アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

映画【ファイナル・ゲーム】あらすじ・キャスト|蝿の王との比較などをネタバレ考察

以前ドラマ版の『蝿の王』のレビューを書きました。

↓ 

analogchan.hatenablog.jp

そしては今回は、2014年に製作された映画『ファイナル・ゲーム』のレビューを書いてみたいと思います。こちらは、蝿の王の大人版と言っても差し支えないでしょう。蝿の王を知らずに、この映画を観た方はなんのことやら、と思われるかもしれません。

そこでこの記事では、映画『ファイナル・ゲーム』のあらすじ、キャストに加え、蝿の王との類似性、総合的な感想などを書いていきたいと思います。

本記事は映画『ファイナル・ゲーム』の完全ネタバレ記事となります。また『蠅の王』のストーリーの結末、ネタバレ部分にも容赦なく触れておりますので、未見の方はご注意ください!

 

 

映画【ファイナル・ゲーム】の作品概要

原題:Eden/上映時間:97分/製作年:2014年

ファイナル・ゲーム [DVD]

監督:シャム・マディラジュ
脚本:マーク・マヴロタラシティス

原案:ネイト・パーカー
出演:ネイト・パーカー、イーサン・ペック、サン・カン、ディエゴ・ボネータ、ユージン・サイモン、ジェシカ・ロウンズほか

 

このシャム・マディラジュという監督は、インドの広告業界でキャリアを築いてこられた方です。過去にはカンヌ広告祭、ニューヨーク広告祭、クリオ賞などで数々の賞を受賞されました。だから映画は、あんまり撮ってないんです。過去作ではこの『ファイナル・ゲーム』と『Cake ケーキ ~悲しみが通り過ぎるまで』ぐらい。

 

そして日本では、2026年11月13日に公開される映画『55 FIFTY FIVE/番号で呼ばれた少年』の監督・を務めておられます。この『55 FIFTY FIVE/番号で呼ばれた少年』の製作は、なんとリドリー・スコットになってました。リドリー・スコットもまた、広告業界でキャリアを積んだ方ですね。

 

一方でこの『ファイナル・ゲーム』の製作には、ジャウム・コレット=セラも名を連ねています。そしてジャウム・コレット=セラ監督の映画『フライト・ゲーム』にも出演していたネイト・パーカーが原案を出し、主演を務めました。

 

それ以外の注目のキャストは、ワイ・スピのハン役で著名なサン・カンさん。サン・カンさんが出演しているから、というのが私がこの映画を観ようと思ったきっかけです。

あとは、グレゴリー・ペックの孫にあたるイーサン・ペックが主人公の宿敵として出演しています。

 

映画【ファイナル・ゲーム】のキャスト

映画『ファイナル・ゲーム』の登場人物をご紹介します。

スリム(演:ネイト・パーカー)

スリム役ネイト・パーカーの画像

photo taken by flickr user the_g_man / Actor Nate Parker / CC BY 2.0

 

サッカーチームのキャプテン。冒頭シーンを観る限り、ワールドカップでもさぞかし活躍したことがうかがえる。浮わついた様子もなく、物静かで温厚な黒人男性。冒頭から、エレナと付き合っているような雰囲気を醸し出していた。

『蝿の王』で言えば、ラルフに相応する人物と思われる。サッカーチームでもキャプテンをしていたことから、人望がある。

 

アンドレアス(演:イーサン・ペック)

アンドレアス役イーサン・ペックの画像

画像引用:[Photograph by Greg2600](https://commons. /wiki/File:Ethan_Peck_(46909546282).jpg) / Ethan Peck / CC BY-SA 2.0

 

サッカーチームの副キャプテンだと思われる。同じチームにいる弟のジョージも一緒に遭難した。島の暮らしが始まってからは、やたらとリーダーシップを取りたがるが、日頃からキャプテンとして信頼されているスリムの方が人気高め。

『蝿の王』で言えば、ジャックに相応する人物と思われる。食糧の少なさをやたら気にしているのも、なんかジャックっぽい。

 

コニー(演:サン・カン)

コニー役サン・カンの画像

画像引用:flickr user photoren (Actor Sung Kang), クリエイティブ・コモンズ [CC BY 2.0] に基づき作成

 

サッカーチームのトレーナー。飛行機墜落後は、せっせと人命救助にあたる。『蝿の王』で例えるなら、サイモンとピギーを足して2で割ったようなキャラクター。個人的には、やはりピギーよりもサイモンに似ていると思う。

ベリーを見つけたけど、毒があって食べれないとわかるなど、知的さもあり、そこはピギーっぽい。かなり早い段階で、人間性を失っていく仲間を見て絶望的な気分を味わう。

 

エレナ(演:ジェシカ・ラウンズ)

エレン役ジェシカ・ラウンズの画像

画像引用:Photo by Alex Oliveira / Peabody Awards / Jessica Lowndes / CC BY 2.0

サッカーチームの監督の娘なので、飛行機に乗っていた。飛行機事故で両親を失ったという悲しみを抱えている。冒頭シーンからみる限り、スリムと恋愛関係にあったような感じ。だがスリムが怪我人切り捨てに賛成したため、ちょっと気持ちが離れる。がその後なぜか発案者のアンドレアスと肉体関係を持つという、よくわからない行動に出た。最終的にはスリムに救助される。

 

エヴァ(演:レオレ・ハヨン)

エレナの妹。姉と同じく、サッカーチームの監督の娘ということで、飛行機に乗っていた。無人島に遭難し死者も出ている中、フェリックスとラブラブムードになり、洞窟の中でイチャイチャ。これぐらいのポジティブさがないと生き残れないのかもしれないと思わせてくれる癒しキャラ。案外知的で、ボートを集水装置に変えるなど斬新なアイデアを出したりもした。

 

フェリックス(演:マリオ・カサス)

エヴァとラブラブになり、島でイチャイチャしたりしてそこはけしからんのだけど、基本的には、おおらかで優しい人物。怪我人の切り捨てにも反対。スリムを庇おうとして命を落とした。

アーニー(演:ディエゴ・ボネータ)

アーニー役ディエゴ・ボネータの画像

画像引用:Gage Skidmore / Actor Diego Boneta / CC BY-SA 3.0

かなり早い段階で、喧嘩っぱやく、怒りっぽさが強調されたキャラクター。サメから逃げて食糧をのがしたケンにも攻撃的な態度。終盤にいたっては、エレナを強姦しようとするところまで落ちぶれる。

 

ジョージ(演:ジョーイ・ポラーリ)

アンドレアスの弟だが、兄とは対照的で、おとなしい性格。ダグと仲がよい。

 

ダグ(演:マシュー・テストロ)

アンドレアスの弟のジョージと仲がよかった。突然、有刺鉄線に引っかかり、身動きが取れなくなった。ジョージが地雷を踏むところを目の前で見てしまう。ジョージの死後、メンタルを病んだような感じだったが、最終的には回復しスリム側に付くようになる。

ケネフィック(演:ユージン・サイモン)

通称ケン。臆病さが強調されたキャラクター。確保した食糧を任されていたが、サメに怯えて逃げてしまい、食糧を失う。この件でアンドレアスに食事抜きのペナルティを与えられたことが癇に触ったのか、後になって皆の食糧を陰で食べていたと判明。最終的にはスリム側につく。スリムの影響を受け、1人で偵察に行くなど、勇気ある姿を見せてくれる。

 

映画【ファイナル・ゲーム】のあらすじ

youtu.be

サッカーのワールドカップで、なんと!ブラジルに勝ったアメリカのチームの人たちが主な登場人物という設定。まぁ、まずその設定に驚かされる。そして、そのチームが帰国するために乗った飛行機が突然墜落。

1日目

飛行機事故での死者は、22名と判明。スリム、フィリックス、コニー、アンドレアス、アーニー、マルキーズ、パットン、マッケンナ、アンドレアスの弟ジョージ、エレナ、エヴァ、ダグ、ステファン、セヴィーなど全部で15人が生き残った。しかし突然スリムが鼻血を出し、減圧症で倒れる。トレーナーのコニーは、負傷したセヴィーとステファンの看病に徹した。

 

2日目

残された食糧の少なさに、顔をしかめるアンドレアス。3人組が海で食料を確保。がその内の1人であるケネフィック(ケン)がサメを目撃し、逃げたために、食料を失う。ケネフィック(ケン)を責め立てるアーニー。アンドレアスはしくじったケンと、ギャーギャー騒ぎ喧嘩したアーニーに食事抜きの罰を与えた。

 

4日目

倒れたスリムがようやく目を覚ます。エレナが看病する中、昏々と眠っていたのだ。スリムが眠っている間に、チームの指揮をとっていたアンドレアスは、スリムに残りの水があと4日分しかないと伝える。スリムは助けを待とうと主張するが、アンドレアスは「助けなど来ない」と悲観的だった。

 

アンドレアスは怪我人のセヴィーやステファンに水を与えれば、無駄になるかもしれないと主張する。「1人か全員か」だと真顔で言った。

夜。この提案についてコニーが大反対する。弱った人を殺す気なのか?とブチ切れ。多数決をとると、賛成と反対で意見が真っ二つに割れた。スリムの意見で判定が決まるというとき、まさかのスリムが賛成の方に票を入れた。そんなスリムに、エレナはドン引き。

 

6日目

ステファンが死亡してしまう。すぐ近くに小さいが別の島があるとわかり、アンドレアス、アーニー、マルキーズ、エレナが探索に向かった。アンドレアスとちょっとラブラブムードになるエレナ。

 

コニーを探すスリム。コニーは、崖の上にいた。ステファンが死んで落ち込んでいたコニーだが、穏やかな口調で「帰れないのは怖くない。ここに残りたいと思うのが怖い」とスリムに話す。島に生き物はおらず、島中にあるベリーの実にも毒がある。コニーにはいずれ食糧が尽きる、絶望的な状況がわかっていた。スリムは「これは悪夢なんだ、いつか目が覚める」とコニーを励ました。しかし、スリムが目を離した隙に、コニーは崖から飛び降り自◯してしまう。

 

コニーが死亡すると、悪夢のような展開が続く。まず、アンドレアスの弟のジョージが地雷を踏んで、瀕死の傷を負った。大声でコニーの名を叫ぶアンドレアス。だが、コニーはもういない。深夜、アンドレアスは苦しむジョージを抱き抱えながら、絞殺した。

 

8日目

エヴァからの提案でゴムボートを解体して、集水装置を作ろうという話になった。ボートがないと島から逃げれなくなる、などの反対意見が出るが、スリムはこの案を採用。パットンとマッケンナは、壊される前にボートを奪って逃げてしまった。

 

9日目

ケンが、隠れて食糧を食べていたのが見つかる。仲間に責められボコられるケン。この騒ぎを止めようとしたスリムとアンドレアスが揉み合いの喧嘩になり、それを止めようとしたフィリックスがアンドレアスに刺され死亡してしまった。

アンドレアスは向こう側に見える島に渡り、そこで暮らすと言い始める。もうお前らとは、生活せんぞ!とそんな感じだった。

ダグ、エレナなど計4名がアンドレアス側につき、向こうの島へ渡った。アンドレアスとエレナは向こうの島に着くと色情に溺れ、ヤリまくる。

 

そしてエヴァ、セヴィー、ケン、セヴィーだけが元の島に残った。少量ながら水を集水したり、海で食糧を得たりしながら、生活する。一方アンドレアスたちは獲物をしとめるため武器作りに励むが、食糧は得られなかった。

 

10日目

足を負傷していたセヴィーだが、起き上がって皆と食事を取れるところまで回復する。

そんな折、スリムが管理していた水が盗まれる。スリムはアンドレアスたちの島へ行き「食糧不足で困っているなら戻って来ないか?」と声をかけるが、アンドレアスは応じなかった。

 

アンドレアスの留守中、エレナがアーニーに強姦されそうになる。エレナは反撃するが、頭を打ち動かなくなった。

 

一方で食糧を盗み食いしてしまったケンは責任を感じ、下手くそな泳ぎでヨタヨタしながら、アンドレアスたちの島へ向かう。島に上がったケンは、エレナが倒れている現場に居合わせた。

 

アーニーは、ケンがエレナを殺したのだと周囲に言い聞かせ、アンドレアスにもそう報告する。スリムの元へ戻ったケンは、泣きながら状況を伝える。

 

エレナを心配し、急いで島へ向かうスリム。

エレナは生きていた。スリムはエレナを救助し、自分たちの住む島へ連れて帰る。戻るとアンドレアスたちが松明を持って乗り込んで来ており、テントに放火していた。

 

14日目

スリムはエヴァ、ケン、セヴィーの元へ行き、生き残るためには戦うしかないとケンを説得する。敵方はアンドレアス、ダグ、アーニーが生き残っていた。

スリムは、ダグを誘き寄せ絞殺しようとしたが結局できなかった。命拾いしたダグは、スリムに泣いて謝る。ダグがスリムの味方につき、エレナをエヴァたちと引き合わせた。

 

ケンとスリムで、アーニーを崖から突き落とした。最終的にはアンドレアスとスリムが格闘するが、その最中に救助ヘリが到着。アンドレアスはヘリを見ると逃げ出した。

ヘリに乗り込むスリム、エヴァ、エレナ、セヴィー、ケン、ダグ。「これで全員ですか?」と聞かれたスリムは「ええ」と答える。ヘリ出発。島から飛び立つヘリを、アンドレアスは離れた場所から眺めるのだった。

 

映画【ファイナル・ゲーム】と蝿の王の類似性

蠅の王〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

 

映画『ファイナル・ゲーム』は海外のサイトでも『蠅の王』を彷彿とさせるストーリーなどと言われています。個人的に、ここが似てるなと思った箇所を挙げてみました。

救助を期待するスリムと自己責任で済ますアンドレアスの構図

『蝿の王』のラルフは、外の世界に戻りたい少年です。しかしジャックはどこか「この状況を楽しんでやろう」的な部分があって、救助を求めていません。

 

『ファイナル・ゲーム』のスリムはスマホを見つけたときも、これが何かの役に立つかもしれないと思って期待しますが、アンドレアスは電波が来てないから無理だと言って、ソッコー否定。戻る気あんの?って思いました。

ネガティブなアンドレアスは最初から救助に対して諦めモードでした。ワールドカップ優勝チームなら捜しにくるでしょ、フツー。どんだけ自己評価低いんよと思いました。とにかく救助に期待していないんです。

 

この対比は『蝿の王』でも描かれています。ラルフは狼煙を焚いて周囲に気づいてもらおうとするのですが、ジャックが豚の狩人になっちゃって。自給自足でなんとか生きていこうとしていたと思います。

 

主人公スリムは蝿の王のラルフ

よって主人公のスリムというキャラクターは、『蠅の王』で例えるならラルフかなと思います。そういう先入観で見ていたもので、おやっと思ったシーンもありました。例えば、怪我人を切り捨てるか否かで多数決を取るというシーン。意見が半々になったとき、まさかの、スリムが

「自分も賛成っす」

で。反対派はドン引き。スリム、お前がそっち側かよと思ったに違いないです。でもスリムはね、こっそり負傷者に水や食糧を渡していたことが後になって、誰かのセリフで判明します。

 

そしてスリムは、大人しく救助を待つというスタンスがラルフとかぶります。また基本的に、弱者にも優しい。知的な人の声に耳を傾け、意見を聞き入れます。そして勇気があって、強気なアンドレアスに歯向かうこともできる、という点はいかにもラルフ的でした。ラストはアンドレアスと対立していきますが、間一髪のところで待ち望んでいた救助が来るところなんかもね。

 

蝿の王のサイモンとピギーを思わせるコニー

トレーナーのコニーは、サイモンとピギーを掛け合わせたようなキャラクターです。周囲のメンバーよりも少し大人で、良識がある。

 

トレーナーという職業柄か、人命救助の知識も多少あるし「このベリーの実は食べれない」など、植物にも詳しいです。こういう部分は『蝿の王』の知の象徴であるピギーっぽいなと思いました。

 

一方でコニーの「帰れないのは怖くない。ここに残りたいと思うのが怖い」というセリフは、サイモン的です。サイモンは『蝿の王』の中でも、唯一獣の本質を見抜いていた少年でした。野蛮さなどの悪というのはそれぞれ自分たちの心の中にある、だから自分たちの内面の悪が覚醒し凶暴になっていくのが怖い、という解釈ができます。

また『蝿の王』のサイモンは、それまで不遇な人生を生きてきたキャラクター。だから島に残りたい、という趣旨の話をしています。どちらの意味合いなのか、はたまた違う解釈があるのかはわかりませんが、私はこのセリフがいかにもサイモン的だと感じたのです。

 

さらに「ここに残りたいと思うのが怖い」というセリフは、植民地主義を批判的に描いた『蝿の王』らしさを感じる部分でもあります。

 

コニーの死後、状況が急に悪くなる

蝿の王でも、サイモンの死後に状況が激変します。サイモンは、キリストのような善の象徴のキャラクターとして描かれていました。映画『ファイナル・ゲーム』では、コニーが崖から飛び降りて以降、状況が激変。悪いことが次々と起こり、島は呪われたように地獄絵図と化します。

 

さらにコニーはチームのメンバーの中でも少し精神的に大人で、理性的な人物です。そんなコニーがいなくなったことで、他のメンバーはやりたい放題となり、歯止めが効かなくなっちゃいました。殺人、盗み、性暴力などなんでもアリになっていきます。

 

もう1人のサイモン

チームのメンバーの中でサイモン的な人物をもう1人上げるとするなら、ジョージという考え方もできますが、個人的にはフェリックスではないか?と思っています。

 

スリムを助けようとしてフェリックスが亡くなった場所は、浜辺。波打ち際に倒れ込みながらこの世を去るフェリックスの死は、どこか神聖なものを感じさせられました。『蝿の王』でのサイモンも、波打ち際に倒れ込んでこの世を去るんです。両方共このシーンがとても悲しく感じられました。

 

救助されるにいたる皮肉な経緯

『蝿の王』では、ジャックがラルフを捕えようとして、あたり一面を燃やします。皮肉にもこの火によって煙が大きく上がったので、軍隊の大人に気づいてもらえた可能性が高いです。そして映画『ファイナル・ゲーム』では、ボートを盗んだパットンとマッケンナが救助されたことで、島にも救助隊が来たという話でした。ほんと、何がいいかなんかわからんな、と思います。

 

ラストの着地

アンドレアスが島に残されるという、蝿の王にもない新しい着地が用意されました。アンドレアスは、もう恥ずかしくて社会に復帰できないような振る舞いだったのでね。

 

きっとスリムが気を効かせたのでしょう。なんとも言えない、絶妙な結末です。アンドレアスは怪我人の切り捨てを提案したし、このルールに従い弟のジョージまで殺害しています。いい大人がこれではね。

映画【ファイナル・ゲーム】と蝿の王の比較

蝿の王

【ファイナル・ゲーム】のサバイバルスタイル

映画『ファイナル・ゲーム』の島の状況は、蝿の王の子供たちの境遇よりも悪いです。まず水や食料が限られていて...。蝿の王では、子どもたちが小川や果物の木を見つけるのですが、大人版では自然の恵みがなくて、飛行機の墜落時に散乱したお菓子や飲料を集めそれで生活していこうとします。アンドレアスが深刻な顔で、飲料水の話をスリムにするんですがね。

 

蝿の王の子供たちの中にはピギーというインテリ少年がいたのですが、残念ながらサッカーチームの中にピギーらしさを感じる人物はコニー以外いませんでした。ピギーがいると、小川のある場所などいろいろ助言してくれそうなんですがね。

『ファイナル・ゲーム』ではコニーがピギーとサイモンの役目を両方担っているような感じなので、知的な提案ができる人物がエヴァぐらいしかいない。コニーは負傷者の手当てで忙しいから、皆にいろいろ教える余裕がないんですよね。
そういう部分も観ていてキツかったです。

 

唯一の女性であるエレナとエヴァ

『ファイナル・ゲーム』には『蝿の王』のような、戦化粧をするシーンがありません。その代わりと言ってはなんですが、色事が発生します。エレナとエヴァはサッカー・チームの監督の娘として、生き残りました。エヴァもエレナも両親を失った悲しみを埋めるためか、結構あっさり行為にいたります。エレナにいたっては、極悪非道なアンドレアスと肉体関係を持つ展開になっていきました。

 

女性がいるということで、男性陣の見苦しい奪い合いがあるか?と思いましたが、そうでもなかったです。ただそういう部分は、蠅の王にはない面白さがあったように思います。

エレナの心情

エレナはね、最初はスリムとラブラブだったんですが、スリムが病人に水を与えない側に同調したことで、「えっ」ってなったんだと思う。そして急にスリムに冷たくなってしまい...。

 

しかしスリムに対しての当て付けなのか、アンドレアスと親密になっていくのは、どうかと思いました。両親を失いもう気持ちぐちゃぐちゃだから、どうでもよくなったのか?同じように身内を亡くしたアンドレアスに同情したのか。はたまた、もう思い切りぶっ壊れてる人のほうがいいと思ったのかもしれないです。でもそんな仕打ちを受けながらも、エレナの命を救ったスリム。エレナも最終的には、スリムの元に戻っていきます。

おまけ:映画『ファイナル・ゲーム』配信版とDVD・Blu-ray版の違い

レーティングをクリアするために、動画配信などのバージョンは、ショッキングなシーンがカットされています。コニーの○殺シーンなんかがそうです。


DVD版でも若干間接的な表現になっていて、崖から飛び降りたであろうコニーが海に沈んでいくシーンとなります。コニーはほんの1分ぐらい前までスリムとしゃべっていて、フッと目を離した隙に...という感じでした。スリムもすぐに海に飛び込んだのですが、救えなかった。だからDVD版では、コニーの死がハッキリ描かれていて、絶望的な気分にさせられるんです。

 

一方で配信で観たバージョンでは、突然コニーが消えて、岩場に衣類が発見されるという表現だったと記憶しています。この描写では、コニーはもしかしたら生きているのかもしれないという希望を持ちながらその後のストーリーを楽しむことができます。

 

まとめ:映画【ファイナル・ゲーム】の総評

本作品への評価は、賛否ありかなり厳しい批評も上がっています。まぁね、わかりますよ。サン・カン演じるコニーを、なぜ早い段階で途中退場させたのかわからない。プロット上、コニーが早々と◯んでしまうので、徐々にチームのメンバーが狂気じみていく、サイモンの死以降のあの蝿の王のクライマックスがかなり早いタイミングで来ちゃって、終盤尻すぼみになった印象はありますね。とはいえ、上で述べた通り、『蝿の王』を意識した作りは充分に楽しめるものでした。

 


欲を言えば、コニーをもっと生かしておいて、チームのメンバーの心の変化をもっと綿密に描いて欲しかったです。

 

さらに本作は「大人版蝿の王」なんて言われていて、そう聞くと面白そうなのですが、そもそも『蝿の王』は純粋無垢に見えていた少年たちの悪なる部分が露見し、人間の本質的な野蛮さがえぐり出されるから恐ろしいのであって。それを大人がやっちゃうと、なんか普通じゃん、よくあるヤツじゃんみたいになってしまうのかもしれないなと思いました。設定上、ちょっと難しかったですね。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございます!

 

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【バックルームズ】完全ネタバレ★映画とyoutubeシリーズの繋がりは?時系列やバクテリアとの関係も考察

前回はbackroomsのyoutube版の観る順番について解説いたしました。

 

analogchan.hatenablog.jp

 

そして2026年9月4日に、劇場版『バックルームズ』が公開されています。劇場版のエンドロールの後には16分の追加映像「Everything Must Go」も付いていました。

 

そこで今回は映画『バックルームズ』と追加映像の時系列が、youtube版のどのあたりにくるかや前後の事件を整理して、『バックルームズ』の世界観の背景などを解説していきたいと思います。

本記事は映画『バックルームズ』及びyoutube版『backrooms』の完全ネタバレ記事となります。映画の結末、ネタバレ部分にも容赦なく触れておりますので、未鑑賞の方はご注意ください!

 

 

映画【作品名】の作品概要

映画『バックルームズ』のポスター画像

画像引用:バックルームズ : ポスター画像 - 映画.com

原題:Backrooms/上映時間:126分/製作年:2026年

監督:ケイン・パーソンズ

原作:ケイン・パーソンズ
脚本:ウィル・スーディク
出演:キウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスヴェ、アヴァン・ジョーギア、フィン・ベネット、ルキタ・マックスウェル、マーク・デュプラス、ロバート・ボブロツキー

 

映画『ミッドサマー』などでしられるA24などによる製作。監督はわずか19歳のケイン・パーソンズです。

 

元々4chanに投稿された1枚の画像が話題となり、これがバックルームだという都市伝説が広まりました。この都市伝説からインスピレーションを受けて、youtubeで短編シリーズを作ったのがケイン・パーソンズです。このシリーズは、大大大人気で、5000万回視聴された動画もあるほど。

 

それを長編映画化したのが、映画『バックルームズ』です。ジャンルは、SFホラーという感じですが、ガチのホラー映画好きからすると、ちょっと物足りないかもしれないですね。

映画【バックルームズ】の登場人物

映画『バックルームズ』の登場人物は、かなり少なめ。誰が誰か?などを追う必要がないので、じっくり映画に集中できます。

クラーク(演:キウェテル・イジョフォー)

クラーク役キウェテル・イジョフォーの画像

画像引用:バックルームズ : フォトギャラリー 画像(5) - 映画.com

本作の主人公。本当は建築家になりたかったけど、それをあきらめて家具屋のオーナーをやっている。アルコール中毒気味で、妻から家を追い出されたため、自身の経営する家具屋で寝泊まり。今はメアリーのカウンセリングを受けている。

 

メアリー・クライン(演:レナーテ・レインスヴェ)

メアリー役レナーテ・レインスヴェの画像

画像引用:バックルームズ : フォトギャラリー 画像(7) - 映画.com

 

クラークのカウンセリングを担当しているセラピスト。幼少期のトラウマを克服し、ある程度知名度のある心理療法士となった頑張り屋さん。本も出版しています。

 

ナレン・ウォーン(演:アヴァン・ジョーギア)

冒頭のPOV映像に登場するAsync社の研究員。映像から見る限り、何者かに襲われた可能性大。

 

ボビー(演:フィン・ベネット)

キャットのボーイフレンド。もしくは夫。キャットと同じ家に住んでいたし、結婚してるかも。クラークのわがままに付き合わされて、とんでもない目に遇う気の毒な人物。カメラマンを担当。

 

キャット(演:ルキタ・マックスウェル)

クラークの家具屋のアシスタントマネージャー。わがままなクラークに付き合わされている。

 

フィル(演:マーク・デュプラス)

映画の終盤に登場し、メアリーにあれこれ質問していた男性。
Async社の研究者で、多分管理職。上層部の人間なんだろうけど、いろいろなことの決定権は持っていないみたいな感じだと思う。実はそれ意外のシーンにもちょこちょこ出ていて、バックルームズ内の様子をモニターで監視していた人物。

 

映画【バックルームズ】のあらすじ

バックルーム内の家具のようす

画像引用:バックルームズ : フォトギャラリー 画像(6) - 映画.com

冒頭。Async社の研究員と思われるナレンが、バックルームの中を探索している。が仲間とはぐれ、突如何者かに襲撃される。

 

家具店を営むクラークは、日々の売上に頭を悩ませている。店内には「在庫一掃セール」の看板。妻に家を追い出されたのか、または離婚してしまったのか、クラークはこの家具屋で寝起きしている。電気がチカチカしていた。うぜぇよ、電気。クラークは不満に思う。よく見るとこれまであった電気のスイッチとは別に、赤いスイッチが3つ増えていた。なんだ、これ?

 

そんなクラークは、メアリー・クラインというセラピストのカウンセリングを受けていた。セラピー中、妻とのやり取りを思い出し、メアリー相手にロールプレイングしていたら、怒りが込み上げてきた。クラークはアルコール中毒気味でもある。

 

ある日クラークは電気のチカチカに耐えられなくなり、赤いスイッチを切った。すると店内が真っ暗に。しかしよく見ると、壁の向こうから黄色い光がうっすらと漏れていた。なんだこれ!

 

クラークはその壁の向こうに、現実の空間とは思えない黄色い壁紙の空間、すなわちバックルームを見つける。壁をスッと通り抜けたのだった。その日以降、クラークはこの異次元空間「バックルーム」の虜になった。バックルームは巨大迷路のように広がっており、どこまで行っても、部屋、部屋、部屋の連続だった。積み重ねられた家具、半分床に埋まった家具、など奇妙なものがいっぱいある。現実世界のものとよく似ているが、何かが微妙にズレていて不気味だった。

 

クラークはこのバックルーム内を徘徊し、地図まで書いた。バックルームの話をメアリーにして地図を見せたが、変な話なので信じてもらえなかった。クラークはその後も、1人でバックルーム内に入る。

 

しばらく経って、クラークがカウンセリングに来なくなったので、メアリーは心配してクラークの家具屋を訪ねる。すると壁にドア型の印があった。

ドア型の印のついた壁とメアリー

画像引用:バックルームズ : フォトギャラリー 画像(4) - 映画.com

 

メアリーは、その壁からバックルームに入り驚愕する。何ここ!

 

クラークの話は本当だったんだ!メアリーは異次元空間の中を彷徨い、クラークを捜すことにするが…。

 

映画【バックルームズ】の時系列は?

ここからは、YOUTUBEシリーズと比較しながら、映画『バックルームズ』の時系列について見ていきます。

映画【バックルームズ】の時代設定

映画『バックルームズ』の時代設定は1990年です。ストーリーは、Async社の研究員ナレンが、バックルーム内で仲間とはぐれたのが最初のシーンで、映像の日付から1990年6月18日の出来事だったとわかります。クラークの物語の時系列はその10日後である1990年6月29日。バックルーム内のカモメの死骸が、ナレンの映像との時間軸の繋がりを示唆しています。

 

映画【バックルームズ】とyoutubeシリーズの時系列の関連

ケイン・ピクセルズ(パーソンズ)のyoutubeシリーズを時系列順に並べ、映画『バックルームズ』とおまけの追加映像『Everything Must Go』を埋め込むと、以下の順番になります。

  1. Overflow(1972年8月2日から8月11日の間のいずれかの時期)
  2. Prototype(1982年10月5日)
  3. The Third Test(1988年7月2日)
  4. First Contact(1989年10月17日)
  5. faultline.mov(1989年10月17日)
  6. 9780415263573(1989年の後半の可能性が高い)
  7. Lighting and Tile Survey(1989年11月14日~11月15日)
  8. Missing Persons(1990年2月3日)
  9. Autopsy Report(1990年2月5日)
  10. Informational Video(1990年2月29日(架空の日))
  11. Motion Detected(1990年3月5日/3月6日)
  12. Mar11_90_ARCHIVE.tar(1990年3月11日)
  13. Pitfalls(1990年5月6日)
  14. Report(1990年5月6日)
  15. Presentation(1990年5月8日)
  16. recording014(1990年5月8日)
  17. Reunion(1990年5月25日)
  18. Damage Control(1990年5月25日
    (ナレーション開始は1990年5月26日))
  19. Static Dead End(1990年5月29日)
  20. Everything Must Go(1990年6月18日)
  21. 映画『バックルームズ』(1990年6月29日)
  22. Simpsons(1991年1月10日から2000年)
  23. Found Footage(1991年7月4日に撮影)
  24. Found Footage #3(1995年4月19日頃かそれ以降)
  25. Found Footage #2(1995年8月19日)
  26. home_27647.mov(推定2000年代)
  27. I Remember(時系列不明)

一部時系列がはっきりしないエピソードや不明なものもありますが、ざっと並べるとこんな感じになります。1番最初に公開された超有名なエピソード『Found Footage』は、劇場版のおよそ1年後の時代設定です。

youtube動画【Static Dead End】の直後の時系列

youtube動画の方でも、1990年にはほんといろんなことがありましてね。本編終了後に流される16分の追加映像の『Everything Must Go』は、YOUTUBEシリーズ【Static Dead End】というエピソードのおよそ20日後になります。また『Everything Must Go』は映画の冒頭のシーンと同じ時系列です。さらに映画『バックルームズ』本編は、その10日後にあたる1990年6月29日から始まるのだと考えられます。

 

youtube版の時系列順の各エピソードの詳細につきましては、以下の記事で1エピソードずつですがご説明しております。

 

analogchan.hatenablog.jp

youtubeシリーズ【Static Dead End】までの流れ

実はこの前にすでに『Static Dead End』で、Peterという研究員が犠牲になっていてるんです。逃走して、もしかしたら生きてるかもしれないんですが。この一連のPeter Tenchのエピソードを観ると、Async社はとんでもない企業だとわかります。映画に出てきたフィルという男が、勤めている会社ですね。

 

youtubeシリーズによればAsyncという企業は実験に実験を重ね、バックルームと現実世界を開通させちゃったんです。それ以降、Async社の研究員が複数名でバックルーム内に入り調査を進めていたのですが。なんにも知らない一般人の方々も、不本意ながらランダムにちょいちょい壁抜けしてしまっていました。

 

Peter に関する一連の事件についてざっくりご説明しますと

『Informational Video』というエピソードで、Peter Tenchが迷子になって消える。

  ↓

その後も他の研究員たちが、黄色い防護服を着てバックルームズ内をあれこれ調べる。

  ↓

穴に落ちた研究者もいたがなんとか助かる。

  ↓

バックルーム内でエンティティ(不気味な化け物)が目撃され、研究員が持ち帰った記録動画を、上層部の人間は確認している。深刻な事態であるにもかかわらず、バックルーム内の研究は続けられた。

  ↓

1990年5月8日に消えたPeter Tenchが突如現れる。もしかしたらPeterはタイムトラベルし、過去からやって来たのではないか?バックルームとはそのように、過去・現在・未来が混合した空間なのかもしれない、など様々なことが、考えられた。

  ↓

PeterはAsync社に拘束され、健康状態や聞き込みなど色々調べられた。さらに困ったことにPeterは勝手に死を擬装されていたので、家族に会うことも許されない。

  ↓

1990年5月25日、マービン、マーク、ランドールの3人の研究員がバックルームに入り調査していると、突然Peter Tenchが現れた。Peterは研究所から逃走して、またバックルーム内に舞い戻って来たようだった。動揺していたPeterは奪った銃で、マークを撃って逃げた。

  ↓

その後研究施設内を逃走して外に出たが、丘の中腹で死亡が報告される。最後亡くなったところは映像がないので、本当かどうかは怪しいです。

 

以上がPeter Tenchに関する出来事。時系列は、1990年の2月の終わりから、1990年の5月までと考えられます。映画『バックルームズ』の時系列はこの直後。これだけの深刻な事件が起こっているのに、Async社は1990年6月18日時点でも、まだ研究をやめていません。そしてナレンという新たな犠牲者が出てしまいました。

でも調査をやめません。

なぜなら…(Youtubeシリーズによれば、ですが...)
Asyncはエネルギーの枯渇問題や食糧問題を理由に、人類をバックルームに移住させようと思っているから。Async社はエネルギー省に対してプレゼン動画まで、作っているんです。

プレゼン動画が入ったエピソードはこちらです↓

youtu.be

 

youtubeシリーズのAsync社のヤバさから映画【バックルームズ】を考察

バックルームズ内の様子がわかる画像

画像引用:バックルームズ : フォトギャラリー 画像(3) - 映画.com

バックルーム内を監視していたフィル

劇場版で、フィルがバックルーム内を監視していたのは、先述したようにいろいろトラブルが相次いでいるからでしょう。何か変なことが起こってないか?化け物が出没してないか?などをチェックしてるんだと思います。

 

まぁ犠牲者が出ちゃってるし、「バクテリア」とよばれるエンティティの存在もすでに確認されていますからね。こんな危ないところに一般市民を誘導して、政府からお金もらおうとしてるわけですから、とんでもない連中です。フィルという男は、とても信じられないですよ。

 

メアリーは最後どうなったのか?

あくまでこれはyoutube版を観た上での個人的な解釈ですが、Async社は、メアリーを外の世界に出してくれないんじゃないかと思いました。まぁ映画での会話を見る限りでも、フィルに重大事項の決定権はないわけですよね。

 

映画ではMRI装置を開発した部分が強調されているので「胡散臭いな」ぐらいにしか感じとれないかもしれませんが、大概なことをやってきたヤツらなんです。あーメアリーが心配と思いながら、観ていました。

 

Async社は政府と契約を結び、人類をバックルームに移住させようとしていたので、その準備段階で「バックルームは危険!」というような情報が漏れるとまずいです。だから残念ながら、メアリーは拘束されたままか?再びバックルームに戻されたかでしょう。もしくはメアリーがアシンク社から逃げるため、自分からバックルームに飛び込んでいった可能性があります。上手く逃げてくれているといいのですが。

 

意味深なラスト

そう考えると、だからメアリーのスティル・ライフが誕生したことを示唆するラストからは、ある種のメッセージが感じられます。あくまでも個人的な解釈ですが、メアリーは「外に出られない」というトラウマを抱えていました。そのトラウマを克服し、幸せを掴もうと充分努力してます。そして実際彼女の人生は上手くいっているように見えた。そんなメアリーが...。

だから、このシリーズはある意味巨大企業の闇を描いていると思うんです。メアリーが個人的にトラウマを乗り越える努力をしたって、ラストはあのザマです。個人の能力や努力ではどうにもならない、企業による大きな力が働いていると感じました。

 

そもそもメアリーは住んでいる家を壊された、という辛い経験をしています。タワマンか何かを建てるため、すなわち大企業のエゴのせいで不幸になった家族がいるんですよね。

 

もちろん、あの結末でメアリーが不幸になったとは断定できません。ただ単にメアリーのスティル・ライフができているよ、ということなのかもしれませんが。

 

バックルームは何かのメタファーか?

バックルームズ内のイメージ画像

画像引用:バックルームズ : フォトギャラリー 画像(2) - 映画.com

 

これもいろいろ考えましたね。最初に思ったのは、無限にコピーしていく様子が生成AIさんかなと。スティル・ライフの指の本数とか目の数とかがおかしいので。

 

すると町山智浩さんの解説動画を見つけまして、クラークの家具店の住所がマッキー・ロードとキャピトル・アベニューの交差する位置にあるというところから、解説がはじまります。そして「重要なのはこの物語をサンタクララバレーに設定したことです」と言っておられて、ぶったまげました。サンタクララバレーというのは、別名シリコンバレーというらしいです。そしてこの物語の時代設定(1990年)の直後にインターネットが始まる。

youtu.be

 

「でバックルームズというのは、インターネットの暗喩だったんじゃないか、と」という風に解説されていました。この動画、すごく面白かったです。スティル・ライフはAIが生成した写真にそっくりだ、とか他も興味深い内容でした。

 

確かにケイン・パーソンズって、AIさんに対して、ちょいちょい否定的な発言をしているんですよね。

 

クラークはネット中毒でツイ廃

そう考えると、クラークはアル中ではなく、ネット中毒者やツイ廃なんじゃないかと思いますね。ヴァーチャルの世界に入って戻って来ない、という意味では『マトリックス』や『レディ・プレイヤー1』にも繋がります。バックルームの中の方が、居心地が良くなってそのまま居座っちゃったというね。

 

クラークだけがバックルームに囚われたならまだしも、メアリーまで行っていますから。辛すぎる現実の影には、決まって巨大な権力が働いています。幼少期のメアリーの家族は、幸せだったんですよ。マイホームを持って、記念に家族全員の手形を残して。でも、企業の都合で取り壊されました。メアリーのお母さんが、精神的に病んだのはこのせいだと考えられます。

 

頑張ってる人もそうじゃないわがままな人も、みんなみんな辛いことがあってバックルームの世界に入りびたりになってしまう。メアリーなんかも、無意識に引き寄せられていくあたりが恐ろしいですね。

 

キャプテン・クラーク=バクテリア説を検証

今回映画『バックルームズ』には、キャプテン・クラークという怪物が登場しました。キャプテン・クラークは、家具屋のテレビコマーシャルを作った際にクラークが演じたキャラクターの姿をしています。この怪物は、クラークから吸い取った記憶や過去のトラウマ、未練などがバックルームズ内でリニューアルされたものだと言われています。

 

クラークは建築家になれなかったことに対して悔恨の念があるのですが、人生が思いどおりにいかない理由を周囲のせいにしていました。妻が働かないせいで俺は忙しくストレスがたまっている、など。だからそういう怪物が生まれてしまったのだと。

 

一方でyoutubeシリーズには「バクテリア」とよばれる、別のタイプのエンティティが登場します。バクテリアは、針金のような黒い棒の集合体です。このバクテリアとキャプテン・クラークの立ち姿が非常に似ていると思いましてね。いや、あれは似すぎでしょって思って。

 

もしかして、キャプテン・クラークがバクテリアになったのでは?という考察が、海外でもなされているようです。映画『バックルームズ』のおよそ1年後となる『Found Footage #1』に登場するバクテリアは、キャプテン・クラークなんじゃないかと!いう結論にいきついたんだと思います。バクテリアも襲った対象の声とか言葉を学習してくんですよね。そう考えるとワクワクしてきたのですが...。

 

しかしここで、残念なお知らせがあります。backroomsのyoutubeシリーズのバクテリアの初登場回は、『Motion Detected』で時系列は1990年3月5日になります。だから順番で言えば、クラークがバックルームに入るよりも前になっちゃうんです。

 

でもね、この回で出たバクテリアは、触手しか映っておりません。だから『Found Footage #1』に出てくるバクテリアは、また別のヤツかもしれないです。そう考えるとクラークがバクテリアになった可能性もゼロではありません。

 

さらにyoutubeシリーズを観ていると(まぁ観ていなくても)、バックルームの時間に関する観念が歪んでいることはお分かりいただけると思います。バックルームは過去のみではなく、未来のクラークも学習していた可能性も考えられるでしょう。

未来のクラークがバクテリアになった
↓
その未来を吸収し、1990年にクラークがバックルームを見つける前にも、別の場所でバクテリアが現れたのかもしれないです。

 

そう考えると、「なぜ、キャプテン・クラークがバクテリアになってしまったのか?」という疑問が湧いてくるでしょう。しかし、キャプテン・クラークは映画のラストで、Async研究所に回収されていますから、ここでバクテリアに感染した可能性も考えられます。

 

というわけで、キャプテン・クラーク=バクテリア説は充分にあり得る話だと、個人的には思っています。

バックルーム内の時間の観念

バックルーム内の時間の観念は、ちょっとおかしいです。行方不明になり偽装死されていたピーターも、タイムスリップを体験していました。

 

さらに今回の映画の追加映像には、クラークの店の看板が出ていますから。看板はクラークがバックルームに入るよりも前に、バックルームズ内に出来ていたということですよね。これも奇妙な話です。

 

下の図は、私が解釈したバックルームの時間の観念のイメージ図です。

バックルーム内の時間の観念のイメージ図

 

劇中、動画での出来事を考えると、バックルームズでは「過去・現在・未来」が同時に存在することを意味しているのではないかと思いました。どの時代もバックルームに繋がっているのだという説が有力です。

 

天信号ではなく无信号

16分間の追加映像で、テレビに「无信号」という言葉が出ていたので、どういう意味なのか気になった方も多いでしょう。書かれている文字は天信号じゃなくて「无信号」です。これは信号なし(no signal)という意味らしいです。なるほど、バックルーム内にテレビの電波は、来てないということでしょうか。あのメロディがなんかいいです。

 

映画【バックルームズ】の総評・個人的な感想・まとめ

この記事では、映画『バックルームズ』の出来事を、youtubeシリーズとの時系列の関連性をふまえた上で、考察いたしました。

 

個人的には、このシリーズのSF的な要素に惹かれて本作を観たし、期待通り充分に楽しませてもらいました。これってSFなんじゃない?って思ってたんですけど、やっぱりホラーかな、と思ったのは、見終わった後しばらくしてから、じわじわ怖くなる感じがあったことです。お化け系を観ると、しばらく何か出そうな感じがする。

 

バックルームも、もしあったらやだなって、怖くなるんですよね。壁抜けとかね、まぁ、ないと思う。でももしかして、あったらどうしよう、みたいな恐怖はあります。そこがホラーを観たあとの感情ですね。例えば、エイリアンを観た後、もしかしてゼノに襲われたらどうしよう (ó﹏ò”ll) とはなかなかなりませんから。ゼノは来ません。まぁ、『バックルームズ』は都市伝説が元ネタなので、そこらへんもじんわり効いています。

 

メアリーが階段を上るシーンなんかは、足がすくむ思いで観ました。で上りきったところで、また消火器っぽいハプニング。でそこで青いボンベと黄色の防護服が視界に入りったので「よし来た!ここしっかり見とかねば」と、身をのりだしましてね。この黄色の防護服を着た人たちは、おそらくAsync研究所の研究者たちですね。ここの部分の考察も、機会があればまたやってみたいなと思っています。なかなか面白かった!

 

最後までお読みくださりありがとうございます!

 

映画の中の陰謀論・デマ・集団心理|おすすめ12選

しばらく前に、「【ミスト】ほか★映画の中の集団心理(リンチ・パニック・ヒステリー編)10選」という記事を書きました。

↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓  ↓

analogchan.hatenablog.jp

今回は、この記事の姉妹記事となるデマ・陰謀論編です。

自分の周りでは評判の悪い政治家なのに、あるメディアの調査では支持率が爆上がりしている。こんなとき、ついメディアを疑ってしまいます。メディアが正しい情報を流してくれないと怖い、だからこういう部類の映画を色々観てみました。

 

この記事では、メディアが嘘の情報を発信するとこんな世界になっちゃうよ、という世界やデマの弊害が描かれている作品群をご紹介します。

 

ご紹介する全ての作品でネタバレが生じます。どうかご了承ください!

 

国家・巨大組織の陰謀

国家とメディアがグルになって、重要な情報を流さない。または都合の悪い事実を隠すために、とりあえず別の報道で騒ぎ散らし、本当のことがバレないようにする。そんな世界を描いた映画作品をご紹介します。

ドント・ルック・アップ

原題:Don't Look Up/上映時間:143分/製作年:2021年

ドント・ルック・アップ 映画チラシ レオナルド・ディカプリオ/ティモシー・シャラメ (裏白紙)2021年 洋画 フライヤー Netflix

監督:アダム・マッケイ

脚本:アダム・マッケイ

出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ロブ・モーガン、メリル・ストリープ、ジョナ・ヒル、マーク・ライランス、ティモシー・シャラメ、アリアナ・グランデ

 

 映画【ドント・ルック・アップ】の作品概要

アダム・マッケイ監督作で、主演はレオナルド・ディカプリオ。映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』のダメプリオが好きな方なら、本作のミンディ博士役もきっと気に入るでしょう。

 

ご覧いただいた方はすでにご存知かと思いますが、キャストが非常に豪華です。起こってることはめっちゃシリアスなのに、爆笑できるブラックコメディ。自分にとっては信じられないほどショックな社会問題なのに、世の中の人々のリアクションが信じられないほど薄い時って不安になりますよね。こういう気持ちを日頃から味わっている人には、刺さる作品かなと思います。

 

 ざっくりあらすじ(序盤)

ミシガン州立大学で天文学を学ぶ大学院生ケイトが、ある日新しい彗星を見つけた。大喜びでランドール・ミンディ博士に報告するケイト。がその後、ミンディ博士やNASAの調査でこの彗星がおよそ半年後、地球に衝突すると判明。衝突すれば、全地球が消滅するほどの威力だった。

 

NASAの惑星防衛調整室長のテディとミンディ博士とケイトは、この重大事実を報告するためホワイトハウスまで出向く。が中間選挙のことで頭がいっぱいの大統領のリアクションは薄く「静観して精査する」とのことだった。は?静観?地球がなくなるかもしれないんだよ!あんた意味わかってんの?とケイトはブチキレ。

 

がしばらくして、大統領がポルノ男優の彼氏に自分のあそこの写真を送ったという事実が発覚。大統領はそのスキャンダル隠しのために、彗星のことを国民にカミングアウトするが…。

 感想、おすすめポイントや見どころなど

もうね、ほんとひどい話です。映画のタイトルにもなっている『ドント・ルック・アップ』は、政府側が国民に発する「見上げるな!」というメッセージ。彗星がもう見えるトコまで来てるのに、大統領や政府の言うことを信じ、頑なに空を見上げない人。半年後に地球に彗星が衝突すると聞いても、SNSで茶化す人が続出しちゃいます。いわゆる冷笑系ってヤツでしょう。

 

まぁ、正常性バイアスの怖さも描かれていると思います。大丈夫だと信じたい、大丈夫であってくれた方が自分にとって都合がいい、みたいな。で、「現実を見よう派」と「見上げるな派」に市民が分かれ、対立していくのも既視感がありますね。「空を見よう」という歌詞で、ファンにメッセージを送るアリアナ・グランデなんかも絶妙です。

 

でもね、報われないんですよね。一体何がいけなかったのか?を考えさせられる作品です。

 

カプリコン・1

原題:Capricorn One/上映時間:日本129分 アメリカ123分/製作年:1977年

カプリコン・1 ワン [レンタル落ち]

監督:ピーター・ハイアムズ
脚本:ピーター・ハイアムズ
出演:エリオット・グールド、ジェームズ・ブローリン、カレン・ブラック、テリー・サバラス他

 映画【カプリコン・1】の作品概要

大抵の国でこの映画は1978年に公開されましたが、日本ではなんと1977年の暮に公開されています。先行上映で日本が一番早かったらしいです。

 

しかも当時日本で公開されたバージョンは129分(日本公開版)。他国では123分のインターナショナル版だったにもかかわらず、数分長いバージョンが上映されたらしいんです。もちろん、幼児だった私は観に行けてませんよ。

 

数分間長いのはワークプリント版だったんじゃないか、とか言われています。今動画配信なんかで手軽に観れるのは、123分のインターナショナル版ですね。

 

129分ある幻の日本公開版本編は、2枚組Blu-ray『カプリコン・1≪特別版≫』でしか観れないらしく、こちらは2019年にソフト化されています。さらにややこしいんですが、2026年7/10(金)、または07/24(金)から午前十時の映画祭で上映されたものは、129分あるらしい。でも幻のバージョンとはまた違ったバージョンというね。

 

とにかくあらすじなど、前情報を入れずに観ていただきたい作品です。

 ざっくりあらすじ(序盤)

宇宙船カプリコン1号が有人火星探査のため、今まさに打ち上げられようとしていた。乗組員はブルーベイカー、ウィリス、ウォーカーの3人。だが…。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

月面着陸捏造説からヒントを得て作られた名作。だけど月面着陸捏造説を否定する層からも、支持されています。みんな本作を紹介する前に「陰謀論は嫌いだが、」みたいな前置きをいちいちつけて紹介してますね。

 

監督はピーター・ハイアムズ。この監督の作品は『アウトランド』とか『カナディアン・エクスプレス』とか、好きな作品がめっちゃ多いです。そして『2010年』も。

でね、内容は話せませんが、ちゃんとメディアの欺瞞を批判した内容になっています。『カプリコン・1』については、ネタバレありになりますが過去にこちらで書いております。

 

analogchan.hatenablog.jp

 

ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ

原題:Wag the Dog/上映時間:97分/製作年:1997年

ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ (字幕版)

監督:バリー・レヴィンソン

脚本:ヒラリー・ヘンキン、デヴィッド・マメット

出演:ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、アン・ヘッシュ、ウディ・ハレルソンほか

 

 映画【ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ】の作品概要

監督は『レインマン』や『バグジー』でしられるバリー・レヴィンソン。ダスティン・ホフマンとロバート・デ・ニーロが競演しています。『スリーパーズ』を手がけたのも、この監督ですね。

内容は大統領のセックス・スキャンダルを揉み消すために、架空の戦争をでっち上げるという、とんでもないもの。でもまぁ、今思えば、実際に戦争しちゃうヤツよりはマシか。デ・ニーロが揉み消し屋、ダスティン・ホフマンがハリウッドの敏腕プロデューサーを演じています。

 ざっくりあらすじ(序盤)

大統領選挙の真っ只中。スカウト団の少女が、大統領から性的ないたずらを受けたという情報が、スピン・ドクターのコンラッドの元に入る。揉み消し屋のコンラッドは、架空の戦争をでっち上げ国民の目をそらそうと考えた。そこでなんとハリウッドのプロデューサーであるスタンリー・モッツに協力を求め戦争をでっち上げることにするが...。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

クリントン元大統領とインターンのモニカ・ルインスキーとのスキャンダルの揉み消しを風刺的に描いた作品と思われがちですが、実はこの映画のほうが先です。今この映画を観ると、なんか笑えない。エプスタイン事件の話なんかも、中東情勢のせいか、もう誰もしてないですからね。

 

戦争をでっち上げる際「敵国は?」と聞かれ「今から考える」と答えるデ・ニーロ。CIAが「戦争は起きていない」と主張してもめげない。ダスティン・ホフマンが演じるプロデューサーのスタンリーが、これまたぶっ飛んだアイデアマンで、次々と新しいシナリオを練って対抗していく。シューマンの靴の演出なんかも凄いですが、この時のダスティン・ホフマンの演技がすごく好きなんですよね。もう狂ってるとしか言いようがないです。実際にこんなことあったら笑えないんですが、でも笑ってしまう。そんな作品です。

 

メディアの暴走・大衆扇動-古典が予言した未来

大衆扇動は昔からあって、それが原因で大惨事が起こってきました。それは昔の映画でも描かれているし、ナチスドイツのプロパガンダも有名です。この章では、大衆を扇動するためにメディアが暴走するとどうなるか?を恐ろしいほど生々しく描いた映画作品をご紹介します。

群衆

原題:Meet John Doe/上映時間:122分/製作年:1941年

群衆(字幕版)1941年制作版

監督:フランク・キャプラ

脚本:ロバート・リスキン

出演:ゲイリー・クーパー、バーバラ・スタンウィック、エドワード・アーノルド、ウォルター・ブレナン、スプリング・バイイントンほか

 映画【群衆】の作品概要

『素晴らしき哉、人生!』のフランク・キャプラ監督による大衆心理の危うさをシャープに描いた傑作。架空の男ジョン・ドウを演じているのは、ゲイリー・クーパーです。

 ざっくりあらすじ(序盤)

新聞社から突如解雇されることになった女性記者のアンは、その腹いせに最後のコラムで、デタラメな記事をでっち上げる。そのコラムはジョン・ドウという名の無職の男から「クリスマスイブに、市庁舎から飛び降りる」という手紙を受け取ったという内容だった。

 

この記事への市民の反響は大変大きく、アンはこのネタで新聞社の売上を伸ばすべきだと主張。なんと新聞社には我こそがジョン・ドウだと名乗る男が、わんさかと押し寄せていた。アンはマイナーリーグの野球選手だったという無職のジョン・ウィラピーを採用するが...。

 感想、おすすめポイントや見どころなど

古い映画なんですが、今みたいな時代に観ておきたい作品です。「ジョン・ドウ」とは日本でいうところの名無しの権兵衛みたいな感じらしいです。ホームレスだったごく普通の男が「ジョン・ドウ」になって、あれよあれよといううちに、庶民を代表するヒーローに成り上がっていく。

 

お金目的でジョン・ドウをやってる本人も、群衆の反響にびっくりしてるんですよ。自分がこんな人気者になるなんて思ってなかった、という顔をしてて。アンの父親の日記とメディアの力ですよね。この男に群がる人々の、何とも言えない微妙な特徴が上手く描かれています。まぁ、悪い人じゃないんだろうけどね、みたいな。

 

わかりやすいリアクションで、その場のムードに飲まれていくという。そして終盤にこの群衆の恐ろしい側面が、描き出されていくという流れ。広場に大勢の人が集まってきて、そこでとんだハプニングが起こる。このシーンは圧巻です。

 

草の根運動というポジティブな動機から心を1つにした群衆が、われこそ正義と疑わぬままメディアの力で負のベクトルに動き出していく。そこが非常に恐ろしいです。でもラストは、一握りの希望が持てるように着地していて、そこが優しくて素晴らしい。

 

ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男

原題:Fuhrer und Verfuhrer/上映時間:128分/製作年:2024年

ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男

監督:ヨアヒム・A・ラング

脚本:ヨアヒム・A・ラング

出演:ロベルト・シュタットローバー、フリッツ・カール、フランツィスカ・ワイズほか

 

 映画【ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男】の作品概要

タイトルの通り、ヒトラーを売り込んだ男の話です。この人(ヨーゼフ・ゲッベルス)の名言とやらが「嘘も百回言えば真実になる」で、これまたひどい。監督はヨアヒム・A・ラング。

 

 ざっくりあらすじ(序盤)

1938年3月。オーストリア併合。ヨーゼフ・ゲッベルスは、ヒトラーがウィーンの市民から歓迎される絵を撮ろうと必死だった。「1億3000枚のチラシを配りました」と報告する側近のカール・ハンケ。

 

その後ベルリンではヒトラーの祝賀イベントのため店や学校が休みとなり、大勢の市民が街頭に集まる。宣伝大臣ゲッベルスの計らいによるものだった。実は女優のリダ・バーロヴァと不倫していたゲッベルス。妻マクダは、屈辱の日々を送るが…。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

まぁこれはもう、最悪の人ですよ。ただ、この人も最初は戦争反対派だったっていうね。ヒトラーに何度も戦争にならないようにと、建言していたんですが。ある時からいきなり戦争を煽りだしちゃって...。

 

そうなる前のゲッベルスは、妻マクダに面と向かって「そろそろ愛人が欲しい」とか真顔で言っちゃう人で。マクダの方も夫の部下であるカール・ハンケと不倫し始めていて、そこら辺もめちゃくちゃです。

 

本作品で主に描かれているのは、大衆扇動の恐ろしさ。ちょっと前に観たときよりも、今観るとなおさら怖く感じられましたね。こんなわかりやすいことをヌケヌケと言って、誰も耳を貸さないだろうと思っていても、大勢でまんまと操られてしまうんです。劇中のセリフにあるように、民主国家では宣伝次第で、バカでも権力を持てる。そして扇動できそうな層を狙って、票集めにいそしむ。この手口を真似ようとか言いだすヤツもいるでしょうから、こういう手口は知っとくべきですね。

 

ネットワーク

原題:Network/上映時間:121分/製作年:1976年

ネットワーク

監督:シドニー・ルメット
脚本:パディ・チャイエフスキー
出演:ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、ピーター・フィンチ、ロバート・デュヴァルほか

 映画【ネットワーク】の作品概要

『十二人の怒れる男』をはじめ、数々の映画作品を撮り続けたシドニー・ルメットの快作。人気者だが落ち目のニュースキャスターが、ある日テレビで過激な発言をしたら、視聴率&人気が爆上がりしていくという話。

 ざっくりあらすじ(序盤)

テレビのニュースキャスターであるハワードが、ある日突然解任を言い渡される。原因は視聴率低下によるものだった。カチンときたハワードは、番組の生放送中に、翌週オレは○殺するぞ!と予告。番組放送後、報道部にはクレームの電話がじゃんじゃんきてしまう。

 

翌週の番組でハワードは、先週の発言について謝罪。しかし、今のアメリカの政治はけしからんと現状を嘆き、視聴者の気持ちを代弁した。そして「私たちは怒っている、もう我慢できない」と窓から叫べと、見ているアメリカ国民を煽る。視聴者は皆ハワードに煽られるまま、窓から顔を出して社会や政府への不満を叫び、大きな波紋を呼んだ。

そしてハワードは一気に人気者に...。野心溢れるエンタメ部門のプロデューサー・ダイアナは嬉々としてハワードを司会者にエンタメ番組を企画・スタートさせたが…。

 感想、おすすめポイントや見どころなど

この作品は観た後すごく気になったので検索してみたら、町山智浩さんが「映画その他ムダ話」で解説されているんですよ。

tomomachi.stores.jp

この解説、すごく面白かった。こういうのを映画ジャンルではサタイアって言うらしいです。ちょっと引くような笑いの風刺的なコメディ。

 

で町山さんは『ネットワーク』評の中で、『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』も挙げられていました。確かに似た臭いを感じましたね。あとは『群衆』の話もされてて、それも良かったです。

 

昨今はSNSがあるから危険だと思いがちですが、昔から人々はメディアに煽られてきたんだなと。『ネットワーク』の場合、ダイアナの考える作戦はほぼほぼ炎上商法みたいな感じですね。でもテレビってよく考えると昔から、そういうのを狙って注目を集めてきたように思います。映画『ネットワーク』の番組でも「私たちは怒っている、もう我慢できない」って客席の全員に言わせて(笑)、そのキャッチ―な様子からスタートさせるんですよね。「いいとも!」みたいな感じです。

 

映画『ネットワーク』が作られた1970年代は、ベトナム戦争やウォーターゲート事件などで、アメリカ国民の国家やメディアへの不信感がマックスになった時期。この時代の雰囲気なども伝わり、リアリティが感じられました。

 

SNS時代の病理|フェイクと炎上・陰謀論

誰もが気軽に情報を発信できる時代に突入し、便利になった半面、フェイクニュースや炎上、陰謀論といった病も深刻になっています。不確かな情報でかつ、センセーショナルな内容なのに気軽にリツイートしてしまったとか。全く悪意のない1人1人のユーザーが、知らず知らずデマの拡散に協力してしまっている可能性もあり、危険ですね。この章では、フェイクニュースや陰謀論を題材にした映画作品をご紹介します。

俺ではない炎上

原題:俺ではない炎上/上映時間:124分/製作年:2025年

俺ではない炎上 通常版 [DVD]監督:山田篤宏
脚本:林民夫
原作:浅倉秋成
出演:阿部寛、芦田愛菜、藤原大祐、長尾謙杜、三宅弘城ほか

 映画【俺ではない炎上】の作品概要

ごくごく普通のサラリーマンが、ある日いきなり殺人犯に仕立て上げられてしまう話。そのサラリーマン山縣泰介を阿部寛が演じています。原作は浅倉秋成の同名小説。

 

 ざっくりあらすじ(序盤)

有名なハウスメーカーに勤める山縣泰介は、ある日人々の視線を感じるようになる。飲食店に入っても影で写真を撮られたり、人々が自分を見ていたりして、有名人になってしまっているのだ。

 

原因は山縣泰介と名乗るSNSアカウントだった。このアカウントから女子大生の遺体画像が投稿されたことで、知らないうちに殺人犯に仕立てあげられていた山縣。これか!と山縣が気づいた時には、すでに遅し。

何も悪いことをしてない山縣だが、どこへ行っても追い回され、遂には逃げ回るようになっていき...。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

山縣泰介は悪気なく周囲から嫌われちゃってるタイプなんですよ。本人は、自分に人望があっていい人だと思っている。でも、SNSの拡散で評判が落ちてからは、露になった自身の人望のなさを自覚していくという。こういうイタい人いるよなぁという感じです。

 

おそらくこの映画が伝えたいのは、SNSでの無責任な拡散という罪。何気なく拡散した住吉初羽馬も、サクラと名乗る山縣の娘によって事件に巻き込まれていくのが面白いところです。拡散した張本人であるにもかかわらず、何でオレがこんな目に...みたいな被害者しぐさでした。そんな初羽馬が、徐々に自分の罪を自覚していくという話です。

 

飢えたライオン

原題:飢えたライオン/上映時間:78分/製作年:2017年

飢えたライオン

監督:緒方貴臣
脚本:緒方貴臣、
出演:松林うらら、水石亜飛夢、筒井真理子、菅井知美ほか

 映画【飢えたライオン】の作品概要

『子宮に沈める』でしられる緒方貴臣が、情報、そして映像の持つ加虐性を思いっきり描いた力作。主演は松林うらら。78分でサクッと鑑賞できるのもいいです。

 

 ざっくりあらすじ(序盤)

主人公瞳は母子家庭で育った女子高校生。フリーターの彼氏・ヒロキとラブラブで、周囲の友人からも冷やかされる毎日だった。そんなある日の朝、担任の男性教師が突然警察に連行された。担任には淫行の容疑がかけられており、その相手が瞳だという噂が流れる。

 

最初のうち、瞳は噂のことを大して気にしていなかった。しかし噂が広まるにつれて妹や彼氏の態度が冷たくなり変わる。そのうちヒロキの先輩である西島が、やたら瞳に構うようになった。電話に出ないヒロキ。瞳は遂に西島に電話をかけるが...。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

まともな信頼できそうな人物が一人も出ていなくて、瞳の心境を想像するのは容易いです。取り巻く環境が絶望的過ぎる。こんななら、ずっと一人でいたほうがマシですよ。まず最初に出てくる担任教師。男子生徒の遅刻にはガミガミうるさいクセに瞳には甘くて、下心丸出し。その上いきなり連行されちゃうっていうね。

 

母親は仕事が忙しく、友人たちとの付き合いも上部だけという感じ。歳上のフリーターの彼氏が頼みの綱ですが、まずこの彼氏選びで失敗しちゃってるような。彼氏との関係が悪化したときに、彼氏の先輩をあてにするととんでもない展開になっていくという。

 

終盤にマスコミのエグさみたいなのが淡々と描かれるんですが、なぜこうなるかって、視聴率が取れるからで、結局は1人1人に責任があると感じさせられました。これまで知りもしなかった女子高生の死をエンタメとして消費するエグさ。テレビはテレビで、瞳の〇殺の動機を「おそらく~だから」と勝手に膨らませたイメージで語っていく。社会の問題なら話題にすることはたくさんあるはずなのに、なぜかこの部類の事件にのみ注目が殺到するというね。義務教育の敗北を感じました。

 

エディントンへようこそ

原題::Eddington/上映時間:148分/製作年:2025年

エディントンへようこそ

監督:アリ・アスター
脚本:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラー、ルーク・グライムス、マイケル・ウォードほか

 映画【エディントンへようこそ】の作品概要

コロナ禍のさなかのアメリカ・ニューメキシコ州が舞台になったお話。冒頭に2020年5月下旬と出ることから、ちょうど新型コロナウィルスが猛威をふるいはじめた頃だとわかります。コロナ対策やBlack Lives Matter運動などの描写がありますが、実話ベースではなく、基本的にはフィクション。ただあの頃のどんよりしたイヤ~なムードとかがそのまま表現されていて、なんか生々しいんですよね。

 

監督は映画『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』でお馴染みのアリ・アスター。主演はホアキン・フェニックスです。

 ざっくりあらすじ(序盤)

時は2020年。舞台になるのはアメリカ南部ニューメキシコ州にある小さな町エディントン。コロナ禍でロックダウンされる中、保安官のジョーはノーマスクで国境をウロウロし、プエブロの警察官に注意される。

 

「オレはマスクをしなくても平気だ」いやいや、あんたは平気でも周囲は困るんですよ。感染症なので。こんなやり取りが、翌日のスーパーマーケットでも起こる。エディントンをロックダウンした市長のテッドもまた、保安官であるジョーにマスク着用を要求した。このいざこざが引き金となり、ジョーは次の市長選に立候補することを決める。

 

黒人男性のジョージ・フロイド氏が警察官に殺害されたことを受け、全米でBLM運動も盛んになっていた。エディントンでも、少数の活動家らが路上で「ブラック・ライヴズ・マター」と叫ぶ。だが市長選のことで頭がいっぱいのジョーはさほど気にかけなかった...。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

ジョーの「ウサちゃん」発言に爆笑。メンタルが不安定な妻のルイーズはジョーの市長立候補を嫌がり、陰謀論者ヴァーノンの虜になっていくというのも、わりとありそうな話です。夕食会にルイーズがヴァーノンを連れて来たのがショックだったのか、現市長のテッドを悪者に仕立てあげようと誘導質問。

 

翌日、舐めてたBLM運動が過激化していたという展開も面白い。ジョーはこの件で動揺していたせいか「市長が過去にルイーズに対し性的暴行をした」と、ありもしないことを暴露しちゃうっていうね。何かが少しずつ狂っていき、終盤には手に追えないほどになっていく。

 

妻ルイーズの母親がネットの陰謀論を鵜呑みにして、それを逐一ジョーや娘に報告してくるタイプで、こういう人がいるから広まっちゃうよなぁと思って見ていたら!ラストはちょっと意地の悪い終わり方でした。同じく陰謀論を題材にした『ブゴニア』と比較しながら語ると面白い作品ですね。

 

ブゴニア

原題:Bugonia/上映時間:118分/製作年:2025年

ブゴニア

監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ウィル・トレイシー
原作:チャン・ジュヌァン
出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、エイダン・デルビス

 

 映画【ブゴニア】の作品概要

韓国映画『地球を守れ!』をリメイクした作品。映画『ロブスター』や『憐れみの3章』などでお馴染みの、ヨルゴス・ランティモス監督作品です。さらになんと製作にはランティモスのほかに、エマ・ストーン、アリ・アスターも名を連ねています。

 

 ざっくりあらすじ(序盤)

主人公ミシェルは、美しくキラキラした感じの女性で、テレビにも出演するような巨大製薬会社のカリスマ経営者。そんなミシェルを宇宙人だと信じているテディとその従弟であるドンが誘拐するという話です。

 

養蜂を営んでいるテディは、蜂の大量失踪「蜂群崩壊症候群(CCD)」という謎現象に悩まされていました。テディは「蜂群崩壊症候群(CCD)」の原因が宇宙人であるミシェルのせいだと決めつけ。ああああー蜂がいなくなったのも、あの女のせいだぁああああ。とそんな感じなのです。

 

しかしミシェル=宇宙人というのも、テディの憶測に過ぎません。母親絡みの因縁や恨みもあり、ミシェルを追放するために誘拐したテディ。正義のヒーロー気分のテディですが、ミシェルがなかなか手ごわい相手だとようやく気付きます...。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

スキンヘッド姿のエマ・ストーンが主演、ということでも話題になりました。テディ役は、今をときめくジェシー・プレモンスです。プレモンスは、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の赤いサングラスの男としても、有名ですね。

まぁそんな彼が、今度は寒い感じの陰謀論者です。一方でエマ・ストーンが演じるミシェルは頭のキレる人でね、対話しても全く噛み合わないという。そんな2人の会話劇や、ラストのオチに注目です。

個人的には、本作を観て陰謀論がなぜ不快なのかについて気づきがあったように思いました。詳しくはこちらの記事で書いています。

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analogchan.hatenablog.jp

陰謀論が鍵となる作品なんですが、ランティモス監督が独特なオチをつけていらっしゃって、そのあたりも本作の見どころと言えるでしょう。

 

事実の隠蔽と戦う者たち

「なかったこと」にされようとする凄惨な過去や、声の大きい扇動者によって歪められる歴史の真実。これらの事件が、映画化された意義は大変大きいです。

福田村事件

原題:福田村事件/上映時間:137分/製作年:2023年

福田村事件 [Blu-ray]

監督:森達也
脚本:佐伯俊道、井上淳一、荒井晴彦
出演:井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、松浦祐也、木竜麻生、向里祐香、杉田雷麟、カトウシンスケ、ピエール瀧、水道橋博士ほか

 

 映画【福田村事件】の作品概要

映画『福田村事件』の監督は『A』、『A2』や『FAKE』でしられる、森達也。実話ベースではありますが、細部は創作のエピソードも多いとの話です。陰惨な実話に創作であろう個々の人間ドラマを織り交ぜているので、強く惹き付けられるようなストーリーになっています。実際にあった実話と比較したい方には、『福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇』をお読みいただくといいみたいです。

 

福田村事件 関東大震災・知られざる悲劇

 

実はあちこちでいろんな人がこの問題に関心を持っていた。映画『福田村事件』を製作するにあたり、クラウドファンディングで資金を募り、最終的に3500万円以上集まったと言われています。

 

 ざっくりあらすじ(序盤)

舞台は、千葉県福田村。主人公澤田智一とその妻静子は、日本統治下であった京城府(現在のソウル)から、故郷の福田村へ戻ってきたところだった。大正デモクラシーかぶれの村長の話は誰も聞かず、在郷軍人会のメンバーは元軍人の井草をやたら持ち上げる。

 

シベリア出兵で夫を亡くした咲江は、渡し守の田中倉蔵と親密な関係にあった。村民それぞれが様々な事情を抱えている。そんな中、四国の香川県から福田村を目指し、旅を続けている行商団がいた。沼部新助を筆頭にメンバーは15人。その中には、まだ幼い子供もいる。

 

そして9月1日、未曾有の大地震が関東地方を襲う。大混乱の中「朝鮮人が井戸に毒を入れた」とか「放火や略奪をした」など根拠のないデマが流れ…。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

関東大震災後のあの恐ろしい朝鮮人虐殺事件。実は千葉県福田村では、日本人も(主に日本人が)自警団らによって殺害されたという話です。映画『福田村事件』では集団心理の恐ろしさがありありと描かれている。でも私がこちらの【陰謀論・デマ編】の方の記事に入れたかったのは、やはり根拠のないデマの拡散が怖いと感じるからです。

 

福田村事件に関してもやはり、当時「流言蜚語」が飛び交ったと書かれています。まぁね、デマに煽られる市井の市民ももちろん悪い。でも必死で韓国語を勉強した澤田智一なんかも、抵抗できないぐらいのムードだったわけでしょ。もちろん水道橋博士演じる長谷川ら在郷軍人会のメンツを見れば、こういう連中がイキリだすからそういう面においても、やっぱ戦争は絶対嫌!みたいな気持ちにはなりますね。この時代は陰気なムードを持っていて、それだけでも充分恐ろしい。

 

ただ赤ん坊を背負ってたあの人を突き動かしたのは、デマなんですよ。デマによる純粋な恐怖だと思います。憎悪とかよりも強い恐怖。その恐怖がどこかで怒りに変わるんだと思う。あのデマを皆で聞いてるとき、村長が「朝鮮人が襲ってくるとか、井戸に毒を投げ入れてるとか、あんたら本当にその目で見たんか?」って聞いてました。

 

加害者側の視点で描かれているので、自分の中にもあるかもしれない加害性みたいなのに気づきやすい。一体何が人々をそうさせたのか?2度とこういう悲劇が起こらないようにするにはどうすればいいか?これらの疑問を持たせ、考えさせてくれる素晴らしい作品です。

 

否定と肯定

原題:Denial/上映時間:109分/製作年:2016年

否定と肯定 (字幕版)

監督:ミック・ジャクソン
原作:デボラ・E・リップシュタット
脚本:デヴィッド・ヘア
出演:レイチェル・ワイズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・スポール、アンドリュー・スコット、ジャック・ロウデンほか

 映画【否定と肯定】の作品概要

『否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる戦い』を原作に製作された映画です。この原作で取り扱っている内容は「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」。ホロコースト否認に関わる、名誉毀損を争う裁判について描かれています。

 ざっくりあらすじ(序盤)

主人公はアメリカに住むユダヤ人女性のリップシュタット教授。ホロコースト研究家であるリップシュタットは、講演会中デイヴィッド・アーヴィングという男から、激しい攻撃を受ける。アーヴィングは以前リップシュタットの著作の中で、ホロコースト否定論者と呼ばれたことに恨みを持っていた。「ヒトラーが命令しただと!」と1000ドルを学生たちに見せ、文書で証明できるなら、この札束を進呈すると言った。とんだ迷惑野郎だがアーヴィングの気持ちはそれでも済まず、リップシュタットから「ホロコースト否定論者」認定されたとして、名誉毀損の訴訟を起こし…。

 

 感想、おすすめポイントや見どころなど

多数の方から指摘されていますが、本作が結構ややこしいのは、イギリスの名誉毀損訴訟がアメリカのそれと違うところにあります。イギリスでは被告側(即ちリップシュタット)が立証責任を負うため、アーヴィングがホロコーストに関して意図的に嘘の主張を行っている事実を、リップシュタット側が証拠に基づいて証明する必要があるという話になりました。これは難しいですよね。

 

ホロコーストが実際にあったことを証明する、という話ではないらしい。ホロコースト生還者が証言すると名乗り出てくれるのですが、むしろアーヴィングに傷付けられるだけだろうと想像がつくためそれもお願いできない。法廷ではリップシュタットも話せない、で観ていていろいろスッキリしない作品ではあります。

 

ただラストまで観るとそれなりにスッキリでした。アーヴィングみたいなこういう人って本当にいるんだなぁ、と。逆切れして言いがかりをつけてくるとは、恐ろしいことですね。

 

まとめ

この記事では、映画の中の陰謀論・デマ・集団心理を扱った作品を12タイトルご紹介しました。結構前に観た作品なんかも、再度鑑賞することでそれぞれに新しい発見があったように思います。2か月ぐらい前に書いた同類の記事と合わせて読んでいただけると嬉しいです。

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analogchan.hatenablog.jp

 

格差が大きくなり、世の中の様子が変わったいまだからこそ、こういう映画を今後も観続けていきたいなと思っています。天災も恐ろしいですが、デマなどの2次災害は努力によっていくらでも防げると考えているので。自分もついうっかり変なことを言わないように、気をつけなければなりません。仕組みとして理解できれば、このような不幸は必ず回避できると信じています。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございます!

 

【エイリアンアース】総評|ピーターパンとの繋がりをネタバレ考察

ドラマ『エイリアン:アース』の考察を試験的に他でやっていたのですが、こちらに移しました(一部加筆&修正)。去年の秋の記事ですね。呑気なもんです(´◡`) 

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こんにちは。短い秋を堪能中です。ちょっと遅いですがアンドロイドつながりで、今回はドラマ『エイリアン:アース』の考察をしてみました。『エイリアン:アース』を視聴された方や、まだ!と言う方も途中まででもよいので、ぜひお読みいただけると嬉しいです。

本記事はドラマ『エイリアン:アース』の完全ネタバレ記事となります。ドラマの結末、ネタバレ部分にも容赦なく触れておりますので、未見の方はご注意ください!

 

『エイリアンアース』考察記事のタイトルを入れたTOP画像

ドラマ【エイリアンアース】の基本情報・あらすじ

youtu.be

作品名:エイリアン:アース/原題:Alien: Earth/製作年:2025年配信

エピソード:全8話

企画・ショーランナー:ノア・ホーリー

監督:ノア・ホーリー(第1話、第5話)、ダナ・ゴンザレス(第2話、第3話、第7話、第8話)、ウグラ・ハウクスドッティル(第4話、第6話)
出演:シドニー・チャンドラー、アレックス・ローサー、ティモシー・オリファント、サミュエル・ブレンキン、リリー・ニューマークほか

『エイリアン アース』の簡単なあらすじ

エイリアン アースの時代設定は、2120年なので、1作目『エイリアン』の2年前の物語ということになります。


2120年の地球は、5つの企業が世界を統治している状態。プロディジー社、スレッショルド社、リンチ社、ダイナミック社、そしてウェイランド・ユタニ社が世界を支配していました。

 

人体の一部を機械化した「サイボーグ」や、人間そっくりのAI搭載型アンドロイド「シンセティック」も、人々と共生しています。そしてついに、プロディジー社のCEOカヴァリエは、難病に罹った子供の意識をシンセに移行し、人間の心を持つシンセである「ハイブリッド」を誕生させました。

 

ハイブリッドの第1号となったのはウェンディ。ウェンディ以外にも、5人の子供がハイブリッド化されました。ロスト・ボーイズとよばれる彼らは、子供の心を持っていますが、シンセのボディは成人。見た目は大人なんです。

 

一方でウェイランド・ユタニ社の宇宙船マジノ号が、プロディジー・シティの市街地に墜落。マジノ号には、宇宙で捕獲したエイリアンなど5種類の異星生物の検体が積まれていました。

 

墜落現場へは市民の救助のためプロディジー社の兵士が派遣され、その中にはウェンディの兄ジョーもいます。ウェンディは兄を助けるため、ロスト・ボーイズを率いて墜落現場に向かいますが...。

 

『エイリアンアース』の総評

ここからは『エイリアン:アース』だけでなく、過去のエイリアン・シリーズに触れることがあります。ネタバレにはご注意ください!

もっと、もっとでゼノモーフが大人気!

SNSでは「ゼノモーフがもっと観たかった」や「ゼノモーフの出番が少ない」などゼノモーフ、ゼノモーフの大合唱となり、あらためてゼノの人気の高さを、認識させられました。筆者は『エイリアン』シリーズの中でも、アッシュ・ビショップ派なので、ハイブリッドやシンセが活躍する本作に、大いに満足した次第です。

 

そんな筆者でも「もう少しゼノモーフが暴れてもよかったな」と思うほどなので、ちょうどプレデター2のような感じで、街中でのエイリアンの暴れっぷりを期待した方々のショックは計りしれません。

 

監督はポッドキャストのコメンタリーで『エイリアン』とは別のものを作らなければ意味がない、というような内容を語っています。とはいえ、ジュラシック・シリーズで言うところの「毎回ティラノを見せてくれれば、ファンはもうそれでいいんよ」、みたいなムードは否めませんでした。

過去作へのオマージュシーンが嬉しい!

第5話「宇宙では誰にも…」は、第1話を詳細に綿密に描いたエピソードです。タイトルからして、映画シリーズの1作目『エイリアン』へのリスペクトが充分に感じられました。このエピソードはショーランナーのノア・ホーリーが監督しています。
マジノ号の船内のデザインが、ノストロモ号とよく似ていて「なるほど同じウェイランド・ユタニ社のシップだからか」と納得させられました。この船内のセットは、ノストロモ号の設計図を参考にわざわざ作られたそう。以下はノア・ホーリー監督のインタビューです。

 

1作目の設計図を参考にした。リドリー・スコットも驚いてたよ。マジノ号はノストロモ号の美学を継承したからね。だがあの工業的な空間とは思えない、真っ白な船内が好きなんだ。あれこそ「エイリアン」だ。あの指令室を造り、足を踏み入れた時、興奮したよ。僕の中の少年が現れ、時間軸が崩壊した。「エイリアン」の世界にどっぷりつかれるので、クルー全員がすっかり舞い上がっていたよ。

引用元:ディズニープラス公式サイト特典映像 

 

第2話でハイブリッドのロスト・ボーイズたちがマジノ号の墜落現場へ向かうシーンは、キャメロン監督の『エイリアン2』を思い出します。輸送機の内部の雰囲気が、映画『エイリアン2』の輸送機となんか似ているなと。ハーミットのお仲間の女性兵士サイベリアンも、エイリアン2の2等兵バスケスを想起させられます。

第3話でモローが飛び降りるシーンは、『エイリアン3』のラストでのリプリーを思い出しました。

 

『ストレンジ・ブルー』を9秒だけ使ったオープニングが最高!

オープニング・タイトルが出るときの曲(和音みたいなの)が自分好み過ぎて、しびれました。クリームの楽曲『ストレンジ・ブルー』を使おうと言いだしたのは、ノア・ホーリーらしいです。ジェフ・ルッソがあれこれ試行錯誤していたら、ノアがスタジオに来て、歌い出したから、それを使ったようですね。あれは、ノアが歌っているんです。

 

続編作る気満々のオチについて…

シーズン1最終話である第8話では、カヴァリエをはじめとする、本作における悪党たちが檻の中に入ったまま、幕を閉じました。中途半端なラストで、なんか気持ちが落ち着かない気分です。

またユタニ社の軍用機がネバーランドへ到着し、何が起こるんだろうかと先が気になりますね。


「カーシュは何者か?」や「ウェンディにだけエイリアンの声が聞こえる理由」などの伏線も回収されていないので、謎が謎のままで終わってしまっています。

まぁ続きはシーズン2で!ということなんでしょうが、もう少しちゃんとしたシーズン1としてのオチをつけてほしかったように思いました。続編期待できて嬉しいのですが、あまりにも中途半端なので、納得ができないという方もおられるでしょう。

 

ブレードランナーとの繋がりを感じる

『エイリアンアース』の製作総指揮には、1作目『エイリアン』の監督であり、シリーズの生みの親であるリドリー・スコットの名前がクレジットされています。またリドスコといえば、映画『ブレードランナー』の監督としても有名です。ファンの間ではエイリアン・シリーズとブレランの世界線が繋がっているのではないか?という考察やリドリー・スコット・ユニバースも期待されていますが、こちらは権利の関係上、なかなか難しいようです。

 

『エイリアン:アース』では、プロディジー・シティの描写が、明らかにブレランっぽいと話題になりました。

 

筆者の感想としては、まずシンセのカーシュが、映画『ブレードランナー』のロイ・バッティにしか見えませんでした。カーシュは何を考えているかわからず、感情があるかないかわからないシンセなんですよね。

 

そして羊の登場。映画『ブレードランナー』の原作は、フィリップ・K・ディックのSF小説である『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』なので、テンションが爆上がりでした。そしてこの羊の目玉があんなことになるなんて!という驚きと、それを正面から捉えたカメラワークがシュールで気に入っています。

 

ちなみにこのシーンは実物の羊とアニマトロニクス、CGと計3匹の羊が使用されました。実物の羊は「ヴィクトリア」という美しい羊で、撮影現場では皆から愛されていたようです。

 

ピーターパンに関連する登場人物が続々と登場!

ウェンディをはじめとするハイブリッドは、ロスト・ボーイズとよばれますが、これは『ピーターパン』のネバーランドにいた子供グループと同じ名前です。それぞれの名前も、ほとんどがピーター・パンのロスト・ボーイズのメンバーの名前と同じです。

 

この章では『ピーター・パン』との関連をふまえながら、関係のある『エイリアン:アース』の登場人物について、ご紹介します。

ウェンディ

『エイリアン:アース』の登場人物ウェンディの画像

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (5) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

ピーターパンに登場する女の子として、その名はあまりにも有名。原作ピーター・パンのウェンディは、ピーターに誘われ弟2人と、ネバーランドへいきます。
一方エイリアンアースでのウェンディ(演:シドニー・チャンドラー)は、一番最初に永遠の命(と言われていた)を手に入れたハイブリッドです。しっかり者でお姉さんっぽいウェンディは、以後ロスト・ボーイズのリーダー的存在になります。

 

ボーイ・カヴァリエ

『エイリアン:アース』の登場人物ボーイ・カヴァリエの画像

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (14) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

ボーイ・カヴァリエ(演:サミュエル・ブレンキン)プロディジー社の超天才CEO。わずか6歳で、プロディジー社を起立しました。彼はハイブリッドではなく人間なのですが、ふるまいが子供っぽく実にピーターパン的です。設定上ハイブリッドの仕草が子供らしい理由はわかりますが、カヴァリエについては何の説明もありません。

 

しかしカヴァリエの愛読書は『ピーター・パン』なので、ピーターに憧れている人物とも言えるでしょう。ピーターパン自体がちょっとアレなキャラですが、カヴァリエはそのピーターに自分を重ね合わせてみるような歪んだ人物。カヴァリエがいつも裸足なのは、足を守る靴を履く必要がないかららしいです。

ただしカヴァリエを演じたサミュエル・ブレンキンは以下のように語っています。

ノアに勧められてトワイライト・ゾーンにある1話を見た。主人公は博識で念力が使える少年だ。現実から町を引っこ抜き、自分だけの世界に移動する。人の心も読める。誰かが悪い考えを抱くとすぐ気づくんだ。その人は煉獄みたいなトウモロコシ畑に送られ二度と戻れない。今回の役作りに必要なことがすべて詰まっていた。

引用元:ディズニープラス公式サイト特典映像

よって、トワイライト・ゾーンに出ていた少年も、カヴァリエという役作りの元ネタになっているわけです。おそらくこれは、トワイライト・ゾーンの第3シーズンにある『こどもの世界』というエピソードでしょう。映画『トワイライトゾーン/超次元の体験』の第3話でジョー・ダンテ監督 の「こどもの世界」という話がありますが、その元ネタと言われているエピソードですね。

 

エイリアン:アースでも、子供のようなボーイ・カヴァリエに周囲の大人は歯向かうことができませんでした。

モロー

『エイリアン:アース』の登場人物モローの画像

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (13) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

モロー(演:バボー・シーセイ)はドラマ『エイリアン:アース』におけるアンチ・ヒーロー。役柄はウェイランドユタニ社のサイボーグです。左手が機械であるサイボーグのモローは、『ピーターパン』におけるフック船長を想起させられます。カヴァリエ(ピーター)と敵対関係にあること、悲しい過去を持っていることも、フックと共通する部分です。

 

原作ではフック船長の右手が鉤爪になっていますが、1953年のアニメ映画『ピーター・パン』では、フック船長の左手が鉤爪になっています。

 

原作でのフックは、昔名門校に通っていたらしく、えらく行儀にこだわる男として描かれています。残酷でありながら「自分は今日、行儀が良かったか?」を自分自身に毎晩問うような、品のある男なのです。

 

エイリアンアースでも、第5話のマジノ号の脱出シーンでモローに共感する人が増えました。モローは、自身の経験上、独自のモラルを持ち合わせている悪党。スライトリーには「マシンはマシンのままか?」という、哲学的な問いかけをします。

スライトリー

『エイリアン:アース』の登場人物スライトリーとスミーの画像

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (16) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

ロスト・ボーイズのメンバーの1人。上の画像の左側にいるのがスライトリーです。アニメ映画『ピーターパン』でのスライトリーは、狐の着ぐるみを着ていました。エイリアンアースでのスライトリー(演:アダーシュ・ゴーラヴ)は、モローに脅されて仲間を騙してしまうというハラハラさせられるキャラ。

 

スミー

ロスト・ボーイズのうちの1人で、スライトリーと仲良しです。『ピーターパン』の世界では、スミーはフック船長の手下。ですから、なぜロスト・ボーイズのメンバーにスミーの名がついているのかは謎ですね。ピーター・パンでのスミーは、こども達に優しくやや間抜けな海賊です。エイリアンアースでのスミー(演:ジョナサン・アジャイ)は、優しく安心できる癒しキャラクターでした。

 

ニブス

ロスト・ボーイズのうちの1人。墜落したマジノ号内でT.オセルスに遭遇したトラウマが原因で、急に「赤ちゃんができた」と言い出したあのニブスです。アニメ映画『ピーターパン』では女の子ではなく男の子で、ウサギの着ぐるみを着ていました。ニブスは第3話で「なぜ『ピーター・パン』の登場人物の名を?」と、自分たちの名前に疑問を持っています。また「物語とは性別も違う」と性別の違いについても言及しています。

 

ニブスを演じたリリー・ニューマークは、ニブスが自身の存在意義を見失い困惑していると語りました。

 

ニブスはかなり複雑なキャラクター。機械の体を受け入れることができないので、他のハイブリッドみたいに陽気に毎日を楽しむことができないんです。ドラマ内ではニブスの目が、いつも強調されているように感じました。目が飛び出していて、何かに脅えているような印象です。研究所の大人たちが自分の味方ではない、何もしてくれない、と早い段階で気づいていたハイブリッドでもあります。

 

カーリー

『ピーターパン』の原作ではカーリー、アニメ映画(1953年)ではカビーという名で登場する男の子です。エイリアン:アースの中のカーリーは女の子。カーリーは、ルーム委員とかやりそうな優等生タイプで、いつもカヴァリエに認められたいと思っています。カヴァリエから評価されているウェンディに嫉妬するカーリーは、まるでティンカーベルのようなキャラクターですね。

 

カーリーの人間時代の名前はジェーン。ドラマ内でも言及されますが、「ジェーン」というのはピーター・パンの物語では大人になったウェンディの娘の名前なんです。つまりは二番手ということですね。

 

トゥートルズ

トゥートルズも、ピーター・パンのロストボーイズのメンバーの名前からつけられています。
エイリアン:アースでは永遠の命を手に入れたといわれていたハイブリッドの子供たち。しかし残念ながら、トゥートルズは6話目の終盤に命を落としました。

研究に目覚めたトゥートルズはアイザック・ニュートン卿にちなみ「アイザック」に改名を望んでいたので、カヴァリエに間引かれたのでは?という考察もできます。

 

【エイリアンアース】と案外怖いピーターパンとの類似点やつながり

エイリアンアースのショーランナーであるノア・ホーリーは、「ピーターパン」の原作は闇が深い、ピーターは子供の成長を嫌うとコメンタリーで語っています。ここからは、エイリアンアースとピーター・パンの類似点について考えていきます。

 

考察にあたり、以下のピーター・パン関連作品を参考にしました。ネタバレには、くれぐれもご注意ください!

 

・アニメ映画『ピーター・パン(1953)』と『ピーター・パン2 ネバーランドの秘密』

ピーター・パン (字幕版)

ピーター・パン2 —ネバーランドの秘密— [DVD]


・原作の著者はJ.M.バリ。私が読んだのは、厨川圭子訳の岩波版『ピーター・パン』です。

ピーターパン (岩波少年文庫 73)

舞台はネバーランド研究島!

ドラマ『エイリアンアース』で、ピーターパンの話が寓話的に取り入れられているのは、作品を観た方ならすでにご存知でしょう。物語の中心となるプロディジー社の研究施設が、ネバーランド研究島なので一目瞭然です。

 

病気の少女マーシーが被験者となり、ハイブリッド第1号として生まれ変わった際に名乗った名前はウェンディで、ピーターパンに登場する女の子と同じ名前ですね。研究中、実験室の天井には、1953年製作のアニメ映画『ピーターパン』の各場面が映し出されました。

忘れっぽいピーターパンと気まぐれなカヴァリエ

そもそも1953年のディズニーアニメ映画『ピーター・パン』は、ピーターを輝かしい存在として描いています。でも原作のピーターというキャラクターには、違和感を感じました。ピーターは移り気で落ち着きがなく、ウェンディのことをほとんど見ていません。

 

そして原作でのピーターパンは、とにかくピーターの忘れっぽさが強調されています。
フック船長を殺したピーターですが、月日が経つと「フック船長ってだれ?」と訊ね、ウェンディを驚かせました。

 

「殺しちまったやつのことなんか、忘れちまうさ」

 

ピーターパンは目の前のことに夢中で、過去に出会った人物については恐ろしいほど無関心。また原作では、ピーターがネバーランドの権力者であることが強調されています。

 

エイリアン:アースでもカヴァリエは、マジノ号が墜落した際に(ウェンディの要望があったにしても)、ハイブリッドを気まぐれ・面白半分で救助に向かわせています。またカヴァリエは、途中でミッションを変更し、ハイブリッドたちにエイリアンの捕獲を命じました。このような気まぐれなカヴァリエの手本になっているのが、ピーターなのです。

 

ご飯が食べれるかどうかはピーター次第!実はおそろしい権力者

『ピーター・パン』の原作では、ネバーランドは子供だけが住める島。原作では、ピーターとロストボーイズとウェンディたちは、同じ地下の家に住んでいました。ベッドが1つしかないので、寝るときはギュウギュウ詰め。

 

食事に関してもピーターは遊び半分で「うそっこ」の食事と「ほんもの」の食事を混ぜています。

 

よってロストボーイズたちは、うそっこの食事の日には、食事を食べるふりをするだけでご飯を食べることができませんでした。つまりご飯を食べれるかどうかは、ピーターの気分しだいで決まったのです。

 

ごっこ遊びのノリですが、異論を唱えると体罰が与えられたと書かれており、いよいよピーターが怖くなりました。


原作ではウェンディが両親に頼んで、ロストボーイズたちはウェンディの家の養子になり一件落着。ピーターだけが、養子になることを拒みネバーランドへ帰っていくという着地になっています。

 

ドラマ『エイリアン アース』のカヴァリエには、この原作のピーター・パンをデフォルメした怖さが感じられます。

 

『エイリアンアース』でのネバーランドも、幼稚なカヴァリエが子供たちを島に隔離していました。ノア・ホーリーは「子供のまま大人の体に閉じ込めるのは、無力な状態にしておくためだ」と語っています。

 

研究施設でのボーイ・カヴァリエ

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (7) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

 

カヴァリエはトゥートルズの死を確認したときも、それほど悲しんでいるように見えませんでした。それどころか、羊に寄生したT.オセルスが高度な知能を持つ生命体だと気付き大興奮。もしT.オセルスが人間に寄生したらどうなるかを想像しながらワクワクし、次は誰に寄生させるかを考える残酷な人物です。

 

カヴァリエはハイブリッドたちを、自分の所有物であるかのように扱います。アトムはウェンディについて、プロディジー社の所有物だと主張していましたね。人間であるウェンディの兄ハーミットすらも、人工肺にしてやったからという理由で、アトムから永久雇用を言い渡されました。

 

原作ではロストボーイズの靴下の修繕に明け暮れるウェンディ

1953年のアニメ映画版『ピーター・パン』で、ウェンディと弟たちがネバーランドに滞在したのは短期間でした。


ですが、原作の方ではウェンディらのネバーランドへの滞在期間が長く、ウェンディの両親が子供たちを心配するほどでした。ウェンディの父は犬のナナを鎖で繋いだことを反省し、自身に犬小屋の中で暮らすという罰を与えます。こうやって責任ある大人の男性としての態度が描かれているわけです。

 

『ピーター・パン』の原作のネバーランドでは、ウェンディはほとんどお母さん代わり。ロストボーイズや弟、ピーターの身の回りの世話に明け暮れ疲弊します。夜には、子供たちの靴下の修繕をしなければなりませんでした。ひそかにお母さんごっこを楽しんでいたウェンディですが、それはピーターを愛していたから。

 

しかしピーターが妻ではなく、お母さんを必要としていたことに気づくとショックで固まります。まともな大人がいない世界で、ずっと母親の役割を押し付けられていたウェンディ。母の大変さを知ると同時に、両親に心配をかけているのだと気付いたんだと思います。そして、突然「帰る」と言い出しました。

 

このように『ピーターパン』は、ウェンディが大人になっていくという話です。

 

一方でエイリアンアースでのウェンディも、精神的には12歳でありながら、リーダーなのでお姉さん的な役目を押し付けられていました。ウェンディは周囲の人の「こうあってほしい」という要求に応えなければならず、疲れてしまいます。

 

ウェンディらハイブリッドを所有物扱いするカヴァリエと、心配性で過保護な兄ジョー。ハイブリッドのボディを手に入れたことで、ウェンディにはもう違う世界が見えているのに、兄はそんなウェンディを認めようとしません。兄は、人間時代のマーシーを求めてくるのです。

 

ニブスの異変に真っ先に気づくのもウェンディです。長女の人には、ウェンディの気持ちが理解できるかもしれません。ウェンディは、最初のハイブリッドということもあり、ハイブリッド全員の出来事について責任を感じています。

 

カヴァリエという子供に振り回されるお世話係のデイムは、信用できない大人。カーシュも何を考えているのかわからず、不気味です。

 

こんな信用ならない大人に囲まれる中、ウェンディは急激な精神的成長を強いられるのです。その結果、エイリアンという共謀者を見つけてしまいました。

 

間引きを連想させられるトゥートルズの死!あれは事故か?

第6話ではトゥートルズが悲惨な死をとげます。ハイブリッドたちの未熟さを思いしらされるシーン。大人ぶっていたけど、中身はまだほんの子供だったんよ、と大勢の視聴者が悲しみました。そして物語では、ハイブリッドが永遠の命を持っているわけではない、とわかります。

 

このシーンについて一部では、トゥートルズの死が、ボーイ・カヴァリエの計らいによるものではないか?と考えられています。筆者はこのアクシデント自体が、ピーター・パンの間引きから着想を得ているのではないかと考えました。

 

ボーイ・カヴァリエは、ハイブリッドたちの自我の目覚めや進化を恐れています。カーリーがフランス語を話せるようになったと知ったとき、カヴァリエの表情は固まりました。つまり、大人になってほしくないんです。

 

ピーターパンの原作には、ネバーランドは子供だけが住める島なので、大きくなるとピーターに間引かれてしまう、という内容がさらりと書かれています。

 

以前から研究熱心だったトゥートルズは、「科学者になりたい」という夢を持っていました。そしてある日自分の名を「アイザック」に改名したい旨をカーシュに伝えます。その時のカーシュの複雑な表情。トゥートルズには自我が芽生えているんです。

 

カーシュは出先から研究室でアーサーがフェイスハガーに襲われたのを、モニターで眺めていました。もしかしたら、一連のアクシデントを把握していたかもしれません。しかし…

 

カヴァリエ「順調か?」
カーシュ「はい」

 

と、スルー。カヴァリエに状況を知らせませんでした。もしもカヴァリエがカーシュに間引きを命じていたなら、「順調か?」と聞かれ「はい」と答えたカーシュの言動の辻褄が合います。


また、確かにあのアクシデント自体は、T.オセルスが予想に反して高度な知能を持っていたがゆえの結果だったかもしれません。しかしトゥートルズは、いずれ間引かれる予定だった可能性があります。

 

島の子供の数は変わる
殺されることもあるし...。
大人になってしまったら--
島にはいられない

 

これは、トゥートルズ(アイザック)が殺されたシーンに入るナレーションです。

 

筆者の個人的感想としては「カーシュはとにかくあやしいぞ!」ということです。何を企んでいるかわかりません。でも、このキャラが本作を面白くしてると思いましたね。

何を考えているかわからないカーシュの画像

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (9) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

 

また突然「妊娠した」と言い出したニブスの記憶も、アトムの指示で消されてしまいました。妊娠できる=大人ということですから、ハイブリッドたちが子供を産むと言いだすのは好ましくありません。実際にはニブスの身体は妊娠していないので、記憶を消さなくても対処できたはず。

 

ニブスの件でわかったことは、ハイブリッドたちの心が企業の所有物でしかないという現状。「こうあってほしい」と常に求められ、気に入らないと手を加えられる無力な存在ということになります。

 

エイリアンは『ピーター・パン』におけるワニの象徴か?

第3話でハーミットを助けようとしたウェンディが、エイリアンと戦う時に使った武器は、フックの鉤爪と同じ形状の針金です。これはエイリアン=ワニを暗示しているように思えました。

 

また第4話では、ウェンディにだけエイリアンの鳴き声が聞こえる問題について、カヴァリエが


「エイリアンと戦ってる時、海賊と戦ってる気がした?『ピーター・パン』だ。そうだ、ワニだ!ワニと戦ったから、時計の音が聞こえるんだ!」
と推測しています。

 

原作の『ピーター・パン』や劇場版では、どういうわけか、ワニが時計を飲み込んでしまっているんです。よってワニが近づいてくると、フックは時計の「チック・タック」という音で気づき、脅えます。時計の音がするワニなんです。

よってエイリアンをワニに見立てているのだと考えられます。

 

エイリアン:アースのテーマその①母性とフェミニズム

これまで映画『エイリアン』シリーズでは、母性やフェミニズムがテーマとして描かれてきました。本作でもこのテーマは引き継がれています。

 

1作目同様戦う女性が主人公

1作目『エイリアン』のリプリーは、男性に媚びません。男性に守ってもらわず、1人で冷静に行動できるタイプの女性が、エイリアンと戦い最後まで生き延びる話です。

 

ノストロモ号内の会話のやり取りを見れば、リプリーが父権制社会での生きづらさを感じているとわかります。男性クルーらのリプリーへの態度は、威圧的だったりどこか見下していたりと腹立たしいです。そんな中で毅然とし、任務を遂行するリプリーはヒーロー。

 

リプリーが戦う相手はエイリアン。奴らはフェイスハガーで、体内に勝手に生き物を植え付けてきます。

 

よって彼女はエイリアン=女を出産のための道具としか見ない男性からの攻撃と戦っているのではないか?だから、エイリアンはフェミニストからも好評という考察もなされています。まあこれについては様々な意見があると思いますが、この筋でエイリアン:アースを考えてみると面白いなと思いました。

 

エイリアン:アースではウェンディがゼノを手懐けてしまいました。戦うのではなく、操り利用するのです。これについては「ゼノモーフは人類の敵であってほしい」や「なんか違う」などの感想が溢れました。実際、根本的な何かを覆された気分にさせられます。

 

しかし、家父長制を信じる有害な男らしさを手懐けコントロールできるなら、巨大企業の権力者であるテックオリガルヒに立ち向かうことができるかも、という希望を感じました。現に物語では、エイリアンを操ったウェンディがボーイ・カヴァリエを脅かします。

 

過去作で描かれてきた出産を求められることへの嫌悪感

ゼノモーフに襲われる人物を女性に見立てると、勇敢に戦うリプリーから感じられるのは女性は子供を産むための道具ではない、という主張です。このようにエイリアン・シリーズは、女を出産のための道具として見る風潮への嫌悪感を描いてきたように思えます。

 

ゼノモーフの形状はモロに男性のそれですし、襲う時は、口から涎をたらします。よって意地悪な見方をすればですが、エイリアンに対して感じる恐怖や嫌悪感は、むやみやたらと自分のコピーを作りたがる男性へのそれとなるわけです。

 

女性を出産マシンのように考える男性は、全体からするとほんの一部です。筆者が過去に出会った男性も特に女性を見下しておらず、大抵、皆親切で良識があったように思います。アッシュのような高圧的な人物も、職場でたまに見かける程度でした。


しかし、この間TWITTER(あえて)で、ある男性が「毎年作れば最低10人つくれる」という内容の投稿をし、炎上しているのを見かけました。みると「人間は家畜じゃない」や「頭悪い」や「出産は命がけ」など怒りに満ちた引用ツイがたくさんついています。少子化問題は深刻ですが、この男性ように考える人がいるという事実を知りちょっと驚きましたね。

 

エイリアン:アースでは、ニブスが想像妊娠しますが、勝手に記憶を消されてしまいます。妊娠に関しての話が、本人の意志ではなく、巨大企業に委ねられてしまったというね。状況は異なりますが、出産にまつわることなのに、本人の意志が尊重されていないという点については同じです。

 

過去シリーズでたびたび描かれる女性軽視とその代償

1作目『エイリアン』では、顔にフェイスハガーが付着したケインを船内に入れるかどうかであれこれ揉めます。冷静なリプリーは規則に従い「入れない」という意見を主張しますが、男性クルーらはそれを無視。

 

結果ケインを迎え入れたことで、船内にフェイスハガーが侵入しとんでもない事態になっていくわけです。

 

エイリアン:アースでは、宇宙船内が舞台の第5話がそんな感じでした。船長代理のサヴェリ(女性)が、ミーティングしている間もガヤガヤして話を聞かない船員。エンジニアのマラカイトは舐めきった態度で、失礼にも食事を始めました。

 

ブチ切れたモローがテーブルを叩くと、皆黙り、その場はシーンと静まり返ります。マラカイトは食事の際喉を詰まらせ、咄嗟にあの水筒に手を伸ばしてしまったため、大惨事へと発展していきました。あのシーンは本当にすごかった。

 

デイムとニブスの自己防衛的母性

デイムの画像

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (3) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

デイムは母性を盾に自分の罪悪感から、逃れようとしています。アーサーの「最悪の場合殺人」というセリフにあるように、ロストボーイズたちの人間時代の亡骸は、墓の中にあります。デイムは、内心後ろめたく思っているのでしょう。だからこそ、ニブスをはじめとするハイブリッドの子供たちをケアし、彼らの笑顔を見ることで、自分は正しいことをしたと思いたい。そのような理由で母性を武器にします。

 

奇妙な大人たちの支配下にあるニブスは、状況を支配するために妊娠という幻想の世界に身を置いた可能性も考えられます。以下はニブスの想像妊娠についての、ニブス役リリー・ニューマークのコメンタリーです。

ストレスを減らすために幻想の世界に身を置いた。現実逃避なの。子供がよくやること。心の底では信じてないの。トラウマ反応よ。(中略)それに大人は知らないけど、心の力は身体的な可能性も広げる。

引用元:ディズニープラス公式サイト特典映像

妊娠は絶対ありえない。人間の体ではないもの。でも心の力が腹部にエネルギーを送ってるのかも。妊娠の目的はニブスが状況を支配するため。新しい人生に対して、自立性を高めようとしている。

引用元:ディズニープラス公式サイト特典映像

「母は強し」という言葉があるように、ニブスは母親になることで、その場をコントロールできると思ったのかもしれません。また彼女が母代りのデイムから支配されていると感じたため、自分も母親的存在になりたいと思った可能性もあります。

 

エイリアン:アースのテーマその②自立

ウェンディ

アニメ版ピーター・パンのウェンディは、ネバーランドへ行くまでは、個室で寝ることを拒んでいましたが、ネバーランドから帰ってくると1人で眠れるようになります。

いわば原作もアニメ版も、ウェンディの成長する姿が描かれています。

 

エイリアンアースでのウェンディも、序盤は兄ハーミットにべったり。監視カメラをハッキングして、ストーカーのように兄を眺めていました。

 

ハーミットがネバーランドに来てからも、気持ち的に頼れるのは兄のみ。ただし、ハイブリッドになったウェンディは兄よりも身体が強くなってしまい複雑な心境です。またウェンディには、エイリアンの声が聞こえるなど、兄とは違う世界が見えてしまいました。

 

ウェンディは、自分だけにエイリアンの鳴き声が聞こえることで「自分がエイリアンから選ばれた」という責任を感じています。

 

兄ハーミットは、人間なのでハイブリッドの気持ちは理解できません。兄はもう自分の悩みを解決してくれない。それを悟ったウェンディは、人間のエゴのせいで捕獲されたエイリアンに同情し、友達になろうとします。

 

エイリアンもハイブリッドも、プロディジー社の研究対象という意味では同じ境遇だからです。そのような意味では、プロディジー社のカヴァリエは敵。己の真の敵が誰であるかを知ることは、自立への第一歩につながるのではないかと思います。

 

ニブス

ニブスを演じたリリー・ニューマークは、ニブスが前の人生で(人間の子供だった頃)深く傷ついているから、注意しないと症状を誘発してしまうと話しています。ショーランナーのノアとも、初めて会った時にこれについて話したそう。

 

リリーは、ニブスは過去に身体的な虐待を受けているかもしれない、と考えたようです。妊娠の騒動についても、考えたくはないがレイプを連想させられるけど、目を背けられなかったと語りました。そのような意味で、ニブスは非常に難しい苦悩を抱えたキャラクターです。

 

ニブスがこれまで母親代わりだったデイムに反抗するシーンは、怖くて度肝を抜かれました。母として慕っていたデイムにこんなことをするのは辛いはず。しかし皮肉なことに、ニブスはあのシーンで、自分の身体が人間より優れた攻撃性を持っていると気づいたのかもしれません。

 

その後、大人たちの嘘に気づき覚醒です。

胡散臭いデイムとカーシュの画像

画像引用:エイリアン アース : フォトギャラリー画像 (4) 海外ドラマ・国内ドラマ - 映画.com

嘘とは…

まずトゥートルズの死によってハイブリッドが不老不死ではないと判明しました。


次に自分の記憶が断りもなく勝手に消去されたと、知ります。


さらに第7話では、自分たちの墓地を見つけてしまいました。

 

最初から状況を両手放しに喜べなかったニブスは、カヴァリエをはじめとする変な大人のコントロールに、薄々気づいていました。嘘がわかると怒り炸裂!ボート上で、お気に入りのぬいぐるみを捨てた兵士を、むごたらしく攻撃しました。

 

こうしてニブスは、大人への第一歩を歩みはじめたのだと思います。

スライトリー

スライトリーは、ルールを破ることでプロディジー社への忠誠心を放棄。スライトリーにとって家族を守る=正しいことをするために、自分が信じた道を突き進みます。

 

スライトリーがまだほんの子供だと気づき、彼を上手く利用したモロー。モローのモデルと思われるフックも、人の望みを把握し、巧みに利用しました。

 

フックはアニメ版『ピーター・パン』ではティンカーベルの嫉妬心を役立て、続編のアニメ版『ピーター・パン2 ネバーランドの秘密』では、家に帰りたがっているジェーンへ交渉を持ちかけます。

 

スライトリーの弱点は家族。そこに気づいたモローは彼の母親を脅すことで、スライトリーを手玉に取りました。また父親の愛に飢えているスライトリーは、モローに対し父性のようなものを感じていたのかもしれません。

 

その結果皮肉にも、アーサーという唯一親代わりになりそうなまともな人間を陥れてしまいます。ロストボーイズを注意深く観察していたアーサーは、スライトリーが自分を騙していると気づき「一度嘘をついたら、後戻りできなくなる」と警告。この人が正しいことを教えてくれる人だった…と自身の失敗に気づいた時はもう遅く、スライトリーは途方もない悔恨の念に駆られます。この大失敗が、スライトリーという子供を、大きく成長させるのでした。

 

5種の地球外生命体とは

以下がマジノ号によって運ばれてきた、5種類の生命体になります。

エイリアン(ゼノモーフ)

『エイリアン』シリーズでおなじみのアイツ。エイリアンの成体。大人になったエイリアンが、通常ゼノモーフとよばれます。

卵から飛び出し人の顔に貼り付く形態のヤツは、フェイスハガー。人間の胸部を突き破って出てくるヤツは、チェストバスターですね。

 

Unnamed Fly Species

第6話に登場する巨大なハエ型のエイリアンですが名前は、決まっていないようです。

第6話で、閉じ込められたトゥートルズの顔面に液体を吹きかけて襲いました。この地球外生命体は、体外で食物を消化します。金属や合金を捕食するため、ハイブリッドで機械のボディを持つトゥートルズは、この巨大ハエの餌にされてしまいました。

 

T.オセルス

眼球のような寄生体で、別名はオクトパス・アイ。海外では、アイミッジと呼ばれていたりもします。

 

眼球からタコの足のようなものが生えていて、素早く移動できるうえ、高度な知能も持ち合わせた恐ろしいヤツ。羊の左目として寄生し、間接的ですがトゥートルズを殺しました。その後の円周率テストで知能があると判明。

 

T.オセルスが登場すると、必ず何かトラブルが起こる。最高にキャッチ―なカオス・メーカーです。

 

Species 19

第5話に登場した、マダニのような生命体です。チブゾーの水筒の中に、幼虫を産みつけました。そして、その水筒の水を飲んだマラカイトの体内で繁殖っていう最悪な状況に。

 

マダニという身近な生き物が存在するせいか、恐怖や嫌悪感が凄かったです。幼虫を産みつけるくだりから、ハラハラ・ドキドキのスリリングな展開が続きました。

 

D. Plumbicare

D. Plumbicareプランビケアは、球根型の食虫植物のような生命体です。墜落したマジノ号で、カーシュやトゥートルズによって捕獲され、ネバーランドの研究施設に運ばれました。

 

最終話である第8話では、天井からぶら下がった状態のまま女性兵士サイベリアン(演:ディエム・カミラ)を飲み込んで体内に取り入れ、殺害。これまでじっとしていたのに!実に恐ろしい生き物です。

 

まとめ

この記事ではドラマ『エイリアン:アース』について、ピーター・パンとのつながりを中心に、作品のテーマなどを考察してまいりました。

 

エイリアン:アースは、ここで挙げた以外にも、人間とは何か、ポストヒューマニズム、企業国家の危惧性、永遠の命をめぐる問題、など深いテーマがてんこ盛りでしたね。機会があれば、また考察してみたいと思います。

 

長々と書きましたが『エイリアン』シリーズは、ゼノが暴れてギャーってなって、血がピューって飛んだらもうそれでいいんよ、派の皆さまここまでお読みくださりありがとうございます。それ以外の読者様も最後までお読みくださり、誠にありがとうございます!今後もSFに関する記事を、頑張ってアップしていく予定です。

屈するか、それとも抗うか【囚われた国家】映画感想

この映画、昨年やっと観ました(※2021年頃の記事に加筆・修正を加えたものです)。ちょっと気になったのは、「宇宙へ追放される人達の乗る宇宙船」が真横に飛び過ぎじゃないか?ってことぐらいですかね?あの角度じゃ、いつまでたっても宇宙に行かないと思いますよ!あとは概ね、最高です。

囚われた国家

原題:Captive State/上映時間:109分/製作年:2019年

囚われた国家(字幕版)

監督:ルパート・ワイアット

脚本:ルパート・ワイアット、エリカ・ビーネイ

出演:ジョン・グッドマン、ヴェラ・ファーミガ、アシュトン・サンダースほか

 

 

※以下完全ネタバレ記事となります。未見の方はご注意ください。

 囚われた国家の主な登場人物(ネタバレあり)

 ウィリアム・マリガン(演:ジョン・グッドマン)

マリガン役ジョン・グッドマンの画像

画像引用元:https://www.facebook.com/captivestatemovie

元シカゴ警察官。ピルゼン特捜班の指令官で、近い内にエイリアンに対するゲリラ的な抵抗が起こるだろうと予想していた人物。エイリアンに襲われ死亡したガブリエルの父とは同僚で、親しい仲だった。案外地元愛に溢れたおっさん。ジェーンは元教師だったとか、ガブリエルの子供の頃を知っているとか、そういう思い出を心に秘めている人物だったとラストで分かります。

 

マリガンを演じたジョン・グッドマンは「本作品を観て、(観客に)何を考えてもらいたいか?」というインタビューの質問に対して「”自分ならどうするだろう”と想像しながら観て欲しい、観ている間登場人物と自分を重ねて欲しいんだ」と答えています。

 

ジョン・グッドマンのインタビュー ↓ ↓ ↓

映画『囚われた国家』|ジョン・グッドマン(マリガン特捜司令官役)インタビュー - YouTube

 ガブリエル・ドラモンド(演:アシュトン・サンダース)

ガブリエル役アシュトン・サンダースの画像

画像引用元:https://www.facebook.com/captivestatemovie

データ回収センターで働く青年。データを盗み、それを友人ユルギスに流し、金に換えている。でも基本的には恋人ルーラを愛しており、兄のように過激な活動は極力避けたい主義。以前のような監視されない生活を夢見ています。

 

 ラファエル・ドラモンド(演:ジョナサン・メジャース)

ガブリエルの兄。ウィッカーパークで破壊工作を起こし死んだと思われていたが、実は生きていた。本作の山場となるスタジアムでのゲリラ戦で、重要な役割を果たす。

 

 ジェーン・ドゥー(演:ヴェラ・ファーミガ)

娼館を営む娼婦。マリガンと親しい関係にあった。ストーリー終盤に差し掛かった時、この女性がフェニックスの総指揮者、「ナンバー1」であったと分かる。エイリアンから襲撃される前は、歴史の教師をしていた。

囚われた国家のあらすじ(ネタバレあり)

舞台は2027年のアメリカ、シカゴ。地球外生命体の侵略から、9年も経過してしまっています。アメリカ政府は「統治者」とよばれるエイリアンの言いなり。エイリアンの手下になれば、エリートでいられるような、そんな世界です。街はめちゃくちゃで、貧富の差も相当に出ています。貧しくなった市民の中は、大人しくエイリアンの言うことを聞くグループと、抵抗するグループに分裂。エイリアンから奪われた自由を取り戻そうと密かに結成されたレジスタンスのグループは、近々市内スタジアムで開催される統治者たちの団結集会のため、大掛かりな破壊工作を企てますが...。

 

 ちょこっと用語解説(完全ネタバレ)

この映画の中でしか使われない言葉があって、ちょっともう忘れられてる方もいらっしゃると思うので、ここにざっくりまとめておきます。

 統治者

この映画の中の人達はエイリアンたちのことをこう呼びます。

 閉鎖区域

シカゴ市内の中心部の地下にある、エイリアン居住区。アメリカ政府がエイリアンからイヤイヤながら建設させられた。パリや北京にもある。

 ザ・ローチ

レジスタンスを弾圧したり、怪しい動きをする人物を見つけ出し取り締まる組織。エイリアンの手下となった警察みたいなもの。基本人間。

 ウィッカーパーク事件

ラファエルらが過去に反撃を起こした場所、ウィッカーパークの名を取りそう呼ぶ。人間側の抵抗運動などが起こるとエイリアンはその地を焼き払うので、ウィッカーパークは廃虚と化した。

 フェニックス(不死鳥)

ナンバー1の率いるレジスタンス・グループの名。ガブリエルの兄であるラファエルも、その一員だった。ウィッカーパーク事件以降消滅したと考えられていたが、残党たちが新聞広告で連絡を取りあっているのをマリガンに見つかる。

 

 囚われた国家の感想(完全ネタバレ)

地球が統治者に支配されている様子

画像引用元:https://www.facebook.com/captivestatemovie

 

侵略後、9年という舞台設定がミソですね。もはやエイリアン侵略中ではないので、『宇宙戦争』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』みたいなパニックは、もうとっくに終わってる訳です。よってこの映画は宇宙人侵略の恐怖をド派手なアクション、グロテスクなクリーチャーで見せる、といった部類の作品ではありません。本作品を単に”映像表現が地味な作品”として捉えるかどうかは、その時の気分や好みの問題もあるでしょう。

 

個人的には、むしろ非常にスリルのあるSFサスペンスだと思いました。エイリアンは平常時、監視を人間に任せじっと地下に潜伏しているのですが、人々は常に見えない何かに脅かされることとなる。またエイリアンが全く出てこないわけでもありませんから、姿を現した時には「やっぱりいるんだ!」的な絶望感を味わうことになります。

 

 統治者に媚びるチームと反発するチーム

とんでもない者の支配下に置かれた人類がエイリアンのご機嫌をとりながら、何とか日々の暮らしを営んでいる。貧富の差は相当に拡大してますが、ベッドで恋人と抱き合う程度のことは出来る毎日のようです。

 

さて、このように地球の環境が変化した時、

1.エイリアンに媚びるチームの人々

権力側=例えば本部長、ザ・ローチの一員、裕福層の人々


2.権力に対抗しようとする人々

レジスタンス=例えばラファエルをはじめとするレジスタンスのチーム、貧困層の中の反乱分子、ガブリエルやその友人ユルギスなど。


3.どちらでもない人々

「いやぁね、統治者ってウニで...」などと心の中では思いながら、日々の暮らしを重視する人たち。貧困層。ガブリエルの恋人ルーラなども。エイリアンに地球の資源を搾取されながらでも、大人しくしておく方が無難と考える人達。

 

と大きく分けて、3パターンの集団に分かれたと思うのです。貧富の差が開き二分化とありますが、細かいことを申し上げれば、私は3つに分かれているなと思いました。

で、立場的には1であるマリガンがどこの人か?その立ち位置がストーリー序盤では明かされてない、という仕掛けですかね。ただ本部長が閉鎖区域へ向かう時それをじっと眺める目つきは、明らかに何かやらかしそうな雰囲気でしたけどね(正直、笑)

 

で、こうして見ているとまんま、現代社会の縮図じゃないか!って気付かされたりします。これは宇宙人の話ではないのだな、と。また、ルパート・ワイアット監督は、この映画を撮るにあたって、『アルジェの戦い』(1966年)、『影の軍隊』(1969年)から大きな影響を受けているとインタビューで話されています。未見ですが、ぜひ観てみたいです。

 

また『パラサイト・イヴ』の作家瀬名秀明さんのコメントも興味深いので、以下リンクを貼っておきます。

一方で、スタジアムにエイリアンを招くシーンで歌手が「グローリー・ハレルヤ」を歌って、まるでスーパーボウル(※2)のように盛り上げたりするのは「幼年期の終わり」への見事な返答だと思いましたし、敵の造形はむしろあえて「プレデター」「エイリアン」などのアイコンに似せて、私たちの過去の記憶を掘り起こしているかのようであり、その点も興味深いところです。

傑作だと思います。

「囚われた国家」特集 - 映画ナタリー 特集・インタビュー

 

 スタジアムでの革命シーン

大きな見せ場は、スタジアムのシーンですね。またここにいたるまでの、レジスタンスの段取りが凄い。

 

デジタルデータではすぐに見つかってしまうので、タバコの巻き紙に手書きの番号を書き込んだりして、やっぱこういう場ではアナログが強いなぁと。新聞の広告欄にさりげなくメッセージを載せ、特定の人に合図を送る手口は、羊たちの沈黙の前日譚『レッド・ドラゴン』でも観たような気がします。このやり方だと、確かにデータの監視から逃れることができるかも知れません。

 

タバコ→伝書鳩→公衆電話→レコードで特定の音楽をかける→etc...

みたいな、誰か1人でもヘマをしたら全てが台無しになってしまうので、もうみんなチョー真剣なわけです。しかも遊びでやる伝言ゲームなどではなく、こんなやり方でゲリラ戦を起こすわけですから。そして遂に、スタジアムへ向かい、団結集会を台無しにしてやろうと。

 

またこのシーンのサントラがスタイリッシュですね~。いやぁ、素晴らしいです。そしてダニエルを演じたベン・ダニエルズもメチャ渋い。

 

 終盤に静かなどんでん返しあり

統治者に会いに行くマリガンの画像

画像引用元:映画『囚われた国家』公式 (@CaptiveState_jp) | Twitter

どんでん返しと言っても、娼婦のジェーンは非業の死を遂げているし、他の革命チームメンバーも次々と〇殺。もの悲しさが漂います。マリガンがガブリエルに言った「敵を信じるな」という言葉は、元々歴史を教えるジェーンの言葉だった。だから、陽気に1本取られたな!などとは思えない感じです。データを消去するガブリエル、クラゲのような爆弾を貼り付けたマリガン、何ともやりきれない気持ちになりました。

 

ことマリガンに関しては「あいつは体制側に着きやがって!」というのは簡単ですが、その立場に身を置いた人間側の心理は相当に複雑だと思うのです。いつかリベンジしてやる!と思いながら、格好としては従順な態度を取らなければならない。従順な態度を取れば、相手はさほど酷いことをしてこないので、ほんの少し気を許してしまう。

 

権力者側と反体制側の境界に立つ人物、それがマリガンで、そのような意味ではアンダーカバー作品としての魅力もありますね。SFですがスパイものっぽい。

 

抵抗する限りチャンスはある。そう思わせてくれる作品ですが、登場人物らが皆辛そうなんですよね。こうなる前になんとかしなければいけない、と考えさせられる作品でした。

 

 地味ながらにもこだわりの感じられるクリーチャーやオブジェクトの造形

ウニの殻のようなトゲトゲのエイリアンの造形は、アントニー・ゴームリーというイギリスの彫刻家の作品からインスピレーションを得ているそうです。殻を壊すと中にはアワビみたいなのがいて、案外弱い。現実でも、恐れられていた人物が、攻撃されると案外弱かったみたいなことはありますね(笑)

 

また本作品は、全体的に海洋生物をモチーフにしたようなエイリアンが多くて面白いです。ガブリエルが廃墟と化した地下の売店に潜り込んだ時に襲ってきたのは、タコみたいな吸盤の付いたエイリアンだったし、あと透明な爆弾はクラゲとかナマコとかを連想させられます。物静かですが、凄いディストピア世界の表現だなと...。

 

また全体的にディック原作映画に似た暗~い感じが漂ってて、メチャ面白いなと思いました。最高!最後までお読みくださり、ありがとうございます!

 

囚われた国家(字幕版)

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