アナログちゃんのこっそり映画鑑賞記

自宅でこっそり鑑賞した映画についてぽそぽそつぶやきます。

映画感想【スターシップ9】完全ネタバレ

スターシップ9(字幕版)

原題:Orbiter 9/上映時間:95分/製作年:2016年

製作国:スペイン・コロンビア合作

監督:アテム・クライチェ

脚本:アテム・クライチェ

出演:クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレスベレン・ルエダアンドレス・パラ他

 


『スターシップ9』予告

 

 

スターシップ9【あらすじ】一部ネタバレ

エレナはまだ見ぬ未知の星を目指して、一人恒星間飛行を続けていた。一緒に飛び立った両親は既にいない。
近未来、過度の公害に汚染された地球には未来はなく、人類は新しい星への移住を必要としていた。
ある日、スペースシップの給気系統が故障し、エレナは近隣のスペースシップに救援信号を送る。
その呼びかけに応えて姿を現したのが、エンジニアの青年アレックスだった。
一目見て、互いに恋に陥る二人。
しかし、エレナはこの飛行に隠された秘密を知らなかった。それは、人類の未来を賭けた高度な実験だった。
二人はなぜ出会ったのか―?!

映画「スターシップ9」公式サイト

 

スターシップ9【感想】完全ネタバレ

宇宙船でひとりぼっち、とか宇宙のどこかの星で一人ぼっちなどの映画作品を観るのが好きです。パッセンジャーを観た時は「おおっー」と思いましたが、こちらを鑑賞するとパッセンジャーと同等か、それ以上に面白く感じられました。

 

パッセンジャー (字幕版)
 

 

エレナは役を演じるのはクララ・ラゴ。技術士のアレックス役はアレックス・ゴンザレスです。パッセンジャーに比べると、メジャーな俳優が出ている訳ではありませんが、充分に楽しめました。アレックスはやけにそっけないと言うか、冷たいと言うかちょっと感じが悪いぐらいなのですが、その後の展開を観ていくとなるほどこの対応にも説明が付き、この男性が如何に誠実であるかが伺えます。

 

完全にネタバレします。◆400デイズやルームも一部ネタバレします。

 

最近は何でもかんでもディスプレイで確認出来る時代ですが、エレナの様な境遇の場合、自分の目や足を使って現状を確認する事は、極めて重要になってくるなと改めて思いました。

 

これはダイハード4.0を観た時も思ったのですが、テレビやモニターに映し出されるものを100%信じたらダメですね。ただ劇場公開時鑑賞した時には、まだそんなに危機感を感じなかった。最近になって観返すと、あーって思いました。確かブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーンが店から飛び出してひたすら走って、現場の状況を確認しに行くのですが、その極めて原始的なやり方が良い。もうあのシーンだけでも、大満足です。

 

でもその為には体力が必要です。その点エレナは毎日欠かさず筋トレをしているのですが、あまり役に立っているとは思えない。

 

主人公エレナは生まれた時から、ずっと宇宙船の中にいます。彼女には両親がいたのですが、酸素の量が足りなくなった事から彼女を生かす為宇宙船から去った。そんなメッセージの記録映像が残っています。

 

宇宙船から出ると生命の危機に遭遇するので、空かない窓やモニターで現状を確認するしかありません。とても考えられない。もしも自分の部屋の外側の状況をモニターでしか確認出来ないとなると、もうそれだけで相当なストレスですよ。きっと。通常夜中でも雨の音がしたら、何気に窓を開けてべランダから様子を見たりしている訳で。宇宙船だと窓があっても開かないので、外の景色が本物かどうか確認出来ない。

 

更に彼女は、ずっと一人でいる事にも慣れきっている様子。でもやっぱりエレナにとっては技術屋が修理に来るなんて事が、超ビッグイベントなのです。これが何とも切ない。

 

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画像引用:https://movie.jorudan.co.jp/cinema/33475/

 

そうしてイケメンエンジニアが乗ったカプセルが、エレナの宇宙船に連結する時の様子が、モニターに映し出されます。それを黙って見つめるエレナ。

 

しかしこのエンジニアアレックスは、綺麗な若い女性を目の前にしているのに、憂鬱そうでぶっきらぼうなんです。一方エレナの方は、両親がいなくなってからずっと孤独を抱えたまま。その上次に誰かと会えたとしても、20年後ぐらいと思っている訳です。

 

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画像引用:https://movie.jorudan.co.jp/cinema/33475/

 

と言う理由から、彼のベッドに忍び込んで誘惑します。すると彼も彼女を受け入れ、一線を越えた関係になります。しかしアレックスは業務が終了すると、またも無愛想にあっさり帰ってしまう。この男ツンデレ?でも違いました。

 

ここから彼が憂鬱な本当の理由が、明かされる。彼は宇宙服を着てエレナの宇宙船から出ますが、それは単なる格好に過ぎない。エレナの宇宙船を出ると、そこは通路になっていてエレベーターに乗ります。扉を開けると、見慣れた地球上の景色が・・・。彼は林の中をすたすたと歩き、車に乗って帰ります。えええっつーー。

 

後々この映画の他の方のレビューなんかを読んでいると、皆さんの反応が実にクールで驚きました。確かにこの手の話は割とありますが、ここで素直にビビった自分は、ホントバカなんじゃないかと。

 

という訳でそこは地球でした。エレナはオービター計画の、悪く言えばモルモットだった。人類は地球を離れ、新しい星セレステへの移住を計画していた。エレナは15年後に宇宙船がデビューした時の、飛行シミュレーションの実験台なのです。

 

この様な境遇の人があと9人いて、それぞれ番号の付いたシミュレーターに閉じ込められています。彼らは自分を宇宙への移民だと思い込んでいるが、セレステへ到着する事はない。彼らは本当の事を知らないまま、死ぬまで孤独に地下で過ごすのです。

 

アレックスはこのプロジェクトに参加する科学者でした。彼はこの飛行シミュレーションにより、数百万人の命が救えるというメリットしか見ていなかった。しかしエレナと一夜を過ごしたおかげで、すっかり情が移ってしまいます。どんなに科学が進歩しても人の気持ちは不確か・・・

 

と言う訳で彼は組織のルールを破り、再びエレナの所に行きます。エレナはきっと「えっ、そんなに簡単に来れるの?」と驚いた筈です。そして彼は彼女の置かれている状況を、パパッと手短に話しました。

 

そんな訳でエレナはエンジニアの彼と外の世界、即ち地上に逃亡します。初めて彼女が宇宙船(と思っていた)の世界から抜け出し、地球の景色を観るシーンがあります。この感じは『ルーム』で、ジャックが初めて外の世界と触れるシーンと似ていると思いました。

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また彼と同じ様に、太陽の光とかに目や体がちゃんと適応するのかなと不安にもなりました。

 

 

スターシップ9の監督インタビューで、アテム・クライチェはこの様に話しています。

この映画のコンセプトは、閉鎖されている場所から初めて表へ出ていくのが最初のイメーシで、そこから、そのイメージを元に起こるストーリーの中で「人間としての葛藤」をコンセプトにしようと考えました。

http://cinema.u-cs.jp/interview/orbita9-hatem-khraiche/

 

 

そして着いた先は彼の家。アレックスは、ここで彼女を匿うつもりです。

 

その後彼はセラピストシルビアに、その事を話すのですが。未来ではセラピストも顔を見せず、狼のポリゴンに向かって話すスタイルになっていました。しかしその女性が、ホントにいい感じの人です。 

 

ここからも中だるみせず短い尺の中で、次々とテンポよくお話が展開します。以下ポイントを、ご紹介します。

 

エレナにとって更にショッキングな事実が!彼の部屋の資料から判明

エレナは実はクローンだった。アレックスはその事を黙っていたのですが、彼の留守中に彼女は自分自身の資料を見つけてしまいます。そんな大事なもん、鍵をかけるなり隠すなりセキュリティしっかりしなさいよアレックス。

 

犠牲を払ったと思っていた、エレナの両親が生きていた

エレナの両親はエレナを生かす為に宇宙船を去ったという話でしたが、これも当然嘘でした。エレナが両親を訪ねると、2人はびっくり。こんな気まずい事は、そうそうありません。両親と思っていた人達は、軍の科学者だったのです。

 

逃げ出したは良いが、エレナは地上で生き延びられない体

クローンであるエレナの肌は地球上の日常生活に適応せず、生存する為にはあの地下の偽宇宙船に戻るしかない。これじゃ、逃げて来た意味ないじゃん。衝動的に動いたアレックス、予習不足。

 

エレナとアレックスを匿おうとしたセラピストが、射殺される

セラピストは、エレナの目の前で射殺されます。私は最初このシーンに、不満を持ちました。ラストがあの着地なら、彼女が殺される必要はなかった。しかしエレナの心理的葛藤と成長を描くには、多分このシーンが必要なのです。このショッキングな出来事により、エレナはアレックスが同様に殺される事を恐れ、自ら科学者達に捕まる様に仕向けます。更に言えば彼女はクローンであっても人と同じ心を持っていると、観客に証明されるという見方も出来ると思います。

 

天気は予報でなく、気象計画に変わっています

来月は水曜の夜に雨を降らせます。とかラジオで言っています。またアレックスは、やたらとヌードルを食していました。ブレードランナーっぽいです。

 

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桁外れにスケールが違うだけで中身スカスカのSF映画よりも、むしろリアリティがあって良かったです。この映画の良い所は多分、目新しい設定や斬新なSFのルールだけではない所。入口はジャンル映画であっても、着地は予想外の方向へ導かれている様な気がします。

 

ストーリー後半でセラピストを殺した残忍な科学者達が、エレナとアレックスを保護したのは、おそらくエレナが妊娠していたからに過ぎません。彼らを黙らせたのは、人とクローンのハーフという目新しい研究。よって実験対象になるのなら、彼らを生かしエレナに新しい境遇を与えた。結局エレナは元のさやに戻り、アレックスも地上にはもう住めない。

 

そしてラストのワンカット。

 

決してハッピーエンドだとは言い切れないですが、それにしてもアレックスはやれる事はした。彼は何とかエレナを守れるギリギリラインの折衷案を出し、この件に決着をつけたから素晴らしい。よって温かい気持ちになれるエンディングに、仕上がっていると思います。

 

 

 (余談)

結局宇宙船でひとりぼっち映画かと思っていたら、宇宙に行かないSF映画の方でした。宇宙に行かないSF映画では、迷作ですが400デイズなどもありました。こちらは宇宙飛行士の適性を測る為、地下にあるモロ宇宙船そっくりな施設の中へ潜り込むといった内容です。途中までは本当面白いのですが、彼らが地上に出てからの話がぽかん・・・です。惜しい。製作途中で、予算が尽きたのではという噂もありました。

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スターシップ9(字幕版)

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個人情報ダダ漏れ映画【トゥルーマン・ショー】映画感想

トゥルーマン・ショー (字幕版)

 

原題:The Truman Show/上映時間:103分/製作年:1998年

監督:ピーター・ウィアー

脚本:アンドリュー・ニコル

出演:ジム・キャリーエド・ハリスローラ・リニーノア・エメリッヒナターシャ・マケルホーン

1998年公開の作品です。本作品を未見の方は、このレビューを読む前に鑑賞される事をおすすめします。また大体どの様なあらすじの映画かも知らないという、そんなラッキーな方は前情報を全く入れずに鑑賞された方が良いのではと思います。

 

 

 

トゥルーマン・ショー【あらすじ】完全ネタバレ

 主人公のトゥルーマンは、保険会社に勤めるサラリーマン。美人の妻を持ち、周囲との人間関係も良好。よって彼は一見、平凡だが幸せそうな生活を送っている。

 

しかしこの町の人達は、不自然な程笑顔が絶えず常に何かに気を取られている様だ。その日の朝トゥルーマンが出勤しようとすると、空からライトが降ってきた。ライトにはシリウスと、星の名前が書いてある。なんだこれは・・・トゥルーマンは一瞬そのライトを見つめる。

 

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 画像引用:https://blogs.yahoo.co.jp/p65_3_fairy/46179643.html

 

トゥルーマンには幼い頃大嵐で父親を失った経験があった。引き返すと言った父親に、ボートを進める様にせがんだ事を今も後悔している。よってトゥルーマンは、極度の水恐怖症でありそれが故にこの島(シーヘヴン)から一度も出た事が無い。

 

ところがある日トゥルーマンは出勤中に、父親そっくりのホームレスの男に出会う。しかしその男はすぐさま突然現れた何者かによって、バスに連れ込まれた。彼もバスに乗り込もうとしたが、まるで悪意があるかの様に乗せてくれない。

 

そこでトゥルーマンは初めて、自分の身の回りの環境を疑い始める。何かが変だ・・・。そんな折妻のメリルと口論になってしまうが、妻はいきなりココアの話をし始める。「正気か?俺がこんなに怒っているのに!」トゥルーマンがキレ始めると、そこに絶妙なタイミングで親友のマーロンがビールを持ってやって来た。

 

やっぱり、何かが変だ。実の所トゥルーマンアメリカのとある島に住んでいると思っていたが、それすら嘘だった。トゥルーマンや周囲の人々は、巨大なドーム型のセットの中に住んでいる。彼は生まれた時から、現在までの私生活が世界中のテレビで生中継されており、それを知らないのはトゥルーマンだけ。個人情報はダダ漏れ、鏡に向かって話しかけているのも全てカメラに収められていた。

 

彼は島からの脱出を図ろうと決心する。しかしこの番組のプロデューサー・クリストフは、それを許さない。

 

トゥルーマン・ショー【感想】完全ネタバレ

子供の頃に、この世の中は本当に存在するのだろうか?などその手の事に疑問を持ち、夜眠れなくなった人は特に共感を得やすい作品なのではと思います。

 

脚本は、『ガタカ』の監督のアンドリュー・ニコル。また本作品はフィリップ・K・ディックの『時は乱れて』からも、インスピレーションを得ている様です。ディック原作で映画化されたものと言えばブレードランナートータル・リコールなどが有名ですが、アジャストメントという珍作があり(笑)、その映画をちょうど思い出した所でした。あれはあれで、嫌いではないです。ドラえもんどこでもドアの様なものが、劇中にたくさん出てきます。

 

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トゥルーマン・ショーの主演は『マスク』などで人気のコメディ俳優ジム・キャリー。監督は『いまを生きる』などのピーター・ウィアーです。

 

不自然な程、笑顔が絶えない町

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画像引用:http://wallpapers.brothersoft.com/the-truman-show-66761.html

最初の内はこの町の雰囲気どころか、トゥルーマンにすら好感が持てませんでした。一見ご機嫌で、いい調子の町の人気者。しかし何処か観ていて不愉快になる。しかし彼の父親の出現シーンで、初めてトゥルーマンは生き生きとした表情を見せました。彼は真実を知る手がかりを見つけたのです。さすがジム・キャリー、演技上手いなと思いました。この番組の中で真顔を見せる人物は少なく(本人、トゥルーマンの父親、シルビア)、皆どんな時もヘラヘラと営業スマイルをキープしているのが印象的です。そして物も町も何もかもが、おもちゃの様。ゴミ1つなくとても綺麗な町なのに、好きになれないのはなぜだろう。この疑問に対しての答えが後半になって徐々に判明していきます。またこの町自体がまるで、プラスティックの様に安っぽいです。

 

与えられる娯楽のみを、安易に受け入れる事の危うさ

テレビなどの娯楽が全て良くないと言っている訳でなく、安易に手に入る楽しさというのは、それ相応の価値しかないのではないかと。本当に楽しい事というのは、いつもかつも楽ではないと思うのです。何となく流行の物だけを追いかけて、与えられたおもちゃでしか遊ばないとなると、そのおもちゃを与える者にすっかりコントロールされる様になってしまう。他人の生活をテレビでだらだらと覗き見するのが、本当に楽しい事なのか?この映画の中の視聴者全員が、己の心に問うべきだった。視聴者はクリストフが如何に極悪であろうと、彼の作りだしたエンターテイメントなしでは生きて行けない。よって皆が何となく、クリストフの共犯者となってしまった訳です。

 

何から何まで全てセットだった

トゥルーマンは、全く現実を生きていませんでした。周囲の人々は全て役者であり、皆で彼を騙していたに過ぎません。酷い話です。生まれた時から世界220か国にプライベートな生活を公開されており、個人情報はダダ漏れ。彼は確かに世界中にファンがいるスターですが、バカにされていると言っても過言ではないでしょう。唯一親身になってくれたのは、学生時代に好きだったシルビアという女性。彼女は彼に真実を伝えようとしますが、逆に精神的に病んでいる人という役に変更され、彼女の真実の言葉は闇に葬られてしまいます。

 

徐々に分かってくるこの町の実体

トゥルーマンの置かれている環境、即ち周囲の人物は全て役者であり、彼は24時間テレビのモニターにさらされているという事。そしてトゥルーマンが逃げようとしても、大人数で彼を抑圧し逃がさない様にあの手この手と仕掛けます。気付いていなかったが、これまでもずっとそうだった・・・。腹立たしい気分になりますが、我慢して観ているとトゥルーマンが予想外の行動に出て逆転していくので気分が良いです。

 

また仕事もそっちのけでTVを観ている怠惰な視聴者とは対照的に、テレビの為にここまでするかという気合の入ったセット、役者、番組制作スタッフ。彼らは不真面目なのではなく、相当に本気。怖いですが、良く出来ているなと思います。妻メリル役のハンナは、どんな時もここで新商品の宣伝をしなければ、と必死なのです。だからココアの宣伝を、無理やりにでも挿し込んでしまう。

 

また親友役のマーロンは、トゥルーマンが何かイレギュラーな行動をとる度に、ビールを片手に彼の家まで行かなければなりません。ほぼ24時間体制という過酷な労働条件にもめげず、ビールの銘柄をカメラに見せる事も忘れない。

 

この番組はそうやって消費者を一見目新しい商品に次々と飛びつかせ、文化とは程遠い生活を強いていく訳です。

 

番組の随所に商品の宣伝が刷り込まれている

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画像引用:https://blogs.stlawu.edu/groupfive/2016/09/05/media-literacy-and-the-truman-show-1998/

番組の中にさりげなく新商品を出し、視聴者に宣伝する。こういうのをプロダクト・プレイスメントと言うらしいです。よく耳にするのが映画の主人公のしている腕時計とか、登場人物の背後にある看板などです。よって我々がもしこのココアを見つけても、トゥルーマン・ショーのココアだ!と思わず買ってしまわない様に、気を付けなければいけません(笑)。

 

また同じ購買意欲を煽られるのであっても、誰に、または何にお金を使うかだけは自分で選びたいと思っています。

 

TVの影響は大きいと思う。無意識に目に入るものを何となく購入していたのでは、いくらおこづかいがあっても足りないでしょう。

 

バレンタインやハローウィンで無闇やたらと、パーティーグッズやチョコレートを買い込む必要があるのだろうか。また焦る気持ちを煽る様なダイエット食品の広告や、絶対二重瞼の方が良いと言わんばかりの写真。痩せている方が良いというのは、一体誰の価値観なのだろうと。私は結構痩せ型なのでダイエットとは無縁ですが、男性は果たして痩せている女性の方が良いのですかね。そんな事を思ったりします。

 

大衆の怖さも描かれている

1人の孤児の生活情報が、生まれた時から垂れ流し。この事実を批判する視聴者はごく少数で、皆人気番組「トゥルーマン・ショー」に夢中なのです。みんなですれば怖くない、みんなも観ているから大丈夫。そもそもこんな番組が放送されている事に対して、大した疑問も持っていなかった。しかしトゥルーマンが島から逃げ出すとなると、今度は彼に感情移入をし涙を流したり、歓声を上げたりなどというご都合主義な鑑賞の仕方。更に映画のラストでは、トゥルーマン・ショーの後に続く番組を、ガイドでチェックまでしています。

 

 

現実だと思っていた世界の外側に、本当の世界があるという構造

劇中のトゥルーマンの世界は一見特殊な様ですが、私達は既にこれに似た様な経験をしているのではないかと思います。例えばブラックな職場や、学校、望んでいないコミュニティなど閉鎖された環境に置かれた場合。これはあくまで個人的な見解ですが、外に出てみると全く違った世界があるのに、知ろうとしなければいつまでも箱部屋に閉じ込められたままだと思うのです。またこの様なケースの場合、箱部屋内の人達のアドバイスはあてにならない事も少なくない。彼らはクリストフやその周りにいる役者と同じで、自分達の利益の事しか考えていない可能性も充分あります。上司の「君の為を思って言っている」なんて言葉をあっさりと信用するのではなく、己のシルビアを見つける事をお薦めします。

 

 

 

トゥルーマン尊いのは、こんな嫌がらせをした皆に対して、「おはよう!そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!おやすみ!」というお決まりセリフで決着をつけスマートに番組から去る所。昔のテレビ番組元祖どっきりカメラで、たまに騙された芸能人がマジ切れしたりしていましたが、状況によってはそうもなるだろうなと。そう思えばトゥルーマンは、相当に大らかな人物ですね。

 

また周囲の人が皆演技をしていたという映画では、デヴィッド・フィンチャーの『ゲーム』などもありました。結構、心温まるエンディングです。

 

Game, the [Blu-ray]

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トゥルーマン・ショー [Blu-ray]

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映画感想【IT/イット “それ”が見えたら、終わり。】ネタバレあり

 IT/イット “それ”が見えたら、終わり。

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(字幕版)

原題:IT(IT:chapter one)/上映時間:135分/製作年:2017年

監督:アンディ・ムスキエティ

原作:スティーヴン・キング

出演:ジェイデン・リーバハー、ビル・スカルスガルド、フィン・ウルフハード、ソフィア・リリス、ジェレミー・レイ・テイラー他

 

 

【あらすじ】ネタバレあり

1988年、アメリカの田舎町デリー。町では子供ばかりが行方不明になる不可解な事件が続いていた。ある日、内気で病弱な少年ビルの弟ジョージーも1人で遊んでいる時に何者かに襲われ、道端の排水溝に姿を消してしまう。以来、弟の失踪に責任を感じていたビルはある時、見えるはずのないものを見てしまい恐怖に震える。やがて、眼鏡のリッチーや悪い噂のあるベバリーなど同じような恐怖の体験をしたいじめられっ子の仲間たちと協力して、事件の真相に迫ろうとするビルだったが…。

映画 IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 - allcinema

 

【感想】完全ネタバレ(1990年のITもネタバレします)

スクリーンから3Dの様に過剰に飛び出してくるピエロに、不覚にも笑ってしまいました。

 

続編の撮影も終了した様です。2019年公開予定の後編を楽しみにしていらっしゃる方は、1990年の方のITにも触れますので、ネタバレにご注意下さい。

 

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のタイトルについて、正しいとか間違っているとか賛否ある様ですが、私はアメリカの鬼ごっこ事情に詳しくないのでどちらが良いのかよく分かりません。しかしITイットそれと3回もしつこく言う必要が何処にあったのだろうかとは、考えてしまいます。

 

あえて一言言わせてもらうなら、字間がバラバラで見た目がスッキリしないのが気になる(笑)。またむやみやたらに記号(/“”、。)が入り、全く情報が整理されてない感じのタイトルに、脱力感を覚えざるを得ませんでした。

 

でもこのタイトルで日本でも大ヒット。多くの人に観てもらうという目的は、しっかりと果たせた訳です。自分もそれに飛びついたの中の1人。続編はどんなタイトルが付くのか、楽しみです。

 

原作はスティーヴン・キングの1986年のホラー小説『IT-イット-』。この作品は過去1990年にも、テレビ映画として映像化されています。アメリカでは前編、後編と2週に分けて放映された様です。こちらは大人になったルーザーズクラブのメンバーの回想シーンとして、彼らの子供時代が描かれるスタイル。前編は主に子供時代、後編は大人になってからの彼らが描かれます。

 

ちなみに日本での初回放送時を調べてみると1994年、タイトルは『イット 恐怖の殺人ターゲット・復讐の悪魔』とありました。これリアルタイムで観てなかったです。こちらは1話にまとめたものが、放送された様ですね。

 

『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』の方の監督は2014年公開『MAMA』というホラー映画で注目を浴びた、アンディ・ムスキエティ

 


映画『MAMA』予告編

 

この映画は観た事ないのですが、何か凄いインパクトのある予告編です。ちなみにアンディ・ムスキエティは、進撃の巨人』ハリウッド実写版の監督を務める事がこの間、発表されました。

 

と言う訳でIT イット “それ”が見えたら、終わり。。作品自体は怖いと評判でしたが、観終わった感想としてはキング原作の中ではそんなに怖くない方ではないかと。やっぱりキングならミストやミザリーの方が、断然怖かったです。

 

ミスト (字幕版)

ミスト (字幕版)

 

 

 

ミザリー (字幕版)

ミザリー (字幕版)

 

 

本作品はどちらかと言うと、スタンド・バイ・ミー寄りの青春モノホラーという印象です。よって思いっきりホラーが見たい時に観ると、肩透かしを食らうかも知れないです。また鑑賞する時の心理状態によって感情が、恐怖か?感動か?どっちにブレるかが違ってくるのではないかと思いました。

 

前編は特に可愛らしい子供達の心の成長が描かれ、さわやかな終わり方をしています。しかし後編の作品の雰囲気は、これとはがらりと変わるのかも知れないと思いました。ラストシーンでルーザーズクラブの人達が、次々にスクリーンから去っていく。この順番が後編に反映されるとかされないとか。

 

個人的には正直、冒頭のシーンが一番怖かったです。道路脇の排水溝から、ひょっこり顔を出す不気味なピエロ。主人公のビルは体調不良で寝込んでいる時、弟のジョージ―を一人で外出させてしまいました。ビルは弟のジョージーが行方不明になって以来、その事ばかり考える日々を送っています。

 

学校では不良のヘンリーらに怯え、その上この町では子供が行方不明になる事件が相次ぎます。ついこの間もベティという少女が、行方不明になったばかりでした。ビルの仲間はリッチースタンリーエディ。4人はこの怯える様な環境下、それなりに仲良く楽しくやっていてけなげです。彼らはルーザーズ・クラブ(負け犬チーム)と呼ばれています。このネーミングが良いですね。

 

そこにそれぞれの事情で孤独なベンべバリーマイクが加わります。若い頃気の合う仲間に出会えた時の、ワクワクする感じが伝わって来ました。

 

しかしこの子供達は皆家庭に問題があったり、それぞれ事情を抱えていて不安や恐怖で一杯です。田舎町ですが大人達もいじめを見て見ぬふりをしたりして優しくないし、何となく治安も良くない。

 

例えばベンは転校して来たばかりでこの町に馴染めていない上、ややふっくらとした体型から不良達のイジメのターゲットにされるのでした。べバリーもまた可愛らしい女の子なのですが父親と二人暮らしで、性的な虐待を受けていました。その上彼女は学校で、変な噂をたてられてしまいます。そんなある日べバリーから声を掛けられたベンは、あっさりと恋に落ちました。

 

ルーザーズ・クラブの彼らが共通して遭遇しているのが、ペニーワイズという名のピエロ。ペニーワイズは誰にでも見えると言う訳ではなく、何となくこういう心に闇を抱えた子供にしか見えません。またそれが幻覚なのか現実なのかが分からない。

 

そうこうしている内に皆がそれをカミングアウトし始め、ビルはジョージ―を襲ったのはきっとペニーワイズだと言います。そこで皆はペニーワイズの住家である、井戸の家に行きます。次なる犠牲者を出さない為です。

 

しかしそこでエディが腕を骨折。エディの過保護な母親はカンカンに怒り、ビル達に「もううちの子と遊ばないで」とキレます。しかしその後エディは、親からいつも喘息で持たされている薬が、実は全く意味の無い物だと知ります。彼は喘息ではなかった。

 

母親を振り切り、仲間の元へ戻るエディ。7人は再び勇気を振り絞り、井戸の家に突入します。無力で純粋な子供達の恐怖が、ペニーワイズの餌になる。ルーザーズ・クラブは恐怖を持たなければ、ペニーワイズは死に絶えると気付き戦います。だんだん強くなっていく彼らを見ると、気分がスカッとしてきてました。

 

 

1990年のITよりも、ペニーワイズが恐怖心のメタとして描かれているのが新鮮でした。また子供達にとって最も怖いのは、この町の支配的な大人。現にべバリーの父親には、怪奇現象が見えません。またエディの母親の様に行き過ぎた過保護は、子供にとっては脅威でしかない様な気がします。

 

なぜ本作品がそんなに怖くないかと考えると、恐怖を表現しつつも、その恐怖心を克服する事をテーマとした作品だからではないか?と勝手に解釈しました。とても贅沢な作品だと思います。

 

また子供の頃を思い返してみるとさして苛められっ子だった訳ではありませんが、劇中に登場する不良チームを見るとイラッとします。弱虫チームが不良チームに石を投げるシーンが、特に良いと思いました。

 

  

【1990年版ITとIT イット “それ”が見えたら、終わり。の違い】

あのシーンが無い!などの違いを述べていったらキリがないですが、大まかに違うなと思った所を気付いた範囲で挙げてみました。

 

1.ペニーワイズのルック

これは単に好みの問題でもあると思います。ティム・カリーの演じたペニーワイズ(1990年)は相当な人気の様ですが、ピエロ自体のルックは2017年版の方が個人的に好みです。でも1990年版ITのクラウンの方が一見優しそうにも見えるので、そのギャップから生まれる怖さが味わえるかも知れません。

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画像左)http://movie-man.com/506-it/ 画像右)https://front-row.jp/_ct/17145607

左が1990年ITのペニーワイズ、右が2017年のペニーワイズです。

 

2.リッチーのキャラクター

同じおしゃべり、お調子者のキャラでも、背の高さや声のトーンなどによって雰囲気が違ってくるなと感じます。2017年の方のリッチーは、フィン・ウルフハードという子役の男の子が演じています。こちらの方が声が高くて、お調子者感がよく出ていると思いました。彼は同じ時期にアメリカで放送されていたドラマ『ストレンジャー・シングス』にも出演していて、人気の様です。

 

3.風船の演出

1990年版ITのペニーワイズは、様々な色のバルーンを持っていますが、2017年の方ではバルーンの色が赤に統一されています。個人的な意見としては、赤い風船のみの方が怖い。バルーンがこんなに不気味に見えるとは!と思いました。規則的に不自然に並べられている分、非現実的で気持ち悪かったです。

 

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画像引用:https://www.gizmodo.jp/2017/05/it-red-balloons.html

 

4.ストーリー構成

2017年版の前編は、ビル達の子供時代のみの話になっています。こちらは幼少期の話が、グッと凝縮されているので話が理解しやすい。また感情移入も容易な為、よりスタンド・バイ・ミー感が味わえるのではと思いました。1990年版の方は、7人の大人と子供が次々に登場する為、ちょっと情報過多気味ですね。スリルや情緒を味わう余裕もなく、人物を追ってしまう部分がありました。

 

5.怖さ

1990年版ITの方がホラー度は高いのではないかと思います。例えば2017年版のキレた時のペニーワイズの造形(笑)。あそこまで歯をむき出しにしてしまったら、もう不気味なピエロではなく怪物ですね。エイリアンとか、そういうヤツの仲間に見えてきました。確かにキャラクターとしては見応えがありますが・・・。それに対して旧イットのペニーワイズは静かな存在感を放ち、ただ笑っているだけでも結構怖いです。

 

6.恐怖の対象

1990年版ITではペニーワイズの正体が、実は巨大な蜘蛛のモンスターでした。正直このシーンはがっかりしたのですが、2017年版では恐怖の対象が、やや抽象的に表現されている様な気がします。子供にとって自分が何を恐れているのか明確ではない、こんなに厄介な事はないです。壁に掛けてある絵が怖いと言っても、その恐怖の実体は掴めないままです。皆おのおのそういうのを抱えていて「あえて言うならピエロが怖い」という共通点を見つけます。 そこであのピエロを倒そうと頑張り始めるのです。

 

 これ以外にも子供時代のエピソードなど描かれている内容が、微妙に違っていたりします。エディの喘息の薬のエピソードは、新ITの方の描かれ方の方が好みでした。

 

2017年版ペニーワイズを描いてみたので、貼っておきます。

歯を剥き出しにした凶暴時のヤツの姿です(笑)。

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 後編が楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

映画感想【クレイジー・リッチ!】ネタバレ有り

クレイジー・リッチ!

【映画パンフレット】クレイジー・リッチ! 監督  キャスト

 

原題:Crazy Rich Asians/上映時間:120分/製作年:2015年

原作:ケヴィン・クワン「クレイジー・リッチ・アジアンズ」

脚本:ピーター・チアレッリ、アデル・リム

出演:コンスタンス・ウーヘンリー・ゴールディング、クリス・パン、ジェンマ・チャンミシェル・ヨー、オークワフィナ、ソノヤ・ミズノ、陳瓊華

【あらすじ】一部ネタバレ有り

中国系アメリカ人で生粋のニューヨーカー、レイチェルは、恋人ニックが親友の結婚式に出席することになり、一緒に彼の故郷シンガポールへと向かう。これまで家族の話を避けていたニックだけに、それなりの心構えをしていたレイチェルだったが、ニックはそんな彼女の予想とは真逆のアジア屈指の不動産王の御曹司だった。こうしていきなりセレブの世界へ足を踏み入れることになったレイチェル。しかしそこには、激しい嫉妬に燃える独身セレブ女子たちや、財産目当てと決めつけるニックの母親が、2人の仲を引き裂こうと待ち構えていた

映画 クレイジー・リッチ! - allcinema

 

【感想】完全ネタバレ

やっと観に行きました『クレイジー・リッチ!』。

気が付いたら、福岡では上映終了間近で焦りましたが・・・。

今このタイミングで感想を書いてもほとんどの劇場が、上映終了してしまっていてあまり意味がないかも知れませんが、レヴューを書かせて頂きます。

 

映画自体は、笑いあり涙ありのラブコメで普通に面白かったです。

泣けるシーンも何シーンかあり、年々自分が安い涙を流す様になってきたような気がします。

 

ヒロインのレイチェル役にはコンスタンス・ウー。また本作品は、ほぼアジア系俳優のみでキャスティングされています。

 

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画像引用:https://wired.jp/2018/10/21/crazy-rich-asians-review/

 

主人公のレイチェルは、中国系のアメリカ人。彼女はシングルマザーに育てられ立派に成長し、ゲーム理論の教授をやっています。冒頭ではポーカーでノーペアでも強い手札を持っている相手に勝てる理論を講義したりしています。

 

ちなみにこのブタでストレートやフラッシュに勝つ技は、自分が子供の頃いとこの兄ちゃんとポーカーをやった時まんまと嵌められた手でした(笑)。

 

レイチェルは実力を持っていて、ニューヨークでそれなりに上手くやれてるつもりだったのですよ。きっと。しかしその彼氏であるニックが、実はシンガポールの大富豪の息子だった。

 

彼女はニックから、彼の地元であるシンガポールの親友の結婚式に御呼ばれします。行きの飛行機がファーストクラスであった事から、「彼、実は金持ちなんじゃない?」とやんわり気付き始めるのです。

 

シンガポールではニックとレイチェルが泊まる為のホテルが用意されているのですが、それはニックの母親が彼女を家に招き入れたくなかったから。何も知らないレイチェルは「ホテルなんかに泊まって大丈夫?」などとトンチンカンな事を聞くのですが、それが庶民の意見というものです。

 

レイチェルにはシンガポールゴー・ペイク・リンという友人がいるのですが、ニックの実家は彼女らが名前を知っている位の有名な大富豪だった。それにゴー・ペイク・リンの家だって、普通の生活をしている人から見れば相当な金持ちですよ。

 

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画像引用:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-20/PDQDJ76JIJUV01

 

ゴー・ペイク・リンを演じるのはオークワフィナ。キャラ立ってるなーと思いました。彼女以外にもバーナード・タイを演じたジミー・O・ヤンなど、魅力的な脇役が勢ぞろい。

 

あまりにも極端な金持ちぶりを見せられた時に、レイチェルがどんどん縮んで行く感じが観ていて痛いです。それは彼女が母親と選んで用意した赤いドレスが、途端にみすぼらしく見える事でも表現されています。うーん、悲しい。可愛いのに!

 

そんな感じで彼女は、ニックの母親や友人らに次々と会っていきます。しかし当然物事が上手くいく筈がない。ニックの恋人である事で周囲からは嫉妬され、過剰な嫌がらせを受けたりします。枕元に魚の死骸を置くという、ゴッドファーザークラスの嫌がらせとか。ホント怖いなと思います。

 

レイチェルは全く事情が説明されていなかった事に対して徐々に怒りを覚え、ニックを責めます。古びた体育館を好むあなたが、こんなに金持ちだとは知らなかったわよ!って感じです。

 

しかしやや風変わりなキャラの友人ゴー・ペイク・リンをはじめ、何人かの個性的な人々の協力で何とか事態に立ち向かって行くレイチェル。変わり者は何かと少数派に優しい。ニックは呑気にプロポーズとかしますが、彼女にそんな余裕はないですね。きっと。

 

シンガポールの生まれつきただ金持ちだった人々に対して、彼女は自分の実力で勝負。冒頭のポーカーの安っぽい技とは違い、洗練された思いやりのある手で勝負した(様な気がする)。麻雀のルールはよく分かりませんが、前後のセリフなどから。何よりも彼女に、ニックと母親の関係性まで考える余裕があった事が意外です。このシーン以降で何かが逆転し、ストーリーは一気にラストへ向かいます。

 

ベタと言えばベタですが、そもそも期待していたよりは随分良かった。それにこの様な作品が作られる事で、今後ハリウッドがどの様に変わっていくのかに興味がありました。この作品は俳優のサン・カンさん(ワイスピのハン)がインスタでおすすめしていたので観ようと思ったぐらいで、そうじゃなきゃ観てなかったかもしれないです。

 

観た映画を記憶だけで書いていくのはかなり不安でしたが、案外書けるもんだなと思いました。(通常は何度もビデオ等で観返しています)。

 

またレヴューを書いておいていきなりこんな事言うのもアレですが、この作品については、鑑賞された方のなるべく多くの意見が聞きたいなと思いました。

 

監督は『グランド・イリュージョン 見破られたトリックの、ジョン・M・チュウ。この作品も確か、フォー・フォースマンが途中から中国に行くストーリーだった様な。

 

  

ほぼオールアジア人キャストで構成されたクレイジー・リッチ!は、ハリウッド映画の新たな革命とも言えます。これを機に日本人を含め、ハリウッドのアジア系アメリカ人にもっと活躍して欲しい。

 

全米での興行収入は3週連続1位を獲得。またこの作品の原作者であるケヴィン・クワンが、兵役義務を逃れていた為シンガポールで指名手配されたというびっくりニュースなど、何かと話題になる作品だった様です。

 

 

 

ハイライズ【映画感想】人はなぜ高い所に住みたがるのか?

ハイライズ

ハイ・ライズ(字幕版)

 

原題:High-Rise/上映時間:119分/製作年:2015年

監督:ベン・ウィートリー

原作:J・G・バラード

出演:トム・ヒドルストンジェレミー・アイアンズシエナ・ミラー、ルーク・エバンス、エリザベス・モスなど

【あらすじ】(ネタバレ有り)

フロアごとに階級が分けられ、上層階へ行くにしたがい、富裕層となるという新築タワーマンション。このコンセプトを考案した建築家アンソニーの誘いで、マンションに住み始めた医師のロバートは、住民のワイルダーと知り合い、マンションの中で起こっている異常事態を知ることとなる。

ハイ・ライズ : 作品情報 - 映画.com

【感想】(完全ネタバレ)

資本主義においての貧富の差を表しているとか、色々な解釈がなされている様ですが、難しくてよく分かりませんでした。すいません。

 

スノーピアサー』が超長い列車内でのヒエラルキーを描いたものだとすれば、『ハイライズ』はタワー内に住む人々の階級制度みたいなものが描かれています。縦と横の違い。まだ未見の方は、こちらと比較しながら鑑賞すると面白いのではないかと思います。

 

スノーピアサーはかなりグロなシーンと、キョーレツに笑えるキャスティングとのギャップが特徴的ですが、ハイライズの方はグロいけど何処かゴダールっぽいおしゃれっぽさもある様な気がします。美しい・美しい・グロい・美しい・グロいの映像を繰り返され、吐きそうになる方もいらっしゃるかもしれませんので、注意が必要です。それから犬好きの者としては、犬に対しての残酷な描写などがあり、これにもかなり凹みました。

 

ハイライズと言っても蛭子さんが履かれている様な股上が深いズボンの事ではなく、この作品に出てくるタワーマンションの名前です。

 

監督はベン・ウィートリー。舞台はとある超高級タワーマンションです。主人公の医者ロバート・ラングが、このタワーハイライズの25階に引っ越してきます。ラングを演じるのはトム・ヒドルストン(冒頭からいきなりの無駄脱ぎシーン有)。

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 画像引用:https://ameblo.jp/irusutyuu/entry-12322156054.html

 

セクシーなラングはここの住民とすぐに打ち解け、パーティーなどにも参加します。この建物は超リッチで、この中にいれば困る事はほとんどないといった風。ジムやスーパーをはじめ、プールなど生活に必要な施設は完璧に揃っていると言っても良いでしょう。

 

相当に贅沢な暮らしをしているタワー内の人々ですが、なぜか時折見せるどんよりとしたムード。またダストシュートが狭いから大きいゴミ袋はダメとか、超肝心な所が出来ていない建物でもあります。

 

このタワーの設計者アンソニー・ロイヤルは最上階に住んでおり、この人の奥さんが超わがままな上に、屋上で馬にぱかぱかと乗っていたのでホント笑ってしまいました。でも屋上で乗馬が出来るぐらいの広さなので、相当にリッチですね。いつの時代?と思っていたら、この原作は1975年に発表された作品の様です。

 

その後この設計者ロイヤルがロボトミー手術がどうのとか言い出すのですが、それもこの時代の作品ならではないかと思います。

 

そしてだんだんこの建物の中にも階級があり、上の階にいく程お金持ちが住んでいる事が分かってきます。ざっくりと言ってしまえば上・中・下に分かれていて、ラングは25階に住んでいるのでこの建物の中では中流となります。

 

そしてある日突然停電が起こった事をきっかけに、このタワー内の見せかけだけの秩序が壊れていくという展開。停電ビフォーアフター。電気が足りなくなった際に、優先的に上のフロアに供給され、子供をたくさん抱えた下層部のフロアの人々の部屋は、電気が止まったままでした。この事にキレた下層部の人々が反逆を起こします。

 

このタワーマンションには、ラングの勤める大学病院の教え子であるマンローという男も住んでいます。しかし彼は親が金持ちで、ラングよりも上層の39階に住んでいたのでした。この事で嫌味を言われたラングは、大学病院でマンローにちょっとした嫌がらせをするのですが、これがかなり悪質でその事が原因で取り返しのつかない事に

 

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画像引用:https://www.niwaka-movie.com/archives/5009

 

そして一気にえええっーって展開になる所が良いです。しかも惨事が起こっているのに、一向に警察が来ない。そこでこの建物はやっぱりちょっとおかしいな、と皆が気付くという流れです。

 

更に3階に住むワイルダーは、テレビプロデューサーと言う職業柄、事の真相を暴こうとします。荒っぽい男ですが、ラングも言う通り彼だけは一番まとも。後の人達はラングも含めて、全然なっちゃいないのです。ちなみにワイルダーを演じるのは、ルーク・エヴァンス。個人的には彼は冷たい男の役の時が好みですが、この役も良いですね。

 

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画像引用:http://yudutarou.hatenablog.com/entry/2016/09/22/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BA_%EF%BC%882015%EF%BC%89

 

またスノーピアサーは列車から降りる事がほぼ不可能と思われる状況から、登場人物達が必死で降りようとするのですが、このハイライズはビルの中の住民が一向に出て行こうとしないのがポイントです。

 

散々な目に遭っても幼い子供がいても、この高級タワーに住んでいるプライドが出ていく事を許さない(様に見える)。もしくはこのタワー全体が社会の縮図として表わされている、という解釈も出来るかもしれません。

 

しかし外部から冷静に客観的な目で見れば、ある程度の金持ちなのだから、よそでそこそこ良いマンションに住めば、子供にもすぐにたくさんのご飯を食べさせてあげれる訳です。

 

でもここの人達はおそらくこのタワー内の住民である事に執着してしまっているので、絶対に出ていかないでしょう。スーパーマーケットの食糧が全て無くなっても、何日も風呂に入れなくても出て行かないですよきっと(笑)。設計者のアンソニー・ロイヤルの思うツボなのでしょう。

 

客観的に鑑賞者として観ていると、バカだなぁと思う事でも、案外この手の事は当該者になってしまえば、周りが見えなくなるのかなとも思います。そこが怖い。その不気味な感じが、上手く描かれていると思います。

 

また高い所に住めば必ずしも良いという訳ではない、という教訓でもあると思いました。足りない食糧、なぜかたくさんある酒とたばこ。この作品の中の人々は実によくたばこを吸うのですが、これも70’のムードが出ていて良かったと思います。

 

それからラングがペンキを塗るシーン。これはやはりゴダールっぽいなとも思ったのですが、不覚にも20代の頃に観たシクロという超トラウマ映画を思い出してしまいました。

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画像引用:http://kmot.blog9.fc2.com/blog-entry-322.html

 

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ハイ・ライズ(字幕版)

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ハイ・ライズ[DVD]

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プレゼントでしつこく嫌がらせ【ザ・ギフト】映画感想

ザ・ギフト

ザ・ギフト (字幕版)

原題:The Gift/上映時間:108分/製作年:2015年

監督:ジョエル・エドガートン

脚本:ジョエル・エドガートン

出演:ジェイソン・ベイトマンレベッカ・ホールジョエル・エドガートン 

【あらすじ】

 シカゴからカリフォルニア州郊外に引っ越し、新生活をスタートさせた夫婦サイモンとロビン。夫の仕事も順調で幸せいっぱいの2人はある日、サイモンの高校時代の同級生だというゴードと出会う。すっかり忘れていたサイモンだったが、ゴードは旧友との25年ぶりの再会を喜び、さっそく2人にワインのプレゼントを贈る。その後もゴードからの贈り物が次々と届くようになり、次第に彼の真意を測りかねて困惑していくサイモンとロビンだったが…。

映画 ザ・ギフト - allcinema

 


映画『ザ・ギフト』予告編

【感想】ネタバレ有り

スリラー映画で内容は濃いですが、グロ描写がほとんど無いので、エグイ描写が苦手な方にもおすすめです。

 

ガラス張りの無防備な家、突然現れる学生時代の同級生ゴード、玄関先に断りもなしに置かれた贈り物のワイン。この作品はずっと子供を欲しがっている若い夫婦サイモンとロビンが、郊外の一軒家に引っ越してくる所から始まります。

 

サイモンとロビンがおしゃれな家具屋で買い物をしていると、昔の同級生ゴードに再会してしまいます。これが悪夢の始まりですね。

 

住所を教えてもいないのに、ギフトを贈ってこられるのって、それだけで充分不気味だと思います。その上敷地内の庭の池に、勝手に鯉まで放された日には大きなお世話もいいとこですね(笑)。これでは気味が悪いだけでなく、全く常識が無い人だなと思われても仕方がありません。ゴードはただ単に他人との距離が上手く掴めない人なのかなと思いきや、実はそうではなかったのが本作の面白い所。

 

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画像引用:http://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA0000R7R42

 

そこには最初から明らかに復讐の意図があった訳で、徐々にその真実みたいなものが明かされていきます。実は旦那であるサイモンの方が、トンデモ野郎であった事が判明していくくだりは、鑑賞していてもギョッとしました。

 

しかし客観的に見て、復讐とは言ってもゴードンの嫌がらせはどんどんエスカレートしていき、それはそれでどうなのかなと。サイモンがサイモンなら、ゴードもゴード。妻のロビンが、気の毒でなりませんでした。

 

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画像引用:http://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA0000R7R42

 

特に最終的に時間を掛けて仕込まれたビッグプレゼントに、凹まない人はいないでしょう。ギフトがこんなに人にダメージを与えるとは知りませんでした。その上、実は貰ったのか貰わなかったのかが分からないなんて、ありえない。後味が悪過ぎます。

 

本作は脚本・監督共にゴードン役俳優のジョエル・エドガートンが手掛けていますが、よくこんな気味の悪いオチを考える事が出来たなと感動しました。低予算で制作されている様ですが、全然安っぽくない良作だと思います。

 

 

2016年に公開された作品ですが、公式サイトに寄せられた著名な方のコメントのリンクです。

コメント|映画『ザ・ギフト』公式サイト

 

バレット【映画感想】ネタバレ有り

バレット

バレット(吹替版)

原題:Bullet to the Head/上映時間:92分/製作年:2012年

監督:ウォルター・ヒル

脚本:アレッサンドロ・ケイモン

出演:シルヴェスター・スタローン、サン・カン、サラ・シャヒアドウェール・アキノエ=アグバエクリスチャン・スレイタージェイソン・モモア

 

【あらすじ】

海兵隊員から闇の世界に身を落とし、殺し屋を生業としてきたジミー・ボノモ(シルヴェスター・スタローン)。逮捕されること26回、有罪となること2回。力を頼りに生きてきた彼が唯一心を許していた相棒の復讐をするために、まだ若く頑なに己の正義を貫く刑事のテイラー(サン・カン)とタッグを組むことにする。殺し屋と刑事という異色な組み合わせの前に、警察やマフィアといった街のありとあらゆる組織が立ちはだかり、さらには怪物的な凶暴性を持つヒットマンキーガンジェイソン・モモア)が待ち構えていた……。

バレット | 映画-Movie Walker

【感想】

 なぜ今このタイミングでバレットなのかは、説明すると長くなるので割愛させて頂きます。

 

出演はシルヴェスター・スタローンと、ワイルド・スピードシリーズのサン・カン。この作品は映画の始まり方が、スタイリッシュで良いと思いました。刑事と犯罪者がコンビを組み凶悪な組織に立ち向かうストーリーは元々好みですが、スタローン+サン・カンというキャスティングが更に魅力です。

 

作品自体は全体的に、80年代のアクション映画風。しかし圧倒的にタフな犯罪者であるジミーに対し、刑事のテイラーは携帯で何でも調べる今時の若者みたいな所が良いですね。

 

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画像引用:Bullet to the Head | Paragraph Film Reviews

 

80年代の映画を決して肯定する訳ではないのに、この様なアクション映画を見つけるとほぼ本能的に反応してしまうのが、多感な時期に『48時間』や『ダイ・ハード』を観てきた事実が反映する悲しい性でもあります。

 

 

しかしストーリーが始まってすぐに、スタローン演じるこのジミーという男には感情移入出来ないなと思ったので、サン・カンの演じるテイラーという警察官の方に感情を移入しました。

 

本作は1時間半という短い尺の中に、仮装パーティーや派手な爆破シーン、斧を用いた格闘アクションなどもあり最高です。しかし仮装パーティーの時にジミーが付けている仮面に関して言えば、もうちょっと良いデザインのものが無かったのかなと思いました(笑)。もしくは、あの仮面に何か意味があるのですかね。

 

個人的にはサン・カンのアクションがもっと観たかった気もしますが、ド派手なシーンが多く最後まで退屈せずに鑑賞する事が出来ました。

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画像引用:http://collider.com/sarah-shahi-bullet-to-the-head-interview/

 

ジミーはテイラーに俺のルールと、お前のルールは違うと言います。しかしやり過ぎジミーには、半ば呆れ気味になりました。ジミー宅で、悪い弁護士マーカスに拷問をかけるシーンにはドン引き。ちなみにマーカス役はクリスチャン・スレイターですが、彼がこの様な役で登場するとは!テイラーがジミーに「簡単に人を殺すな!」と忠告しますが、全くこの意見に賛成です。

 

その上自宅を襲撃されたら水中に潜ってテイラーと共に逃げ、リモコンであっさりと自宅を爆破。この大味さにどこか懐かしさを感じ、良いなと思いました。いつ準備をしたのかと言いたくなりますが、ジミーの家が燃えるのを呆然として、見ているテイラーの姿がカッコ良かったです。

 

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 画像引用:https://www.huffingtonpost.com/mike-ryan/bullet-to-the-head-sequel_b_2601254.html

 

物語の終盤ではテイラーにもう一撃くらわす事で、話の辻褄を合わせようとするジミー。人様を撃っておいて「礼はいい」と得意げに言うジミー。バーで「おととい来やがれ」と、ほとんど死語の台詞を吐き捨てるジミー。最終的には、完全にジミーのペースに呑まれてしまい、やっぱりスタローンはカッコイイ!となってしまうストーリーには脱帽です。