退廃的な近未来を描いたディストピアSF/THX-1138
THX-1138
原題:THX 1138/上映時間:86分/日本では劇場未公開
- 監督:ジョージ・ルーカス
- 脚本:ジョージ・ルーカス、ウォルター・マーチ
- 出演:ロバート・デュヴァル、マギー・マコーミー、ドナルド・プレザンス他
ルーカスのダークサイドを観た気分。観終わった後いや~な気持ちになりました。が同時に、もっとたくさんのディストピアものが観たいという欲求にかられ、一時的に『退廃的な近未来映画中毒』の状態に陥りました。だいたい丸坊主の人達があんなにたくさん出てきたら、それだけで怖いです。
【あらすじ】ネタバレしています。
舞台は25世紀・・・という中途半端過ぎて全く想像がつかない近未来。人々は名前ではなく番号で呼ばれるようになっていました。いやーな感じです。地下のシェルターの中で延々とコンピューターに支配されながら働き、生活感のないとても清潔そうな個室でおとなしく生活しています。更に人類が逆切れしたり喜怒哀楽が激しくならない為に、精神抑制剤を投与されています。しかし、投与された薬を飲まないでみよう!と決意実行した人物が現れてたおかげで・・・。
【感想】ネタバレ全開しています
数年前に自宅のケーブルテレビにて、まったりと鑑賞。地下シェルターの職場のシステムや、同じ格好をして無表情に歩く人々の通勤風景や、その背景の都市デザインがあまりにも秀逸で驚きました。しかもルーカスのデビュー作が、こんなに暗い作品だなんて・・・。スペースオペラでありながら意外とエグイとこある、スターウォーズのいくつかのシーンを思い出します。
ざっくりとした感想。似た様な作品がどんなに新しい形で現れようとも、これを超える程インパクトのあるものは、なかなか出てこなさそうな気がします。全体的に「いやー、でも大好き♡」「観てどんより、でも何度でも観たい」という部類の作品です。
この映画はジョージ・ルーカスが学生時代に撮った作品「電子迷宮/THX 1138 4EB」を、フランシス・F・コッポラが長編映画化してみない?とルーカスに持ちかけた事で出来上がったと言われています。
本作をまだご覧になっていない方は、注意です!ここから先は特にネタバレ全開になります。
何をやってるんだろう・・・。不気味な地下の職場で、まるでロボットの様に扱われている人類・・・。コンピューターよ、人類に何て事をしてくれるんだ!と言いたくなります。しかし人々はとてもおとなしいのです。全員同じ髪形(スキンヘッド)&同じ服装をさせられています。けれども人類は、もはやそれに何か疑問を持っている風でもなく、大勢で通勤している風景にはゾッとします。一人一人の個性がなく、感情も精神抑圧剤を投与されているせいか無表情。その上シュールなホログラムの神は、奇妙な印象でこれまでに観た事がない世界観。結果登場人物があまりにも今の時代の人とかけ離れている様に思え、感情移入しにくかったです。
あと、本作を楽しむ上での重要なポイントは、融通の利かないロボット警察の動きを観察する事でしょうか。逃げるロバート・デュバルを追うシーンでも、あと少しの所なのにコストオーバーすると言う理由で引き返してしまうなど、人であれば新人の刑事でもしないであろう事をします(笑)。
恐るべし若きルーカスのデビュー作。作品全体を通して感じるどんよりしたムードは否めませんが、しかしそれがディストピア映画の醍醐味でもありますね。