ドラマ『エイリアン:アース』の考察を試験的に他でやっていたのですが、こちらに移しました(一部加筆&修正)。去年の秋の記事ですね。呑気なもんです(´◡`)
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こんにちは。短い秋を堪能中です。ちょっと遅いですがアンドロイドつながりで、今回はドラマ『エイリアン:アース』の考察をしてみました。『エイリアン:アース』を視聴された方や、まだ!と言う方も途中まででもよいので、ぜひお読みいただけると嬉しいです。
本記事はドラマ『エイリアン:アース』の完全ネタバレ記事となります。ドラマの結末、ネタバレ部分にも容赦なく触れておりますので、未見の方はご注意ください!

- ドラマ【エイリアンアース】の基本情報・あらすじ
- 『エイリアンアース』の総評
- ピーターパンに関連する登場人物が続々と登場!
- 【エイリアンアース】と案外怖いピーターパンとの類似点やつながり
- 間引きを連想させられるトゥートルズの死!あれは事故か?
- エイリアン:アースのテーマその①母性とフェミニズム
- エイリアン:アースのテーマその②自立
- 5種の地球外生命体とは
- まとめ
ドラマ【エイリアンアース】の基本情報・あらすじ
作品名:エイリアン:アース/原題:Alien: Earth/製作年:2025年配信
エピソード:全8話
企画・ショーランナー:ノア・ホーリー
監督:ノア・ホーリー(第1話、第5話)、ダナ・ゴンザレス(第2話、第3話、第7話、第8話)、ウグラ・ハウクスドッティル(第4話、第6話)
出演:シドニー・チャンドラー、アレックス・ローサー、ティモシー・オリファント、サミュエル・ブレンキン、リリー・ニューマークほか
『エイリアン アース』の簡単なあらすじ
エイリアン アースの時代設定は、2120年なので、1作目『エイリアン』の2年前の物語ということになります。
2120年の地球は、5つの企業が世界を統治している状態。プロディジー社、スレッショルド社、リンチ社、ダイナミック社、そしてウェイランド・ユタニ社が世界を支配していました。
人体の一部を機械化した「サイボーグ」や、人間そっくりのAI搭載型アンドロイド「シンセティック」も、人々と共生しています。そしてついに、プロディジー社のCEOカヴァリエは、難病に罹った子供の意識をシンセに移行し、人間の心を持つシンセである「ハイブリッド」を誕生させました。
ハイブリッドの第1号となったのはウェンディ。ウェンディ以外にも、5人の子供がハイブリッド化されました。ロスト・ボーイズとよばれる彼らは、子供の心を持っていますが、シンセのボディは成人。見た目は大人なんです。
一方でウェイランド・ユタニ社の宇宙船マジノ号が、プロディジー・シティの市街地に墜落。マジノ号には、宇宙で捕獲したエイリアンなど5種類の異星生物の検体が積まれていました。
墜落現場へは市民の救助のためプロディジー社の兵士が派遣され、その中にはウェンディの兄ジョーもいます。ウェンディは兄を助けるため、ロスト・ボーイズを率いて墜落現場に向かいますが...。
『エイリアンアース』の総評
ここからは『エイリアン:アース』だけでなく、過去のエイリアン・シリーズに触れることがあります。ネタバレにはご注意ください!
もっと、もっとでゼノモーフが大人気!
SNSでは「ゼノモーフがもっと観たかった」や「ゼノモーフの出番が少ない」などゼノモーフ、ゼノモーフの大合唱となり、あらためてゼノの人気の高さを、認識させられました。筆者は『エイリアン』シリーズの中でも、アッシュ・ビショップ派なので、ハイブリッドやシンセが活躍する本作に、大いに満足した次第です。
そんな筆者でも「もう少しゼノモーフが暴れてもよかったな」と思うほどなので、ちょうどプレデター2のような感じで、街中でのエイリアンの暴れっぷりを期待した方々のショックは計りしれません。
監督はポッドキャストのコメンタリーで『エイリアン』とは別のものを作らなければ意味がない、というような内容を語っています。とはいえ、ジュラシック・シリーズで言うところの「毎回ティラノを見せてくれれば、ファンはもうそれでいいんよ」、みたいなムードは否めませんでした。
過去作へのオマージュシーンが嬉しい!
第5話「宇宙では誰にも…」は、第1話を詳細に綿密に描いたエピソードです。タイトルからして、映画シリーズの1作目『エイリアン』へのリスペクトが充分に感じられました。このエピソードはショーランナーのノア・ホーリーが監督しています。
マジノ号の船内のデザインが、ノストロモ号とよく似ていて「なるほど同じウェイランド・ユタニ社のシップだからか」と納得させられました。この船内のセットは、ノストロモ号の設計図を参考にわざわざ作られたそう。以下はノア・ホーリー監督のインタビューです。
1作目の設計図を参考にした。リドリー・スコットも驚いてたよ。マジノ号はノストロモ号の美学を継承したからね。だがあの工業的な空間とは思えない、真っ白な船内が好きなんだ。あれこそ「エイリアン」だ。あの指令室を造り、足を踏み入れた時、興奮したよ。僕の中の少年が現れ、時間軸が崩壊した。「エイリアン」の世界にどっぷりつかれるので、クルー全員がすっかり舞い上がっていたよ。
第2話でハイブリッドのロスト・ボーイズたちがマジノ号の墜落現場へ向かうシーンは、キャメロン監督の『エイリアン2』を思い出します。輸送機の内部の雰囲気が、映画『エイリアン2』の輸送機となんか似ているなと。ハーミットのお仲間の女性兵士サイベリアンも、エイリアン2の2等兵バスケスを想起させられます。
第3話でモローが飛び降りるシーンは、『エイリアン3』のラストでのリプリーを思い出しました。
『ストレンジ・ブルー』を9秒だけ使ったオープニングが最高!
オープニング・タイトルが出るときの曲(和音みたいなの)が自分好み過ぎて、しびれました。クリームの楽曲『ストレンジ・ブルー』を使おうと言いだしたのは、ノア・ホーリーらしいです。ジェフ・ルッソがあれこれ試行錯誤していたら、ノアがスタジオに来て、歌い出したから、それを使ったようですね。あれは、ノアが歌っているんです。
続編作る気満々のオチについて…
シーズン1最終話である第8話では、カヴァリエをはじめとする、本作における悪党たちが檻の中に入ったまま、幕を閉じました。中途半端なラストで、なんか気持ちが落ち着かない気分です。
またユタニ社の軍用機がネバーランドへ到着し、何が起こるんだろうかと先が気になりますね。
「カーシュは何者か?」や「ウェンディにだけエイリアンの声が聞こえる理由」などの伏線も回収されていないので、謎が謎のままで終わってしまっています。
まぁ続きはシーズン2で!ということなんでしょうが、もう少しちゃんとしたシーズン1としてのオチをつけてほしかったように思いました。続編期待できて嬉しいのですが、あまりにも中途半端なので、納得ができないという方もおられるでしょう。
ブレードランナーとの繋がりを感じる
『エイリアンアース』の製作総指揮には、1作目『エイリアン』の監督であり、シリーズの生みの親であるリドリー・スコットの名前がクレジットされています。またリドスコといえば、映画『ブレードランナー』の監督としても有名です。ファンの間ではエイリアン・シリーズとブレランの世界線が繋がっているのではないか?という考察やリドリー・スコット・ユニバースも期待されていますが、こちらは権利の関係上、なかなか難しいようです。
『エイリアン:アース』では、プロディジー・シティの描写が、明らかにブレランっぽいと話題になりました。
筆者の感想としては、まずシンセのカーシュが、映画『ブレードランナー』のロイ・バッティにしか見えませんでした。カーシュは何を考えているかわからず、感情があるかないかわからないシンセなんですよね。
そして羊の登場。映画『ブレードランナー』の原作は、フィリップ・K・ディックのSF小説である『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』なので、テンションが爆上がりでした。そしてこの羊の目玉があんなことになるなんて!という驚きと、それを正面から捉えたカメラワークがシュールで気に入っています。
ちなみにこのシーンは実物の羊とアニマトロニクス、CGと計3匹の羊が使用されました。実物の羊は「ヴィクトリア」という美しい羊で、撮影現場では皆から愛されていたようです。
ピーターパンに関連する登場人物が続々と登場!
ウェンディをはじめとするハイブリッドは、ロスト・ボーイズとよばれますが、これは『ピーターパン』のネバーランドにいた子供グループと同じ名前です。それぞれの名前も、ほとんどがピーター・パンのロスト・ボーイズのメンバーの名前と同じです。
この章では『ピーター・パン』との関連をふまえながら、関係のある『エイリアン:アース』の登場人物について、ご紹介します。
ウェンディ
ピーターパンに登場する女の子として、その名はあまりにも有名。原作ピーター・パンのウェンディは、ピーターに誘われ弟2人と、ネバーランドへいきます。
一方エイリアンアースでのウェンディ(演:シドニー・チャンドラー)は、一番最初に永遠の命(と言われていた)を手に入れたハイブリッドです。しっかり者でお姉さんっぽいウェンディは、以後ロスト・ボーイズのリーダー的存在になります。
ボーイ・カヴァリエ
ボーイ・カヴァリエ(演:サミュエル・ブレンキン)プロディジー社の超天才CEO。わずか6歳で、プロディジー社を起立しました。彼はハイブリッドではなく人間なのですが、ふるまいが子供っぽく実にピーターパン的です。設定上ハイブリッドの仕草が子供らしい理由はわかりますが、カヴァリエについては何の説明もありません。
しかしカヴァリエの愛読書は『ピーター・パン』なので、ピーターに憧れている人物とも言えるでしょう。ピーターパン自体がちょっとアレなキャラですが、カヴァリエはそのピーターに自分を重ね合わせてみるような歪んだ人物。カヴァリエがいつも裸足なのは、足を守る靴を履く必要がないかららしいです。
ただしカヴァリエを演じたサミュエル・ブレンキンは以下のように語っています。
ノアに勧められてトワイライト・ゾーンにある1話を見た。主人公は博識で念力が使える少年だ。現実から町を引っこ抜き、自分だけの世界に移動する。人の心も読める。誰かが悪い考えを抱くとすぐ気づくんだ。その人は煉獄みたいなトウモロコシ畑に送られ二度と戻れない。今回の役作りに必要なことがすべて詰まっていた。
よって、トワイライト・ゾーンに出ていた少年も、カヴァリエという役作りの元ネタになっているわけです。おそらくこれは、トワイライト・ゾーンの第3シーズンにある『こどもの世界』というエピソードでしょう。映画『トワイライトゾーン/超次元の体験』の第3話でジョー・ダンテ監督 の「こどもの世界」という話がありますが、その元ネタと言われているエピソードですね。
エイリアン:アースでも、子供のようなボーイ・カヴァリエに周囲の大人は歯向かうことができませんでした。
モロー
モロー(演:バボー・シーセイ)はドラマ『エイリアン:アース』におけるアンチ・ヒーロー。役柄はウェイランドユタニ社のサイボーグです。左手が機械であるサイボーグのモローは、『ピーターパン』におけるフック船長を想起させられます。カヴァリエ(ピーター)と敵対関係にあること、悲しい過去を持っていることも、フックと共通する部分です。
原作ではフック船長の右手が鉤爪になっていますが、1953年のアニメ映画『ピーター・パン』では、フック船長の左手が鉤爪になっています。
原作でのフックは、昔名門校に通っていたらしく、えらく行儀にこだわる男として描かれています。残酷でありながら「自分は今日、行儀が良かったか?」を自分自身に毎晩問うような、品のある男なのです。
エイリアンアースでも、第5話のマジノ号の脱出シーンでモローに共感する人が増えました。モローは、自身の経験上、独自のモラルを持ち合わせている悪党。スライトリーには「マシンはマシンのままか?」という、哲学的な問いかけをします。
スライトリー
ロスト・ボーイズのメンバーの1人。上の画像の左側にいるのがスライトリーです。アニメ映画『ピーターパン』でのスライトリーは、狐の着ぐるみを着ていました。エイリアンアースでのスライトリー(演:アダーシュ・ゴーラヴ)は、モローに脅されて仲間を騙してしまうというハラハラさせられるキャラ。
スミー
ロスト・ボーイズのうちの1人で、スライトリーと仲良しです。『ピーターパン』の世界では、スミーはフック船長の手下。ですから、なぜロスト・ボーイズのメンバーにスミーの名がついているのかは謎ですね。ピーター・パンでのスミーは、こども達に優しくやや間抜けな海賊です。エイリアンアースでのスミー(演:ジョナサン・アジャイ)は、優しく安心できる癒しキャラクターでした。
ニブス
ロスト・ボーイズのうちの1人。墜落したマジノ号内でT.オセルスに遭遇したトラウマが原因で、急に「赤ちゃんができた」と言い出したあのニブスです。アニメ映画『ピーターパン』では女の子ではなく男の子で、ウサギの着ぐるみを着ていました。ニブスは第3話で「なぜ『ピーター・パン』の登場人物の名を?」と、自分たちの名前に疑問を持っています。また「物語とは性別も違う」と性別の違いについても言及しています。
ニブスを演じたリリー・ニューマークは、ニブスが自身の存在意義を見失い困惑していると語りました。
ニブスはかなり複雑なキャラクター。機械の体を受け入れることができないので、他のハイブリッドみたいに陽気に毎日を楽しむことができないんです。ドラマ内ではニブスの目が、いつも強調されているように感じました。目が飛び出していて、何かに脅えているような印象です。研究所の大人たちが自分の味方ではない、何もしてくれない、と早い段階で気づいていたハイブリッドでもあります。
カーリー
『ピーターパン』の原作ではカーリー、アニメ映画(1953年)ではカビーという名で登場する男の子です。エイリアン:アースの中のカーリーは女の子。カーリーは、ルーム委員とかやりそうな優等生タイプで、いつもカヴァリエに認められたいと思っています。カヴァリエから評価されているウェンディに嫉妬するカーリーは、まるでティンカーベルのようなキャラクターですね。
カーリーの人間時代の名前はジェーン。ドラマ内でも言及されますが、「ジェーン」というのはピーター・パンの物語では大人になったウェンディの娘の名前なんです。つまりは二番手ということですね。
トゥートルズ
トゥートルズも、ピーター・パンのロストボーイズのメンバーの名前からつけられています。
エイリアン:アースでは永遠の命を手に入れたといわれていたハイブリッドの子供たち。しかし残念ながら、トゥートルズは6話目の終盤に命を落としました。
研究に目覚めたトゥートルズはアイザック・ニュートン卿にちなみ「アイザック」に改名を望んでいたので、カヴァリエに間引かれたのでは?という考察もできます。
【エイリアンアース】と案外怖いピーターパンとの類似点やつながり
エイリアンアースのショーランナーであるノア・ホーリーは、「ピーターパン」の原作は闇が深い、ピーターは子供の成長を嫌うとコメンタリーで語っています。ここからは、エイリアンアースとピーター・パンの類似点について考えていきます。
考察にあたり、以下のピーター・パン関連作品を参考にしました。ネタバレには、くれぐれもご注意ください!
・アニメ映画『ピーター・パン(1953)』と『ピーター・パン2 ネバーランドの秘密』
・原作の著者はJ.M.バリ。私が読んだのは、厨川圭子訳の岩波版『ピーター・パン』です。
舞台はネバーランド研究島!
ドラマ『エイリアンアース』で、ピーターパンの話が寓話的に取り入れられているのは、作品を観た方ならすでにご存知でしょう。物語の中心となるプロディジー社の研究施設が、ネバーランド研究島なので一目瞭然です。
病気の少女マーシーが被験者となり、ハイブリッド第1号として生まれ変わった際に名乗った名前はウェンディで、ピーターパンに登場する女の子と同じ名前ですね。研究中、実験室の天井には、1953年製作のアニメ映画『ピーターパン』の各場面が映し出されました。
忘れっぽいピーターパンと気まぐれなカヴァリエ
そもそも1953年のディズニーアニメ映画『ピーター・パン』は、ピーターを輝かしい存在として描いています。でも原作のピーターというキャラクターには、違和感を感じました。ピーターは移り気で落ち着きがなく、ウェンディのことをほとんど見ていません。
そして原作でのピーターパンは、とにかくピーターの忘れっぽさが強調されています。
フック船長を殺したピーターですが、月日が経つと「フック船長ってだれ?」と訊ね、ウェンディを驚かせました。
「殺しちまったやつのことなんか、忘れちまうさ」
ピーターパンは目の前のことに夢中で、過去に出会った人物については恐ろしいほど無関心。また原作では、ピーターがネバーランドの権力者であることが強調されています。
エイリアン:アースでもカヴァリエは、マジノ号が墜落した際に(ウェンディの要望があったにしても)、ハイブリッドを気まぐれ・面白半分で救助に向かわせています。またカヴァリエは、途中でミッションを変更し、ハイブリッドたちにエイリアンの捕獲を命じました。このような気まぐれなカヴァリエの手本になっているのが、ピーターなのです。
ご飯が食べれるかどうかはピーター次第!実はおそろしい権力者
『ピーター・パン』の原作では、ネバーランドは子供だけが住める島。原作では、ピーターとロストボーイズとウェンディたちは、同じ地下の家に住んでいました。ベッドが1つしかないので、寝るときはギュウギュウ詰め。
食事に関してもピーターは遊び半分で「うそっこ」の食事と「ほんもの」の食事を混ぜています。
よってロストボーイズたちは、うそっこの食事の日には、食事を食べるふりをするだけでご飯を食べることができませんでした。つまりご飯を食べれるかどうかは、ピーターの気分しだいで決まったのです。
ごっこ遊びのノリですが、異論を唱えると体罰が与えられたと書かれており、いよいよピーターが怖くなりました。
原作ではウェンディが両親に頼んで、ロストボーイズたちはウェンディの家の養子になり一件落着。ピーターだけが、養子になることを拒みネバーランドへ帰っていくという着地になっています。
ドラマ『エイリアン アース』のカヴァリエには、この原作のピーター・パンをデフォルメした怖さが感じられます。
『エイリアンアース』でのネバーランドも、幼稚なカヴァリエが子供たちを島に隔離していました。ノア・ホーリーは「子供のまま大人の体に閉じ込めるのは、無力な状態にしておくためだ」と語っています。
カヴァリエはトゥートルズの死を確認したときも、それほど悲しんでいるように見えませんでした。それどころか、羊に寄生したT.オセルスが高度な知能を持つ生命体だと気付き大興奮。もしT.オセルスが人間に寄生したらどうなるかを想像しながらワクワクし、次は誰に寄生させるかを考える残酷な人物です。
カヴァリエはハイブリッドたちを、自分の所有物であるかのように扱います。アトムはウェンディについて、プロディジー社の所有物だと主張していましたね。人間であるウェンディの兄ハーミットすらも、人工肺にしてやったからという理由で、アトムから永久雇用を言い渡されました。
原作ではロストボーイズの靴下の修繕に明け暮れるウェンディ
1953年のアニメ映画版『ピーター・パン』で、ウェンディと弟たちがネバーランドに滞在したのは短期間でした。
ですが、原作の方ではウェンディらのネバーランドへの滞在期間が長く、ウェンディの両親が子供たちを心配するほどでした。ウェンディの父は犬のナナを鎖で繋いだことを反省し、自身に犬小屋の中で暮らすという罰を与えます。こうやって責任ある大人の男性としての態度が描かれているわけです。
『ピーター・パン』の原作のネバーランドでは、ウェンディはほとんどお母さん代わり。ロストボーイズや弟、ピーターの身の回りの世話に明け暮れ疲弊します。夜には、子供たちの靴下の修繕をしなければなりませんでした。ひそかにお母さんごっこを楽しんでいたウェンディですが、それはピーターを愛していたから。
しかしピーターが妻ではなく、お母さんを必要としていたことに気づくとショックで固まります。まともな大人がいない世界で、ずっと母親の役割を押し付けられていたウェンディ。母の大変さを知ると同時に、両親に心配をかけているのだと気付いたんだと思います。そして、突然「帰る」と言い出しました。
このように『ピーターパン』は、ウェンディが大人になっていくという話です。
一方でエイリアンアースでのウェンディも、精神的には12歳でありながら、リーダーなのでお姉さん的な役目を押し付けられていました。ウェンディは周囲の人の「こうあってほしい」という要求に応えなければならず、疲れてしまいます。
ウェンディらハイブリッドを所有物扱いするカヴァリエと、心配性で過保護な兄ジョー。ハイブリッドのボディを手に入れたことで、ウェンディにはもう違う世界が見えているのに、兄はそんなウェンディを認めようとしません。兄は、人間時代のマーシーを求めてくるのです。
ニブスの異変に真っ先に気づくのもウェンディです。長女の人には、ウェンディの気持ちが理解できるかもしれません。ウェンディは、最初のハイブリッドということもあり、ハイブリッド全員の出来事について責任を感じています。
カヴァリエという子供に振り回されるお世話係のデイムは、信用できない大人。カーシュも何を考えているのかわからず、不気味です。
こんな信用ならない大人に囲まれる中、ウェンディは急激な精神的成長を強いられるのです。その結果、エイリアンという共謀者を見つけてしまいました。
間引きを連想させられるトゥートルズの死!あれは事故か?
第6話ではトゥートルズが悲惨な死をとげます。ハイブリッドたちの未熟さを思いしらされるシーン。大人ぶっていたけど、中身はまだほんの子供だったんよ、と大勢の視聴者が悲しみました。そして物語では、ハイブリッドが永遠の命を持っているわけではない、とわかります。
このシーンについて一部では、トゥートルズの死が、ボーイ・カヴァリエの計らいによるものではないか?と考えられています。筆者はこのアクシデント自体が、ピーター・パンの間引きから着想を得ているのではないかと考えました。
ボーイ・カヴァリエは、ハイブリッドたちの自我の目覚めや進化を恐れています。カーリーがフランス語を話せるようになったと知ったとき、カヴァリエの表情は固まりました。つまり、大人になってほしくないんです。
ピーターパンの原作には、ネバーランドは子供だけが住める島なので、大きくなるとピーターに間引かれてしまう、という内容がさらりと書かれています。
以前から研究熱心だったトゥートルズは、「科学者になりたい」という夢を持っていました。そしてある日自分の名を「アイザック」に改名したい旨をカーシュに伝えます。その時のカーシュの複雑な表情。トゥートルズには自我が芽生えているんです。
カーシュは出先から研究室でアーサーがフェイスハガーに襲われたのを、モニターで眺めていました。もしかしたら、一連のアクシデントを把握していたかもしれません。しかし…
カヴァリエ「順調か?」
カーシュ「はい」
と、スルー。カヴァリエに状況を知らせませんでした。もしもカヴァリエがカーシュに間引きを命じていたなら、「順調か?」と聞かれ「はい」と答えたカーシュの言動の辻褄が合います。
また、確かにあのアクシデント自体は、T.オセルスが予想に反して高度な知能を持っていたがゆえの結果だったかもしれません。しかしトゥートルズは、いずれ間引かれる予定だった可能性があります。
島の子供の数は変わる
殺されることもあるし...。
大人になってしまったら--
島にはいられない
これは、トゥートルズ(アイザック)が殺されたシーンに入るナレーションです。
筆者の個人的感想としては「カーシュはとにかくあやしいぞ!」ということです。何を企んでいるかわかりません。でも、このキャラが本作を面白くしてると思いましたね。
また突然「妊娠した」と言い出したニブスの記憶も、アトムの指示で消されてしまいました。妊娠できる=大人ということですから、ハイブリッドたちが子供を産むと言いだすのは好ましくありません。実際にはニブスの身体は妊娠していないので、記憶を消さなくても対処できたはず。
ニブスの件でわかったことは、ハイブリッドたちの心が企業の所有物でしかないという現状。「こうあってほしい」と常に求められ、気に入らないと手を加えられる無力な存在ということになります。
エイリアンは『ピーター・パン』におけるワニの象徴か?
第3話でハーミットを助けようとしたウェンディが、エイリアンと戦う時に使った武器は、フックの鉤爪と同じ形状の針金です。これはエイリアン=ワニを暗示しているように思えました。
また第4話では、ウェンディにだけエイリアンの鳴き声が聞こえる問題について、カヴァリエが
「エイリアンと戦ってる時、海賊と戦ってる気がした?『ピーター・パン』だ。そうだ、ワニだ!ワニと戦ったから、時計の音が聞こえるんだ!」
と推測しています。
原作の『ピーター・パン』や劇場版では、どういうわけか、ワニが時計を飲み込んでしまっているんです。よってワニが近づいてくると、フックは時計の「チック・タック」という音で気づき、脅えます。時計の音がするワニなんです。
よってエイリアンをワニに見立てているのだと考えられます。
エイリアン:アースのテーマその①母性とフェミニズム
これまで映画『エイリアン』シリーズでは、母性やフェミニズムがテーマとして描かれてきました。本作でもこのテーマは引き継がれています。
1作目同様戦う女性が主人公
1作目『エイリアン』のリプリーは、男性に媚びません。男性に守ってもらわず、1人で冷静に行動できるタイプの女性が、エイリアンと戦い最後まで生き延びる話です。
ノストロモ号内の会話のやり取りを見れば、リプリーが父権制社会での生きづらさを感じているとわかります。男性クルーらのリプリーへの態度は、威圧的だったりどこか見下していたりと腹立たしいです。そんな中で毅然とし、任務を遂行するリプリーはヒーロー。
リプリーが戦う相手はエイリアン。奴らはフェイスハガーで、体内に勝手に生き物を植え付けてきます。
よって彼女はエイリアン=女を出産のための道具としか見ない男性からの攻撃と戦っているのではないか?だから、エイリアンはフェミニストからも好評という考察もなされています。まあこれについては様々な意見があると思いますが、この筋でエイリアン:アースを考えてみると面白いなと思いました。
エイリアン:アースではウェンディがゼノを手懐けてしまいました。戦うのではなく、操り利用するのです。これについては「ゼノモーフは人類の敵であってほしい」や「なんか違う」などの感想が溢れました。実際、根本的な何かを覆された気分にさせられます。
しかし、家父長制を信じる有害な男らしさを手懐けコントロールできるなら、巨大企業の権力者であるテックオリガルヒに立ち向かうことができるかも、という希望を感じました。現に物語では、エイリアンを操ったウェンディがボーイ・カヴァリエを脅かします。
過去作で描かれてきた出産を求められることへの嫌悪感
ゼノモーフに襲われる人物を女性に見立てると、勇敢に戦うリプリーから感じられるのは女性は子供を産むための道具ではない、という主張です。このようにエイリアン・シリーズは、女を出産のための道具として見る風潮への嫌悪感を描いてきたように思えます。
ゼノモーフの形状はモロに男性のそれですし、襲う時は、口から涎をたらします。よって意地悪な見方をすればですが、エイリアンに対して感じる恐怖や嫌悪感は、むやみやたらと自分のコピーを作りたがる男性へのそれとなるわけです。
女性を出産マシンのように考える男性は、全体からするとほんの一部です。筆者が過去に出会った男性も特に女性を見下しておらず、大抵、皆親切で良識があったように思います。アッシュのような高圧的な人物も、職場でたまに見かける程度でした。
しかし、この間TWITTER(あえて)で、ある男性が「毎年作れば最低10人つくれる」という内容の投稿をし、炎上しているのを見かけました。みると「人間は家畜じゃない」や「頭悪い」や「出産は命がけ」など怒りに満ちた引用ツイがたくさんついています。少子化問題は深刻ですが、この男性ように考える人がいるという事実を知りちょっと驚きましたね。
エイリアン:アースでは、ニブスが想像妊娠しますが、勝手に記憶を消されてしまいます。妊娠に関しての話が、本人の意志ではなく、巨大企業に委ねられてしまったというね。状況は異なりますが、出産にまつわることなのに、本人の意志が尊重されていないという点については同じです。
過去シリーズでたびたび描かれる女性軽視とその代償
1作目『エイリアン』では、顔にフェイスハガーが付着したケインを船内に入れるかどうかであれこれ揉めます。冷静なリプリーは規則に従い「入れない」という意見を主張しますが、男性クルーらはそれを無視。
結果ケインを迎え入れたことで、船内にフェイスハガーが侵入しとんでもない事態になっていくわけです。
エイリアン:アースでは、宇宙船内が舞台の第5話がそんな感じでした。船長代理のサヴェリ(女性)が、ミーティングしている間もガヤガヤして話を聞かない船員。エンジニアのマラカイトは舐めきった態度で、失礼にも食事を始めました。
ブチ切れたモローがテーブルを叩くと、皆黙り、その場はシーンと静まり返ります。マラカイトは食事の際喉を詰まらせ、咄嗟にあの水筒に手を伸ばしてしまったため、大惨事へと発展していきました。あのシーンは本当にすごかった。
デイムとニブスの自己防衛的母性
デイムは母性を盾に自分の罪悪感から、逃れようとしています。アーサーの「最悪の場合殺人」というセリフにあるように、ロストボーイズたちの人間時代の亡骸は、墓の中にあります。デイムは、内心後ろめたく思っているのでしょう。だからこそ、ニブスをはじめとするハイブリッドの子供たちをケアし、彼らの笑顔を見ることで、自分は正しいことをしたと思いたい。そのような理由で母性を武器にします。
奇妙な大人たちの支配下にあるニブスは、状況を支配するために妊娠という幻想の世界に身を置いた可能性も考えられます。以下はニブスの想像妊娠についての、ニブス役リリー・ニューマークのコメンタリーです。
ストレスを減らすために幻想の世界に身を置いた。現実逃避なの。子供がよくやること。心の底では信じてないの。トラウマ反応よ。(中略)それに大人は知らないけど、心の力は身体的な可能性も広げる。
妊娠は絶対ありえない。人間の体ではないもの。でも心の力が腹部にエネルギーを送ってるのかも。妊娠の目的はニブスが状況を支配するため。新しい人生に対して、自立性を高めようとしている。
「母は強し」という言葉があるように、ニブスは母親になることで、その場をコントロールできると思ったのかもしれません。また彼女が母代りのデイムから支配されていると感じたため、自分も母親的存在になりたいと思った可能性もあります。
エイリアン:アースのテーマその②自立
ウェンディ
アニメ版ピーター・パンのウェンディは、ネバーランドへ行くまでは、個室で寝ることを拒んでいましたが、ネバーランドから帰ってくると1人で眠れるようになります。
いわば原作もアニメ版も、ウェンディの成長する姿が描かれています。
エイリアンアースでのウェンディも、序盤は兄ハーミットにべったり。監視カメラをハッキングして、ストーカーのように兄を眺めていました。
ハーミットがネバーランドに来てからも、気持ち的に頼れるのは兄のみ。ただし、ハイブリッドになったウェンディは兄よりも身体が強くなってしまい複雑な心境です。またウェンディには、エイリアンの声が聞こえるなど、兄とは違う世界が見えてしまいました。
ウェンディは、自分だけにエイリアンの鳴き声が聞こえることで「自分がエイリアンから選ばれた」という責任を感じています。
兄ハーミットは、人間なのでハイブリッドの気持ちは理解できません。兄はもう自分の悩みを解決してくれない。それを悟ったウェンディは、人間のエゴのせいで捕獲されたエイリアンに同情し、友達になろうとします。
エイリアンもハイブリッドも、プロディジー社の研究対象という意味では同じ境遇だからです。そのような意味では、プロディジー社のカヴァリエは敵。己の真の敵が誰であるかを知ることは、自立への第一歩につながるのではないかと思います。
ニブス
ニブスを演じたリリー・ニューマークは、ニブスが前の人生で(人間の子供だった頃)深く傷ついているから、注意しないと症状を誘発してしまうと話しています。ショーランナーのノアとも、初めて会った時にこれについて話したそう。
リリーは、ニブスは過去に身体的な虐待を受けているかもしれない、と考えたようです。妊娠の騒動についても、考えたくはないがレイプを連想させられるけど、目を背けられなかったと語りました。そのような意味で、ニブスは非常に難しい苦悩を抱えたキャラクターです。
ニブスがこれまで母親代わりだったデイムに反抗するシーンは、怖くて度肝を抜かれました。母として慕っていたデイムにこんなことをするのは辛いはず。しかし皮肉なことに、ニブスはあのシーンで、自分の身体が人間より優れた攻撃性を持っていると気づいたのかもしれません。
その後、大人たちの嘘に気づき覚醒です。
嘘とは…
まずトゥートルズの死によってハイブリッドが不老不死ではないと判明しました。
次に自分の記憶が断りもなく勝手に消去されたと、知ります。
さらに第7話では、自分たちの墓地を見つけてしまいました。
最初から状況を両手放しに喜べなかったニブスは、カヴァリエをはじめとする変な大人のコントロールに、薄々気づいていました。嘘がわかると怒り炸裂!ボート上で、お気に入りのぬいぐるみを捨てた兵士を、むごたらしく攻撃しました。
こうしてニブスは、大人への第一歩を歩みはじめたのだと思います。
スライトリー
スライトリーは、ルールを破ることでプロディジー社への忠誠心を放棄。スライトリーにとって家族を守る=正しいことをするために、自分が信じた道を突き進みます。
スライトリーがまだほんの子供だと気づき、彼を上手く利用したモロー。モローのモデルと思われるフックも、人の望みを把握し、巧みに利用しました。
フックはアニメ版『ピーター・パン』ではティンカーベルの嫉妬心を役立て、続編のアニメ版『ピーター・パン2 ネバーランドの秘密』では、家に帰りたがっているジェーンへ交渉を持ちかけます。
スライトリーの弱点は家族。そこに気づいたモローは彼の母親を脅すことで、スライトリーを手玉に取りました。また父親の愛に飢えているスライトリーは、モローに対し父性のようなものを感じていたのかもしれません。
その結果皮肉にも、アーサーという唯一親代わりになりそうなまともな人間を陥れてしまいます。ロストボーイズを注意深く観察していたアーサーは、スライトリーが自分を騙していると気づき「一度嘘をついたら、後戻りできなくなる」と警告。この人が正しいことを教えてくれる人だった…と自身の失敗に気づいた時はもう遅く、スライトリーは途方もない悔恨の念に駆られます。この大失敗が、スライトリーという子供を、大きく成長させるのでした。
5種の地球外生命体とは
以下がマジノ号によって運ばれてきた、5種類の生命体になります。
エイリアン(ゼノモーフ)
『エイリアン』シリーズでおなじみのアイツ。エイリアンの成体。大人になったエイリアンが、通常ゼノモーフとよばれます。
卵から飛び出し人の顔に貼り付く形態のヤツは、フェイスハガー。人間の胸部を突き破って出てくるヤツは、チェストバスターですね。
Unnamed Fly Species
第6話に登場する巨大なハエ型のエイリアンですが名前は、決まっていないようです。
第6話で、閉じ込められたトゥートルズの顔面に液体を吹きかけて襲いました。この地球外生命体は、体外で食物を消化します。金属や合金を捕食するため、ハイブリッドで機械のボディを持つトゥートルズは、この巨大ハエの餌にされてしまいました。
T.オセルス
眼球のような寄生体で、別名はオクトパス・アイ。海外では、アイミッジと呼ばれていたりもします。
眼球からタコの足のようなものが生えていて、素早く移動できるうえ、高度な知能も持ち合わせた恐ろしいヤツ。羊の左目として寄生し、間接的ですがトゥートルズを殺しました。その後の円周率テストで知能があると判明。
T.オセルスが登場すると、必ず何かトラブルが起こる。最高にキャッチ―なカオス・メーカーです。
Species 19
第5話に登場した、マダニのような生命体です。チブゾーの水筒の中に、幼虫を産みつけました。そして、その水筒の水を飲んだマラカイトの体内で繁殖っていう最悪な状況に。
マダニという身近な生き物が存在するせいか、恐怖や嫌悪感が凄かったです。幼虫を産みつけるくだりから、ハラハラ・ドキドキのスリリングな展開が続きました。
D. Plumbicare
D. Plumbicareプランビケアは、球根型の食虫植物のような生命体です。墜落したマジノ号で、カーシュやトゥートルズによって捕獲され、ネバーランドの研究施設に運ばれました。
最終話である第8話では、天井からぶら下がった状態のまま女性兵士サイベリアン(演:ディエム・カミラ)を飲み込んで体内に取り入れ、殺害。これまでじっとしていたのに!実に恐ろしい生き物です。
まとめ
この記事ではドラマ『エイリアン:アース』について、ピーター・パンとのつながりを中心に、作品のテーマなどを考察してまいりました。
エイリアン:アースは、ここで挙げた以外にも、人間とは何か、ポストヒューマニズム、企業国家の危惧性、永遠の命をめぐる問題、など深いテーマがてんこ盛りでしたね。機会があれば、また考察してみたいと思います。
長々と書きましたが『エイリアン』シリーズは、ゼノが暴れてギャーってなって、血がピューって飛んだらもうそれでいいんよ、派の皆さまここまでお読みくださりありがとうございます。それ以外の読者様も最後までお読みくださり、誠にありがとうございます!今後もSFに関する記事を、頑張ってアップしていく予定です。





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