った天才である。ジョイからの取材では、僕の作品だと言ってAI「アダム」を見せた。次第にジョイとラブラブな雰囲気になりますが、彼こそがアダムでありデビッドの作品だったのです。

※ややこしいですが、この記事では冒頭からどんでん返しまでの名前でデビッドと表記します。

アダム(演:デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ)

f:id:analogchan:20220223184040j:plain画像引用:https://www.facebook.com/UncannyMovie/

冒頭で彼はアダムというアンドロイドとして紹介されますが、実はこっちが博士だったというオチ。「もっと早く自己紹介したかった」と、最後だけ人間らしいところを見せる。この俳優さんの演技が素晴らしかったです。

※ややこしいですが、この記事では冒頭からどんでん返しまでの名前でアダムと表記します。

ジョイ(演:ルーシー・グリフィス)

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画像引用:https://www.facebook.com/UncannyMovie/

彼女は元々研究畑の人で、大学院ではロボット工学を専攻していた。あるゲームを開発したらそれが大当たり。キャッスルの研究施設に1週間通いAIの取材をするが、次第にデビッドに惹かれていく。

サイモン・キャッスル(演:レイン・ウィルソン

この研究施設の創始者ですが、ほとんど最後しか出てきません。実はこの人が黒幕。

 

 エクス・マキナとの類似点

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画像引用:https://www.facebook.com/UncannyMovie/

エクス・マキナのB面とか言うと怒られそうですが、実際私はかなり満足しました。筋書きの面白さ、俳優さんの演技、無駄な情報のないシンプルな設定などが魅力です。

隔離された研究所での密室劇

この映画の研究施設は、まぁ普通の綺麗な建物といった印象。エクス・マキナのネイサンの研究所みたいに豪華な別荘のような造りではありません。しかし登場人物が少なく、その中で淡々と話が進んでいくスタイルは同じです。

 

AIの名前がアダムとイブに由来する点

エクスマキナエヴァ

・アンキャニー 不気味の谷→アダム

日ごとのカウントが表記される

エクス・マキナでは、セッション1、セッション2でした。

・アンキャニー 不気味の谷では、1日目、2日目と表記されます。

実は来客が被験者であったという点

エクス・マキナ』の被害者ケイレブ

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画像引用:https://www.facebook.com/ExMachinaMovie/

エクス・マキナ』ではネイサンが、エヴァチューリングテストという口実でケイレブを騙し、約1週間彼をエヴァと対面させた。しかし試されていたのは、ケイレブの方。

 

『アンキャニー 不気味の谷』の被害者ジョイ

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画像引用:https://www.facebook.com/UncannyMovie/

『アンキャニー 不気味の谷』では本物の博士がAIに成りすまし、ジョイにAIを人間と思い込ませることに成功した。AIに惚れ込んでしまったジョイは、無事研究施設から戻ることが出来たものの、妊娠してしまう。被験者ナンバー4などと呼ばれ、酷い扱いである。

 【アンキャニー 不気味の谷】の全体的な感想

冒頭でも書きましたように、明らかにB級ムードをプンプンさせていたので期待値は低かったです。でも観始めると筋書きにスッと引き込まれ、それなりに楽しめました。

 

最初デビッドを見た時、この人もアンドロイドなんじゃないの?と思ったのは私だけではないでしょう。でも私は、実はアダムもデビッドも両方アンドロイドだった...というオチかと思ってたのですが、違ってました。

 

また話の流れから、次第にデビッドが人間なのだろうと解釈せざるを得なくなりました。上手いなと思ったのは、アダムがジョイのトイレ使用中にうっかり扉を開けてしまうシーンです。その後デビッドに「もう、トイレ覗き見されたのよ!」とこっそり告げ口をするジョイ。

ジョイに惚れているデビッドは、けしからん!(`Д´)となりアダムは怒られます。

 

でもこのシーン、どんでん返し後に考えると、人工知能アダムと思われていた男は実は人間だった訳ですから、普通にトイレ行きますよね?「あっ、やべぇ。バレたかも」(꒪ཫ꒪; )と思ったはずです。でも、ややストーカー気味のAIを気味悪く思っていたジョイは全く気付きません(笑)

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画像引用:https://www.facebook.com/UncannyMovie/

不気味の谷」ってタイトルが付いてますが、ジョイがアダムを不気味に思うのは仕方ないですね。AIが限りなく人間に近づいたから不気味なのではなく、単にアダムがストーカー人間だからですよ。いくら研究のためと言っても、「これはないな」と思いました。人工目玉の中に監視カメラを仕掛けたりして、気持ち悪いです(笑)自分の作ったロボットに博士の役をやらせ、自分はAIになりきるという、新しい手口の犯罪ですよ。

 

不気味の谷の説明

ロボット工学者の森政弘が1970年に提唱した。森は、人間のロボットに対する感情的反応について、ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わると予想した。人間の外観や動作と見分けがつかなくなるとふたたびより強い好感に転じ、人間と同じような親近感を覚えるようになると考えた。

 

引用元:ja.wikipedia.org

 

あとは、デビッドとアダムのチェスの対話が良かったです。アダムがオレはクィーンを取ったからもういい、などと急に人間っぽいことを言い出したりして。そんなところがちょこちょこ面白いなと思いました。

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 画像引用:https://www.facebook.com/UncannyMovie/

全てが明らかになった時、アダムが「僕が本物のデビッドだ」と自己紹介し握手を求めますが、ジョイが手を差し出すわけがありません。そういう人の気持ちの読めない男だから、アンドロイドと言われても、違和感がなかったのだとようやく理解しました。しかしアダムからすればずっと研究室に籠りっきりで、やっと姫が現れたかのように思えたのでしょう。しかしジョイからは気味悪がれ、自分は邪魔者扱い。彼だって、研究の犠牲者です。

 

どんでん返しの後、エンドロールの真っ最中。ジョイの妊娠が判明するという嫌がらせのようなカットが挿入され、イヤーな気分にさせられます。しかしSF作品としては、かなり楽しめました。

 

エクス・マキナ (字幕版)

エクス・マキナ (字幕版)

  • ドーナル・グリーソン
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アイランド【映画感想】完全ネタバレ

アイランド

原題:The Island/上映時間:136分/製作年:2005年

アイランド (字幕版)

監督:マイケル・ベイ

脚本:カスピアン・トレッドウェル=オーウェンアレックス・カーツマンロベルト・オーチー

出演:ユアン・マクレガースカーレット・ヨハンソンスティーヴ・ブシェミジャイモン・フンスーショーン・ビーンマイケル・クラーク・ダンカン

 

今更ですが、2カ月ぐらい前に『アイランド』を観たので、その感動と興奮をお伝えしようと思います。

 映画【アイランド】の主な登場人物(ネタバレあり)

リンカーン・6・エコー(ユアン・マクレガー

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画像引用:https://www.facebook.com/theislandmovie/

好奇心の強いクローンで、この物語の主人公。ロスに住むセレブ、トム・リンカーンのコピー。施設のシステムに日々疑いを持っていた。ジョーダン・2・デルタに恋心を抱いている。

トム・リンカーンユアン・マクレガー

ロスの豪邸に暮らす一流のセレブで、リンカーンのルーツとなる人。肝臓を患ったことから、バイオテック社に製品すなわちアグネイトを発注していた。それがリンカーン

ジョーダン・2・デルタ(スカーレット・ヨハンソン

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画像引用:https://www.facebook.com/theislandmovie/

リンカーンが密かに恋心を抱いていたアグネイト。サラという女性のコピー。アイランド行きが決定(即ち臓器摘出が決定)するも、間一髪のところでリンカーンに助けられる。

サラ・ジョーダン(スカーレット・ヨハンソン

ジョーダンのルーツとなる人間。女優かモデルかそういう職業の女性。ポスターのみでの出演。

ジェームス・"マック"・マッコード(スティーヴ・ブシェミ

 バイオテック社の職員であり、おそらく結構重要なポジションを任されている。バイオテック社が感情を持つクローンを作っていると知りながら、見て見ぬふりをしているわけだから許されぬ人物でありながら、どういう訳かいいヤツ感を醸しだしている。物語中盤で、リンカーンとジョーダンを助けた為に殺される。

アルバート・ローラン(ジャイモン・フンスー

ブラックホークという警備部隊のトップ。まるでルパンの銭形警部のような執念でリンカーンを追い回すが、最後にはジョーダンをサポートし、殺害されそうになった複数のリンカーンの友人らを助ける。

メリック博士(ショーン・ビーン

バイオテック社のクローンの開発者であり、総責任者のような存在。「クローンに意思や感情はない」と言って顧客を騙し、臓器を提供させている極悪人物。「それ、やったらいかんやろ!」を全てする人。

 

 映画【アイランド】のあらすじ(ネタバレあり)


The Island - Official® Trailer [HD]

 

舞台は真っ白い施設の中。ここにいる人達は、地球は大気汚染が酷くなったから住めなくなったと聞かされています。人々はお揃いの真っ白い衣類を着て(サイドに妙なラインの入った)、同じ靴を履き、超単調な毎日を強いられています。皆は仕事に通いますが、流れ作業をさせられるだけで、その製品が何に使われるのかも知りません。彼らは、自分らは数少ない人類の生き残りであると聞かされています。「毎朝尿で健康状態をチェックされる」など健康は過剰なほど管理され、少しでも異常があると食べたいものも食べれない日々です。人々の望みはアイランドへ行くことですが、主人公リンカーンはこのような毎日に疑問を抱いていました。

 

リンカーンは仕事中にちょいちょい、技術者マックのところに遊びに行き、ムダ話をしたりしています。リンカーンがマックのところに行くのは、彼と話していると楽しいからという理由ですが、それはマックが施設の事情をよく知ってる人間だからなのでしょう。ある日そこで、リンカーンは生きた蛾を見つけます。そこで「ん?外は大気汚染で生き物が生息できないはずなのに、なんでコイツがいる訳?」と疑問に思うわけです。その後、ジョーダンが「アイランド行き」に当選します。ジョーダンは、リンカーンが密かに心を寄せている女性なのです。リンカーンの心情としては、寂しくなるなぁ...とそんなところでしょうか?

 

 その晩リンカーンは悪夢にうなされて、目を覚ましました。蛾のことがどうも気になってならない。そこでリンカーンは深夜に部屋を抜け出し、蛾を放ちその後を追っていきます。すると...。何やら、病院のような医療ゾーンに通じていました。リンカーンが、これまで一度も足を踏み入れたことのない場所。そこで先日陣痛がはじまり、アイランドに行けると喜んでいた妊婦が赤ん坊を出産した場面に遭遇します。赤ん坊を見つめ、嬉しそうにする母親。しかしその直後、彼女は女医によって殺害されてしまうのです。ざ、残酷過ぎる...。リンカーンはこのようすをやや離れた場所から覗い、絶句します。

 

赤ん坊は妊婦とそっくりの顔をした女性の元に、届けられます。代理出産だった。更にはアイランド行きの当選が決まって大喜びをしていたスタークウェザーという黒人男性が、手術着を着せられ血相を変えて逃亡しているのを見てしまいます。博士は「生きたまま、内臓を取り出せ」とか、何とか滅茶苦茶なことを言っていました。何だ!ここは...。

 

直感的にジョーダンが危ない...そう感じ取ったリンカーンは大慌てでその不気味なメディカルゾーンから抜け出し、ジョーダンの元へ急ぎます。女子寮の中に紛れ込んだような格好となったリンカーンは女子から「キャっ!何この人(〃゚д゚〃)」みたいな目で見られ、その場はややパニック気味。しかし、そこはもうなりふり構わずジョーダンの部屋に直行。手を引っ張り、今すぐ施設から逃亡しなければ危ないと伝えます。

 

しかしリンカーンは医療ゾーンに忍び込んだ時、監視カメラに映ってしまっていたのです。博士らがリンカーンの腕の部分の映像を拡大してみると、リンカーンは医者ではなくクローンであることが分かります。博士は言います「製品だ...」製品!何て冷たい言葉なのでしょう。で博士はその製品であるクローンが逃亡したので、ローランが率いる凄腕警備部隊に追跡を依頼しました。博士のやっていることは、明らかにクローン禁止法を破る、すなわち違法行為だから警察を呼べないのです。館内ではブザーみたいなのが鳴り、リンカーンは汚染された危険人物だとアナウンスされます。

 

一方リンカーンとジョーダンは施設から抜け出し、ヘビに遭遇したりしながら「なぁ~んだ生き物がいる、やっぱり大気汚染なんかしてないじゃないか!」って言ったりします。でマックの職場で拾ったマッチ箱を頼りに、バーを見つけ入って行きました。そこでマックを見つけたリンカーンは「酷いじゃないか!なぜ本当のことを隠していたんだ!」と責め立てます。マックは「ここじゃ何だから...」と自宅に2人を招き、事情を説明しました。

 

リンカーンらは「えっ!俺たち人間じゃないわけ?何だ、それ!」驚くのですが、じゃあ自分らのルーツとなる人間に会って、話をしてみようという結論に到ります。そしてマックはリンカーンらに現金やクレカ、私服を与えました。ところが、駅まで2人を送ったマックは、無残にも何者かに射殺されてしまいます。ビビった2人は急いで列車に乗り込み、ロスへと向かいますが...。

 

※以下完全ネタバレ記事です。また映画『THX-1138』の内容にも一部触れています。

 疑うことの大切さ...アイランドのディストピアはだいたいこんな感じ

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画像引用:https://www.facebook.com/theislandmovie/

パッと見は人々が悲鳴を上げるような残酷なことは起こっていない

何か怖いなぁ~と思うのは、それなりの環境が一応与えられていることですね。例えばお酒を飲んでいるかどうか?は分かりませんが、アフター5にクラブみたいなところで楽しんだりとか...。だから『ハンガー・ゲーム』とか『バトルランナー』みたいに人々が今すぐ、ブチ切れるような理由がないのです。例えば「何でベーコンを食わせないんだ!」って言っても健康の為とか言われてしまいますし、意見すると「大人げないな」と思われそうなムードなんです。仮にこれが豚小屋風住居であると、何でオレたちだけ?となるかも知れません。でもハイテクかつ綺麗な環境で、食事も睡眠も保証されているから、主人公リンカーンのような疑問を持つ人が極めて少ないです。

でも恋愛が禁止

恋愛禁止、これはこの種の映画では割とありがちですが...。権力者は、人々が愛し合わないように仕向けるのでしょうね。またこの映画の場合は、子孫繁栄などの事情も含めて、禁止されているということでしょう。だってこのバイオテック社にクローンを依頼する人達って、セレブばっかりなんでしょ?例えば著名な政治家と女優のクローンの子供がどこかで勝手に生まれていたら、チョー面倒くさいことになりますからね。しかしこの施設内のアグネイトらが「そもそも人間はどうやって生まれるのか?」について、全く考えていないのが凄いです。アグネイトの中には妊婦もいましたから、周囲は「あのお腹はどうやったら大きくなるの?」って疑問に思っても良さそうなものです。確かに彼らはクローンだから、余計な知識を与えられていないかも知れない。でもそもそも人間は、最初からないものに対して鈍感なのかなと思いました。例えば、私達は今恋愛をするのが当たり前の世界に住んでいるので、もしも「全員明日から恋愛禁止」とか言われると、マジ切れする人もたくさん出てくるでしょう。でも、生まれた時からそうだったら、このルールを破る人の方が「変わり者」みたいな目で見られるのかも知れないです。

幸せの観念を植え付けられている

皆は夢の島「アイランド」にいくことのみが幸せだと信じ込んでいて、他の幸せを見出そうとしません。実際は「7年待っているのにアイランドに行けない」とエレベータの中でぼやいていた男が、一番のラッキーマンだったということになりますよね。7年も居たのに、殺されずに済んだわけですから(笑)。幸せと信じていることが不幸になることで、「自分は不幸だ」と思っている人が実はまぁマシだったというメチャメチャな世界観が堪能出来ました。

前半はかなりTHX-1138的な世界観

いや~似てるなぁ!って思いました。真っ白い服を着た集団が出勤するシーンとか。そして管理する側の人間は黒いジャージみたいなのを着ていて、そこもロボット警察とカブるなと思いました。それぞれが住んでいる個室の雰囲気とか、それらを実はものすごくたくさんのモニターで監視されているところとか...。不気味としか言いようがないです。『THX-1138』との類似点は、人々がこんな奇妙な毎日に何の疑いを持っていないところだと思いました。こういうのを客観的に見せられると、もしかしたら自分も彼らと同じ過ちを犯してないかなとか考えさせられます。また後半の逃亡シーンにカーチェイスがあるのも何となく、THXとカブります。それ以外では、ほんの1シーンですが『時計じかけのオレンジ』も、思い出しました。

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 画像引用:https://www.facebook.com/theislandmovie/

ロサンゼルスの都市の描写が、何気に近未来的

あとはマイケル・ベイのアクション描写がド派手すぎてなかなか気付けないことですが、都市の近未来映像が素敵です。空中を走る列車とか特にそれほど目新しくもないのですが、妙にしっくりきている感があります。「ああ、こういう未来か!案外悪くないな...」と。街頭に情報ブースがあるのも、凄く自然でした。

クローンを「製品」と呼ぶ残酷さ

 確かに彼らはクローンかも知れない。しかし仮にも人型をした、いや人とそっくりのそして心を持った存在に対して製品はないやろ!と思いました。クローンも人間と同じく、一人一人がスペシャルであり、替えのきかない存在なんですよ!と、私は博士に言いたい。そんな超基本みたいなことが分かってない人物が、または分かっていても規則を平気で破る人物が、組織のトップに立ち金や権力でガチャガチャとゲームでもするみたいに人を動かすのってめちゃめちゃ危険ですよ。残酷だなぁ...って思います。でもこの映画の中ではクローン禁止法が適用された世界が描かれているので、そこはまだマシだなと思いました。「適用されていても法を破る人物がいるとこうなりますよ」みたいな部類の怖さです。

 

 【アイランド】は脇役俳優陣が「はまり役」のオンパレード

ブシェミがいきなり出てきたので、それだけでテンション上がりました。ブシェミは、やっぱあの独特の声が良いですね。彼が映画に出てくる時って、分かっていても何かサプライズ感があるような(笑)小さくガッツポーズです。マックは研究施設の社員のようですが、結局彼が何をやってるのか?は分からないままでした。

 

またジャイモン・フンスーが演じるローランって人がなかなか良いキャラで、ラスト付近では、ジョーダンを助けたりするのですが...。よくよく観ると物語の序盤ぐらいから「植物のようなクローンが逃走したんですか?へぇ~」とか、嫌味を言ったりしているのです。だからローランは、最初から博士に反感を抱いていた人物なのですね。ラストシーンでクローンらに紛れ、さっそうと歩いている姿が印象的です。

 

後はアイランド行きが決定し大喜びをしていた黒人男性のスタークウェザーが、手術着を着せられ内臓を摘出される直前に目覚めるという惨事。血相を変えた彼が逃亡するシーンは、結構ショックです。この気の毒な男性を『グリーンマイル』の囚人ジョン・コーフィ役のマイケル・クラーク・ダンカンが演じているのが、何とも言えません。左右対称の構図で引きずられるシーンは、何となくグリーンマイルのラストとオーバーラップしてしまい、より残酷な印象となりました。

 

そして、悪役にはショーン・ビーン。主演のユアン・マクレガーリンカーン(クローン)とトム(人間)の一人二役でしたが、別人のように見えて素晴らしかったです。

 

 クローンを題材にした映画としてはやや軽め【アイランド】の総合的な感想

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画像引用:https://www.facebook.com/theislandmovie/

期待していたよりは何倍も楽しめた、という印象です。前半の方がSF感たっぷりで、後半はかなりアクション色が強め。特に列車の車輪をトラックから落とすシーンは、わざわざ用意された感が凄いです(笑)。でも、インパクトも強く、迫力があるので良いと思いました。

 

あと注目なのはアグネイトらの会話。「デュード」って言葉を知らなかったみたいで、新しい言葉を仕入れては仲間とシェアし、喜んでいるのがとてもチャーミングでした。またリンカーンの友達のジョーンズって人が超数学マニアだったりとかして、いろいろと楽しめます。

 

クローン批判はしているものの、『月に囚われた男』などと同様に、エンターテイメント性もあるので、過度に重苦しい空気にならずに済んでいるところが個人的には良いなと思いました。確かにクローンの問題を軽々しく扱うのはタブーかも知れませんが、内容があまりにもへヴィだったら、観るのすら躊躇してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。映画にしろ、ドラマにしろ、基本最後まで観なければ意味がありません。だから『アイランド』はSFとして視覚的に楽しみながらも、クローンについても真剣に考えさせられるという具合のバランスが良いなと思いました。監督の作風上、結果そうなっただけかも知れないですが(笑)

 

あとは、この組織内に閉じ込められているアグネイトらが、いろいろ気付いていない内はヒヤヒヤでしたが、気付けばちゃんと反逆し逃げようとする人たちで良かったです。逃げろ!と思った瞬間にリンカーンが逃亡するなどの展開には、スカッとさせられました。また本作品では、搾取される側と搾取する側の逆転劇が描かれています。そこが痛快なのですが、着地はそこにとどまらず、仲間(全クローン)の救助という温かい結末に辿り着くところが素晴らしく、清々しい気分になれました。

 

余談

この映画は「あの映画に似てる」と言われることが多い様です。

この記事で取り上げたのは『THX-1138』でしたが、以下

 

アイランドは『クローン・シティ/悪夢の無性生殖』と似ている

アイランドは『レベル16 服従の少女たち』と似ている

アイランドは『わたしを離さないで』と似ている

 

などです。『レベル16 服従の少女たち』はホラー、スリラーのテイストが強く、少女たちがクローンではなく孤児であるところが尚更恐ろしかった。心底ゾッとさせられましたよ。『わたしを離さないで』は、ドラマ版第9話の鑑賞の途中で挫折しました。頑張って観ていたのですが、あまりにも生々しく悲しく、見続けるのが辛くなったからです。よってガーランド脚本の映画『わたしを離さないで』の方も、まだ観ていません(汗)。こちらは、もう一度勇気を振り絞り、近々鑑賞するつもりですが...。そんな私が言うのもなんですが『わたしを離さないで』は、登場人物に感情移入しやすい人は、要注意!という気がします。原作を読む勇気はありません。相当にショックですよ、これは。仮に最後まで観るとして、仮に映画を観るとして、咀嚼するのに随分時間がかかるだろうな、と思いました。

 

「芸術は人の心を傷つける」どこかで聞いたような言葉が、頭の中をぐるぐる回りました。でもこの場合テーマがへヴィであることが、何よりの原因でしょうね。強くならないと!と思います。でも今は無理、コロナへの恐怖もあるから(笑)

 

もしも興味がある方は調べてみて下さい。長い記事を最後までお読み下さり、ありがとうございます。

 

 

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