プレステージ【映画感想】完全ネタバレ
プレステージ
原題:The Prestige/上映時間:130分/製作年:2006年
- 監督:クリストファー・ノーラン
- 原作:クリストファー・プリースト
- 脚本:クリストファー・ノーラン、ジョナサン・ノーラン
- 出演:ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、スカーレット・ヨハンソン、レベッカ・ホール、デヴィッド・ボウイ他
【あらすじ】一部ネタバレ
舞台は19世紀末のロンドン。アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)という若き手品師達がいました。2人はマジックの助手をやりながら、互いの腕を競い合っていました。そんなある日、水槽脱出マジックのミスでアンジャーの妻が溺死します。紐を結んだのはボーデンでした。この悲劇的な出来事を境目に、アンジャーはボーデンを憎む様に。アンジャーはボーデンのマジックショーを邪魔したりして、徹底的に嫌がらせをし過去の恨みを晴らそうとします。
https://www.youtube.com/watch?v=WhAXMC6ZiU4
【感想】完全ネタバレ
マジックを題材にした映画作品になかなか興味が持てなかったのですが、想像していたよりもはるかに面白く鑑賞する事が出来ました。マジシャンのトリックなども明かされるので、マジックに興味がある方にはお薦めです。私は子供の頃からテレビなどでマジックショーを見ると、何故か物悲しくなったりしていたのですが、この作品を観る事でその理由が解った気がしました。しかし後で冷静に考えると19世紀が舞台ですから、現代とはトリックなど随分やり方も違っているのかも知れないです。
この作品は1度観終わった後、またすぐに見返したくなる映画です。この手のマジック・超常現象ものと同様に、最後に大きなどんでん返しがあります。『グランド・イリュージョン』の様な高揚感はないですが、表面的には拍手喝さい浴びていながら、裏では涙ぐましい努力や隠し事をしているマジシャン達の姿が描かれています。
本作を未見の方は、ここから先は鑑賞後お読みになる事をお薦めします。
ここから先完全ネタバレ
大どんでん返しのボーデンが二人いる件ですが(いきなり結論)、この二人は性格が全く違うので、コピーじゃなく双子ではないかと思います。サラを愛していたボーデンは優しく、マジックのトリックに固執したボーデン(ファロン)はアンジャーの助手であったオリヴィアを愛していました。もしもコピーなら、こんなに性格が違うって事はあり得無いのでは?と解釈したのです。ただコピーであっても育った環境によって、性格が変わる事はあり得ますね。謎です。
私は一度目の鑑賞の時からボーデンが二人いるのではないかと、内心密かに疑っていました。それはボーデンの奥さんサラ(レベッカ・ホール)が言う「今日はウソ」って言うセリフからです。それが妙に気になり「まさか二人いるのでは?まさかね・・」って思って鑑賞していました。しかしこれが本当に二人いたとは。マジックの最中だけでなく、人生に於いて、周囲の全ての人をだまし続けなければならない苦悩は半端ないと思います。
しかしそれよりも私が驚いたのは、アンジャーがテスラの装置でマジックの度に毎回自身のクローンを作っては、自分は死んでいた事。恐ろしい。人気を維持する為にここまでやるとは。いくら科学の技術があったって、並大抵の精神力じゃこれは出来ませんよ。
この二人、本当にどうかしてる(正確に言えば3人)。 よってアンジャーにもボーデンにも、感情移入出来ませんでした。
不気味だけど印象深くて好きなシーンは、天才科学者ニコラ・テスラ(デヴィッド・ボウイ)の転送装置が複製装置だと分かった瞬間。庭にシルクハットが大量に落ちているシーンは絵的にかなり不気味です。ミステリーにSFっぽい要素が加わり、本来なら興ざめする所ですが、他のシーンとイマイチ馴染まないアンバランスな感じが良いと思いました。この唐突な感じは、何処かリンチっぽいです。テスラの屋敷の室内も、19世紀の雰囲気が感じられません(笑)。
とは言えやはり本作最大の謎は、本当にボーデンは双子なのか?テスラの装置を使ったのではないかと言う事。多くの人がボーデン双子説とボーデンコピー説を唱え意見が分かれているみたいですが、考えるとややこしくなったので考えるのを止めました(笑)。一度原作を読んでみたいと思います。
映画感想【バベル】ネタバレあり
バベル
原題:BABEL/上映時間:143分/製作年:2006年
- 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
- 脚本:ギジェルモ・アリアガ
- 音楽:グスターボ・サンタオラヤ
- 出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、アドリアナ・バラッザ、役所広司、菊池凜子、他
【あらすじ】一部ネタバレ
モッロコ住んでいる山羊飼いのアブドゥラは、知人から銃を買った。アブドゥラは子供達に銃の使い方を教える。山羊に近づくジャッカルを追い払う為だ。息子であるアフメットとユセフは互いに銃の腕を競い合うが、弟の方が銃の腕ははるかに上だった。兄が弟に遠くを走っている観光バスを指さして、「あのバス撃てるか?」と言う。まさか当たるとは思っていなかったが、これが見事に命中してしまう。一瞬ポカンとする兄弟2人。しかしこれが悲劇の始まりだった・・・。
【感想】ネタバレあり
本作『バベル』はモロッコ・アメリカ・日本・メキシコを舞台に、様々な人々にスポットライトがあたる群像劇。意外な所からトラブルが発生し、そこか!と観ているこちらまで、意表をつかれたような気分になる映画です。内容的にはダークで暗い気分にさせられますが、映画としてはとても面白い。でも娯楽作品という感じではないですね。
また本作は第79回アカデミー賞で、作曲賞を受賞しています。
監督は『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント: 蘇えりし者』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、日本からは役所広司、菊池凜子らが出演しています。
【モロッコ 】旅行中のリチャードとスーザン
夫婦であるリチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)は3児を失くしてしまった悲しみから、互いの仲を修復させるべくモロッコへ旅行に来ています。そんな時何故モロッコへ?と思いましたがそれを聞くのは野暮というものでしょう。アメリカへ残してきた二人の子供は、ベビーシッターに任せています。
【モロッコ】アブドゥラとその子供達
山羊を追い払う為の銃で、うっかり観光バスを射撃してしまった兄弟は暗い気持ちで帰宅します。ところが街に買い付けに行った父親は、いつもより帰宅が遅い。ようやく帰ってきた父親アブドゥラは、「どうやらテロリストの仕業で、観光バスに乗っているアメリカ人が撃たれた」から遅くなったと言います。それを聞いて更に暗い気持ちになる兄弟。
【日本】チエコとヤスジロー
親子二人暮らしで、高級そうなマンションに住んでいるチエコとヤスジロー。母親の自殺以来寂しい毎日を強いられるチエコ。チエコは聾亜である疎外感を感じながらも、めげる事無く、街へ出掛けていきます。
【アメリカ】アメリアとリチャードの子供達
代わりのベビーシッターが見つからなかったという内容の電話をリチャードから受け、困惑するアメリア。その日は息子の結婚式だったので、幼い子供二人を連れてメキシコへ向かう。
この様な具合に場面が次々と切り替わり、ストーリーが展開していきます。
繋がっていない様で繋がっている、モロッコ、アメリカ、日本、メキシコのそれぞれの物語。ショックだったのは、特に途中まで順調そうに見えたメキシコのベビーシッターアメリアのストーリーが、一転二転と転がる様に悪化していく事です。こんな事ってあるのか!と砂漠の恐ろしさを知りました。
バベルと言う言葉を調べてみると【神の門】や【混乱】などの意味がある様です。またあの【バベルの塔】の逸話を連想させられます。
だから要はディスコミュニケーションの話かなと思った訳です。日本用に作られたポスターのキャッチコピーも「届け、心」でした。
確かにこの作品を観ていると、言葉が伝わる者同士のコミュニケーションが取れていないです。異国人同士で言葉が伝わらなくてもどかしいシーンもいくつかありますが、果たして共通言語さえあればこの問題は解決するのかなと思いました。
例えば登場人物達は、毎日顔を合わせ共に生活をしている人とのコミュニケーションが取れていない様に見えます。モロッコの山羊飼いの兄弟は常に行動を共にしながら、何処かいがみ合っている雰囲気。またリチャードとスーザンの旅行は、リチャードが一方的に計画した様に見えます(冒頭の二人の会話がギクシャクした感じ)。また日本でのヤスジローとチエコの日常的なやりとりも、何処かギスギスしています。更にチエコが本当に大切な事をメモで伝えたのは、手話が通じない警察官の男。優しい彼はチエコの気持ちを理解していたのだと思いました。
映画の終盤あたりでハッとしたのは、スーザンがようやく病院に入ることが出来た後に、ブラピがベビーシッターであるアメリアに電話を掛けていた事。てっきり同じ時間軸で場面が切り替わっていたと思い込んでいたのですが、そうではなかったのですね。同じシーンを別の角度から時間差で見せられる事によって、一瞬動揺しました。こういうクラクラする感覚、堪らないです。
二度か三度字幕版で鑑賞したのですが、出来れば日本語吹き替え版でも観てみたいです。新たな発見がありそうなので。感想を一言で言ってしまえば「良く分からないけど凄い映画」(笑)。でも一度見たら絶対に忘れられない作品だと思いました。
映画感想【花様年華】ネタバレあり/中年男女の純愛物語
花様年華
原題:IN THE MOOD FOR LOVE/上映時間:98分/製作年:2000年
【監督・製作・脚本】ウォン・カーウァイ
【撮影】クリストファー・ドイル、リー・ピンビン
【あらすじ】ネタバレあり
同じ日に同じアパートの隣り合わせに引っ越してきたチャウ(トニー・レオン)とチャン夫人(マギー・チャン)。チャウとチャンには、それぞれ配偶者がいます。チャン夫人の夫はどうやら仕事が出来るらしく、海外出張(日本)に行ったっきり・・・。同じく夜勤続きでなかなか帰ってこないチャウの奥さん。似た様な境遇の中、静かに耐え続けるチャウとチャン。しかし、やがて二人はある事に気付きます。
【感想】完全ネタバレ
私が初めてウォン・カーワイの作品を観たのは『恋する惑星』です。タランティーノの『パルプ・フィクション』を知った時と同じぐらいの衝撃でした。警官633(トニー・レオン)のキャラが立っていて、何度も観返しました。これは何か凄いものを観たと。以後ウォン・カーワァイの作品とトニー・レオンが出ているものは貪るように鑑賞してきました。
本作『花様年華』は2001年頃、シネテリエ天神(2009年に閉館)にて鑑賞。公開初日でもなく、レイトショーで観たのですが結構お客さんが入っていたと記憶しています。一度観ただけでは理解できない部分も多く難解な映画ではありましたが、鑑賞する回数を重ねるごとに、また年齢を重ねるごとにこの作品が面白く感じる様になりました。
花様年華は、ウォン・カーワイの1960年代シリーズ3部作(欲望の翼・花様年華・2046)の2作目として認識されています。1960年代の香港を舞台にした本作は、日本製の電子ジャーが珍しいなど、当時の香港の時代背景もよく伝わってきます。
仕事が忙しくてなかなか帰ってこない妻、夫を互いに待ちわびるチャウとチャン。チャウ役を演じるのは「恋する惑星」や「ブエノスアイレス」のトニー・レオン。チャン役を演じるのは「欲望の翼」で、レスリー・チャンに翻弄される女役を見事に演じたマギー・チャンです。尚トニー・レオンはこの作品で、カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞しました。
二人は当然同じアパートで間借りをしている訳ですから(食堂は共有らしい)、夕食時などにちょっとしたコミュニケーションが発生する訳です。今の様な集合住宅とはちょっと違います。「ははーん、この二人が不倫関係に陥っていく話ね・・・」と軽く想像したのですが、この映画は少し違いました。
ここからは完全にネタバレします
チャン(マギー・チャン)は夫が不在の時、近所の屋台にスープを買いに行くのですが、その時にチャウ(トニー・レオン)とすれ違いほんの少し会話をします。確かに恋愛ってこんな感じですね。最初の内は、ほんのわずかな時間を共有する所から始まる感じがリアルです。
そしてある日レストランで、食事をするチャウとチャン。 チャウとチャンは薄々気付いていた事が、互いの会話から正しいと証明され愕然とします。はっきりと言ってしまえば、二人の配偶者同士が不倫していたと言う事!なんとー!この事をとても上品な感じで会話をして探り合っているのですが(汗)、腹の奥底はきっとそうではないでしょう。
チャウは物書きを目指していて、その手伝いをチャンに頼むようになっていきます。二人で共同執筆をし、次第に書いたものが売れていきます。自分の書斎として高級な部屋を借りる事が出来る様になったチャウ(トニー・レオン)。その部屋のルームナンバーは2046です。シブい。後のウォン・カーウァイ作品2046(日本からはキムタクも出演)のタイトルの部屋番号を持ってくるなんて、サブカル的なセンスも良いですね。
この映画にはチャン(マギー・チャン)が夫と別れる時の会話の練習を、チャウ(トニー・レオン)とするという印象的なシーンが度々出て来ます。この様なシーンが突如に現れる為、話の前後との繋がりが見出せず一瞬混乱します。そして後半、あっと思わすシーンが出て来ます。私はこの作品の中でこのシーンが一番好きです。
本作を鑑賞して疑問に思った事は多数ありますが、特に気になったのは終盤あたりに出て来るチャンの子供は誰の子か?です。これにはチャウの子だと思うという意見と、夫との間に生まれた子だという二つの意見がある様です。私としてはチャウの子だと思いたい所です。が実際は何とも言えません。二人が密に会っていたのが1962年なので、その頃出来た子だと1966年には4、5歳ぐらいになっています。二人でタクシーに乗っていた夜が怪しいですが、こういう部分をはっきりと描かない所が大人だなと思いました。ただ結局どちらの子であったとしても、この二人の純粋な気持ちは壊せないでしょう。
そして最後に出て来るのはアンコール・ワット!トニー・レオンは穴に秘密を打ち明けるのですが、このラストはかなりぶっ飛んでると思いました。さすがはウォン・カーワイ、芸術の人だと思います。
アメリカン・ハッスル【映画感想】ネタバレあり
アメリカン・ハッスル
原題:American Hustle/上映時間:138分/製作年:2013年
監督:デビッド・O・ラッセル
出演:クリスチャン・ベール、ブラッドリー・クーパー、ジェレミー・レナー、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ(クレジットなし)他
【あらすじ】
詐欺師のアーヴィング・ローゼンフェルド(クリスチャン・ベイル)が絵画の詐欺をしようとしていたところ、FBI捜査官リッチー・ディマーソ(ブラッドリー・クーパー)が目をつける。アーヴィングを逮捕したリッチーは、彼に司法取引を持ちかける。それは、カジノに絡む政治家たちの汚職を暴く巧妙なおとり捜査だった。やがてそれは、アメリカを揺るがす一大スキャンダル、アブスキャム事件へと発展していく……。
【感想】完全ネタバレ
FBIが市長の汚職を暴くために、詐欺師と手を組むってちょっと無理じゃない?って思いました。でもこれが途中まで、上手くいきそうなのが面白いです。しかもこれが1970年代にアメリカで実際にあった【アブスキャム事件】をベースに製作されたフィクションだそうで、驚きです。市長が思ったよりもいい人で(電子レンジをくれたり)、やや困惑する アーヴィング(クリスチャン・ベール)。ケイパーものや犯罪映画などを観ていてよく思うのは、人情や友情、恋愛感情などだけはいつも誤算なんですね。
またアーヴィングの奥さんの役でジェニファー・ローレンスが出ているのですが、この人は何を考えているか全く分からなくて良いです(笑)。周囲が互いに騙しあい探り合いをしている中で、彼女だけは感情的ですが怖いもんなしという感じです。こんな風に生きることが出来たらいいですね(笑)。
観ていてちょっと驚いたのは、ロバート・デ・ニーロがカメオ出演していた事。マフィアのボス役でほんのワンシーンしか出てこないのですが、デニーロが出て来るだけであのコワーいムードが出来あがり、観ているこちらも気が気じゃなかったです。メキシコ人なのにアラブ人だとか何とか言って誤魔化してシークを紹介するのですが、それをあっさりデ・ニーロに見抜かれる。アーヴィング(クリスチャン・ベール)もまさかその展開は予測していなかったという感じです。デニーロはいきなりアラブ語で、シークに話しかけるのです(汗)。チョー怖い。イングロリアス・バスターズ的な怖さもありました。
ばれたなと思ったのか、一同どんよりムード。FBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパー)は、ビビり上がったのか、パニクって上司にも大声でキレる始末。この上司は本当に偉いと思います。偉そうな事は言わず、大きな事も言わず、身の丈に合った仕事をし部下が失敗した時にもギャーギャー言わない。FBI捜査官のリッチーはアーヴィングにまんまと一杯食わされたわけですが、この上司はこの様な事を予測していたかの様に見えました。
最初の内はアーヴィングとシドニーが幸せそうなカップルに見えるのですが、次第に互いについている嘘がぽろぽろ出てきていかがなものか?と思いました。更にラストは大どんでん返しで、観ていたこちらもまんまと騙されていたという感じです。
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バーホーベン版トータル・リコール(1990)映画感想
トータル・リコール(1990年版)
原題:Total Recall/上映時間:113分/製作年:1990年
- 監督:ポール・バーホーベン
- 原作:フィリップ・K・ディック
- 脚本:ロナルド・シャセット、ダン・オバノン、ゲイリー・ゴールドマン
- 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、レイチェル・ティコティン、シャロン・ストーン、マイケル・アイアンサイド他
【あらすじ】
西暦2084年、地球の植民地となっていた火星では、エネルギー鉱山の採掘を仕切るコーヘイゲンとそれに対抗する反乱分子の小競り合いが続いていた。一方、地球に暮らす肉体労働者のダニエル・クエイドは、毎晩行ったこともない火星の夢を見てうなされていた。夢が気になるクエイドは「火星旅行の記憶を売る」というリコール社のサービスを受けることに。しかし、それをきっかけに今の自分の記憶が植えつけられた偽物であり、本当の自分はコーヘイゲンの片腕の諜報員ハウザーだったと知る。クエイドは真相を知るため火星に旅立つが、真実を隠匿するコーヘイゲンに命を狙われ……。
【感想】完全ネタバレ
高校生の頃、劇場にて鑑賞。ポール・バーホーベンの作品を観たのはおそらくこれが初めてです。当時これを観た時は映像表現がグロくてとても怖かったと記憶しています。脳内のチップを鼻の穴から出すシーンなど、発想がキョーレツ過ぎてちゃんと観る事が出来なかった。随分に変わった作風の映画だなとも思いました。そんなトラウマ映画ですが時が経って観返してみると、思っていた程はグロくない。タランティーノ作品などエグイ描写のものや、CGを使ったリアルなグロ描写がその後たくさん出てきたから、感覚が麻痺してきたのかも知れません。
でもやっぱりオリジナル版は、変わった方向への創意工夫が凄くて面白い。シュワちゃんが取り出した脳内チップをネズミに食わせるシーンなどはバーホーベン版でないと、味わえない面白さがあります。またレジスタンスのボスの表現は、断然バーホーベンのオリジナル版の方がキョーレツですね・・・・。
原作はフィリップ・K・ディックの短編小説「追憶売ります」とSF作品ですが、何がどうなっているのか?とかこれはどういう事なのか?とか頭でいちいち考えずに楽しめる作品だと思います。SF映画なのですが、どちらかと言えばホラー映画を観ている感覚に近いです。
脚本はあのダン・オバノン。『ダーク・スター』をはじめ『エイリアン』『スペース・バンパイア』など多くの脚本を手掛けています。
今オリジナル版を観返してみると、2012年版のトータル・リコールは、随所にバーホーベン版を意識したカットがある事が分かって面白かったです。ダグラスとメリーナが同時にジャンプしてエレベーターに掴まるシーンなど超カッコイイと思ったのですが、オリジナル版に似たシーンがあったんですね。すっかり忘れてました(汗)。妻ローリーとの格闘シーンも迫力あります。
後は敵に追われたシュワちゃんが、地下鉄の窓ガラスを割って乗り込むまでのアクションシーンはものすごい迫力ですが、周囲の一般人を巻き込み過ぎですね(笑)。これ以外にもバック・トゥ・ザ・ヒューチャーのデロリアン的車のドアの開閉や、ロボットのタクシー運転手、地下鉄のセキュリティシステムの表現など何処となく手作り感があってとても好みの作品です。
余談
ポール・バーホーベン監督の新作『エル elle』 が8月25日から公開されますが、これはいろんな映画関係者が積極的にお薦めしているみたいです。
是非鑑賞してみたいですが、ショッキングなシーンが凄そうでこれを大スクリーンで観る勇気あるかなぁと思います(笑) 。
エスケープ・フロム・L.A.
エスケープ・フロム・L.A.
原題:Escape・from・L.A./上映時間:101分/製作年:1996年
【あらすじ】
舞台は2013年のロサンゼルス。2000年に起こった大地震の為、L.A.はアメリカ大陸から分離し、島と化していた。地震を予言した男は後に終身任期の大統領となった。このおかしな大統領のせいで自由の国アメリカの姿はもはやなく、飲酒・喫煙・女遊びなどが禁じられていた。更にこれらを守らない者は、無法者とみなされ市民権を失いL.A.の島に追放された。一度追放された者は、二度と大陸に戻ることが出来ない。
過去には大統領を救った事もある勇敢な男プリスケンは、この煙草も吸えない国アメリカに嫌気がさし、徐々に犯罪を犯す程になっていく。
彼は通称「スネーク」として名が通っており、有名人でもあった。そんなスネークが遂には捕まり、ロサンゼルスへ追放されそうな頃、ある事件が起こった。それは大統領らが宇宙研究所を視察した際に、その娘が機密扱いのある装置を盗んだ事から始まる。娘は国境を開放し、独裁的な政治を終わらせる事を父である大統領に要求。さもなければこの装置を使うと脅かす。それは指定した区域の電子機器などの文明を、すべて停止させる恐ろしいものだった。
そこで大統領らはスネークにその装置を取り戻す様に依頼。「俺には関係ない」とあっさり断るスネークだが、すでに体に新型ウィルスを打たれていて、解毒剤を打たなければ死ぬと脅される。スネークは結局仕方なしに任務を引き受ける羽目に。制限時間は10時間。ステルス・スーツ、銃、吹き矢など用意された物を装備して潜水艇に乗り込むスネーク。本部からの指令を全く無視して、潜水艇をやたらとぶっ飛ばし、LAにたどり着くのだが・・・・。
【感想】完全ネタバレです
本作は、ニューヨーク1997の続編というかリメイクです。
この映画は大好きで何度も観返しています。
まずオープニング・クレジットがサイコー。好みのセンスだし流れている曲もカッコイイです。
更に主人公スネークがシブくてお茶目。カート・ラッセルのはまり役だと思います。「案外背が低いんだな」と言われてむっとする表情、大好きです。アクションも超キレキレで男前なのに、なぜかクスッと笑ってしまう事が多い不思議なキャラです。スネークが如何に人気であるかは、数々の映画ファンの方の発言からも立証済みであり、私がここでぐだぐだと言う事もないですね。カートラッセルのスネイクものもっとたくさんあって良いと思います。大好きなシーンがたくさんあり過ぎて、未だに頭の中が整理できてません。
お気に入りのシーンその1
【潜水艇でLAへ向かうシーン】
いざ潜水艇に乗り込んだスネークは、指示を守らずスピード出し放題。「危険だ」と注意されても「死ぬのは俺だ」の一言で済ませる。結果潜水艇が妙な位置・角度で到着してしまい、あたふたするスネーク最高。帰りの潜水艇が海に流されてしまいます。
お気に入りのシーンその2
【ブシェミの登場】
えも言い難い雰囲気を醸し出しているを演じるのは、レザボアドッグスMrピンクなどでおなじみのスティーブ・ブシェミ。結構卑怯で悪い奴なのになぜか憎めない。
お気に入りのシーンその3
【ウォーキングマシーン】
ブシェミに騙されたスネークは、クエボ・ジョーンズの元へ連れて行かれる。ウォーキングマシーンに手首を括り付けられ、手身動きが取れないスネーク。そこで大統領の娘が盗んだ装置の実態を知る事になる。
クエボがテレビの生放送で大統領にメッセージを送った際に、画面の右上にスネークがウォーキングマシンで歩かされているのをマロイが発見。妙な通信手段であるが、彼がちゃんと生きている事が伝えられる。メッセージの内容はリンチバーグ(大統領の故郷でホワイトハウスがある場所)を標的にするというもの。皆がじっとしている画面の右端でスネークだけが揺れているのが印象的。
お気に入りのシーンその4
【バスケのシュートのシーン】
絶対に勝ち目のないルールを無理やり押し付けられても特にわめいたり、キレたりする訳でなく淡々とゴールを決めていくスネーク。クエボの野蛮さに、さすがの大統領の娘もひく。見事に全ゴールを決めて10点獲得した彼は、周囲にいた人々から「スネーク!コール」を浴びる。スネークサイコー!彼はさして勝ち誇った様でもなく、ただ時間を気にしてコートから去って行く。
お気に入りのシーンその5
【ハーシー(パム・グリア)らとパラグライダー】
そうでなくても見た目のインパクトが強いスネークやパム・グリアらが、コウモリの形をしたパラグライダーでクエボを攻めるシーンはかなりの迫力。ブシェミのへたくそな運転も良い。それにしてもクエボの車の上の人形は何とかならないものか?と思います。パムグリアのアクションが超カッコ良いです。
ヘリに乗り込む前に奪われたステルス・スーツを奪い返すスネーク・プリスケン最高!
お気に入りのシーンその6
【ホログラムで騙された仕返しをするスネーク】
冒頭の部分で大統領ら3人のホログラムに騙されたスネーク。彼らはガラス越しに隣の部屋にいた。全く人を馬鹿にした話だ。大統領は「この男で大丈夫か?」とマロイに聞く。
ロスから戻ったスネークは、大統領の一言であっさり銃撃されるが、びくともしない。取り返したホログラムで身を守るスネーク最高。彼女が「ホログラム!」と叫ぶシーンは痛快。
お気に入りのシーンその7
【スネークへのご褒美か?】
ラストシーン。たまたま落ちていた煙草を発見。何かに役立つだろうと言われたマッチが、ここで役に立つ。「人間に戻れたぜ」と言いながら、全文明が停止した地球上で悠々と一服するスネーク最高!
映画【レッド・ライト】ネタバレあり
レッド・ライト
原題:RED LIGHT/上映時間:113分/製作年:2012年
- 監督:ロドリゴ・コルテス
- 脚本:ロドリゴ・コルテス
- 出演:ロバート・デ・ニーロ、キリアン・マーフィー、シガニー・ウィーヴァー、トビー・ジョーンズ
【あらすじ】ネタバレあり
科学者のマーガレットとトムは、あらゆる超常現象を科学的に解き明かし、超能力や霊能力を自称するペテン師たちの正体を暴いてきた。そんなある日、伝説の超能力者サイモン・シルバーが30年の沈黙を破り、復活を遂げる。トムはそのニュースに飛びつき、シルバーを調査すべきと主張するが、マーガレットは“彼は危険すぎる”とトムに自制を求める。実は、彼女は若い頃にテレビ番組でシルバーと対決し完敗した苦い過去があったのだ。そんなマーガレットの忠告を無視して単独でシルバーへと近づいていくトムだったが…。
【感想】完全ネタバレ
予告がなんか面白そうだったので、鑑賞してみる事にしました。監督は『リミット』のロドリゴ・コルテス。「あの箱の中に閉じ込められて出れないヤツね!」と、ピンとくる方もいらっしゃるかと思います。
ロドリゴ・コルテス監督作品【リミット】の映画感想はこちら↓
地味な印象の映画ですが、ロバート・デ・ニーロやキリアン・マーフィー、シガニー・ウィーヴァー、トビー・ジョーンズなど結構豪華なキャストが出演しています。主演はキリアン・マーフィー。デニーロ演じるサイモン・シルバーのキャラが立ちすぎていて、キリアン・マーフィーがちょっと地味に見えるのが玉にキズですが。
『リミット』と比べると、あまりインパクトのない作品だったと思います。
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