アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

映画感想【花様年華】ネタバレあり/中年男女の純愛物語

花様年華

原題:IN THE MOOD FOR LOVE/上映時間:98分/製作年:2000年

花様年華 (字幕版)

【監督・製作・脚本】ウォン・カーウァイ

【撮影】クリストファー・ドイル、リー・ピンビン

【出演】トニー・レオンマギー・チャン、スー・ピンラン他

【あらすじ】ネタバレあり

同じ日に同じアパートの隣り合わせに引っ越してきたチャウ(トニー・レオン)とチャン夫人(マギー・チャン)。チャウとチャンには、それぞれ配偶者がいます。チャン夫人の夫はどうやら仕事が出来るらしく、海外出張(日本)に行ったっきり・・・。同じく夜勤続きでなかなか帰ってこないチャウの奥さん。似た様な境遇の中、静かに耐え続けるチャウとチャン。しかし、やがて二人はある事に気付きます。

【感想】完全ネタバレ

私が初めてウォン・カーワイの作品を観たのは『恋する惑星』です。タランティーノの『パルプ・フィクション』を知った時と同じぐらいの衝撃でした。警官633(トニー・レオン)のキャラが立っていて、何度も観返しました。これは何か凄いものを観たと。以後ウォン・カーワァイの作品とトニー・レオンが出ているものは貪るように鑑賞してきました。

 

本作『花様年華』は2001年頃、シネテリエ天神(2009年に閉館)にて鑑賞。公開初日でもなく、レイトショーで観たのですが結構お客さんが入っていたと記憶しています。一度観ただけでは理解できない部分も多く難解な映画ではありましたが、鑑賞する回数を重ねるごとに、また年齢を重ねるごとにこの作品が面白く感じる様になりました。

 

花様年華は、ウォン・カーワイの1960年代シリーズ3部作(欲望の翼花様年華・2046)の2作目として認識されています。1960年代の香港を舞台にした本作は、日本製の電子ジャーが珍しいなど、当時の香港の時代背景もよく伝わってきます。

 

仕事が忙しくてなかなか帰ってこない妻、夫を互いに待ちわびるチャウとチャン。チャウ役を演じるのは「恋する惑星」や「ブエノスアイレス」のトニー・レオン。チャン役を演じるのは「欲望の翼」で、レスリー・チャンに翻弄される女役を見事に演じたマギー・チャンです。尚トニー・レオンはこの作品で、カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞しました。

 

二人は当然同じアパートで間借りをしている訳ですから(食堂は共有らしい)、夕食時などにちょっとしたコミュニケーションが発生する訳です。今の様な集合住宅とはちょっと違います。「ははーん、この二人が不倫関係に陥っていく話ね・・・」と軽く想像したのですが、この映画は少し違いました。

 

ここからは完全にネタバレします

チャン(マギー・チャン)は夫が不在の時、近所の屋台にスープを買いに行くのですが、その時にチャウ(トニー・レオン)とすれ違いほんの少し会話をします。確かに恋愛ってこんな感じですね。最初の内は、ほんのわずかな時間を共有する所から始まる感じがリアルです。

 

そしてある日レストランで、食事をするチャウとチャン。 チャウとチャンは薄々気付いていた事が、互いの会話から正しいと証明され愕然とします。はっきりと言ってしまえば、二人の配偶者同士が不倫していたと言う事!なんとー!この事をとても上品な感じで会話をして探り合っているのですが(汗)、腹の奥底はきっとそうではないでしょう。

 

チャウは物書きを目指していて、その手伝いをチャンに頼むようになっていきます。二人で共同執筆をし、次第に書いたものが売れていきます。自分の書斎として高級な部屋を借りる事が出来る様になったチャウ(トニー・レオン)。その部屋のルームナンバーは2046です。シブい。後のウォン・カーウァイ作品2046(日本からはキムタクも出演)のタイトルの部屋番号を持ってくるなんて、サブカル的なセンスも良いですね。

  

 この映画にはチャン(マギー・チャン)が夫と別れる時の会話の練習を、チャウ(トニー・レオン)とするという印象的なシーンが度々出て来ます。この様なシーンが突如に現れる為、話の前後との繋がりが見出せず一瞬混乱します。そして後半、あっと思わすシーンが出て来ます。私はこの作品の中でこのシーンが一番好きです。

 

 本作を鑑賞して疑問に思った事は多数ありますが、特に気になったのは終盤あたりに出て来るチャンの子供は誰の子か?です。これにはチャウの子だと思うという意見と、夫との間に生まれた子だという二つの意見がある様です。私としてはチャウの子だと思いたい所です。が実際は何とも言えません。二人が密に会っていたのが1962年なので、その頃出来た子だと1966年には4、5歳ぐらいになっています。二人でタクシーに乗っていた夜が怪しいですが、こういう部分をはっきりと描かない所が大人だなと思いました。ただ結局どちらの子であったとしても、この二人の純粋な気持ちは壊せないでしょう。

 

 そして最後に出て来るのはアンコール・ワットトニー・レオンは穴に秘密を打ち明けるのですが、このラストはかなりぶっ飛んでると思いました。さすがはウォン・カーワイ、芸術の人だと思います。