アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

暴走する資本主義に警笛を鳴らすはずが...【ブランデッド】映画感想★ネタバレ

ブランデッド

原題:BRANDED/上映時間:106分/製作年:2012年

ブランデッド(字幕版)

監督:ジェイミー・ブラッドショー、アレクサンダー・ドゥーラレイン

脚本:ジェイミー・ブラッドショー、アレクサンダー・ドゥーラレイン

出演:エド・ストッパード、リーリー・ソビエスキーマックス・フォン・シドー

 

広告を見て胡散臭いな、嫌な気分だ、などと感じるようになったのがいつからかは思い出せないです。昭和の頃のTVのコマーシャルは、元気が良くて結構好きでした。もしくは、子供だったからそう感じたのかも知れない。でも20代前半にananとかそういう部類の雑誌を買った時はもうすでに、広告の枚数がやたら多くてイラッとしましたね。

 

2000年過ぎた頃から、胡散臭いチラシも増えてきた気がします。「!?」の多様で、はっきり物を言わない。「!」はびっくりマークでしょ。「?」はクエスチョンマークです。

 

「スリムなボディに!?」→痩せるのか痩せないのか、ハッキリしろと言いたい。

「○○○円もお得!?」→お得なのか損をするのかハッキリしろと言いたい。

 

ターゲットは大抵女性でしょ?舐められてるなぁって不快になります。でも多分、こういうのを相手にしちゃう人がいるから、無くならないんですよね。

 

まぁ美容関係だと薬事法とかがあるから表記上仕方がないのかも知れませんが、なんだかなぁ...。ポストを開けるたびにほんの微かに(ここポイント)嫌な気分になる。気付くか気付かないか?のレベルです。しかし、こういうのが一掃された世の中を想像してみると案外悪くないですよ。

 

で今回ご紹介する『ブランデッド』は、広告業界でバリバリ業績を上げていた男の話です。まぁ昨今はPCやスマホの普及率が更に上がって、屋外の電子広告ってあまりタイムリーな話ではないかも知れません。それは、自分が観たのが遅かったので仕方ないですね(笑)。でも大きな電子看板って、見たくなくても見てしまいますよ。何となく気になる問題ではあると思います。

 

  映画【ブランデッド】のざっくりあらすじ(完全ネタバレ)


www.youtube.com

 

この予告を見ると、何だかスリリングなカットばかりが編集されている感じですが、躍動感はこの3分の1ぐらいですね。アクションの要素はほとんどありませんので念の為。

 

↓以下あらすじ↓

主人公ミーシャは、広告業界で働く男。雇用主ボブに拾われて以来、才能をばりばり発揮していた。そんなある日、ボブの姪アビーと出会い恋に落ちる。しかし2人の交際はボブからえらく反対された。その後アビーは、ミーシャの企画した番組を手伝う流れに...。その番組は、痩身願望のある女性ベロニカに美容整形手術を受けさせるという内容だったが、モデルのベロニカは昏睡状態に陥ってしまう。この一件でミーシャは世間から多くの批判を浴び、逮捕された。その後ボブが保釈金を支払ったので、ミーシャは釈放される。しかし、アビーをアメリカへ帰らせることが条件であった。

 

離れ離れになったミーシャとアビー。その後ミーシャはモスクワを離れ、牛飼いとなった。そこへアメリカからやってきたアビーが現れ、世捨て人になったミーシャに絶望する。

 

一方ミーシャは、夢のお告げで赤牛を生贄にする儀式を実行した。アビーは変わり果てたミーシャを見るに見かねて、モスクワへ連れ戻す。モスクワは豊満な肉体美ブームの真っただ中。誰もかれもが、バーガーやフライドポテトなどのファーストフードを欲していた。ミーシャはそれらの人々に奇妙なモンスターが付きまとっているのを見つけ、動揺する。

 

これは例の赤牛の儀式を行ったせいで見えるようになったのだが、アビーは幻覚だと言い張り、心療内科に掛かることを勧めた。またアビーにはミーシャとの間に子供が出来ていた。その子供ロバートに会うが、幼い彼もまたえらくファーストフード中毒だった。「何でぇ~!!」って発狂しそうになるミーシャ。しかしこれは全てファーストフード店を繁盛させたいパスカルの陰謀であったと気付き、ある計画を実行する。

 

  映画【ブランデッド】感想(完全ネタバレ)

序盤はミーシャとアビーのデートシーンの会話でロトチェンコなどの名も出てきて「おぉ!どんな話になるんだろう?」っと思いましたが、何てことはない。バーガーを大量に売り込みたかったジジィのパスカルが登場。広告界の権威である彼が、影でこっそりミーシャをハメたのです。でもここからが本題で、この件以降、業界で半ば有頂天になっていたミーシャが、広告の害悪やあざとさについて真剣に向き合っていくという流れになっていきます。

 

ミーシャは、自分がされたことを逆手にとってパスカルにリベンジしていくのですが、彼の目標はそこにはなかった。ライバル企業のネガティブキャンペーンを行う手口を世間に見せつけ、広告戦争を引き起こさせる展開になっていくのはちょっと意外でしたね。でも化物の造形があまりにもちょっとアレだったので、そちらに気を奪ばれた人も少なくはないでしょう。一部の方からはクリーチャーが安っぽいと低評判ですが、安っぽい化物は消費者の操作された欲望のメタなのだから、それはそれで良いかなと個人的には思います。

 

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ミーシャ「僕が言いたいのは、ブランド志向を生み出す仕組み全体だよ。脳に刷り込むんだ。その企業の商品を買うと無意識に幸せを感じるように」

アビー「幸せならいいじゃない」

ミーシャ「去勢された羊と同じだ。欲望が操作されてる。選択肢があることを知らないんだ。粗悪品を選ぶように教育されてる。

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アビーみたいな人がたくさんいるわけですよね。「粗悪品を選ぶように教育されてる。」って部分は、『スーパーサイズ・ミー』とか『フード・インク』とかと通じる部分があると思いました。

フード・インク (字幕版)

フード・インク (字幕版)

  • エリック・シュローサー
Amazon

 

世の中には本当に体に良くて美味しい食事、食材を提供しようと考える仕事熱心な方がたくさんおられます。しかし、ほんの少数の巨大企業に市場を独占されてしまうと、もうなかなか打つ手がないんでしょうね。一方消費者はただひたすら安さを求めて、名の知れた企業の商品を買いまくる。ブランド戦略に、まんまとはまってしまっているのです。「地産地消」を唱えても「うまいもんは、東京や京都に行っている」という話もあるぐらいですから、なかなか難しいですね。

 

働いてせっかく収入を得ても、消費してそのお金が全部支配者階級に回るのなら、意味なくないですか?

 

話がそれましたが、『ブランデッド』もマーケティングのあり方、広告の見せ方についての風刺的な作品であり、その種のメッセージを持ち合わせているとは思います。まぁ大衆が無意識ながら支配階級に操作されているという物語だと『ゼイリブ』の方が素晴らしく、特に目新しい題材という訳でもないのですが。だけど、赤牛のいけにえの儀式のシーンあたりから何か随分変なとこにぶっ飛んだな、みたいな違和感を感じ、逆にそれも悪くないとちょっと思いました(笑)真面目に取り扱うと、非常にセンセーショナルなテーマだと思うんです。でもバケツの中で灰と水を混ぜてそれをかぶる珍シーンとか観たら、もう冒頭のロトチェンコの話とかがすっかり、どこかに行ってしまいました

 

一見荒唐無稽にも見えますが、話の筋は通っているように思います。あのまとわりつくようなナレーションが無ければなぁ!惜しい。

 

最後までお読みくださりありがとうございます!では、また。