アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

タイムシャッフル【映画感想】若者らの煩悩が暴走*ネタバレあり

タイムシャッフル

原題:Time Lapse/上映時間:104分/製作年:2014年

タイムシャッフル(字幕版)

監督:ブラッドリー・キング

脚本:ブラッドリー・キング、B・P・クーパー

出演:ダニエル・パナベイカー、マット・オリアリー、ジョージ・フィン、アミン・ジョセフ、ジェイソン・スピサック、シャロン・モーン

 

地味~な感じの時間を題材にしたSF作品が結構好きです。例えばプライマーのような...。昨年観た『グラビティ 繰り返される宇宙』や『パスト&フューチャー 未来への警告』なども良かったです。

グラビティ 繰り返される宇宙(字幕版)

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  • 発売日: 2019/06/01
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パスト&フューチャー 未来への警告(字幕版)

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 今回ご紹介する『タイムシャッフル』も、GYAOで5/31まで無料配信されているのでもっと早くアップしたかったのですが、すいません。未見で興味のある方はぜひ。

※このレビューは1960年代ごろのアメリカのドラマシリーズ、トワイライト・ゾーンのワンエピソード『奇妙なカメラ』についてもかなり触れています。ネタバレにご注意ください。

 

 映画【タイムシャッフル】の主な登場人物はダメダメな若者3人

本作品の主な登場人物は、ルームシェアをして暮らしているダメな若者3人組です。以下をご参照ください。それ以外の人物も5人ぐらいしか出てきません。

 

フィン(演:マット・オリアリー)

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

この物語の主人公。画家志望の若者ですが、最近はスランプでほとんど描いていない。大家の代わりに住宅地の管理人をして、アルバイト代をもらい生計を立てています。キャリーと付き合っているが、絵のことばかり考えているので、彼女は不満げ。絵描きのくせに、未来の写真を手掛かりに描画をするというズルを連日繰り返しては、以前より機嫌が良くなるという始末。何が楽しいのかさっぱり分からない人。でも真面目そうな人物です。

キャリー(演:ダニエル・パナベイカー

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

フィンの恋人。未来を予知するカメラを見つけるまでは、パートに出て働いていました。つれないフィンを愛し一見けなげに見えますが、実は超身勝手な女だったと判明。物語序盤では、警備員ジョーの服装がダサいと言ったのが本人に丸聞こえでした。ラストでは意外な仕打ちが待っていて、「他人の服装を安易に貶しちゃいかんなぁ」との教訓にも。

ジャスパー(演:ジョージ・フィン)

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

この人がややこしいのは、本名がジョージ・フィンという名前であること。しかし役名はジャスパーなのですよ。劇中ではフィンの友人であるという...(笑)。おそらく居候状態で、仕事をしている気配はない。3人で管理人代理をしていることになっているが、彼が管理人らしいことをしている様子はなかったです。酒やドラッグをやりながら、ドッグレースで一攫千金を目指している怠惰な若者。カッとなりやすく、ちょっとしたことですぐにキレる。

警備員ジョー(演:アミン・ジョセフ)

この物語の中で一番まともであり、善良そうな人物です。要、要に登場しある意味、キーパーソン的な存在。最初は警備員として登場しますが、物語中盤で警察官になることが出来たとフィンに知らせにきます。「何かあったら連絡を...」と、フィンに連絡先を教えました。

 

 タイムシャッフルのあらすじ【完全ネタバレ】

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

ルームシェアをして暮らすフィン、キャリー、ジャスパー。ある日大家からの電話で「向かいの家のベゼリデスの家賃が遅れているから見に行って欲しい」と言われ、キャリーが訪ねます。しかしベゼリデスという科学者は不在で、そこには大量の写真が貼られていました。どうやら、ちょうど真向かいにある3人の住む家が盗撮されている様子なのです。部屋の中には何と奇妙なカメラが...。その後、それは未来を写し出すカメラだと分かります。

 

科学者は?と言うと、何と倉庫で死んでいました。3人が彼の日記を手掛かりに推理すると、未来を変えようとしたから死んだのだという結論に...。真面目なフィンはこのことを警察に通報すべきだと言いますが、他の2人はそれに反対。写真は毎日午後8時に出てきていることから、夜の8時にタイマーがセットされていることが判明しました。そこで3人は、未来の写真と同じポーズを毎日取るように心がけます。

 

更にジャスパーはこのカメラを使い、ドッグレースで大儲けすることを思い付きます。フィンは未来の写真を頼りにキャンバスに絵を描き、スランプから脱出。しかしドッグレースの主催者であるアイヴァンが、このところずっと調子づいているジャスパーに目をつけました。そして、このカメラの存在に気づかれてしまいます。一時期はアイヴァンにカメラを独占されそうになりますが、脅された恐怖もありジャスパーはアイヴァンとそのボディーガードを殺害。

 

3人はもう後戻りできないところまで来てしまいました。そんな時、死んだ科学者の同僚である女性博士が、訪ねてきます。彼女はしばらく前に科学者からこれが送られてきたのだと言い、1枚の写真を見せました。その写真にはフィン宅が写っていました。キャンバスにはかなりテキトーな感じで、緑色のコイルの絵が描かれています。窓ガラスには血痕、その後ろには科学者の黒い帽子が写っていました。

 

科学者はこの写真を2週間ほど前に見て、自分の帽子がフィン宅にあることや血痕を恐れたのでしょう。早合点をして、倉庫内で事故死してしまったのだと分かりました。画家であるフィンは、自分がまだこの絵を描いていないことから、この写真が未来のものだと察します。そんな話をしている時、ジャスパーはいきなり女性博士を殺害してしまいました。

 

その後もジャスパーの横行は続きます。遂には同居人であるフィンをも倉庫に拘束し、殺害しようと考えるのです。理由はフィンがキャリーを連れて、町を出ようとしていることに気付いたから。間一髪のところで脱出したフィンは、カメラを壊すぞとジャスパーを脅し、反撃しますが...。

 


「タイムシャッフル」予告

 タイムシャッフルの感想【完全ネタバレ】

率直な感想としましては、意外などんでん返しのあるサスペンス劇として秀逸。おそらく低予算で撮られているだろうし、ワンシチュエーションで2時間近くあるのにもかかわらず、退屈させられませんでした。時折向かいの科学者の家に行くのですが、それ以外はほぼ3人の家の中だけで進行していきます。キャスティングもシンプルで、好感が持てました。

 

1960年代のトワイライト・ゾーンのワンエピソードに酷似

筋書きはトワイライト・ゾーンの『奇妙なカメラ』に似た物であるとの情報を得たので、『奇妙なカメラ』を観てみたら、こちらの方が圧倒的に面白かったっていう(笑)。トワイライト・ゾーンは1959年から1960年代にかけてアメリカで放送されたドラマシリーズですが、このエピソードはヒッチコック劇場なんかにも似ています。

日本では『未知の世界』や『ミステリー・ゾーン』のタイトルで、1960年代に放送されていたようですね。若かりし頃の自分がレンタルビデオ屋で借りて必死に観ていたのは、リメイクの方だったのかな?とにかく、これからインスピレーションを得たのではないか?と思うほど骨組みが似ています。

トワイライト・ゾーン『奇妙なカメラ』の主なあらすじ

主な登場人物は3人(男2人+女1人)。舞台はホテルの一室。男女のカップルが骨董品を盗み金儲けをしようとしたところ、売り物にならないガラクタばかりで男がキレる。しかしその中に、未来を撮影できるカメラが紛れ込んでいた...という内容です。そこへ刑務所から脱獄してきた女の弟が現れ、3人はこれを競馬場に持ち込み大儲け。しかしその後ホテルに戻った時、このカメラにはフィルムが10枚しか入っていないことが判明。それを指摘したのはホテルマンで、彼は3人が急に大金持ちになったことを知っていた。そして皮肉な結末へと向かっていきます...。

 

『タイムシャッフル』のキャスティングは『奇妙なカメラ』のキャスト構成にそっくりそのまま追加したスタイル

奇妙なカメラの登場人物          タイムシャッフルの登場人物

■ 男                   ■ フィン 

■ 女                   ■ キャリー

■ 女の弟                 ■ ジャスパー

■ ホテルマン               ■ 警備員ジョー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                     向かいの家の科学者(ベゼリデス)

                     科学者の同僚(ハイデッカー博士)

                     胴元(アイヴァン)

                     胴元のボディガード(マーカス)

 

要約すれば、キャリーが浮気を隠したかっただけの話

エンディング付近では、本当は夜の8時だけでなく朝の8時にも写真が出てきていたことが分かります。キャリーは過去にジャスパーとも性的関係を持っており、この都合の悪い事情をフィンに隠す為に朝8時にも写真が現像されることを黙っていた。博士宅の写真がところどころ歯抜けになっていたのはキャリーの仕業だった訳ですが、この事実を知った恋人のフィンがドン引きします。もうお前を信用出来ないという目。

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

 

キャリーは朝8時に1人で窓際に立ち、貼り紙をして1日後のメッセージを送っては浮気の証拠隠しを調整し、フィンの恋愛感情もコントロールしていたのです。恐ろしい女ですが、これがどんでん返しとしては面白い。

 

キャリーがはじめて博士宅に足を踏み入れた時ショックだったのは、自分の浮気場面が写真に収められていたことだったのでしょう。これは何としてでも隠さねばと...。またこの時点でキャリーは、未来の写真に写った自分から「HIDE LAST WEEK'S DAYTIME PHOTOS(先週の昼の写真を隠して!)」というメッセージを受け取っています。

 

そこでキャリーは早い段階で「この1週間は夜だけ撮ったのかも」と言い、さらっと他2名に嘘をつきました。これ以降キャリーは、朝8時に写真が現像されることをフィンやジャスパーに隠し続けていた訳です。また観客である私も同様にだまされていました。

 

更にキャリーは終盤で、フィンを安易に殺害し、写真にメッセージを残すことでこれを帳消しにしようとしますしかし、何とその時に警察官ジョーが現れるというアクシデントが!よって、フィンを生き返らせることが不可能となってしまったのです。

 

 

「窓際で見つからない(Don't GET CAuGHT AT WINDOW)」という曖昧なメッセージは、何を意味しているのか?

 

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画像引用:https://www.facebook.com/TimeLapseTheMovie/

物語のラストにキャリーは「Don't GET CAuGHT AT WINDOW」というメッセージを窓に張り、1日後の自分に伝えようとします。字幕では「窓際で見つからない」というやや曖昧な言葉となっていますが、要は「窓際で見つからない(でね...)」か「窓際で逮捕されるな!」ということなのでしょう。最初の内これは、警察官になったジョーが現れることを、自分自身に知らせようとしているのだと解釈しました。

 

しかしフィンに隠し事がバレたのが窓際であることから、「フィンに見つかるな!」という解釈もできます。"Get caught"とは、逮捕される、バレる、見つかる、捕まるなどのさまざまな意味があるようなので、どちらか(フィンに見つかるな OR ジョーにつかまるな)は話の筋から理解するしかありません(汗)

 

よくよく考えてみると「窓際で見つからない」というメッセージは、警察官ジョーが現れる前に用意されたものなので「ジョーに逮捕されるな!」という意味ではつじつまが合いません。更に警察官ジョーが現れた時午前8時の撮影は既に終わってしまっているので(フィンに目撃された撮影)、キャリーが用意していたのは夜用の貼り紙だったと考えられます。

 

よって「フィンに見つかるな」というメッセージではないかと考えました。警察官になったジョーがフィンから連絡を受けたのは、フィンがキャリーの秘密を知るより(午前8時にも撮影できる)も、もっと前です。このことはフィンがキャリーを連れて町を出るつもりだったことから、推理できます。

 

ということは、窓際でフィンに見つからなかったとしてもジョーはいずれやってくる運命なのですよね。フィンに窓際で見つからなかった場合、2人はラブラブで町を出ているはずなので、コイルの絵が描かれた部屋にテープが張られた写真が未来ということになるのかなと。この写真には、窓ガラスに血痕が付いていません。

 

しかし午前8時になりキャリーが新しい写真を撮影しているところを、フィンに見つかってしまったので、やはり科学者の持っていた写真の通りの悲劇になってしまった訳です。即ち運命を変えることが出来なかった。ガラス窓に着いた血痕は、キャリーがフィンを殺害した時のものと思われます。

 

しかしいずれにしても逮捕され拘束された身では、未来の写真の現像を確認できませんから意味がないですね。その上紙が剥がれ落ちてしまいますので、1日後のキャリーがこれに対処するチャンスもなくなってしまった。張り紙はしっかりと貼らないと!キャリーもどこか抜けています(笑)

 

 『奇妙なカメラ』との相違点

奇妙なカメラは、未来を写し出すカメラを巡って人々の欲望が露わになり、悲劇的な結末を迎えるというシンプルなストーリー構成が魅力です。

 

 何となく釈然としないなと思ったのは、『タイムシャッフル』ルールは、『奇妙なカメラ』よりもやや複雑だからです。例えば『奇妙なカメラ』の場合30分弱のドラマなので、細かい設定がなくカメラも持ち運びができます。単純に今撮った景色の5分とか10分後とかが写真として現像されるイメージです。だから競馬で大儲けをする際も、競馬場へ行き掲示版を写せば良い。登場人物らの過去や未来については考えなくて良いわけです。

 

これに対して『タイムシャッフル』の場合、

・カメラの位置が博士宅と固定されている

・タイマー設定の為、決まった時間にしか撮影されない

 

これらの縛りがあるために、直接レース場に行って掲示板を写し、未来を予測するというシンプルな方法は使えない訳です。よって1日先の自分達からのメッセージをあてにするしかない訳で、本当の本当を言えば、未来のキャリーやジャスパーがメッセージを必ず送ってくるとは限らないわけですよね。また今日の自分が1日後の自分にメッセージを送ったとしても、それを我々はどうやって確認すれば良いのでしょう。

 

何かそこら辺のことがよく分からないな、と思いました。

 

仮にパラレルワールドのようにフィンら3人の世界が1日ごとに存在するとしても、だったら私達鑑賞者は、どの時空の3人をメインに追って観ていけばよいのでしょうか?そこら辺が非常に曖昧で、もやもやするのです。またラストのキャリーの失態から分かるように、1日前の自分にメッセージを送ったとしても、現在の自分が連行され写真を観ることが出来なければ、意味がないのでは?とも思います。

 

う~ん、よく考えてあるのに何だかちょっとだけ惜しい作品。でも全体的にはかなり満足です。ちなみにラスト間際、窓際でいざこざが起こるのは『奇跡のカメラ』と同じではないか!と。オチは違っていますが、どちらも窓際でハプニングが起こるあたりが面白いと思いました。オマージュと言っても過言ではない気がします。

 

 

 

タイムシャッフル(字幕版)

タイムシャッフル(字幕版)

  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: Prime Video
 
タイムシャッフル

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鑑賞後なぜかぼんやりした気分【ワールド・ウォーZ】映画感想★ネタバレあり

ワールド・ウォーZ

原題:World War Z/上映時間:116分/製作年:2013年

ワールド・ウォーZ (字幕版)

監督:マーク・フォースター

原作:マックス・ブルックス

脚本:マシュー・マイケル・カーナハン(英語版)、ドリュー・ゴダードデイモン・リンデロフ

出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ダニエラ・ケルテス(英語版)
ジェームズ・バッジ・デール、ファナ・モコエナ

 

マスク2枚」と「ひょっとこ」が何か変なことを言い出す度にtwitterが大荒れする昨今、いかがお過ごしでしょうか?当ブログでは年始に喜々としてディストピア映画のレビューをやりたいとお話していましたが、現実の方が予想以上のこととなってしまい、もはや何をご紹介すれば良いのか分からなくなっていました。和牛商品券からはじまった一連の珍提案には、震えるばかりです。

 

そんなとまどいの中、ぼんやりと観たブラピ主演の『ワールド・ウォーZ』。単にゾンビの走りがいいね!と思ったのでご紹介させていただきます。

 

でその前に既にご存知の方も多いかもしれませんが、自分は以前からぷらすとのSFおじさんズ(添野知生さん&堺三保さん)の回がとても好きで、よく見ていましたのでこちらをご紹介させていただきたいと思います。てか、みなさんご存知と思いますが...。最近YOUTUBEに「SFと現実」という最新の回がアップされたのですが、これが過去最高レベルで面白かったです。

 

また自分はこの時期コロナとどう向き合うか?と同じぐらい、SFとどう向き合うべきか?を悩んでいたので、とても勉強になりました。SFが好きでまだご覧になってない方に、この動画はとてもおすすめです。AKIRAについてのお話など、何か妙にほっとしましたよ!

 


SFと現実/ぷらすと×アクトビラ #1373

 

で、本当にごめんなさい(汗)。この回で『ワールド・ウォーZ』が紹介されており、この作品は映画よりも小説の方がおすすめのようなのですが、自分は小説を読んでません(汗)。ただ大して期待してなかったわりに、映画もそこそこ楽しめたのでレビューさせていただきます。今回は短めのレヴューです。

 


『ワールド・ウォー Z』日本版本予告90秒

 

ワールド・ウォーZ あらすじ】ネタバレあり

アメリカのペンシルバニア州フィラデルフィアに住む、幸せな4人家族。父親ジェリー(ブラッド・ピット)は、元国連の職員でしたが、今は退職し家族サービスをする日々を過ごしています。絵に描いたような、幸せな家族の朝の光景。しかしそれとは裏腹に、ニュースでは死亡したイルカが沖に打ち上げられるなど不気味な報道がされています。

 

ジェリーは幼い娘2人と妻を車に乗せ、出掛けました。しかし街中へ出ると車が大渋滞しており、ラジオからはおっかないニュースが...。更に車外では意味不明の爆発が起こり、凶暴化した人々が荒れ狂いはじめました。

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画像引用:https://ja-jp.facebook.com/World.War.Z.jp/photos/a.356390357803273/400165456759096/?type=3&theater

 荒れ狂った街中を暴走運転したせいで、ジェリーの車はボロボロに。一家は車を降りますが、動きの素早い凶暴ゾンビが人々を襲っていました。たった12秒で次々とゾンビ化する人々。ジェリーは自分の車がぽしゃった為、すぐさま人様のキャンピングカーをかっさらい逃げます。さすが元国連職員です。

 

街の上空では、ヘリが飛び回っています。更にまずいことに、ジェリーの娘は喘息なんですよ。パニック映画によく登場する喘息持ちの人ですね。そこで彼らはドラッグストアに向かいます。そんな中、国連時代の友人ティエリーから連絡が入り、ジェリーは国連へのカムバックを依頼されました。

 

ジェリー一家は食料や薬を買い込むため大型ドラッグストアへ入りますが、店内の商品は床に散らばっており、大荒れ。そんな中、人々は必需品を拾いカートに放り込んでいます。もはや律儀に会計とかする人は、いなさそうな雰囲気ですね。ジェリーも何とか、娘の吸入器をゲットしました。

 

その後ティエリーからヘリで救助された一家は、国連指揮艦「空母アーガス」というでっかい船に避難します。船内では、この感染が地球規模で広がっていること、原因はウィルスであること、人々がゾンビ化していることなどが、分かります。若造ウィルス学者のファスバック博士は、Zと呼ばれるゾンビの発生源が分かればワクチンが作れると言い、ジェリーはその護衛を任されますが...。

 

ワールド・ウォーZ 感想ネタバレあり

いきなりラストの話ですが...。人類を守るために他のウィルスを持っているように見せかけ、それでゾンビを寄せ付けない様にするとはどんな作戦ですか?と聞きたい。その上そのウィルスのサンプルがたくさんありすぎて、どれが良いか分からないので「えいやっ!」とあてずっぽうで決める大雑把さにも唖然。多分、ジェリーは相当に運の良い主人公なんです。

 

しかしそれにもかかわらず、案外これはこれで面白かったという印象。つっこみどころも多々ありますが、明るいエンディングにも好感が持てました。今のような時期に、シリアスになりすぎず、ゾンビ映画を楽しみたい方にはおすすめです。特にゾンビの動きが異様に早く機敏なのは、やはり映画でしか味わえない楽しみと言えるでしょう。

 

舞台はフィラデルフィアからはじまり、船内→韓国→イスラエル→飛行機→イギリスのWHOの研究施設→カナダとどんどん移動していきます。ブラピがあちこちに行くのですが、Zに対しての各国の対策方法がまるっきり違っていて面白いですね。

 

韓国→全員の歯を抜く

イスラエル→都市の周囲に高い壁を築く

 など

 

特にイスラエルが高い壁を作っているのには、驚きました。正に進撃の巨人です。壁の外にはゾンビがうようよいるのですが、這い上がって来れないので安全という考え方ですね。イスラエルはこのやり方で上手くいっていた!しかし人々がお祭り騒ぎでうっかり浮かれている内に、とんでもないことになっていきます。あー怖い。しかし、このシーンはなかなか迫力がありました。

 

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画像引用:https://ja-jp.facebook.com/World.War.Z.jp/photos/a.356390357803273/411623722279936/?type=3&theater

 

更に物語終盤では、WHOの研究施設の中に封じ込められていたZらが動き出します。白を基調とした清潔感ある施設内を、身体を傾けたままのゾンビが暴走し加速するシーンは見応えもあり、結構笑えました。

 

個人的に残念だった点は、若いウィルス学者で人類のホープであるはずのファスバック博士が、韓国に到着するや否やあっさり足を滑らせて転倒し、死んでしまったところですかね?ウィルスやゾンビにやられる訳でなく、単に本人の不注意による死亡...。「ええっーっ」て思いました。しかも早っ!この人、主要キャストじゃなかったんですか...(笑)。なんだか飲み会のレギュラーメンバーの1人が、あっさり「オレ、今日用事あるから」とかいって、生ビール1杯だけ飲んで帰る時の気持ちに似てました。

 

あとはラスト付近でジェリー(ブラピ)が、自販機で買った清涼飲料水(おそらくペプシ)を「くわぁ~っ」と飲むシーン。その後自販機内の缶を床にぶちまけ、その音でZらをおびき寄せるという計画になります。しかし、くわぁ~っと飲むシーンいる?何かそこだけ映画の世界ではなく、妙に現実的な感じがしましたよ。最後に一仕事する前に、のど潤しとこ!みたいな(笑)

 

そんな感じでやや不思議な映画ですね(笑)。でも嫌いじゃないです。今度は原作をしっかり読んでみたい。

 

 

ワールド・ウォーZ (字幕版)

ワールド・ウォーZ (字幕版)

  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Prime Video
 
ワールド・ウォーZ(吹替版)

ワールド・ウォーZ(吹替版)

  • 発売日: 2013/12/20
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オブリビオン【映画感想】やや強引なハッピーエンドに脱帽!【後編】

オブリビオン

原題:Oblivion/上映時間:124分/製作年:2013年

オブリビオン(吹替版)

監督:ジョセフ・コシンスキー

原作:ジョセフ・コシンスキー、アーヴィッド・ネルソン

脚本:ジョセフ・コシンスキー、カール・ガイダシェク、マイケル・アーント

出演:トム・クルーズオルガ・キュリレンコモーガン・フリーマンアンドレア・ライズボロー他

 


トム・クルーズに直撃インタビュー!!「2回見て欲しい!」 「オブリビオン」ホワイトカーペット

どうでもよいですが、戸田奈津子のざっくり過ぎる通訳が...。ドローンの管理人(笑)

というわけで『オブリビオン』の後編です。以下完全にネタバレしていますので、未見の方はご注意ください。

 SF映画と見せかけて、案外恋愛映画なオブリビオン

 『オブリビオン』に対しての評価は賛否がある上、褒めるところ、けなすところも人によってそれぞれ。以下はよく見受けられる意見です。

・とにかく映像美が素晴らしい

・何気にジャック、ジュリア、ヴィカの三角関係やその心理描写が描かれている

・ミステリアスな過去が徐々に明かされる物語の展開が良い

・ラストシーンに納得がいかない

・どこか惜しい作品

・どこかで観たようなプロット、残念、など否定的な意見

自分としては、観たことがない部類のSF恋愛映画だなぁという印象です。ガチなSF映画として観れば突っ込みどころは多数あるのかも知れませんが、愛とかにきちんと焦点が当てられているので文句の言いようがないかなと。

 独特なディストピア表現

そんな『オブリビオン』ですが、映像表現が美しく独特な廃墟の表現がなされています。ディストピア映画だと通常、ガラクタの山があったりして汚れた地球の描写が続く場合が多いですが、『オブリビオン』の地球はがらんとしていて美しい。ロケは、アイスランドをはじめニューヨークカリフォルニアの北部で行われたようです。また更にこれらの場所で撮影した映像を、セットの中のプロジェクションスクリーンに映すという手の込んだ手法も使われています。タワー49内の映像は合成ではなく、巨大なセットだったということですね(汗)。こうすることで、俳優らが標高1000mのところにいるように感じるように工夫したようです。しかし、こんなものをわざわざ実際につくるなんてどうかしてますよ。

さらにディストピア映画を匂わす、プロットもいくつか挙げてみます。

指導者が分からない

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画像引用:映画『Oblivion』公式Facebook

ストーリー序盤から中盤あたりまで、サリーという指導者がモニターに現れます。どこか不自然なサリー。後半ではこのサリーの本性がだんだん分かり、ラストまで観ると実はラスボスが60年前の映像を再利用していただけという始末です。このようにトップに立つ人物に会ったことがない、実在しているという確信が持てない、など存在があいまいであるところが不気味です。テットがサリーの映像を選んだのは、60年前の指令官だったので、ジャックらを思い通りに動かせると踏んだのでしょう。トップに立つ人間が、モニターにしか映らず実際に姿を現わすことがない場合は要チェック!『1984』のビッグ・ブラザーや、はたまたtwitterBotも、みんなあやしいぞ!

過去がねつ造されている

ストーリー序盤では、人類はスガヴ(突如現れたエイリアン)との戦いに勝ったと聞かされます。しかし後半に、実際の人類の生き残りはビーチらのみと分かります。しかもスガヴというのは、テットが勝手にでっち上げた架空の敵だったのです。

行動範囲を指定し、拘束する

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画像引用:TomCruise公式Facebook

ジャックらが危険区域と聞かされていた場所は、実は他のクローンの持ち場でした。テットからすると、ジャック同士が鉢合わせになっては困るので、放射能汚染されていると脅していたのです。手ぬるいやり方ですが、危ないからダメと言っておいて、実は都合の悪いことを隠すというパターンは、いかにも監視社会という感じです。

納得のいかないルール

またおかしなルールで人を縛るのも特徴。例えば、ヴィカの外出禁止などです。なぜ外出禁止なのでしょうか?ヴィカは劇中一度だけタワーの外に出ますが、これはサリーの命令であった可能性もあります。なぜ言いつけを守るのだろう?と思い観ていてイライラしますが、このようなルールというのは、その時代またはその状況の中にいる人には、気づきにくいものなのでしょう。

 

また自分が子供の頃の風潮だと「子供は学校に行かなければいけない」「行かない子は悪い子」というムードでしたが、冷静に考えれば、なぜ行かなければいけなかったのでしょう?これは、確かルール違反にならないはずです(多分)。ヴィカに対してジャックはかなり自由に見えますが、それは彼がちょいちょいルールを破っているから。そう考えるとルールを破るのは、守ることより難しいですね。

 

ヴィカはあんなにジャックを愛していたのに、彼からもらった植物をポイしてしまう。どれだけ、サリーから脅かされていたのか分かりません。挙句の果てには、言いつけを守るいい子のはずのヴィカがあっさり殺害される。このキャラにあまり好感は持てませんが、それにしてもあんまりじゃないかな?とディストピアっぽいプロットは、いろいろなことを考えさせてくれます。

 

 実は○○だった、実は××だったの連続。頭の中の更新が間に合わない

先の読めない展開にハラハラさせられっぱなしというよりも、若干次の展開が仄めかされやはりそうだった!と思わされるパターン。「実はこうでした...」の連続で「えっそうだったの?」と知らされる事実は面白く新鮮なのですが、新事実を脳内でいちいち更新していくのが大変でした(汗)。

ジャック「オレがサリーから聞かされていた事実」

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

・人類の敵→スガヴ

・スガヴとの争いで人類は勝利した→しかし核の使用により地球は汚染されてしまったため、住めなくなった。

・人類がテットを設立した。だからテットは人類の味方。

多くの人々はテットに避難しそこに住んでいるその後タイタンに移住する予定

・地球上の危険区域には立ち入ってはならない→放射能汚染されていて危険だから

・サリー→テットから仕切る実在の指令官

・地球上にいる人間は、ジャックとヴィカだけ

巨大なポンプによってくみ上げられた水は、テットに住む人類にとって必要なもの

・地球には相変わらずスガヴの生き残りのエイリアンたちが攻めてくる→ジャックは人類のため海水をくみ上げるポンプの護衛をしている

 

ビーチ「これが本当の話だ」

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画像引用:映画『Oblivion』公式Facebook

・人類の敵→テット

・人類がテットを作ったのではない。テットはもともと存在した宇宙の謎の生命体

・多くの人々はテットからの侵害で殺された→タイタンへ移住する予定というのは嘘で実のところ、テットに人類はいない。生き残りは地球上に身を隠して住む、ビーチら(観た限り1000人ぐらい)のみ。

スガヴという敵はテットのでっち上げたデマ→人類の生き残りをスガヴと認識させる

・危険区域は放射能汚染されていない→数多く存在するジャックのクローンが顔合わせしない為の口実

・サリー→60年前のジャックらの指令官。おそらく存命人物ではないが、映像を使い回される。

・ジャックはクローンであり、実は地球上には数多くのジャックが存在する→冒頭から主人公として現れるジャックは49号。そして危険区域で遭遇したもう一人のジャックは52号。

数えきれないほどの人類を殺害したのは、大量にクローン化され人格を変えられたジャック

 

 小道具はワイエスの絵画『クリスティーナの世界

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画像引用:https://www.facebook.com/MuseumofModernArt/

ジャックの湖畔の隠れ家のコレクションには、アンドリュー・ワイエスの絵画『クリスティーナの世界』の絵があり、これが意味ありげに時々映し出されます。アンドリュー・ワイエスと言えば、卵を使ったテンペラ画などで有名ですね。何とこの絵のモデルのクリスティーナが描かれたものだけで、200点以上あると言われています。クリスティーナの世界』では、足の不自由なクリスティーナが車いすを拒み、腕の力のみで家に帰ろうとしている様子が描かれています。

 

確かに歩くことは難しいかも知れない。しかしそれでも車いすを拒否するというところにアナーキーさが感じられ、カッコ良いなと思いました。更にこの絵の中の女性と、ジャック&ジュリアの意気込みがオーバーラップしてきます。2人が結ばれる結末を期待するのは、無謀かもしれない。しかし小児麻痺のクリスティーナに車いすを拒否する選択があるように、クローンである49号ジャックにも選択肢はあるのかなと。

 

ジャック「僕らの魂は愛から生まれ、時を超え死にも打ち勝つ」

 

49号は人類を守るため死を選び、更にジュリアがさみしくならないよう配慮した。彼にとってこれ以上の愛情表現はなかったかも知れません。ちなみになぜ監督はこの絵を小道具に選んだのだろう?と思い調べてみると、「2人(ジャックとジュリア)はよりシンプルな世界に戻りたがっている」と述べているらしいです。う~ん、何かおっしゃってることが高尚過ぎて、よく分からない(-_-;*) 

 

 気になるラストシーンの考察

※一部『月に囚われた男』もネタバレしますのでご注意ください。

本作品を3度ほど鑑賞し、気付いたことがありました。それはこの映画はれっきとしたハッピーエンド作品であった!ということです。これはもしかすると、かなり偏ったおめでたい意見かも知れないです。しかし自分はオブリビオンの脚本が、案外高く評価されていることがずっと気になっていました。たしかにラストシーンで52号のジャックがしれっと現れた時のがっかり感は否めませんが、今後のジュリアにとってそれが悪いとは決して言い切れません。

 

確かに鑑賞者は最初から見ている49号に感情移入しがちなので、52号が「オレジャック、49号ともオリジナルとも違うけどよろしくねー」的に微笑むのが気に入らないという気持ちも生じてきます。トム・クルーズはインタビューで、「人間とは何か?愛とは何か?良い死に方とは何か?を問うような映画、2度観て欲しい」と語ってきますから、クローンの52号が笑顔で現れるラストのどこが愛なわけ?と一見安い着地にムカッ!どうも納得がいかないという精神状態に陥りました。

 

更にこれを突き詰めていくと、そもそもクローンそれぞれの性格は違うか?などの問題になってくるのではないかと。例えば『月に囚われた男』のサムなどは、そのクローンによってかなり性格が違いました(すぐにブチ切れる短気なサムと手先の器用なサム)。49号が52号のスカイタワーに戻った時、52号のヴィカは入れ替わりの彼に全然気が付かなかった。これを考えると、この2人のクローンの性格はかなり似ているかも知れません。

  

52号がジュリア親子の住む湖畔に現れた時、バブルシップに乗って来た気配はなく、まるで自力で歩いてきたような雰囲気を漂わせています。ストーリー終盤でテットが爆破された時、ドローンが一気に誤作動を起こし自滅する描写がありますから、となるとそもそもテット崩壊後バブルシップが機能するかどうかも分かりません。5年間しか記憶が無かった52号ですが、テットのシステムが破壊されたことによって、徐々に昔の古い記憶を取り戻した可能性も考えられます。よってオリジナルジャックと同じことを望む様になり、ジュリアとその居所を見つけることができた。これを仕込んだのが、主人公のジャックです。

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

49号のジャックはなぜ、湖畔の隠れ家にジュリアを残したのでしょうか?もしもジュリアの身の安全を考えるなら、人類の生き残りがたむろしているあの場所でジュリアを目覚めさせるべきだった。しかしそれをやらなかったのは、おそらく自分と同じクローンのジャックが、必ずジュリアを見つけ出すはずだと踏んでいたからでしょう。3年後、52号のジャックとジュリアが出会えたという奇跡は、49号のジャックの大きな愛情があったからだと思うのです。

 

湖畔の隠れ家は、オリジナルジャックの夢を実現した場所だった。またテットのシステムが機能していない52号のジャックは、49号よりもオリジナルジャックの人格に近いと言えます。ジュリアが本当に望んでいたのは、オリジナルジャックとの再会のはず。

 

またこれは超個人的な解釈ですが、本気の恋愛をすると相手Aが過去に好きだった男性Bの人格のコピーをしょい込んで現れる気がするのです。となると52号は、ジュリアが出会ったオリジナルジャックや49号ジャックの人格のコピーをしょい込んできている可能性もあるかも知れません(笑)。基本人格は52号で、時々オリジナルジャックみたいであったり、49号のジャックであったりするということになりますね。

 

愛や虚構、一見不確かなものが一番確かなのだと思う。そう信じたいです。

 

オブリビオン (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
オブリビオン(吹替版)

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  • 発売日: 2016/01/30
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オブリビオン【映画感想】やや強引なハッピーエンドに脱帽!【前編】

オブリビオン

原題:Oblivion/上映時間:124分/製作年:2013年

オブリビオン(吹替版)

監督:ジョセフ・コシンスキー

原作:ジョセフ・コシンスキー、アーヴィッド・ネルソン

脚本:ジョセフ・コシンスキー、カール・ガイダシェク、マイケル・アーント

出演:トム・クルーズオルガ・キュリレンコモーガン・フリーマンアンドレア・ライズボロー他

 

これを観て一時は「ジャアッーーーク」「ジャッーーク」とパートナー、ヴィカ(アンドレア・ライズボロー)がトム・クルーズを呼ぶ声が一時耳から離れませんでした。

 

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画像引用:映画『Oblivion』公式Facebook

念のため申し上げますと、オブリビオンとは忘却という意味です。最近、ティーンエイジャーの頃に観た映画を観返すと、あまりにも内容を覚えていなくて驚くことがあります。またこれは昔からの癖ですが、ある1部の俳優の名前がすぐに出てこない。いつも同じ人です。例えば、ジョン・トラボルタ

ジョン・トラボルタですよ!!

なぜ、すぐに思い出せないのかは未だに分かりません。

 

 

オブリビオン】のざっくり概要

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

元々はグラフィックノベルであったものが映画化された『オブリビオン』。コシンスキー監督は、全米脚本家組合がストライキを起こしていたせいで、映画の脚本が1年間書けなかったと語っています。そこで、アーヴィッド・ネルソンとの共同執筆で、グラフィックノベルにしたようですね。出演はトム・クルーズモーガン・フリーマンオルガ・キュリレンコとそうそうたるメンバーです。

監督 ジョセフ・コシンスキーについて

コシンスキー監督は映画だと『トロン: レガシー』の監督などで知られていますが、実は過去にアップルやナイキのCMも手掛けていらっしゃるようです。さらに2020年公開予定の『トップガン マーヴェリック』では、再びトムとタッグを組んでいます。もともとスタンフォード大学の工学部機械工学デザイン科を出ているなど、デザイン畑の人のようで、劇中のマシンや建築物の類のデザインにもこだわりが感じられます。


『トップガン マーヴェリック』新予告

ジャック役トム・クルーズについて

何もあの人について説明はいらないじゃないか?と思われるかもしれません。よってここでは、個人的に気になったトム・クルーズの情報のみをピックアップしてみます。

1.主演を務めた1986年のトップガン』が全世界で大ヒット。大の乗り物好きで知られ、自らのアクションのスタントをこなすことはあまりにも有名です。

2.親日家でありたびたび来日されますが、トムの場合大阪や福岡まで足を運ぶファンサービスぶりが目立ちます。

3.トム・クルーズの代表作の1つ『ミッション:インポッシブルシリーズ』の主人公イーサン・ハントは、「輝け!第21回みうらじゅん賞」(2018年)を沢口靖子と共に受賞しています。トム・クルーズでなくイーサン・ハントが受賞したところがポイントです。

 

オブリビオンのなが~いあらすじ兼間に時々感想】完全ネタバレ


映画『オブリビオン』日本版予告

結構前の作品ですし、話の筋を忘却されている方もいらっしゃると思いますので、長めのあらすじを書きました。

新婚ごっこのジャックとヴィカ

※一部『2001年宇宙の旅』のネタバレも含みます

舞台は2077年とそう遠くない未来。ジャック(トム・クルーズ)は何の疑いも持たず、ガランとした地球でドローンの整備士をやっております。ジャックが聞かされている話では、人類はテットを仮住まいとし、その後「タイタン」という惑星に移住する予定とのこと。テットは空にぽっかりと浮かんでいる四面体を逆さまにしたような施設で、人類が設立したと聞かされています。

 

ジャックにはパートナーのヴィカがいて、恋人同士のようなムード。なぜ人類が地球に住んでいないのか?それは50年前にスガヴというエイリアンの侵略があり、その戦争のため放射能汚染が酷くなっているからです。人類はスカヴに勝利したものの、他の惑星に移住するしかありませんでした。地球には各所に採水プラントだけがポッコリと浮かんでおり、ジャックらはこれの護衛を任されているのです。

 

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画像引用:映画『Oblivion』公式Facebook

2人は過去5年間の記憶しか持っておらず、それ以前の記憶を一切消されています。ヴィカは最愛の人ジャックと地球で2人きりというシチュエーションを楽しみながらも、早く任務を終え人類が住む予定だとと聞かされている惑星「タイタン」に戻りたがっています。ヴィカがジャックに特別な感情を抱いているのはミエミエ、それに対してジャックは時折何となく戸惑いの表情を見せるのです。

 

ジャックらの住んでいるスカイタワーは、地面から1000mの高さのところにあります。見晴らしは良いのですが真下で起こっていることは全く分からないので、このような住居空間に身を置いた場合、どんな気持ちになるか想像できません。室内は超清潔、新婚ほやほやの新婦が「ねぇ、こんなとこに住んでみたいわ」ということ間違いなしでしょう。ジャックたちが住んでいるのは、スカイタワー49です。

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画像引用:映画『Oblivion』公式Facebook

横から見ると、この建物の不安定さがより強調されます。地上から細長い棒みたいな基盤がのびていて、その上にポコッと住居空間があるイメージですかね。空を飛ぶ乗り物がないと、地上に降りることは到底不可能。まるで「隔離されていることに気付かせず、隔離する」がコンセプトの近未来型獄舎と言えます。ジャックはたびたび、「君も地上に降りてみないか?」とヴィカを誘いますが、「規則違反よ」の一言で返されてしまいます。

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

ジャックだけがバブルシップという名の偵察機に乗って偵察に出掛け、ヴィカはなぜか外出禁止。そしてこの2人に指令を出しているのが、テット本部のサリーという女性です。サリーはヴィカに通信で「チームに問題は?」と聞くのですが、ヴィカは「最高のチームです」と答えます。サリーはある程度フレンドリーさを保ちながら、しっかり圧力をかけてくる女上司って感じですかね。

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モニターに映るサリー
画像引用:映画『Oblivion』公式Facebook

ちなみにバブルシップに乗り込むテラスは、こんな感じです。うーん、オッシャレ―!!いろいろと文句をつけようにも、素晴らしいデザインであることは否めません。

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

あえて言うなら、柵が途中までしかないところが気になります。特に手前の方とか、どうにかしろと言いたい。こんなとこに人が立ったら、危なくないですかね(笑)。うかつに、複数人で笑いながら歩いたりとかは出来ません。

 

ジャックの仕事は、ドローンの整備とかメンテナンスをすることです。ドローンはスガヴという敵を倒す為にあり、テット内のサリーの指令で動いているのですが、このドローンがよく分からないことでしょっちゅう誤作動を起こしては、ジャックの仕事を無駄に増やします。

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 画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

またこのドローンのデザインにも注目。目にあたる部分が赤くて、いかにも『2001年宇宙の旅』のHAL9000っぽいのが特徴です。劇中では時々このドローン目線となり、不気味さが増します。確か『2001年宇宙の旅 』でも、HAL目線のカットがあったなぁとか思い出しました。

宇宙船が墜落するのを目撃!

そんな日々の中、ジャックは「ウォーリー」のようにさびれた地球で、けなげに生きる植物を見つけてはヴィカにプレゼントしたりします。ヴィカはこの贈り物を残酷にもタワーからポイ。ヴィカ曰く「毒が入っていたらどうするの?」と。建物の外の物は放射能汚染されているため、何かを持ち帰るのは基本NG。規則違反となるわけです。この人はジャックは合わないなと思って観ていたら、案の定本命の女性が現れます。それがボンドガール、オルガ・キュリレンコの演じるジュリア。

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

ジャックには過去5年分の記憶しかないですが、案外地球での生活を愛しています。ひそかに壊れかけた隠れ家を持っていて、廃墟となった地球でかき集めたアナログレコードなどを聴いたりしているのです。それがジャックの唯一の楽しみ。帽子やサングラス、レコードなどを見つけては、コレクションしているのでした。これもウォーリーっぽいです。

 

ジャックが自分の位置データを消して、ある日そこでくつろいでいると、宇宙船が墜落するのを見ます。「何だあれは?」とあわてて現場へ駆けつけるジャック。そこには合計5人の宇宙飛行士が、コールドスリープに入ったまま投げ出されていました。ジャックは無意識ですが、その中でまだ息のある女性飛行士ジュリアを、懸命に助けます。残りの宇宙飛行士らはドローンによって、殺されてしまいました。「人間だぞ!なぜ殺すんだ!」と、ドローンに疑いを持つジャック。

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 画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

ジャックはジュリアを連れ、スカイタワー49に戻ります。一命をとりとめたジュリアは意識を取り戻した瞬間に「ジャック...」とつぶやきます。内心「何でオレの名前を知っているんだ」と疑問を持つジャック。その上男1人に対して女2人になったため、何となくぎこちなさを感じる3人なのです。ジャックはジュリアが何者なのか?とても気になり始めます。

 

そして遂にエンパイア・ステート・ビルの跡地に行った際「君は何者なのか!?」と半ばキレます。ジュリアはジャックの妻だった、自分の妻を忘れておきながらキレてしまった時のバツの悪さ...。ジュリアは、60年前にジャックからもらった指輪を見せます。それを見て、ようやく5年前以前の記憶を取り戻していくジャックなのでした。

 

思い出の場所エンパイア・ステート・ビルでその記憶を取り戻したジャックは、一気にジュリアとラブラブムードを取り戻します。しかしそこへ「帰りが遅いわね」と心配したヴィカがバブルシップで迎えに現れ、仲の良い2人を見てショックを受けました。2人の空気を悟ったヴィカは涙をぽろぽろと流し、タワー49の住居に戻った後も入り口で通せんぼ。

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 画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

 

自動ドアを開けず、サリーにジャックの行いを告げ口をしました。さらに「それでも最高のチーム?」(んな訳ないやろ?)と誘導尋問するサリーに「最高のチームではありません」と、きっぱり答えます。すると何と住居空間の下に格納されていたのか?ドローンがいきなり可動しはじめ、ヴィカを殺害。ジャックは「何てことをするんだ!」とサリーにキレます。それに対しサリーは、「新しいミッションを用意しているのよ!」だから、ジュリアを連れて来いと催促する始末です。

 

自分とそっくりな人物に遭遇するジャック

「もう危なくて、こんなところにおられん!」そう思ったジャックは、その後ジュリアを連れタワーから脱出します。そして、以前に会った男ビーチ(モーガン・フリーマン)からの警告で、危険区域に行ってみろ!と言われていたので、そこへ行ってみました。すると自分とそっくりの男が同じようにドローンのメンテをしているではありませんか!「何でオレが2人?」とますます混乱するジャック。2人のジャックはすぐさまにらみ合い、取っ組み合いの喧嘩になります。そんな時、それを唖然として見ていたジュリアに流れ弾が直撃し、負傷させてしまいました。

 

ジャックは遭遇したもう1人のジャックを気絶させ拘束し、彼のバブルシップに乗り込みタワーへ戻ります。タワーには52と記されており、相棒のヴィカも健在。見た目はソックリ。でも普段ジャックが住んでいるタワーとは、別のタワーです。映像では表現されませんが、こんな風に地球上には1号のタワーとジャックとヴィカ2号のタワーのジャックとヴィカ3号のタワーのジャックとヴィカなどがうようよと居るのですね!想像するだけで気味悪く、その不気味さに心踊らされました。

 

ヴィカは、ジャックが普段の相棒のジャック(52号)ではないことに気づきもしませんでした。ジャックは速やかに、ジュリアを回復させるための医療品を持ち出し戻ります。更に急いでジュリアに緊急手当てをし、湖畔のほとりの隠れ家に連れて帰りました。ジャックは自分がクローンであったことを知り、落胆。ジャックは49号と名の付いたただのクローンであり、50年前ジュリアの夫であったオリジナルジャックの複製に過ぎないのでした。

 

容態が良くなったジュリアは、夫が話していた夢を語ります。そしてジュリアは「あなたはクローンだけど、オリジナルジャックの心を引き継いでいるのよ」と慰めます。しばしラブラブムードな2人。その後、ジャックらは先日出会ったビーチという男たち、すなわち人類の生き残りを助ける決意をします。

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

 

衝撃の事実が分かる!ビーチの語りタイム開始

2人はビーチらの住家へ向かいます。以前とは違い、ウェルカムなムードのビーチたち。そこでビーチは、ジャックがどんなことをしでかしたのか?を延々と語りはじめました。ビーチの話によると、実はジャックらが信じていたテットこそが人類の敵でした。60年前に人類を侵害したのはスガヴではなくテットであり、何と月も破壊されていたのです。月が無くなったことで地球は大パニックに...。テットからは宇宙船隊が派遣されて来て、ドアが開くと宇宙飛行士であった大量の君(ジャック・ハーパー)が降りてきたと。彼はジャックのことを「殺人マシーン」、「最も有能だった人物が人々の敵になった」などと、ずけずけ言います。

 

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画像引用:映画『Oblivion』公式Facebook

 

テットの目的は、地球の海水を手に入れることだったとのこと。何で海水?エイリアンが何を求めるか?は全く予測不可能ですね(笑)。ビーチは読書をしたり、ジュリアを救ったりする49号ジャックを見て本当の君が残っていると感じたから、接触を図ったのだと言います。ビーチの説教を聞きながら、ジャックは着々とドローンを改造。「これでテットを破壊しようぜ」という話になります。この改造ドローンをテットに向けて発射させ、爆破させるつもりなのです。

 

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

しかしあと少しという時に、他のドローンが3機やってきて改造ドローンを破壊。ジャックたちは人類の味方のドローンが使えなくなったため、別の手を考えるしかありませんでした。そこでジュリアが「自分がテットへ出向く」作戦を提案します。サリーはジュリアを利用したく欲しがっている。だから、自分が行けば大丈夫だと言うのでした。ジャックはコールドスリープをバブルシップに積み、テットへ向います。テットへ向う途中、墜落した宇宙船から発掘したビデオテープを再生するジャック。ながら運転もへいちゃらです。しかしそのテープの映像を見て、ジャックは全てを知るのでした。

 

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画像引用:映画『オブリビオン』公式twitter

 

ビデオの中には60年前のオリジナルジャックの姿が..。ジャックやジュリア、ヴィカらは宇宙飛行士だったのです。全部で7名のクルーを乗せた宇宙船オデッセイ号は、2017年に突然現れた謎の組織テットに向かっています。彼らの任務はテットの偵察でした。コールドスリープから起きていたのは、ジャックとヴィカ。他の5名は冷凍冬眠のままです。そんな時緊急事態が発生し、ジャックは他の5名の命を守るため、宇宙船から睡眠室を切り離します。その中にはジュリアもいました。別れ際切ない表情で眠っているジュリアを見つめ「僕らの夢を」と語りかけるジャック。そうこの切り離された宇宙船が、墜落してきた宇宙船なのですね。その後ジャック&ヴィカは、テットに吸収されてしまいます。と、ここまでがビデオの記録映像でした。

 

 

さてセキュリティを上手く誤魔化しテットに侵入したジャックは、自分とヴィカのクローンが無数に保管されているのを見ます。60年前に捕獲された、ジャックとヴィカのクローン。ものすごい人数です。サリーの声の発信元は逆三角形型HALみたいなやつで、ラスボス的な存在感です。サリー本人は60年前の宇宙船の指令官(地球からあーだこーだいろいろ言う人)だったので、映像を使用されたのでしょう。

 

ジャックはサリーと話しながら、コールドスリープを開けます。そこから「ジュリアじゃなくて、残念でした―」とばかりに現れるビーチ。うーん、痛快な展開です。サリーは「私が約束した生存者(ジュリア)ではないわ...」と言います。お前はマフィアか?その後ジャックは「くたばれ、サリー」と叫びながらテットを自爆させ、ビーチと共に命を落としました。地球に襲撃しかけていたドローンは、テットの爆破と共に自滅します。泣ける。

 

その頃ジュリアは、ジャックのお気に入りの古家でコールドスリープから目覚めました。「あれ私なんでここにいるの?」と空を見上げると、逆三角形のテットが爆破します。それを見たジュリアはジャック49号の死を悟り、崩れ落ちていくのでした。それから3年後、ジュリアには子供が生まれています。幼い子供と2人暮らしのジュリアの元に、ようやくこの場所を見つけ出した52号のジャックが現れます。めでたし、めでたし。

 

以上、前編はここまでです。あまりにも文字数が増えたので、2記事に分けることにしました。 後編はラストの考察や劇中に出てくるワイエスの絵画『クリスティーナの世界について思うことなどを執筆中です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

新年のごあいさつ

新年、あけましておめでとうございます。

 本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

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今年は、ディストピア映画の感想、考察などたくさん書きたいです。上の絵はこのブログを始める前のお正月に描いたメモ書きなので、2017年頃のものと記憶しております。全く!呑気な正月だ。今年も大して変わっていませんが(笑)。昨今の世界情勢を見ていると、もはやディストピア映画を鑑賞するのが怖いと感じることもあります。でもそのようなダークな世界にならないように皆で頑張るためにも、映画から学ぶという姿勢は保ち続けたいなと思いました。無駄に長い記事になりがちですが、(そこが結構課題...汗)、アウトプットが異様に遅いですが(そこはもっと課題...汗)どうかお付合いいただければ幸いです。

 

追記:イラストを入れるアイデアは、ふかづめさんの新年一発目の記事を拝見し良いなと思ったから影響を受けたのかも知れません。この記事、非常に面白かったので勝手ながら紹介させていただきます。

hukadume7272.hatenablog.com

 

スキャナー・ダークリー【映画感想】鑑賞後、心の霧が晴れないのはなぜか?

スキャナー・ダークリー

スキャナー・ダークリー (字幕版)

原題:A Scanner Darkly/上映時間:100分/製作年:2006年

監督:リチャード・リンクレイター

原作:フィリップ・K・ディック

脚本:リチャード・リンクレイター

出演:キアヌ・リーブスロバート・ダウニー・Jrウィノナ・ライダーウディ・ハレルソン、ロリー・コクレーン

 

ご無沙汰しております。この間2月だと思っていたのに、はや12月。この間12月1日だったのに、また更に1週間も経っている事実に驚愕しております。かと言って、映画を観ていないわけでもボーっとしていたわけでもなく、ただ単にブログを更新する余裕がなかったのですけどね。12月は書き溜めたブログなんかも含めて、バンバンアップするぞ!(あくまで目標...です)

 

スキャナー・ダークリーあらすじ】ネタバレあり


A Scanner Darkly - Original Theatrical Trailer

主人公ボブの友達フレック(ロリー・コクレーン)は、体中に這い回る奇妙な虫に悩まされます。フレックは友人のバリス(ロバート・ダウニー・Jr)に電話を掛け、「アリマキに襲われている」と助けを求めるのでした。バリスはとりあえず落ち着けと言い、なじみの店でフレックと会う約束をします。フレックは彼に見せる為虫を小瓶に入れ持っていきますが、移動中車の中で見ると、虫は消えていました。

 

レストランでバリスに会ったフレックは、それは物質Dの使用から起こる幻覚だよと言われてしまいます。近未来アメリカのアナハイムでは、物質Dというたちの悪い薬物が氾濫し、人々を悩ませていました。主人公のボブ(キアヌ・リーブス)は警察に勤め、麻薬取締おとり捜査官として働いています。ただし彼の名前はボブではなく、フレッド。皆互いのプライベートが分からないように、コードネームを使っているのでした。

 

更に驚くべきことに捜査官らは皆スクランブルスーツという、謎のスーツを着用しています。このスーツを着ると、150万人もの人々の顔データや衣類データがチラチラとカメレオンのように切り替わり、一体彼が何者なのか全く分からなくなるのでした。一方フレッドはプライベート、即ちボブでいる時は同居人らとDをやりまくります。麻薬取締おとり捜査官は、もともと物質Dの使用者であることが多いのでした。彼はある日上司から、ボブ(即ち自分自身)の監視を命じられますが・・・。

 

スキャナー・ダークリー】ディック原作映画の中でのポジションは?

スキャナー・ダークリー』の原作は、1977年のフィリップ・k・ディックSF小説『暗闇のスキャナー』です。なぜ今ディックなのか?ディック原作映画が今後増えていく気がするから...。というよりは希望ですね。ここでディック原作の映画を、ざっとあげてみます。

 原作:アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:238人

ファイナルカット:84人、ディレクターズカット<最終版>:57人)

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):14,957人

ファイナルカット:19,566人、ディレクターズカット<最終版>:3,117人)

 

 原作:追憶売ります(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:194人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):12,560人

・バルジョーでいこう!(1992年)ジェローム・ボアヴァン監督

 原作:戦争が終わり、世界の終わりが始まった

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:なし

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):7人

スクリーマーズ(1995年)クリスチャン・デュゲイ監督

 原作:変種第二号(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:19人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):268人

・クローン(2001年)ゲイリー・フレダー監督

 原作:にせもの(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:46人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):332人

 原作:少数報告(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:475人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):33,167人

 原作:報酬(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:138人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):3,897人

 原作:暗闇のスキャナー

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:11人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):1,606人

・NEXT -ネクスト-(2007年)リー・タマホリ監督

 原作:ゴールデン・マン(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:93人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):6,861人

・アジャストメント(2011年)ジョージ・ノルフィ監督

 原作:調整班(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:46人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):7,902人

 原作:追憶売ります(短編小説)

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:69人

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):13,026人

・Radio Free Albemuth【邦題なし】(2010年)ジョン・アラン・サイモン監督

 原作:Radio Free Albemuth

 みんなのシネマレヴューのレヴュー数:なし

 Filmarksの目のマーク(観たよのマーク&レビュー):なし

※レビュー情報は、2019年12月現在のものです。

 

なぜレビュー数を調べようと思ったのかと言いますと、ディック原作映画の中で自分が人気作だと思っているものと、実際とでは違っているかも?とふと思ったからです。しかしレビュー数からみてもやはり『ブレードランナー』、『トータル・リコール』、『マイノリティ・リポート』あたりがメジャーであり多くの方に観られています。これは、思っていた通りでした。

 

この中で鑑賞後、個人的にあいたたた・・・と思ったのは、やはりニコラス・ケイジ主演の『NEXT -ネクスト-』あたりです(笑)。またマット・デイモン主演の『アジャストメント』もあまり評判はよろしくないようですが、こちらは結構好みの映画でした。『クローン』は46人332人のレビュー数ですが、かなり面白かったと記憶しています。もっと、多くの方に観て頂きたい。

 

2010年の『Radio Free Albemuth』は、ディストピア小説を元に製作されたようで面白そうなのですが、日本語訳されていないようですね。一応予告を貼っておきます。


RADIO FREE ALBEMUTH OFFICIAL MAIN TRAILER (2014)

 

その中で何とスキャナー・ダークリー』は、みんなのシネマでは10人ぐらいからしかレビューが書かれていない(汗)。「この映画ってもっと話題になった気がするなぁ」とか思います。監督を『ビフォア三部作』や『6才のボクが、大人になるまで。』で知られるリチャード・リンクレイターが務めていらっしゃるのも、面白い現象ですね。

スキャナー・ダークリー】のジャンキーな登場人物たち★ネタバレ

自分だけかも知れませんが、登場人物が少ないわりに把握しにくかったです。アニメーションと実写が入り混じる映像から、誰が誰なのか?分かりにくいのかも?

「キーッ!>_<」っとならないために、人物紹介いたします。

フレッド/ボブ・アークター(演:キアヌ・リーブス

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 この映画の主人公で、物質Dの常用者。以前は家庭を持ち妻子と暮らしていた家を、ジャンキー仲間の住家として提供し、共に暮らしている。また彼は覆面麻薬捜査官であり、その時のコード―ネームはフレッド。

ジム・バリス(演:ロバート・ダウニー・Jr

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ボブの同居人であり、同じく物質Dの常用者。何を考えているのかよく分からない人物だが、ボブが捜査官であることに薄々感づいている。頭が良く切れ者に見えるが、「日焼け止めのスプレーからコカインを作ることができる」などと言い出したりして、相当なジャンキーである。警察に自ら出向き仲間を密告したのちおとり捜査官に立候補するも、あっさり断られ相手にされない。

チャールズ・フレック(演:ロリー・コクレーン)

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冒頭から薬物常用者であることが、一目瞭然である。彼は「ニュー・パス」という物質Dからの更生施設で、療養を受けることまで考えていた。ボブの家には住んでおらず自分の家があるが、逆にこんな人を1人で住まわせておくのは危険と思わせるほど重症のジャンキー。

ドナ・ホーソーン(演:ウィノナ・ライダー

ボブが密かに思いを寄せている女性で、ボブの恋人のような存在。Dを使用しながら、マリファナの常用者でもある。ストーリー終盤になって正体が分かる。

アーニー・ラックマン(演:ウディ・ハレルソン

ボブの同居人の1人。キッチンで死にかけているところ、バリスからの無視攻撃を食らうが何とか生き延びた。この作品では若干影が薄いが、演じているのはウディ・ハレルソンハレルソンはこの役で第29回スティンカーズ最悪映画賞の「最悪の助演男優」部門にノミネートされたが、惜しくも受賞を逃した。

 

スキャナー・ダークリー】個人的に面白いと思ったポイント

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1.監視社会の恐ろしさが描かれている

麻薬を取引している可能性が高いから部屋に勝手に監視カメラを付けて良いという、未来の警察の言い分があんまりすぎる。そんなこと言ったら、「あの人は自室で何をするか分からないから、監視します」みたいなことになって、これはまさにジョージ・オーウェルの『1984』とかの世界ですね。しかしこれが当たり前になってしまうと、人々はもはや文句を言わないのかもと...。そこが怖いです。

 

スキャナー・ダークリー』では警察所で働くフレッドのデスクに、モニターが6こぐらいあって怪しいと思われる人物を終始監視しているわけです。こういうのはSF映画にはつきものですが、プライバシーもなにもあったもんじゃない。現実的に考えるとゾッとしますね。

 

2.主人公ボブの地獄のような二重生活

 主人公のボブは覆面麻薬捜査官。キアヌは、随分昔『ハートブルー』という映画でもおとり捜査官の役をしていました(FBI捜査官であることを忘れ、サーフィンやダイビングにすっかり夢中になるおっちょこちょいな若者役)。

 

しかしこのボブがフレッドという偽名で出勤し、上司から「あのボブ・アークターって奴を監視しろ」と命令されます。日頃ボブは、居候のジャンキーな同居人たちと物質Dを好きなだけやっている訳ですから、それはもうヒヤヒヤです。

 

その上己自身を観察しているもので、だんだんアイデンティティが崩壊していく始末。おまけに同居人バリスの非情な部分も見てしまいます。バリスは仲間が自分のすぐ横で死にかけているのに、助けようともしませんでした。ボブの周りでは頭の良さそうなバリスですが、案外警察側からは相手にされない間抜けな側面も持っています。

3.ロトスコープを使用した不思議な映像表現

これは個人的な好みとなりますが、アニメーションと実写が混ざった映画が結構好きです。例えば『メリー・ポピンズ』とか、ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』とか、『スペース・ジャム』とか、『ウォーリー』とかも良いですね。

 

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 で、この作品ではロトスコープという技術が使われています。これはあらかじめキアヌやロバート・ダウニー・Jrを撮影したのち、それにいちいちアニメーションを上書きするといった、非常に手の込んだ技法なのです。実写とアニメを行き来する映像表現は、薬物常用者が現実と幻覚の間をさまよう感じを表現しているのだとか。観ていて不安な気分にさせられるのは、このロトスコープによるものだと考えられます。

4.ストーリー終盤で明かされる衝撃の事実【超ネタバレ】

終盤に2段階でどんでん返しがあるのが痛快です。まず1つめは、ボブの意中の彼女ドナが、彼の直属の上司であったという事実。上司=男性と思い込んでいたので、盲点を突かれた感じでした。更には物質Dの更生施設であったはずの「ニュー・パス」で、Dの原料となる青い花を育てていたという事実。どおりで、警察が立ち入り禁止なわけです。

 

「あっー」っと驚くラストですが、それまでの描写が支離滅裂すぎて気分は沈沈。このどんでん返しがグッと浮き上がってこないところが、惜しいなぁと感じました。

 

スキャナー・ダークリー】はなぜ鑑賞後、釈然としないのか?

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以上の要素からすれば、SF映画としてワクワクするポイントは、かなり押さえてあるはずなのです。ではこれだけの面白い要素を持ち合わせていながら、なぜ観終わった後釈然としないのかを考えてみます。

 

1.そもそもテーマがダークであり、鑑賞後陰鬱な気分になるから

先ほど申し上げたように、この映画ではロトスコープという手法が使用されています。この映像表現が巧みであるがゆえに、このいや~な気分を再三味わわなければなりません。アニメになったり実写になったり、これがゆる~く変化し繰り返されるのです。1秒前まで実写であったキアヌが、気が付くとアニメの描写になっていたりする。

 

これにより現実と幻覚の区別が付かなくなった登場人物らの、不安定な精神状態がこちらの気分にも影響してきてやや不愉快な気分に。原作者のディックも数々の麻薬に溺れる人々を見てきており、周囲の人々が麻薬の副作用に苦しんでいたようです。だからこれはディックの経験であり、トラウマなのでしょう。

2.とにかくいろんな意味で分かりにくいから

例えば、スクランブルスーツを着用している人が画面に2人以上出てくる場合、どちらがボブ(フレッド)なのか判断しづらい。その上時折アニメーションでのボブが現れ、その時の心情を表してくれるので観る方としては混乱するわけです。特にバリスが警察にやってきて、密告をするシーンなどは気持ちがざわつきました。全体的に説明不足で、その上人物らの会話もどうでも良いような内容が多いので、筋書きをしっかり把握するためにはある程度の辛抱が必要です。

 

3.エンディングの後味の悪さ

ラストシーンで、ボブは「ニュー・パス」という物質Dの重度中毒者の厚生施設に送られます。これは警察側のたくらみで、奴らは実はニュー・パス内にボブを送り込むこと自体が目的でした。なぜなら「ニュー・パス」には、警察も立ち入り禁止とされていた場所だからです。よって重度の中毒者であるフランク(ボブ)なら、あの施設に入れるだろうとにらまれていた訳です。

 

しかも何とニュー・パスでは、物質Dの原材料となる青い花が育てられていました。よってフランク(ボブ)は、警察にDの中毒者になることを仕向けられていたと言えます。そんな話ってある?このダークなオチに納得がいかないのは、私だけではないでしょう。

 

しかしもっと気になるのは、その後フランク(ボブ)がどうなったのか?まるで描かれてない事です。警察はボブが復活して、青い花を育てている現場を押さえることを期待している訳ですが、それがどうであったか分からないので、観ていても大変落ち込みました。でもそこが、ディック作品っぽくもあります。

 

4.正気ではない人々の会話を、真面目に聞いていて疲れるから

2度目の鑑賞であると、「だいたいこの人のセリフは真剣に聞く必要はないな」など、判断がつきます。例えばボブの同居人アーニーのセリフは「クソー、ハメられた」とわめいたりとか、そんなのばかりです。

 

またバリスが自転車を安く買ったと喜んでいるシーンなどは、「ギアが何段階」だの「騙されてチャリを売りつけられた」だの皆で必死に話し合っているのですね。さらにはバリスが銃のサイレンサー作りに失敗し、大きな爆発音がして周囲がキレるシーン。

 

全体的にこの会話要る?みたいなのが目立ちました。あとは高速で車のブレーキがきかなくなったシーンでも、ボンネットを開けて原因についてあれこれ話していましたが、何というかくせになりそうなまったり感ですね(笑)。その後すかさずDを口の中に放り込むバリスたち。「あなたたちが車のボンネットとか開けて大丈夫ですか?」と言ってやりたい。

 

5.心理学者達の行うテストの答えに、イマイチ納得できない

警察に雇われた心理学者らは「これが何の絵に見えますか」というようなテストを、フレッド(ボブ)に行います。しかし私が見る限り、この絵が何とも分かりづらいのです。

フレッド:「羊だ」

心理学者:「どこが羊?」

フレッド:「羊じゃないのか?」

心理学者:「答えは犬です」

......。こんなやりとりを見ていて、「えーなにそれ」「羊にも見えるよね?」とか思ったりする訳です。ロールシャッハテストと違い答えはたった1つだそうですが、到底そんな風には思えません。

 

しかも心理学者は「このテストはDへの依存度とは無関係」などと最初に言っているので、尚更じゃ一体何を調べているのか?と聞きたくなりました。しかしこのテストで不合格であればニュー・パス行きになる訳で、やはりDの使用による脳のダメージを調べている訳です。

 

スキャナー・ダークリーのざっくり感想】完全ネタバレ 

このようにちょこちょことした不明点が重なって、徐々に気持ちがもやもやしていった気がします。『スキャナー・ダークリー』が、ディック原作映画の中でも一般受けはしないSFなどと言われ、大幅に評判が分かれる作品であることも納得です。でもあと1回観ればもっと好きになるかも(過去2度ほど鑑賞)的な、可能性を秘めた作品ですね。もちろん現時点でも、自分自身の個人的な評価は低くないです。遅々としたストーリー進行、豪華なキャスト陣をアニメ化する大胆さ、など個性も強くて良い。ただ、何かが惜しいと感じる映画でした。あとはドラッグって怖いなと思ったりしましたが、それこそがディックからの強いメッセージという気もします。

 

 

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人間の集団心理の怖さ【ミスト】映画感想★完全ネタバレ

ミスト (字幕版)

原題:The Mist/上映時間:125分/製作年:2007年

監督:フランク・ダラボン

原作:スティーヴン・キング

脚本:フランク・ダラボン

出演:トーマス・ジェーンローリー・ホールデン、ネイサン・ギャンブル、トビー・ジョーンズマーシャ・ゲイ・ハーデン

 


映画 ミスト 予告編

 

【映画ミスト あらすじ】完全ネタバレ

随分前に公開された映画なので、完全ネタバレで書かせて頂きます。もしも未見の方がいらっしゃいましたら、このレビューを読まずに鑑賞される事を強くお薦め致します。

※それでも敢えて、ラストのオチだけは書きません。

 突如襲ってきた大嵐

主人公のデヴィッド・ドレイトンは人気の画家で、映画ポスターなどの依頼を受けています。ある日彼がアトリエで絵を描いていると、突然大きな嵐に見舞われました。そこで彼は妻ステファニーと、息子のビリーと共に地下室に逃げ込みます。

 

翌日になってみると、家の周囲は荒れ果てていました。隣人のノートンとは普段あまり仲良くないのですが、デヴィッドはこの嵐のせいで車1台パァにした彼に幾分同情します。スーパーマーケットへ食糧などを買い出しに行かねばと考えたデヴィッドは、ノートンと息子のビリーを乗せ車を走らせます。

 

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画像引用:http://moviescreenshots.blogspot.com/2010/09/mist-2007.html

 

 田舎町のスーパーマーケットで足止めを食らう

スーパーマーケットへ着くと昨日の晩の大嵐のおかげで店内は停電しており、普段以上のお客で大繁盛していました。田舎町なので皆顔なじみの様で、それぞれ会話をしています。薄暗い店内。

 

そこへ男が駆け込んできて「連れが何者かに襲われた」と言い出したり、激しい地震が店内を襲った事により、これまでの和やかな空気はがらりと変わります。よくよく見ると、スーパーマーケットは深い霧に包まれている。人々はそれを不安な眼差しで見つめます。

 

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画像引用:http://www.horrorhomeroom.com/apocalyptic-religions-mist/

 

そんなタイミングである女性が、「私帰らなきゃ」と言い出します。彼女は幼児を2人、家に置いてきたのだと。自分は車を持っていないので、誰か送ってくれないかと頼みますが、引き受けてくれる者はおらず。周囲の人々は「今店内から外に出てはダメだ」などと言い彼女を引き止めますが、彼女は怒って出ていきます。

 

そんな風にしてスーパーマーケット内のお客は家に帰る事が出来ず足止めを食らい、あまり親しくない者同士、店内で一晩過ごす羽目に。デヴィッドはビリーの為に倉庫へ毛布を取りに行こうとし、若い女教師アマンダにデヴィッドを預けます。

 

しかし倉庫では、とんでもない惨劇が待っていました。突如若い従業員ノームが、シャッターの向こう側にいた魔物に命を取られます。デヴィッドの警告を聞き入れなかった、ジム・グロンディンは若者を死なせてしまった事に甚く反省。

 

倉庫に居合わせた人達は先程起こったこの奇妙な出来事を、店内の皆に伝え危険を知らせます。しかしそこへ弁護士のノートンが出てきて「超常現象?お前ら頭おかしいのか?」と反論。皆は起こった事件を直接目撃したわけではないので、彼らが急にオカルトチックな突拍子もない事を言い出したと解釈します。

 

しかし店長が倉庫の魔物の触手を実際に目撃した事などから、大半の人達は尋常ではない事態に見舞われていると理解。ガラス張りのスーパーマーケットに魔物が入って来ぬ様、ドッグフードや肥料をやたらと積み上げ災難に備えようとします。しかしミセス・カーモディだけは作業にも参加せず、「神がお怒り」などと言い手伝いません。店内のお客らはそれを、「何この人!」という目で見ています。

 

 状況はどんどん悪化し、人々は追いつめられる

その後も「今すぐここを出る!」と言い出す人が出てきたり、夜中に巨大な昆虫みたいな化け物が現れたりして、スーパーの中は大惨事。

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画像引用:https://www.popsugar.com.au/celebrity/photo-gallery/30866017/image/30866003/Mist

 

負傷者が出た為翌日デヴィッド達は、すぐ隣にあるドラッグストアまで薬を取りに行きます。しかしそこでますますおぞましい光景を、目の当たりにしてしまいます。耐え切れなくなったジムの精神は崩壊。いきなりミセス・カーモディを支持し始めたりします。

 

更には店内に3人いた兵士の内、2名が自殺。残された軍人のウェインは、遂に軍で流れている噂について話します。霧の正体はアローヘッド計画の事故によるもので、それは軍の科学者によるミスであったと。よって異次元の世界の魔物が入り込む様になった。ただ彼は科学者ではないし、何も知らないに等しい訳です。地獄絵図と化した店内を、妄信的な宗教信者ミセス・カーモディイカレた思想が支配し始めます。

 

 ミセス・カーモディの信者が急増

この宗教おばさんが言うには、人間のおごりが神の怒りに触れたから。月面を歩いたり(笑)、幹細胞の研究をしたからこの様な現象が起こる。よって信仰深くなれと。こんな事になったのはウェインのせいだと言出した為、彼は急に増えた彼女の信者の1人に刺されます。更にカーモディは生贄を出す必要があるとかメチャクチャな事を言い出して、まだ若い軍人のウェインをあっさり犠牲にします。残酷過ぎる。その後彼女は「今日は、魔物が大人しいでしょう」と言い切ります。あんたが一番怖いわ!

 

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画像引用:https://www.hotflick.net/pictures/007MST_Marcia_Gay_Harden_007.html

 

この時点で店内の大半の人が、彼女の言いなりになるという異常事態。その晩ここにいるのはもう危険だと察した副店長らは、翌早朝にでも店からの逃げ出そうと言います。メンバーはデヴィッドと息子のビリー、アマンダ、副店長のオリー、アイリーン、ダン、マイロンらです。しかし彼らの行動はカーモディに読まれていた様で(1人だけ起きている・・・)、今度はビリーが生贄にされそうになる。そんなバカな?とアマンダが子供を必死に庇い、遂には副店長がカーモディを射殺。

 

 何とかマーケットから飛び出すも、全員は助からず

デヴィッド達は車に乗り込みますが、生き残ったのはデヴィッド、ビリー、アマンダ、アイリーン、ダンの5人のみとなりました。霧の中車を走らせるデヴィッド。そして衝撃の結末へと向かいます。

 

 

【映画ミスト 感想】完全ネタバレ

霧に覆われたスーパーマーケットの中の人達が、クリーチャーにタジタジになり精神的に衰退、その後店内は狂気の世界に変わっていくという大傑作ホラーです。

 

原作はスティーヴン・キング。監督は『ショーシャンクの空に』などの、フランク・ダラボンです。

 

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本作品はそんなキング先生+オタクダラボンの黄金コンビで作られた、3作品目となります。(ちなみに2作品目はグリーンマイル)。きっとダラボンはキング原作モノの中でも、初めてホラー作品を映画化できると大喜びだった筈。

 

またミストは無念すぎるバッドエンドで有名ですが、このエンディングはキング原作の『霧』には無かったものでした。映画でのあの衝撃的な希望の無いラストは、フランク・ダラボンからの提案。キングは彼が持ち掛けてきたエンディングのアイデアをたいそう褒め、自分が思い付けなかった事を悔しがっていたとすら言われています。

 

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画像引用:https://horrorfreaknews.com/mist-2007-review

 

さてこの映画はホラー映画ですが、これはオカルト的な恐さとはちょっと違う。私の解釈としては、途中からしゃしゃり出て来る宗教おばさんや物事をあまり考えない人々が、この話の肝だと思うのです。確かにキング原作ものだしショッキングな描写や、先の読めない展開など通常のホラー作品としても楽しめますが、やはり一番怖いのは普段はおとなしい町の住民が豹変していく姿を目の当たりにする事ではないかと思いました。

 

してはいけない事も、平気でしてしまう集団心理の怖さ

この作品が恐ろしいのは、この様な非常事態が起こった時の集団心理、群集心理がありありと描かれているから。普段は善良そうに見える田舎町の人々が、極度の恐怖体験をした事により、若い軍人を1人犠牲にする事に対してどうとも思わなくなる。

 

群集心理が関係して引き起こした悲劇は魔女狩りホロコーストをはじめ、たくさんあります。しかしこの問題は非常に難しいし、私がここで何か言う事ではないかなと。

 

でも日々のちょっとした時に、集団心理の奇妙さを垣間見る気がします。居酒屋でも2、3人の飲み会だと静かなのに、10人、20人となると大声を上げたり一気飲みをしたりして、同じ人が急に周囲の迷惑を考えなくなる気がする。また昨今のハローウィン騒動なんかも、考えさせられますね。あとはスポーツイベントで起こる暴動など。集団になると道徳観が薄れるのかなと。私は昔から集団行動が苦手なので、この様な群集心理に敏感なのかも知れません。

 

本作ミストでは一見おとなしい田舎町の人々が、置かれた状況により如何に残酷な事をし得るか?がドキッとさせられる程上手く描かれていると思います。

 

 

カッコウの巣の上での婦長と同レベルで憎い、ミセス・カーモディ

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画像引用:https://stephenkingsthemist.fandom.com/wiki/Mrs._Carmody

 

ビリーを生贄にするからよこせと言い出した時には、この宗教ばばぁ本当に死ねばいいのにと思った。でもその直後に副店長に、あっさり射殺されました。やるな副店長。最後まで生き残って欲しかったです。(ちなみに副店長を演じたのはトビー・ジョーンズ)そして2発目の弾が撃ち込まれた時、ハッとする感じ。何とも言えないです。

 

確かに子供を犠牲にするなんて、それ自体あってはならない事ですが。このおばさんが怖いのは、妄信的過ぎて自分の思想に全く疑いが無い。そしてそれを周囲の人に押し付けてくる訳ですよね。責任感が全く感じられない。

 

スケールは小さくとも、実生活にも似た様な事はたくさんあると思います。例えば企業などの組織内でも。恐怖に突き動かされた人々が取る態度や、判断、選択はいずれもロクなもんじゃないと思うのです。

 

あれよあれよという内に、人々の態度が変わる

一昨日まで気が触れていると思われ、倦厭されていたミセス・カーモディが圧倒的な支持を得るまでの経過時間が圧倒的に短い。彼女の周りにわんさかと集まる人々を見て、えっそんなに急に?と思いました。映画の中の話だからとは思えない。現実でもきっとこうなのだろうと思うと、心底ゾッとします。ジムを筆頭に、彼らは考える時間があまりに短い。それが映画の尺に、表れていると思います。もしくは集団になると、考えないのかも知れない。極度の恐怖に煽られているからと言って、デヴィッドや副店長、アマンダみたいな選択が出来る人達もいる訳ですよね。ここでアメリカの閉鎖的な田舎町が舞台である、という設定が活きてくる。

 

立場的に不利な人物やマイノリティを犠牲に

軍人であったウェインは、確かに皆が知らない事情を知っていた。彼はその事に対して、ある種の後ろめたさを持っています。更には他の2名が自殺した事で仲間が減り、疑いの目が向けられ立場的にも相当に弱くなった。そこでジムや宗教ばばぁは、ウェインをただ軍人だからという理由スケープゴートにした。彼は直接研究に携わった訳でもないのに、NEW信者達もホント頭悪いなと思いました。

 

マイノリティやその状況に置いて立場的に不利な人、変わり者などを盾にする卑怯者達ばかりで呆れます。そんな事をしたって物事は具体的に何も解決しないし、真実も見えてこない。臆病者達がホッとする為に、彼が犠牲になったのが許せない。私も臆病ですが(笑)、弱虫なら弱虫なりにもっと別の手を考えられるようになりたいです。

 

じゃぁ自分は本当に大丈夫なのか?

この作品を観ている時自分は観客ですから、デヴィッドやアマンダの側に感情移入しがちです。自分は彼ら側の人物であると思っている。もしくはそう思いたいのです。でも心構えや仕組みを知る事なしに、彼らと同じ行為が本当に取れるのかな?とか少し思いました。

 

また超常現象や自然現象を理解したり、コントロールしたりする事は、余程の専門家でない限り難しく感じられます。少なくとも自分は頭が悪いので無理(笑)。しかしこの様な逆境に遭遇した時の人の心理などは、あらかじめ頭で分かっておくと、ちょっとしたトラブルやハプニングが起こった際にも幾分良いのではないかと思いました。だからもっと勉強しようと(笑)。1人1人の認識により、少なくとも二次災害が起こらない様に努める事は出来るのではないかと思いました。

 

何でも多数決で物事を決める恐ろしさ

例えばウェインがNEW信者らに取り囲まれている時も、主人公らはそれを必死で止めようとします。でも人数が少なくて腕力で負けてしまう。それが何とも悔しいです・・。いっその事主人公が、ドウェイン・ジョンソンとかであれば良かったのに!どう考えてもデヴィットや副店長らの方がまともな判断をしているのに、無念です。

 

人の数が多くなると、それだけで強気になっていく民にイラーッ。その場その場で自分らの都合の良い様に、意見をコロコロ変えたりする人達が勢いを増すのは如何なものかと。そもそも正しいか間違っているかをよく考えもせず、大半の意見がそうであるという理由だけで、自分らが正義だと思い込める理由がよく分かりません。これは相当にヤバい。

 

霧って案外怖いね(汗)

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画像引用:https://theiapolis.com/movie-2UFT/the-mist/gallery/thomas-jane-david-drayton-and-laurie-holden-1087627.html

 

この映画のタイトルにもなっている霧。普段は1年に1度も霧に遭遇する事なく、生活しているのでイマイチピンと来てません。しかし5m先とかがぼんやりして見えないとかなり不安だし、ストレスも相当に溜まるんじゃないかと。

 

スーパーマーケット内の人々は、軍が何かを隠していて自分達に正しい情報が来ていない事に薄々気づいている。それを皆上手く言葉に出来ない。そのモヤモヤが怒りや恐怖となって、攻撃的になり犠牲者を出してしまった。軍が情報を公開しない=霧というスタイルで表現されているのが面白いなと思いました。

 

 

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みんながそう言っているから正しいとは限らない、という事を限りなくリアルに感じさせられた作品。ストーリー序盤で幼い子供を2人家に置いてきたという女性は、スーパーマーケット内のお客全員の言う事を無視して、店を飛び出します。無謀な事をするものだ、誰しもがそう思った筈。でも母親で子供を置いてきてしまったのなら、無謀に思えてもそうせずにはいられないかも知れない。

 

主人公のデヴィッドや副店長らは、店内のその他大勢よりは随分マシな行動を取った。でも彼らの取った行動が必ずしも正解と思えない所が、この話のミソだとも思います。

 

個人的には人の恐さ>霧の恐さ>化け物の恐さという印象です。

 

ストーリーの大半がスーパーマーケット内で進行していくにもかかわらず、絶えずスリリングな展開を見せてくれてありがとうと言いたい。大規模な密室劇っていいもんですね。ラストが衝撃的過ぎるので、ついついそちらの話題になりがちですが、群像劇としても楽しめるのではないか?と私は思ったりしています。

 

 

そしてあのエンディング・・・。あぁ。イジワルダラボンめ!

 

 

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