リアルじゃなかった!【13F】映画感想◆完全ネタバレ
原題:The Thirteenth Floor/上映時間:100分/製作年:1999年
監督:ジョセフ・ラスナック
原作:ダニエル・F.・ガロイ
出演:クレイグ・ビアーコ、グレッチェン・モル、アーミン・ミューラー=スタール、ヴィンセント・ドノフリオ、デニス・ヘイスバート他
13F【あらすじ】完全ネタバレ
1937年のロス。フラーという初老の男が、ダグラス宛に手紙を書いている。その重要な事実が書かれた手紙は、ホテルのバーテンダーに預けられた。フラーはホテルから自宅に戻り、妻の寝ているベッドに潜り込む。そのままフラーの目がピカッーと光って、現代と思われる場所に戻る。
装置から起き上がった彼は、研究所らしき建物から出て、バーへ向かう。彼はこの会社の社長なのだ。フラーはバーからダグラスに電話を入れるが、留守電だった為メッセージを入れる。しかし話の途中でダグラスらしき人物が現れたと見え、フラーはフラフラとバーから出ていく。しかし話の途中でその男に殺害されてしまう。バーテンダーは預かった手紙を開封したが為、知らなくても良い事を知ってしまった。
翌日主人公のダグラスが、目覚めると血まみれのシャツがあった。その後フラーが何者かに殺害された事を知る。ダグラスは刑事のマクベインにフラーの殺害容疑をかけられるが 、全く身に覚えが無い。続いてフラーの娘だと名乗る美女ジェインが現れる。フラーに娘なんかいたっけ?と疑問に思うダグラス。彼と親しい間柄であったのに初耳である事を、ジェインに伝える。
内心俺何をやったんだ?と思っているダグラスは、事実を確かめる為ジェイソンの協力を得て仮想世界に入り込んでいく。仮想空間の人物は個体と呼ばれていた。仮想空間でのダグラスは、ジョン・ファーガソンという銀行員の男の個体に入り込む。要は仮想空間の中には自分とそっくりな人物がいて、その人物に入り込む格好なのである。入り込まれた個体は、その時間だけ記憶を無くす。
13F【感想】完全ネタバレ
ずっと観たかったのに、なかなか観る事が出来なかった作品です。原作はダニエル・F・ガロイの『模造世界』。こちらと同じ原作で1973年に、ドイツで制作された『あやつり糸の世界』と言う映画もある様です。これも随分前から観たいのですが、なかなか見る事が出来ない。面白そうなので予告を貼っておきます。
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督 『あやつり糸の世界』予告編
さて『13F』の特徴は、仮想現実が2層ありその上に現実の世界があるという、入れ子構造になっている所です。よって観客が現実として観ていた世界も仮想空間であった為、裏切られたような気持になり主人公ダグラスと共にショックを受ける。と同時に自分たちの住んでいる世界だって、実の所分からないじゃないか!!と思わせて来るスタイルの作品です。そこで冒頭になぜデカルトの引用『我思う故我在り』が出てくるのかが、ようやく理解出来ると言った流れです。
長々あらすじを書かせて頂きましたが、早い話がバーチャルな世界を作って、中をのぞきにやにやしていた人達が、実は自分の住んでいる世界もバーチャルであったと気付きショックを受ける。といった内容の話になります。これらの事実を鑑賞者に少しずつ情報開示していき、なるほどそうだったのか!と思わせる仕組み。
オープニングからテンポ良く話が進むので、すぐに作品の中に引き込まれました。
お話がややこしくなく、スッキリしているのも良いです。
仮想現実の中に入っていく映画としては、マトリックス以外にもバーチャル・レボリューションやトロン、インセプションなどたくさんあります。13Fは公開した時期がマトリックスと近かった為、あまり話題になりませんでした。
しかし一般的にマトリックスよりは地味だけど、良作という評価を得ている様です。この作品を観るとむしろ派手なアクションシーンが無い分、仮想現実の仕組みやルールをゆっくり見る事が出来、かなり満足しました。
また創られた仮想現実が1937年のロスというリアリティのある描写である為、タイムトラベルものに近い感覚で鑑賞出来るのではと思います。
劇中の仮想空間のルールも極めてシンプル
思いつくところで言えば
1.仮想空間に入る時、本人は寝ている
2.入り込まれた側の仮想空間の人物は、その間記憶が無くなる
3.タイマーのセット時間になると元いた世界に戻る
などが挙げられます。
仮想空間に入る時の装置は、こんな感じです。
画像引用:http://blog.livedoor.jp/katchan29/archives/51205161.html
ドノフリオが1人2役
あとはジェイソンというダグラスの同僚役で、怪優ヴィンセント・ドノフリオが出演しています。メン・イン・ブラックで、悪い宇宙人に体を乗っ取られ、散々な目に遭った人でした。
画像引用:https://renote.jp/articles/9468
今回の役は結構イケメンです。またこの劇中のキャストの人達は皆1人2役ないしは3役演じていて、大変そうでした。
果ての描写がショボい・・・
これはちょっとなと思った部分としては、世界の果ての描写ですかね。小説の表紙なら良いのですが、劇中でこれをされると何だか安っぽい。確かに世界の果てなんて見た事ないから、表現は自由だと思うのですがこれはないなと。この描写を見せられた時の気持ちは、リュック・ベッソンの『ルーシー』で「これが次世代のコンピューターだ!!」とか言って、ひじきみたいなもずくみたいなのを見せられた時の気持ちに近い。絵的には全然違うのですが、気持ちが、です。
しかしフラーも仮想現実の中で女遊びをしていた事が、部下であるダグラスにバレるのは相当に痛い所だと思います。前代未聞の重要な研究をしていると言うのに、それを使って若い女性といちゃいちゃしていた。
本作品に於いては仮想空間の中の人々が「えっ、オレってリアルじゃない訳?」と知り傷付くという情緒あるSF作品。私はこの様な文系SF作品を、こよなく愛しています。だからディック原作モノなどが好み。バリバリ理系の人に好まれる様なSFも好きなのですが何か説明が難しくて、言葉に出来ない。でも2004年のプライマーは、とても面白かったです。