映画感想【CODE8/コード・エイト】迫害される超能力者達
CODE8/コード・エイト
原題:Code 8/上映時間:99分/製作年:2019年
監督:ジェフ・チャン
脚本:クリス・パレ
原案:ジェフ・チャン
出演:ロビー・アメル、スティーブン・アメル、サン・カンほか
CODE8/コード・エイト(2019年)は、ジェフ・チャン監督によるSF映画です。日本での劇場公開はされず、2020年頃に配信されました。私は昨年WOWOWで放映されたのをHDDに録画&視聴。で、今年2022年4月11日から、アマプラで無料配信されるようになったので、感想など書いてみました。
この映画は、もともと2016年に製作されたショートムービーがあったんです。
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これYOUTUBEで無料で観れるのですが、字幕がついておりません。でもSF映画なので、何となく観ていると内容は概ね理解出来ました。とにかくSungkangさんが観たかったので、必死に理解しようとしましたよ!そして、このショートムービーを観た映画ファン達からクラウドファンディングサイトのIndiegogoで製作資金を集めて作られたのが、CODE8/コード・エイト(2019年)です。本作品のエンドロールがとてつもなく長いのは、多分そのような関係からですね。
私が本作品を観た動機は、もちろんサン・カン(ワイスピのハン)のファンだからなのですが、SF映画としても充分楽しめました。ロボット警察とかドローンの造形が良いですね。【CODE8】のフォントにもこだわりが感じられ好感が持てます。
CODE8の主なキャスト【ネタバレあり】
コナー・リード(演:ロビー・アメル)
母親思いの主人公。上記画像にPOWER: ELECTRIC とありますが、これは電気系の特殊能力を持っているということです。主に手から電気を発し、物を破壊したり、電球を明るくしたりすることが出来る。自身と同様に超能力者である母親の医療費を支払う為に、ヤバくて危険な仕事に手を出してしまいます。「ENABLED:CLASS5」とありますが、これはおそらくクラス5の超能力者だということ。だから、非常に強いパワーを持ち合わせています。
ギャレット(演:スティーブン・アメル)
ギャング集団の一員。テレキネシス系の能力を持っている。物事が上手くいかなくなるとすぐにカッとなり怒鳴り散らしたりして、いちいち仕事が出来ない。しかし、犯罪に関する提案をする時は、生き生きとした表情を見せる。事前の確認などに隙があり、計画が失敗することも多々。そして「ファッーーク」を連発。完全に極悪な人ではないと思っていたけど、最後まで犯罪を続けていく結構悪い人。「ENABLED:UNREGISTERED」とあるので、どれぐらいの超能力があるのか、政府に登録していないのだと思う。不良ですね。
演じているスティーブン・アメルは主演のロビー・アメルのお兄さんかと思っていましたが、いとこのようです。でも何となく、雰囲気が似ています。
パーク捜査官(演:サン・カン)
麻薬捜査班の警察官。「POWER:NONE」の表記通り、非超能力者。他の警察官と違い、高い倫理観を持つ。母親の病気を治すため、犯罪組織と絡んでしまったコナーに対しても、同情的で、マーカスの情報を提供すれば母親を助けると提案する。彼が超能力者をやたら庇うのには、他にも理由があった。彼の幼い娘も超能力者なのだ。
この娘はテレビの情報から、自分が超能力を持っているせいで捨てられるのではないかと心配していました。演じている女の子、インスタグラムで見たらもうメチャクチャ可愛かった。映画の中の初めてのパパ役がサン・カンって、ラッキーだなと思います。
またサン・カンさんは、今年2022年8月に来日されてました。私は福岡に住んでいて、静岡で開催されているFUELFESTJAPANには、参加することができなかったのですが、何かとても衝撃的でしたね。Twitterとかで見ていて、「わぁ、本当にいるんだ」って思いましたよ。正直、海の向こうのハリウッドセレブってちょっとリアリティがないでしょ?でもこうやって日本の景色に馴染んでいらっしゃるのを見ると、身近に感じることができて、とても嬉しかったです。
サンカンとコディと渋谷に行った時の動画です。#サンカン #コディウォーカー #FUELFEST #FUELFESTJAPAN #ワイスピ #ワイルドスピード pic.twitter.com/omUaG9snoD
— FuelFest Japan 公式 (@FuelfestJapan) 2022年8月26日
(日本語字幕付き) サンカンからファンの皆さんにメッセージ。サンカン、日本に来てくれてありがとう!See You Soon! #サンカン #ハン #ワイスピ #ワイルドスピード #FUELFEST #FUELFESTJAPAN pic.twitter.com/DkidYzdV9F
— FuelFest Japan 公式 (@FuelfestJapan) 2022年8月20日
日本に来てくれてありがとう。
メアリー・リード(演:カリ・マチェット)
コナーの母親で冷却系の超能力者。病気で冷却能力がコントロールできなくなり、洗面所のお湯で自身の手を温めていた。コナーに、真っ当な生き方をするよう説得する。
ニア(演:カイラ・ケイン)
ヒーラー系の超能力者。他人の傷や病気を治す力を持つが、実は彼女自身がその傷や病を負うこととなる。持病を治癒する目的で、マーカスから利用されているが、逃げ出す意思はあまりない。サイクにどっぷりハマっていることと、服役中の父親の借金を背負っていることが彼女の弱みであり、そのせいでこの環境から抜け出せずにいる。ある意味、この物語の登場人物の中で、一番気の毒な人だと思う。
マーカス・サトクリフ(グレッグ・ブリック)
ギャレットのボス。リンカーンシティ最大のサイク密売人。人の心を読む力を持っている。もう、めっちゃ悪い奴。
CODE8のちょこっと用語解説【ネタバレあり】
サイク
死を招くと言われる新型のドラッグ。原料は、超能力者の髄液からとられており、高値で売れる。見た目は透明な液体状の物のようで、ニアは目薬を差す感じで使用していた。リンカーンシティでは、主にマーカスという男が密売を取り仕切っている。仕事にありつけない弱者(超能力者)から髄液を搾取しておいて、これが麻薬となればまた超能力者が責められる可能性が高い。極めて残酷なシステム。
ガーディアン
ロボット警察。主に超能力者を取り押さえるために作られたことがミエミエで、脅威的な存在。でもデザインは秀逸です。車で移動する時は、脇にピタッと張り付き中へは乗り込まない。ちょっと違うけど、昔流行った箱乗りみたいな感じ。飛行しているドローンからも身一つでスッと降りてくる。無敵に見えるが、案外弱い部分もあり。よくよく事情も分からないいまま、危険とみなした超能力者をあっさり銃撃する。
超能力者
X-menの人達と同じように、様々なジャンルの超能力者が存在する。念力系、電気系、冷却系、筋肉系、ヒーラーなど。でも、パッと見は非超能力者と変わらない。変身したり仮面を被ったりするキャラクターではない分、逆にリアルに感じます。
CODE8のあらすじ【ネタバレあり】
リンカーンシティでは全人口の4%の人が超能力者になっており、特殊な能力を持つがゆえ、他の人々から恐れられ差別を受けていた。主人公コナーとその母親も特殊な能力を持っている。母親のメアリーは自分が超能力者であることを隠して、スーパーマーケットで働いている。メアリーは病気だった。彼女の医療費を払うため、コナーは定職を探しているが、就職先はなかなか見つからない。
以前、超能力者は建築現場や病院などあらゆる場で活躍していた。だから収入も、非超能力者より超能力者の方が良かったのだ。しかし工場などのオートメーション化が進むにつれ、マシンに仕事を奪われてしまった。定職に就くことが難しくなったコナーたちは、10人か20人ぐらい集まって、毎日日雇い労働の仕事を待っている。
巷ではサイクという新しいドラッグが流行していた。ある日パーク捜査官が率いる麻薬捜査班が、サイク製造所の捜査に入る。そこで、髄液を提供していた8名の超能力者が見つかり搬送された。元をたどれば、サイク密売人マーカスの仕業だった。
ある日コナーらが日雇い労働の職を求め待機していると、そこにガラの悪い超能力者ギャレット達がやってきて、コナーに危険な仕事を薦めた。最初の内は戸惑うコナーだが、結局その仕事を引き受けてしまう。ミッションは何とか成功。支払われた報酬は日雇い労働の報酬とは比べ物にならない額で、1度やると抜けられなくなった。その後もずるずるとその如何わしい仕事を引き受けてしまいコナーは、ニアという女性と親しくなる。ニアがヒーラーだと分かったコナーは、この人に母親の病気を治してもらおうと考えるのだが...。
CODE8の世界観【完全ネタバレ】
アメコミのように、ファンタジックな見た目のキャストはいません。超能力者が人口の4%ってことは、25人に1人。だから現実的に考えると、学校の教室の中に1人か2人は超能力を持った人がいるという計算になります。特殊な能力を持つ人々(マイノリティ)が、これまで通りの能力しか持たない人々(マジョリティ)に恐れられ、その恐怖ゆえに迫害されるという世界観は『X-MEN』に近いですね。しかし『X-MEN』の「恵まれし子らの学園」のような比較的安全なコミュニティの場はなく、超能力者たちは超能力を持たない人々と同じ場に紛れ込んで暮らしています。
一方世の中も表面上、超能力者を即刻追放しようとする動きはありません。テレビの報道では、非超能力者が「自分達は差別をしていない」と主張します。でも超能力者だと仕事を探す際にも、書類に超能力者か否かを記入しなければなりません。そこでまず「あ~あ」ってなって、メンタル面でのダメージを1回受ける。こんな風に仕事1つ探すのも面倒で、何となく特殊な能力を持つ者を優遇しない社会が出来上がってしまっている、そんな感じです。さらに多くの警察官は超能力者に対して、露骨に横暴な態度を取っています。「そこのクズ」など失礼な発言をしても平気。
コナーらがやっとありついた日雇い労働の最中にも、警察がドローン付きでやってきて、現場監督に「超能力者を雇っていないか?」と尋ねたりします。超能力を使用し働く場合、別途、労働許可が必要らしい。しかしその許可を得るにも資金が必要。資金がないから働きたいのに、働く為にお金がいるという矛盾した問題を押し付けてくるんです。袋小路に追いやるというか...。こういうところがメチャクチャ陰湿ですね。
だからSF映画でエスパーなど非現実的なキャラが出てきても、何かとリアルだなと感じました。本作は貧困、差別など社会的な問題を扱った風刺作品とも言えるでしょう。ロボット警察は彼らが単独で行動するのではなく、あくまで警察官の補佐的な存在。尋問や職質などは警察官がやり、危険な場所への進入時には大量に送り込まれるます。ロボットなので人情や状況判断力がない分、ちょっとでも危険だとみなした人物は即射殺するというバカで残酷な側面を持っています。
CODE8の印象的なシーン【ネタバレあり】
コナーがドローンを墜落させるシーン
コナーがドローンを派手に墜落させるシーンがあるだろうと、大体想像できました。ずうずうしい想像&期待ですが(笑)やっぱりあった!しかしその直後、さらにドローンから降りようとしていた2体のガーディアンが宙吊りになってブラブラするカットがあり「おぉ!」っと思いました。ほんの1、2秒ぐらいですが、このようなシーンがあるのは予想外でしたね。変わったアングルから撮影されていて、印象深かったです。少し地味な作品ですが、VFXのレベルも高く全体的にとてもセンスが良いと思いました。
想定外のハプニングにめっぽう弱いギャレット
先述しましたように、銀行強盗のシーンでギャレットがブチ切れました。ブチ切れた理由は、金庫強盗に入ったのに現金が直前に他へ送金されていたからです。単に事前のチェックが甘~い。結果手に入った現金は、予定額の1/10ほどでした。ギャレットはファーック!を連発。その後の犯罪計画でも、結局儲けを独り占めしようとしたマーカスから裏切られ、大惨事に。仲間は2名殺され、警官も4名も殉職してしまいました。
パーク捜査官活躍のシーン
最初に申し上げた通り、個人的には、サン・カンが出てれば、もうそれで良し。パーク捜査官の潜入シーンは2度あります。序盤でサイク製造所に突入するシーンと終盤、マーカスのアジトに突入するシーンです。ガーディアンを引き連れていてカッコイイ。SNSで他の方のレビューを読んでいても「黒髪の警察官が好印象だった」とあり、それはサン・カンさんですよ!と教えてあげたかったです。ラスト付近で見せる複雑な表情からは、強いメッセージが感じられました。
総合的な感想【完全ネタバレ】
メインの登場人物らが皆、ハッピーになれないエンディングってちょっと珍しい。差別社会の持つ薄暗い側面が、じんわりと描かれています。例えば、ウルヴァリンとか観ても最強過ぎて、「あの爪凄くない?どうなってるの?」とか気が散ってしまいます。ヒーローが魅力的に描かれ過ぎている分、風刺されていることがあまり響かないというか。まぁ、それはそれで良いのですがね。一方『CODE8』に出てくる超能力者たちは、誰ひとりとして幸せそうな人がいません。
超能力者にとって不利なシステムが、社会のあらゆるところに組み込まれており、彼らが真面目に働こうとしても、変えようがない。よってまともにルールを守って生きるのなら、よほどラッキーことがない限り報われないのです。あらかじめ決められたインチキレースに参加させられるようなもの...。それに気づいた人の一部は、馬鹿馬鹿しくなり犯罪に手を染める。それがサイク密売人のマーカスやギャレットなど。
またこれらの社会にとまどいを感じながらも、何とか適応しようと努めるコナーやメアリーなども報われません。望みどおりではない着地を見せられることによって、昨今抱えている問題が浮き彫りとなり、いろいろ考えさせられました。父親と再会できたニアの笑顔から、ほんの少しだけ希望が感じられるのが、せめてもの救いです。
さらには、手柄を取ったパーク捜査官の嬉しくなさそうな笑顔。上司から「笑って」と言われ、彼はその場しのぎで仕方なく笑顔を見せます。確かに娘が超能力者だから、先々の不安を隠せないのもあるでしょう。しかし、多分それだけではありませんね。市民にとっては「超能力使用の全面禁止」が得策かも知れないが、結局麻薬組織は依然と横たわり続ける。
超能力者らにとっても非超能力者にとっても心地良い社会を築き上げれば、問題は解決するはずなのに政府がそれを行わない。そのことで一部の超能力者の反感を買い、他の人達の生活が脅かされるのです。結局喜んだのは差別主義者であるいくらかの市民。以前は高給取りだった超能力者に対しての、妬みもあるでしょう。能力を持った者をこき下ろしたい大衆の心理は、醜いですね...。何となく、続編がありそうな結末だなと思っていたら、やはり...。
Netflixが続編の全世界配信権を獲得しているようですが、サン・カンがキャスティングされていないのが、気がかりです。彼が出るなら次作も観てみたいと思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
その他の記事も、そろそろアップしますので、よろしくどうぞ。では、また。