トータル・リコール(2012)【ネタバレあり】
トータル・リコール(2012)
原題:Total Recall/上映時間:118分/製作年:2012年
- 監督:レン・ワイズマン
- 原作:フィリップ・K・ディック
- 出演:コリン・ファレル、ケイト・ベッキンセール、ジェシカ・ビール、ブライアン・クランストン、ボキーム・ウッドバイン、ビル・ナイ他
【あらすじ】ネタバレあり
舞台は戦争が終わった後の退廃した近未来。貧富の差は激しくなり、二極化が進んでいました。裕福な人々の住むブリテン連邦と、貧困層が住むコロニーとは地球の丁度真裏側に位置しており、それ以外の場所に住む事は、ほぼ不可能に等しい状態でした。ブリテン連邦とコロニーは、巨大な高速エレベーターで結ばれています。コロニーに住む貧しい人々は、毎日このエレベーターに乗り込んでは、ブリテン連邦での仕事にありつくのでした。ダグラス・クエイドもそんな中の一人。日々悪夢にうなされ眠れないダグラスは、巷で人気のリコール社の人工記憶を試してみる事に。しかし予測できなかった事態が発生。突如警察が現れて、次々と彼に襲いかかります。
【感想】完全ネタバレ
1990年のバーホーベン版は、高校時代に劇場で鑑賞しました。あまりの映像表現の特異さに、何と言ったら良いか分からなかった記憶があります。バーホーベン版はグロ描写もすごいですが、視覚効果も大変優れていて遊び心のあるシーンがたくさん出て来ます。
そのリメイク版である『トータル・リコール(2012)』は、旧作と比較するとやや物足りない気もしますが、私個人としては結構楽しめました。まるでブレードランナーの様なディストピア表現や、地球の両極端をつなぐ巨大エレベーターなどアッと驚く映像表現がてんこもり。これでもか、これでもかとド派手なアクションを見せてくれるので、全く退屈する事がありませんでした。
原作はフィリップ・K・ディックのSF小説である「追憶売ります」。監督は『ダイ・ハード4.0』のレン・ワイズマン。『ダイ・ハード4.0』はおやっ?と思いましたが、本作は期待以上でしたよ。
貧困層の人々は、コロニーと言う所に住んでいるのですが、この人達の住んでいる家が、何と言うか廃墟を改造した妙に薄暗い所に住んでいて『ブレードランナー』(フィリップ・K・ディック原作)を思い出しました。また退廃した薄暗い都市なのに、ところどころが妙に近代的みたいな世界観を鑑賞出来るのも、この類の映画を観る魅力の1つです。1990年版ではダグが火星に住んでいたという設定ですが、2012年版に火星は出てきません。その代りブリテン連邦とコロニーを行き来する風な設定になっています。
個人的に好きなシーンは、初めて主人公ダグラス・クエイドがリコール社を訪ねてから、スパイになる夢を注文するシーン。憧れのスパイの夢を見せてもらう筈が実は本当にスパイだった・・・(笑)ゆえにめっちゃ強いです。そのめっちゃ強い自分にビビるダグラス。動揺してはいるものの、アクションはキレキレで超カッコイイです。
またフォールという、地球の真裏へ行けるエレベーターが凄い!乗る時には遊園地の絶叫マシーンの被るベルトみたいなのが自動で降りてきて、なんか大袈裟で良いなあと思いました。またこの巨大エレベーターに、シンセティックというロボット警官(トルーパー似)が大量に乗り込むシーン。こういうのは、だから何なのと言われてしまえばそれまでですが、単純にワクワクします。
主人公ダグは結婚していて、一見優しそうな奥さんと貧しいながらに幸せな生活をしています。しかしこれが偽装結婚だった。トータル・リコール社から訳が分からないまま安心出来る自宅に逃げ込んだ筈が、逆に嫁に殺されそうになる展開ですが、ダグ×ローリーのすざましい争いは結構迫力があります。実は鬼嫁だったローリー(ケイト・ベッキンセール)は、「私があんたみたいなのと結婚する訳ないじゃない!」みたいな事を言って、結構カチンときました。
この鬼嫁が後半は特に凄くてホラー映画かと思う程。ダグが二重スパイだからとか何とか言う以前に、男を取られた女の嫉妬にしか見えません。しつこくて怖いです。『トータル・リコール(2012)』は、ケイト・ベッキンセールの鬼嫁ぶりを楽しむ映画と言っても過言ではないでしょう。
それにしても本作を鑑賞する上での最も関心があったのは、やはりラスト、椅子に座っているダグが目覚めるシーンの事。このシーンが存在する事で、1990年のバーホーベン版よりも、何処までが夢で何処までが現実なのか?を考えずにはいられなくなりました。「あそこで一度目が覚めてローリーが生きていると言う事はどういう事なのか?」「諜報員になった夢を見ている間に、フォールが破壊されたって事?」(笑)など様々な疑問が生じてきてスッキリしないです。
そういう意味ではバーホーベンのトータルリコールのオチの解釈の方が、分かりやすかったです。またその事を深く考える映画ではないなとも思いました。ただ2012年版に関してはその事がどうも引っかかったので、ディレクターズカット版も観てみる事にしました。
劇場公開版とディレクターズカット版の相違点
【ディレクターズカット版】を観れば何かヒントが得られるのではないかと思い鑑賞してみましたが、残念ながらラストシーンの謎は解けないまま。私はリコール社の看板に何か違いがあるのではないか?とにらんでいたのですが、私が確認できる限りでは残念ながら全て【REKALL】で統一されていました。ただディレクターズカット版の方には最後鬼嫁を倒し、メリーナとダグ(ハウザー)が会話するシーンで、タトゥが消えている(リコール社で右腕に入れられた)という描写がありました。この事から夢だったとも考えられますが、一体どこからどこまでが?と問われると???です。
【これ以外の相違点】
・冒頭部分で6週間前に起こったテロのニュースがチラッと映る。容疑者はカール・ハウザー
劇場版→容疑者の顔が画面に映らない。
ディレクターズカット版→ハウザーの顔が映る。
・手に埋め込まれた携帯にハモンドから電話がかかってくるシーン。(ガラスに手を押しつけて話すシーン)
劇場版→ダグが「俺は誰なのか?」と聞いても答えは無し。
ディレクターズカット版→「俺は誰なのか?」と尋ねると「ヘンリー」という答えが返ってくる。
・マサイアスが殺されるシーン
劇場版→メリーナはマサイアスの部下という設定表現。
ディレクターズカット版→メリーナはマサイアスの娘という設定表現。
などの違いがありました。他にも見逃している部分があるかも知れませんが、ざっと見た限りではこんな感じです。印象としては、そんなに変わらないです。でもラストのタトゥだけはやはり気になりますね。『ルビンの壺』の様に、見方によって顔に見えたり、花瓶に見えたりするという解釈の仕方もあるなと思いました。
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