アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

ニセ映画でっち上げ作戦【アルゴ】映画感想

アルゴ

原題:Argo/上映時間:120分/制作年:2012年

アルゴ (字幕版)

ニセSF映画をでっち上げ人質を救出するという一見無謀な作戦を見事にやってのける、スリリングなサスペンスドラマ。

【あらすじ】

本作は、実話をベースにしたサスペンスドラマです。時は1979年のイラン。反米デモによって、アメリカ大使館の52人の職員が人質に取られるという事件が起こりました。その際に裏口から6人の職員がカナダ大使館に逃げこんだのですが、それが見つかると公開死刑になってしまうという苦境。そこでCIAは「アルゴ」という架空のSF映画をでっち上げ、そのロケハンだと言ってテヘランに潜入し6人を救出する作戦を企てます。

【感想】ネタバレします

一見無謀そうな問題解決方法が、予想以上に効果的な結果を生む事があるのだなと思いました。またこの映画を観る限りでは、組織化した社会では何か問題が発生した時に、無難でリスクが少なそうな解決方法を選択しがちなのかなと思います。例えば、自転車を使って救出する作戦を提案する者が現れる事などです。上手くいくとは思えないが、仮に失敗したとしても言い訳がしやすいと捉える事も出来ます。

 

アルゴというニセSF映画をでっち上げる作戦を提案したトニー・メンデス(ベン・アフレック)は、人質救出にかけてはその道のプロ。しかしこのぶっとんだ提案に、反対者も現れてきます。やはり人質救出という真面目で深刻な問題に対して、娯楽性の高い映画が関わる事が、不謹慎に思われるのではないかという人々の恐れの様なものを感じ取りました。しかしこの映画の話でいえば、本来人質を無事救出する事こそが目的であって、それが上手くいかないのであれば意味がないと思います。

 

冒頭イランでのダークなシーンの印象から、思っても見なかった方向にストーリーが進んでいく流れが意外で良かったです。ニセ映画の為にわざわざ事務所を作り(これが後々で重要になってきます)、脚本を用意し、役者が本読みをしたりパンフレットを用意する。この様な虚構のプロジェクトが、絶望的状況を救う可能性もあるのだと思うと勇気が出て来ました。

 

 またテヘランの町中を偽りのロケ車で通過する時の、車に張り付いて来るイランの群集の描写は素晴らしいです。このあたりから派手なアクションシーンはほとんどないものの、スリリングな展開が続きます。更にストーリーの終盤に向かう下りでは、空港でのいちいち上手くいかないやり取りにヒヤヒヤさせられます。確かに実話よりは過剰な表現なのかも知れませんが、エンターテイメント性も高く充分に楽しむ事が出来ました。まだ観ていない方にはおすすめです。

退廃的な近未来を描いたディストピアSF/THX-1138

THX-1138

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原題:THX 1138/上映時間:86分/日本では劇場未公開

ルーカスのダークサイドを観た気分。観終わった後いや~な気持ちになりました。が同時に、もっとたくさんのディストピアものが観たいという欲求にかられ、一時的に『退廃的な近未来映画中毒』の状態に陥りました。だいたい丸坊主の人達があんなにたくさん出てきたら、それだけで怖いです。

 

【あらすじ】ネタバレしています。

舞台は25世紀・・・という中途半端過ぎて全く想像がつかない近未来。人々は名前ではなく番号で呼ばれるようになっていました。いやーな感じです。地下のシェルターの中で延々とコンピューターに支配されながら働き、生活感のないとても清潔そうな個室でおとなしく生活しています。更に人類が逆切れしたり喜怒哀楽が激しくならない為に、精神抑制剤を投与されています。しかし、投与された薬を飲まないでみよう!と決意実行した人物が現れてたおかげで・・・。

 【感想】ネタバレ全開しています

数年前に自宅のケーブルテレビにて、まったりと鑑賞。地下シェルターの職場のシステムや、同じ格好をして無表情に歩く人々の通勤風景や、その背景の都市デザインがあまりにも秀逸で驚きました。しかもルーカスのデビュー作が、こんなに暗い作品だなんて・・・。スペースオペラでありながら意外とエグイとこある、スターウォーズのいくつかのシーンを思い出します。

 

ざっくりとした感想。似た様な作品がどんなに新しい形で現れようとも、これを超える程インパクトのあるものは、なかなか出てこなさそうな気がします。全体的に「いやー、でも大好き♡」「観てどんより、でも何度でも観たい」という部類の作品です。

 

 この映画はジョージ・ルーカスが学生時代に撮った作品「電子迷宮/THX 1138 4EB」を、フランシス・F・コッポラが長編映画化してみない?とルーカスに持ちかけた事で出来上がったと言われています。

 

本作をまだご覧になっていない方は、注意です!ここから先は特にネタバレ全開になります。

 

何をやってるんだろう・・・。不気味な地下の職場で、まるでロボットの様に扱われている人類・・・。コンピューターよ、人類に何て事をしてくれるんだ!と言いたくなります。しかし人々はとてもおとなしいのです。全員同じ髪形(スキンヘッド)&同じ服装をさせられています。けれども人類は、もはやそれに何か疑問を持っている風でもなく、大勢で通勤している風景にはゾッとします。一人一人の個性がなく、感情も精神抑圧剤を投与されているせいか無表情。その上シュールなホログラムの神は、奇妙な印象でこれまでに観た事がない世界観。結果登場人物があまりにも今の時代の人とかけ離れている様に思え、感情移入しにくかったです。

 

あと、本作を楽しむ上での重要なポイントは、融通の利かないロボット警察の動きを観察する事でしょうか。逃げるロバート・デュバルを追うシーンでも、あと少しの所なのにコストオーバーすると言う理由で引き返してしまうなど、人であれば新人の刑事でもしないであろう事をします(笑)。

 

恐るべし若きルーカスのデビュー作。作品全体を通して感じるどんよりしたムードは否めませんが、しかしそれがディストピア映画の醍醐味でもありますね。

 

もっと早くに観るべきだった!来るべき世界

来るべき世界

来るべき世界 [DVD]

原題:Things To Come/上映時間:93分/製作年:1936年

 1940年からおよそ100年間のエブリタウン(架空の都市)の移り変わりを描いた近未来SFの傑作です。

【あらすじ】

時は1940年のクリスマス、エブリタウンで戦争が勃発する所から物語は始まります。その後約20年間続いた戦争により都市は退廃し、彷徨病という疫病が町を悩ませます。更に悪い事に独裁者が現れ、好き放題にされていました。すっかり退化してしまい飛行機を飛ばす事も出来ない状態になってしまったエブリタウンに、1人の男が現れます・・・。

 

【感想】ネタバレします

1、2年前にケーブルテレビにて鑑賞。大して期待せず鑑賞した分、驚きの連続でした。1936年と随分昔の映画なのに、まったく古さを感じなかったです。この映画の存在をもっと早く知っておきたかったと後悔・・・。

 

『来るべき世界』はSFの父であるW・G・ウェルズの小説を映画化したもので、ウェルズ自身もこの映画の脚本を手掛けています。モノクロ映像の白っぽい部分が、妙に近代的な印象として心に残ります。

 

物語は1940年のクリスマス、エブリタウンを舞台に始まります。エブリタウンでは、どうやら今にも戦争が始まりそうなのです。そしてあっけなく、戦争が勃発。華やかで楽しげだった古き良きエブリタウンの街が、次々と破壊されていく様には心が痛みます。

 

がしかしその後のストーリー展開と、エブリタウンの変容ぶりには唖然。エブリタウンでのおよそ100年間を3つのパートに分けると、「最初の古き良きエブリタウン期」「疫病が流行ってどうしようもない期」「科学技術により偉大な進化を遂げた!でもなんか不気味期」といった感じでしょう。そして疫病のパートから次の展開に到るまでのかくかくしかじかには唸ります。人物描写もシュールだと思いました。更にクライマックスでは地下に創られた近未来都市の描写をこれでもか、これでもかと魅せ付けて来る感じで飽きさせません。古いものを観ているのにフレッシュ!的な感覚です。

いきすぎた科学的な進歩を否定しつつも、でもそれを安易には止める事が出来ない悲しい人間の性を表している様でもありました。

 

 

随分昔に観た映画も、昨日見た映画も時間軸とは関係なく書き綴る事をお許しください・・・。

はじめまして。アナログちゃんと申します。今頃になってなぜか映画ブログを始めます・・・(笑)。妙なタイミングで初めてしまうのが恥ずかしいので、こっそりと書いていきます。当然10代のころ観た映画も、最近劇場公開されたものも、ごちゃ混ぜに書いて行く方式を取らざるを得ませんが、ご了承ください。

 

自宅のテレビで鑑賞した映画から映画館で観たものまで新旧作問わず、ランダムに取り上げていく予定です。だいたい、いつもネタバレします。