以前ドラマ版の『蝿の王』のレビューを書きました。
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そしては今回は、2014年に製作された映画『ファイナル・ゲーム』のレビューを書いてみたいと思います。こちらは、蝿の王の大人版と言っても差し支えないでしょう。蝿の王を知らずに、この映画を観た方はなんのことやら、と思われるかもしれません。
そこでこの記事では、映画『ファイナル・ゲーム』のあらすじ、キャストに加え、蝿の王との類似性、総合的な感想などを書いていきたいと思います。
本記事は映画『ファイナル・ゲーム』の完全ネタバレ記事となります。また『蠅の王』のストーリーの結末、ネタバレ部分にも容赦なく触れておりますので、未見の方はご注意ください!
- 映画【ファイナル・ゲーム】の作品概要
- 映画【ファイナル・ゲーム】のキャスト
- 映画【ファイナル・ゲーム】のあらすじ
- 映画【ファイナル・ゲーム】と蝿の王の類似性
- 映画【ファイナル・ゲーム】と蝿の王の比較
- おまけ:映画『ファイナル・ゲーム』配信版とDVD・Blu-ray版の違い
- まとめ:映画【ファイナル・ゲーム】の総評
映画【ファイナル・ゲーム】の作品概要
原題:Eden/上映時間:97分/製作年:2014年
監督:シャム・マディラジュ
脚本:マーク・マヴロタラシティス
原案:ネイト・パーカー
出演:ネイト・パーカー、イーサン・ペック、サン・カン、ディエゴ・ボネータ、ユージン・サイモン、ジェシカ・ロウンズほか
このシャム・マディラジュという監督は、インドの広告業界でキャリアを築いてこられた方です。過去にはカンヌ広告祭、ニューヨーク広告祭、クリオ賞などで数々の賞を受賞されました。だから映画は、あんまり撮ってないんです。過去作ではこの『ファイナル・ゲーム』と『Cake ケーキ ~悲しみが通り過ぎるまで』ぐらい。
そして日本では、2026年11月13日に公開される映画『55 FIFTY FIVE/番号で呼ばれた少年』の監督・を務めておられます。この『55 FIFTY FIVE/番号で呼ばれた少年』の製作は、なんとリドリー・スコットになってました。リドリー・スコットもまた、広告業界でキャリアを積んだ方ですね。
一方でこの『ファイナル・ゲーム』の製作には、ジャウム・コレット=セラも名を連ねています。そしてジャウム・コレット=セラ監督の映画『フライト・ゲーム』にも出演していたネイト・パーカーが原案を出し、主演を務めました。
それ以外の注目のキャストは、ワイ・スピのハン役で著名なサン・カンさん。サン・カンさんが出演しているから、というのが私がこの映画を観ようと思ったきっかけです。
あとは、グレゴリー・ペックの孫にあたるイーサン・ペックが主人公の宿敵として出演しています。
映画【ファイナル・ゲーム】のキャスト
映画『ファイナル・ゲーム』の登場人物をご紹介します。
スリム(演:ネイト・パーカー)

photo taken by flickr user the_g_man / Actor Nate Parker / CC BY 2.0
サッカーチームのキャプテン。冒頭シーンを観る限り、ワールドカップでもさぞかし活躍したことがうかがえる。浮わついた様子もなく、物静かで温厚な黒人男性。冒頭から、エレナと付き合っているような雰囲気を醸し出していた。
『蝿の王』で言えば、ラルフに相応する人物と思われる。サッカーチームでもキャプテンをしていたことから、人望がある。
アンドレアス(演:イーサン・ペック)

画像引用:[Photograph by Greg2600](https://commons. /wiki/File:Ethan_Peck_(46909546282).jpg) / Ethan Peck / CC BY-SA 2.0
サッカーチームの副キャプテンだと思われる。同じチームにいる弟のジョージも一緒に遭難した。島の暮らしが始まってからは、やたらとリーダーシップを取りたがるが、日頃からキャプテンとして信頼されているスリムの方が人気高め。
『蝿の王』で言えば、ジャックに相応する人物と思われる。食糧の少なさをやたら気にしているのも、なんかジャックっぽい。
コニー(演:サン・カン)

画像引用:flickr user photoren (Actor Sung Kang), クリエイティブ・コモンズ [CC BY 2.0] に基づき作成
サッカーチームのトレーナー。飛行機墜落後は、せっせと人命救助にあたる。『蝿の王』で例えるなら、サイモンとピギーを足して2で割ったようなキャラクター。個人的には、やはりピギーよりもサイモンに似ていると思う。
ベリーを見つけたけど、毒があって食べれないとわかるなど、知的さもあり、そこはピギーっぽい。かなり早い段階で、人間性を失っていく仲間を見て絶望的な気分を味わう。
エレナ(演:ジェシカ・ラウンズ)

画像引用:Photo by Alex Oliveira / Peabody Awards / Jessica Lowndes / CC BY 2.0
サッカーチームの監督の娘なので、飛行機に乗っていた。飛行機事故で両親を失ったという悲しみを抱えている。冒頭シーンからみる限り、スリムと恋愛関係にあったような感じ。だがスリムが怪我人切り捨てに賛成したため、ちょっと気持ちが離れる。がその後なぜか発案者のアンドレアスと肉体関係を持つという、よくわからない行動に出た。最終的にはスリムに救助される。
エヴァ(演:レオレ・ハヨン)
エレナの妹。姉と同じく、サッカーチームの監督の娘ということで、飛行機に乗っていた。無人島に遭難し死者も出ている中、フェリックスとラブラブムードになり、洞窟の中でイチャイチャ。これぐらいのポジティブさがないと生き残れないのかもしれないと思わせてくれる癒しキャラ。案外知的で、ボートを集水装置に変えるなど斬新なアイデアを出したりもした。
フェリックス(演:マリオ・カサス)
エヴァとラブラブになり、島でイチャイチャしたりしてそこはけしからんのだけど、基本的には、おおらかで優しい人物。怪我人の切り捨てにも反対。スリムを庇おうとして命を落とした。
アーニー(演:ディエゴ・ボネータ)

画像引用:Gage Skidmore / Actor Diego Boneta / CC BY-SA 3.0
かなり早い段階で、喧嘩っぱやく、怒りっぽさが強調されたキャラクター。サメから逃げて食糧をのがしたケンにも攻撃的な態度。終盤にいたっては、エレナを強姦しようとするところまで落ちぶれる。
ジョージ(演:ジョーイ・ポラーリ)
アンドレアスの弟だが、兄とは対照的で、おとなしい性格。ダグと仲がよい。
ダグ(演:マシュー・テストロ)
アンドレアスの弟のジョージと仲がよかった。突然、有刺鉄線に引っかかり、身動きが取れなくなった。ジョージが地雷を踏むところを目の前で見てしまう。ジョージの死後、メンタルを病んだような感じだったが、最終的には回復しスリム側に付くようになる。
ケネフィック(演:ユージン・サイモン)
通称ケン。臆病さが強調されたキャラクター。確保した食糧を任されていたが、サメに怯えて逃げてしまい、食糧を失う。この件でアンドレアスに食事抜きのペナルティを与えられたことが癇に触ったのか、後になって皆の食糧を陰で食べていたと判明。最終的にはスリム側につく。スリムの影響を受け、1人で偵察に行くなど、勇気ある姿を見せてくれる。
映画【ファイナル・ゲーム】のあらすじ
サッカーのワールドカップで、なんと!ブラジルに勝ったアメリカのチームの人たちが主な登場人物という設定。まぁ、まずその設定に驚かされる。そして、そのチームが帰国するために乗った飛行機が突然墜落。
1日目
飛行機事故での死者は、22名と判明。スリム、フィリックス、コニー、アンドレアス、アーニー、マルキーズ、パットン、マッケンナ、アンドレアスの弟ジョージ、エレナ、エヴァ、ダグ、ステファン、セヴィーなど全部で15人が生き残った。しかし突然スリムが鼻血を出し、減圧症で倒れる。トレーナーのコニーは、負傷したセヴィーとステファンの看病に徹した。
2日目
残された食糧の少なさに、顔をしかめるアンドレアス。3人組が海で食料を確保。がその内の1人であるケネフィック(ケン)がサメを目撃し、逃げたために、食料を失う。ケネフィック(ケン)を責め立てるアーニー。アンドレアスはしくじったケンと、ギャーギャー騒ぎ喧嘩したアーニーに食事抜きの罰を与えた。
4日目
倒れたスリムがようやく目を覚ます。エレナが看病する中、昏々と眠っていたのだ。スリムが眠っている間に、チームの指揮をとっていたアンドレアスは、スリムに残りの水があと4日分しかないと伝える。スリムは助けを待とうと主張するが、アンドレアスは「助けなど来ない」と悲観的だった。
アンドレアスは怪我人のセヴィーやステファンに水を与えれば、無駄になるかもしれないと主張する。「1人か全員か」だと真顔で言った。
夜。この提案についてコニーが大反対する。弱った人を殺す気なのか?とブチ切れ。多数決をとると、賛成と反対で意見が真っ二つに割れた。スリムの意見で判定が決まるというとき、まさかのスリムが賛成の方に票を入れた。そんなスリムに、エレナはドン引き。
6日目
ステファンが死亡してしまう。すぐ近くに小さいが別の島があるとわかり、アンドレアス、アーニー、マルキーズ、エレナが探索に向かった。アンドレアスとちょっとラブラブムードになるエレナ。
コニーを探すスリム。コニーは、崖の上にいた。ステファンが死んで落ち込んでいたコニーだが、穏やかな口調で「帰れないのは怖くない。ここに残りたいと思うのが怖い」とスリムに話す。島に生き物はおらず、島中にあるベリーの実にも毒がある。コニーにはいずれ食糧が尽きる、絶望的な状況がわかっていた。スリムは「これは悪夢なんだ、いつか目が覚める」とコニーを励ました。しかし、スリムが目を離した隙に、コニーは崖から飛び降り自◯してしまう。
コニーが死亡すると、悪夢のような展開が続く。まず、アンドレアスの弟のジョージが地雷を踏んで、瀕死の傷を負った。大声でコニーの名を叫ぶアンドレアス。だが、コニーはもういない。深夜、アンドレアスは苦しむジョージを抱き抱えながら、絞殺した。
8日目
エヴァからの提案でゴムボートを解体して、集水装置を作ろうという話になった。ボートがないと島から逃げれなくなる、などの反対意見が出るが、スリムはこの案を採用。パットンとマッケンナは、壊される前にボートを奪って逃げてしまった。
9日目
ケンが、隠れて食糧を食べていたのが見つかる。仲間に責められボコられるケン。この騒ぎを止めようとしたスリムとアンドレアスが揉み合いの喧嘩になり、それを止めようとしたフィリックスがアンドレアスに刺され死亡してしまった。
アンドレアスは向こう側に見える島に渡り、そこで暮らすと言い始める。もうお前らとは、生活せんぞ!とそんな感じだった。
ダグ、エレナなど計4名がアンドレアス側につき、向こうの島へ渡った。アンドレアスとエレナは向こうの島に着くと色情に溺れ、ヤリまくる。
そしてエヴァ、セヴィー、ケン、セヴィーだけが元の島に残った。少量ながら水を集水したり、海で食糧を得たりしながら、生活する。一方アンドレアスたちは獲物をしとめるため武器作りに励むが、食糧は得られなかった。
10日目
足を負傷していたセヴィーだが、起き上がって皆と食事を取れるところまで回復する。
そんな折、スリムが管理していた水が盗まれる。スリムはアンドレアスたちの島へ行き「食糧不足で困っているなら戻って来ないか?」と声をかけるが、アンドレアスは応じなかった。
アンドレアスの留守中、エレナがアーニーに強姦されそうになる。エレナは反撃するが、頭を打ち動かなくなった。
一方で食糧を盗み食いしてしまったケンは責任を感じ、下手くそな泳ぎでヨタヨタしながら、アンドレアスたちの島へ向かう。島に上がったケンは、エレナが倒れている現場に居合わせた。
アーニーは、ケンがエレナを殺したのだと周囲に言い聞かせ、アンドレアスにもそう報告する。スリムの元へ戻ったケンは、泣きながら状況を伝える。
エレナを心配し、急いで島へ向かうスリム。
エレナは生きていた。スリムはエレナを救助し、自分たちの住む島へ連れて帰る。戻るとアンドレアスたちが松明を持って乗り込んで来ており、テントに放火していた。
14日目
スリムはエヴァ、ケン、セヴィーの元へ行き、生き残るためには戦うしかないとケンを説得する。敵方はアンドレアス、ダグ、アーニーが生き残っていた。
スリムは、ダグを誘き寄せ絞殺しようとしたが結局できなかった。命拾いしたダグは、スリムに泣いて謝る。ダグがスリムの味方につき、エレナをエヴァたちと引き合わせた。
ケンとスリムで、アーニーを崖から突き落とした。最終的にはアンドレアスとスリムが格闘するが、その最中に救助ヘリが到着。アンドレアスはヘリを見ると逃げ出した。
ヘリに乗り込むスリム、エヴァ、エレナ、セヴィー、ケン、ダグ。「これで全員ですか?」と聞かれたスリムは「ええ」と答える。ヘリ出発。島から飛び立つヘリを、アンドレアスは離れた場所から眺めるのだった。
映画【ファイナル・ゲーム】と蝿の王の類似性
映画『ファイナル・ゲーム』は海外のサイトでも『蠅の王』を彷彿とさせるストーリーなどと言われています。個人的に、ここが似てるなと思った箇所を挙げてみました。
救助を期待するスリムと自己責任で済ますアンドレアスの構図
『蝿の王』のラルフは、外の世界に戻りたい少年です。しかしジャックはどこか「この状況を楽しんでやろう」的な部分があって、救助を求めていません。
『ファイナル・ゲーム』のスリムはスマホを見つけたときも、これが何かの役に立つかもしれないと思って期待しますが、アンドレアスは電波が来てないから無理だと言って、ソッコー否定。戻る気あんの?って思いました。
ネガティブなアンドレアスは最初から救助に対して諦めモードでした。ワールドカップ優勝チームなら捜しにくるでしょ、フツー。どんだけ自己評価低いんよと思いました。とにかく救助に期待していないんです。
この対比は『蝿の王』でも描かれています。ラルフは狼煙を焚いて周囲に気づいてもらおうとするのですが、ジャックが豚の狩人になっちゃって。自給自足でなんとか生きていこうとしていたと思います。
主人公スリムは蝿の王のラルフ
よって主人公のスリムというキャラクターは、『蠅の王』で例えるならラルフかなと思います。そういう先入観で見ていたもので、おやっと思ったシーンもありました。例えば、怪我人を切り捨てるか否かで多数決を取るというシーン。意見が半々になったとき、まさかの、スリムが
「自分も賛成っす」
で。反対派はドン引き。スリム、お前がそっち側かよと思ったに違いないです。でもスリムはね、こっそり負傷者に水や食糧を渡していたことが後になって、誰かのセリフで判明します。
そしてスリムは、大人しく救助を待つというスタンスがラルフとかぶります。また基本的に、弱者にも優しい。知的な人の声に耳を傾け、意見を聞き入れます。そして勇気があって、強気なアンドレアスに歯向かうこともできる、という点はいかにもラルフ的でした。ラストはアンドレアスと対立していきますが、間一髪のところで待ち望んでいた救助が来るところなんかもね。
蝿の王のサイモンとピギーを思わせるコニー
トレーナーのコニーは、サイモンとピギーを掛け合わせたようなキャラクターです。周囲のメンバーよりも少し大人で、良識がある。
トレーナーという職業柄か、人命救助の知識も多少あるし「このベリーの実は食べれない」など、植物にも詳しいです。こういう部分は『蝿の王』の知の象徴であるピギーっぽいなと思いました。
一方でコニーの「帰れないのは怖くない。ここに残りたいと思うのが怖い」というセリフは、サイモン的です。サイモンは『蝿の王』の中でも、唯一獣の本質を見抜いていた少年でした。野蛮さなどの悪というのはそれぞれ自分たちの心の中にある、だから自分たちの内面の悪が覚醒し凶暴になっていくのが怖い、という解釈ができます。
また『蝿の王』のサイモンは、それまで不遇な人生を生きてきたキャラクター。だから島に残りたい、という趣旨の話をしています。どちらの意味合いなのか、はたまた違う解釈があるのかはわかりませんが、私はこのセリフがいかにもサイモン的だと感じたのです。
さらに「ここに残りたいと思うのが怖い」というセリフは、植民地主義を批判的に描いた『蝿の王』らしさを感じる部分でもあります。
コニーの死後、状況が急に悪くなる
蝿の王でも、サイモンの死後に状況が激変します。サイモンは、キリストのような善の象徴のキャラクターとして描かれていました。映画『ファイナル・ゲーム』では、コニーが崖から飛び降りて以降、状況が激変。悪いことが次々と起こり、島は呪われたように地獄絵図と化します。
さらにコニーはチームのメンバーの中でも少し精神的に大人で、理性的な人物です。そんなコニーがいなくなったことで、他のメンバーはやりたい放題となり、歯止めが効かなくなっちゃいました。殺人、盗み、性暴力などなんでもアリになっていきます。
もう1人のサイモン
チームのメンバーの中でサイモン的な人物をもう1人上げるとするなら、ジョージという考え方もできますが、個人的にはフェリックスではないか?と思っています。
スリムを助けようとしてフェリックスが亡くなった場所は、浜辺。波打ち際に倒れ込みながらこの世を去るフェリックスの死は、どこか神聖なものを感じさせられました。『蝿の王』でのサイモンも、波打ち際に倒れ込んでこの世を去るんです。両方共このシーンがとても悲しく感じられました。
救助されるにいたる皮肉な経緯
『蝿の王』では、ジャックがラルフを捕えようとして、あたり一面を燃やします。皮肉にもこの火によって煙が大きく上がったので、軍隊の大人に気づいてもらえた可能性が高いです。そして映画『ファイナル・ゲーム』では、ボートを盗んだパットンとマッケンナが救助されたことで、島にも救助隊が来たという話でした。ほんと、何がいいかなんかわからんな、と思います。
ラストの着地
アンドレアスが島に残されるという、蝿の王にもない新しい着地が用意されました。アンドレアスは、もう恥ずかしくて社会に復帰できないような振る舞いだったのでね。
きっとスリムが気を効かせたのでしょう。なんとも言えない、絶妙な結末です。アンドレアスは怪我人の切り捨てを提案したし、このルールに従い弟のジョージまで殺害しています。いい大人がこれではね。
映画【ファイナル・ゲーム】と蝿の王の比較
【ファイナル・ゲーム】のサバイバルスタイル
映画『ファイナル・ゲーム』の島の状況は、蝿の王の子供たちの境遇よりも悪いです。まず水や食料が限られていて...。蝿の王では、子どもたちが小川や果物の木を見つけるのですが、大人版では自然の恵みがなくて、飛行機の墜落時に散乱したお菓子や飲料を集めそれで生活していこうとします。アンドレアスが深刻な顔で、飲料水の話をスリムにするんですがね。
蝿の王の子供たちの中にはピギーというインテリ少年がいたのですが、残念ながらサッカーチームの中にピギーらしさを感じる人物はコニー以外いませんでした。ピギーがいると、小川のある場所などいろいろ助言してくれそうなんですがね。
『ファイナル・ゲーム』ではコニーがピギーとサイモンの役目を両方担っているような感じなので、知的な提案ができる人物がエヴァぐらいしかいない。コニーは負傷者の手当てで忙しいから、皆にいろいろ教える余裕がないんですよね。
そういう部分も観ていてキツかったです。
唯一の女性であるエレナとエヴァ
『ファイナル・ゲーム』には『蝿の王』のような、戦化粧をするシーンがありません。その代わりと言ってはなんですが、色事が発生します。エレナとエヴァはサッカー・チームの監督の娘として、生き残りました。エヴァもエレナも両親を失った悲しみを埋めるためか、結構あっさり行為にいたります。エレナにいたっては、極悪非道なアンドレアスと肉体関係を持つ展開になっていきました。
女性がいるということで、男性陣の見苦しい奪い合いがあるか?と思いましたが、そうでもなかったです。ただそういう部分は、蠅の王にはない面白さがあったように思います。
エレナの心情
エレナはね、最初はスリムとラブラブだったんですが、スリムが病人に水を与えない側に同調したことで、「えっ」ってなったんだと思う。そして急にスリムに冷たくなってしまい...。
しかしスリムに対しての当て付けなのか、アンドレアスと親密になっていくのは、どうかと思いました。両親を失いもう気持ちぐちゃぐちゃだから、どうでもよくなったのか?同じように身内を亡くしたアンドレアスに同情したのか。はたまた、もう思い切りぶっ壊れてる人のほうがいいと思ったのかもしれないです。でもそんな仕打ちを受けながらも、エレナの命を救ったスリム。エレナも最終的には、スリムの元に戻っていきます。
おまけ:映画『ファイナル・ゲーム』配信版とDVD・Blu-ray版の違い
レーティングをクリアするために、動画配信などのバージョンは、ショッキングなシーンがカットされています。コニーの○殺シーンなんかがそうです。
DVD版でも若干間接的な表現になっていて、崖から飛び降りたであろうコニーが海に沈んでいくシーンとなります。コニーはほんの1分ぐらい前までスリムとしゃべっていて、フッと目を離した隙に...という感じでした。スリムもすぐに海に飛び込んだのですが、救えなかった。だからDVD版では、コニーの死がハッキリ描かれていて、絶望的な気分にさせられるんです。
一方で配信で観たバージョンでは、突然コニーが消えて、岩場に衣類が発見されるという表現だったと記憶しています。この描写では、コニーはもしかしたら生きているのかもしれないという希望を持ちながらその後のストーリーを楽しむことができます。
まとめ:映画【ファイナル・ゲーム】の総評
本作品への評価は、賛否ありかなり厳しい批評も上がっています。まぁね、わかりますよ。サン・カン演じるコニーを、なぜ早い段階で途中退場させたのかわからない。プロット上、コニーが早々と◯んでしまうので、徐々にチームのメンバーが狂気じみていく、サイモンの死以降のあの蝿の王のクライマックスがかなり早いタイミングで来ちゃって、終盤尻すぼみになった印象はありますね。とはいえ、上で述べた通り、『蝿の王』を意識した作りは充分に楽しめるものでした。
欲を言えば、コニーをもっと生かしておいて、チームのメンバーの心の変化をもっと綿密に描いて欲しかったです。
さらに本作は「大人版蝿の王」なんて言われていて、そう聞くと面白そうなのですが、そもそも『蝿の王』は純粋無垢に見えていた少年たちの悪なる部分が露見し、人間の本質的な野蛮さがえぐり出されるから恐ろしいのであって。それを大人がやっちゃうと、なんか普通じゃん、よくあるヤツじゃんみたいになってしまうのかもしれないなと思いました。設定上、ちょっと難しかったですね。
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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