【アンキャニー 不気味の谷】映画感想★ネタバレあり-期待を上回る作品-
原題: UNCANNY/上映時間:85分/製作年:2015年
監督:マシュー・ルートワイラー
脚本:シャヒン・チャンドラソマ
出演:マーク・ウェバー、ルーシー・グリフィス、デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ
パッケージのセンスからは想像できないほど面白く、期待以上の作品でした。 特に考察することもないと感じたので、今回は短めのレヴューです。製作されたのは2015年ですが、日本でリリースされたのは2019年のようですね。
※本作の他に『エクス・マキナ』のネタバレもします。
【アンキャニー 不気味の谷】のざっくりしたあらすじ
とある研究施設に、ジョイという名の美人記者が訪問します。そこに居たのはデビッド。ジョイはデビッドからアダムという男を紹介されますが、最初の内、アダムがAIだという事に気が付きませんでした。これを見た開発者のデビッドは、大成功だと喜びます。ジョイは毎日研究所に通い取材を続けますが、元々AIの研究に未練があったことから、次第にデビッドに惹かれはじめ、その後二人は良い雰囲気となります。
一方アダムの方も、ジョイに恋心を抱いているようす。しかしAIであることからジョイから相手にされません。2人の男(内1名はAI)と美人記者の三角関係となり、次第に険悪な空気が流れ始めます...。
【アンキャニー 不気味の谷】のキャストはほとんど3人(完全ネタバレ)
これ以降完全にネタバレします。この映画は、ここが分かってしまうと、もはや面白くなくなってしまう可能性大なので、未見の方はなるべく読まないようにお気を付けください。
デビッド(演:マーク・ウェバー)
キャッスル社の研究員。19歳でMITのコンピュータ科学の学士を取った天才である。ジョイからの取材では、僕の作品だと言ってAI「アダム」を見せた。次第にジョイとラブラブな雰囲気になりますが、彼こそがアダムでありデビッドの作品だったのです。
※ややこしいですが、この記事では冒頭からどんでん返しまでの名前でデビッドと表記します。
アダム(演:デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ)
冒頭で彼はアダムというアンドロイドとして紹介されますが、実はこっちが博士だったというオチ。「もっと早く自己紹介したかった」と、最後だけ人間らしいところを見せる。この俳優さんの演技が素晴らしかったです。
※ややこしいですが、この記事では冒頭からどんでん返しまでの名前でアダムと表記します。
ジョイ(演:ルーシー・グリフィス)
彼女は元々研究畑の人で、大学院ではロボット工学を専攻していた。あるゲームを開発したらそれが大当たり。キャッスルの研究施設に1週間通いAIの取材をするが、次第にデビッドに惹かれていく。
サイモン・キャッスル(演:レイン・ウィルソン)
この研究施設の創始者ですが、ほとんど最後しか出てきません。実はこの人が黒幕。
エクス・マキナとの類似点
エクス・マキナのB面とか言うと怒られそうですが、実際私はかなり満足しました。筋書きの面白さ、俳優さんの演技、無駄な情報のないシンプルな設定などが魅力です。
隔離された研究所での密室劇
この映画の研究施設は、まぁ普通の綺麗な建物といった印象。エクス・マキナのネイサンの研究所みたいに豪華な別荘のような造りではありません。しかし登場人物が少なく、その中で淡々と話が進んでいくスタイルは同じです。
AIの名前がアダムとイブに由来する点
・アンキャニー 不気味の谷→アダム
日ごとのカウントが表記される
・エクス・マキナでは、セッション1、セッション2でした。
・アンキャニー 不気味の谷では、1日目、2日目と表記されます。
実は来客が被験者であったという点
『エクス・マキナ』の被害者ケイレブ
『エクス・マキナ』ではネイサンが、エヴァのチューリングテストという口実でケイレブを騙し、約1週間彼をエヴァと対面させた。しかし試されていたのは、ケイレブの方。
『アンキャニー 不気味の谷』の被害者ジョイ
『アンキャニー 不気味の谷』では本物の博士がAIに成りすまし、ジョイにAIを人間と思い込ませることに成功した。AIに惚れ込んでしまったジョイは、無事研究施設から戻ることが出来たものの、妊娠してしまう。被験者ナンバー4などと呼ばれ、酷い扱いである。
【アンキャニー 不気味の谷】の全体的な感想
冒頭でも書きましたように、明らかにB級ムードをプンプンさせていたので期待値は低かったです。でも観始めると筋書きにスッと引き込まれ、それなりに楽しめました。
最初デビッドを見た時、この人もアンドロイドなんじゃないの?と思ったのは私だけではないでしょう。でも私は、実はアダムもデビッドも両方アンドロイドだった...というオチかと思ってたのですが、違ってました。
また話の流れから、次第にデビッドが人間なのだろうと解釈せざるを得なくなりました。上手いなと思ったのは、アダムがジョイのトイレ使用中にうっかり扉を開けてしまうシーンです。その後デビッドに「もう、トイレ覗き見されたのよ!」とこっそり告げ口をするジョイ。
ジョイに惚れているデビッドは、けしからん!(`Д´)となりアダムは怒られます。
でもこのシーン、どんでん返し後に考えると、人工知能アダムと思われていた男は実は人間だった訳ですから、普通にトイレ行きますよね?「あっ、やべぇ。バレたかも」(꒪ཫ꒪; )と思ったはずです。でも、ややストーカー気味のAIを気味悪く思っていたジョイは全く気付きません(笑)
「不気味の谷」ってタイトルが付いてますが、ジョイがアダムを不気味に思うのは仕方ないですね。AIが限りなく人間に近づいたから不気味なのではなく、単にアダムがストーカー人間だからですよ。いくら研究のためと言っても、「これはないな」と思いました。人工目玉の中に監視カメラを仕掛けたりして、気持ち悪いです(笑)自分の作ったロボットに博士の役をやらせ、自分はAIになりきるという、新しい手口の犯罪ですよ。
不気味の谷の説明
ロボット工学者の森政弘が1970年に提唱した。森は、人間のロボットに対する感情的反応について、ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わると予想した。人間の外観や動作と見分けがつかなくなるとふたたびより強い好感に転じ、人間と同じような親近感を覚えるようになると考えた。
あとは、デビッドとアダムのチェスの対話が良かったです。アダムがオレはクィーンを取ったからもういい、などと急に人間っぽいことを言い出したりして。そんなところがちょこちょこ面白いなと思いました。
全てが明らかになった時、アダムが「僕が本物のデビッドだ」と自己紹介し握手を求めますが、ジョイが手を差し出すわけがありません。そういう人の気持ちの読めない男だから、アンドロイドと言われても、違和感がなかったのだとようやく理解しました。しかしアダムからすればずっと研究室に籠りっきりで、やっと姫が現れたかのように思えたのでしょう。しかしジョイからは気味悪がれ、自分は邪魔者扱い。彼だって、研究の犠牲者です。
どんでん返しの後、エンドロールの真っ最中。ジョイの妊娠が判明するという嫌がらせのようなカットが挿入され、イヤーな気分にさせられます。しかしSF作品としては、かなり楽しめました。